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<インタビュー>野口五郎、単独初となるオーケストラコンサートへの思いを語る



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 デビュー55周年を迎える野口五郎がbillboard classicsに初登場。【billboard classics 野口五郎 PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2025 KEEP ON DREAMING】は、 数々の名曲を世に送り出しただけではなく、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の初代マリウス役をはじめ俳優、ギタリスト、タレント、そしてアプリの開発など研究者としてマルチな活躍でエンタメシーンの第一線を走り続けてきた野口が、 フルオーケストラをバックに自身の人生を彩ってきた様々な歌で魅了する。指揮・編曲の渡辺俊幸と共に6月5日東京文化会館大ホールを皮切りに、 兵庫、愛知、札幌で、各地のオーケストラと共演する。単独では初となるフルオーケストラコンサートへの意気込みをインタビューした。
(Interview & Text:田中久勝 ❘ Photo:石阪大輔)


ボーカリスト、ギタリストの野口五郎を表現するオーケストラコンサートに

── 先日“研究者”としての野口さんのブログで、気になる記事を見つけました。“いい音”とは?というテーマで「“いい音”なんてない。いい音って個人個人で違う!!自分の感性に触れた時、出会った時、「いい音!」なんて言葉出て来ません。思わず出る「ヤバい!!」とか「何これ!!」とかです」というものでした。

野口:そうなんです。“いい音”なんてないって言い始めたんですけど、昨日ぐらいから(笑)。いい音っていうのは個人個人で好みがあるので、その人がいい音であればそれはいい音。デジタルのものを聴いていい音って感じたらたらそれでいいんです。アナログレコードを聴いていい音、生の音がいいと思ったらそれでいいんです。それを討論するのは本末転倒だと僕は思います。

── 確かな答えがないですよね。

野口:ただ“豊かな音”はあるんです。その豊かな音は、色々な広がりに繋がっていて、例えば音波というものは人間のタンパク質とかそういったもの構成に関係しているということがわかってきたので、もう違うフェーズに来てますよ。もう一歩先、素粒子の世界です。

── …こちらからお聞きしたのに申し訳ないですが、この話でインタビューが終わりそうなので、また別の機会に聞かせてください(笑)。

野口:多分5時間ぐらいかかりますよ(笑)。仕方ないので今日はシンフォニックコンサートの話にしましょう(笑)。



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── 野口さんは2021年と22年に 岩崎宏美さんとのフルオーケストラコンサート【プレミアムオーケストラコンサート〜Eternal Voices〜】を行ないましたが、単独でのシンフォニックコンサートは今回が初めてとお聞きして、意外でした。

野口:そうなんです、二年続けて(岩崎)宏美ちゃんと二人でフルオーケストラでコンサートをやって、今年も2月に東京オペラシティで、NHK交響楽団のメンバー9人とバンドの音をバックに歌わせていただきました(【GORO NOGUCHI CONCERT TOUR 2025 「THE SONGS 〜通り過ぎた者たち〜」〜N響ソリストたちとの饗演〜 with G’s BAND】)。そして今回いよいよ一人でフルオーケストラをバックに歌うという機会をいただけて、ワクワクしています。宏美ちゃんとのコンサートも構成や演出も考えさせていただいたので、今回もお話をいただいてすぐに色々なアイディアが浮かんできました。

── 岩崎さんとのコンサートでも指揮を務めた渡辺俊幸さんが、今回も指揮と編曲を手掛けてくださいます。

野口:全幅の信頼を置いている(渡辺)俊幸さんの存在は本当に心強いです。俊幸さんとそれぞれの都市のオーケストラのみなさんお一人お一人の力をお借りして、ボーカリスト、ギタリスト野口五郎を表現したいです。

── オーケストラをバックに野口さんがギターを弾きまくっている姿が想像できますが、具体的にはどんな内容になりそうでしょうか?

野口:皆さんが知っている「私鉄沿線」「甘い生活」は歌いたいと思っています。あとは内緒(笑)。



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── 野口さんは「甘い生活」を始め、日本を代表するメロディメーカー・筒美京平さんから、108曲も楽曲提供してもらっている稀有な存在です。「私鉄沿線」にいたっては、筒美さんはアレンジのみという珍しい曲です。

野口:108曲以外にも実はまだ表に出ていない曲もあるんです。京平先生はそのキャリアの最初の頃は、作曲だけなくアレンジも手がけていて、最高で最強のストリングスアレンジを書ける方です。「私鉄沿線」のようには京平先生がアレンジだけで参加しているというのは、僕の曲だけだと思います。当時「僕がアレンジした中であれが一番うまくいったんだよね」っておっしゃっていました。今回はフルオーケストラでどんなアレンジになるのか、僕も楽しみです。



コンサートタイトル【KEEP ON DREAMING】に込めた想い

── 他にはどんな曲を披露してくれるのでしょうか?内緒だとは思いますが、そこをなんとか…。

野口:特別ですよ(笑)。僕が日本版初演に出演したミュージカル『レ・ミゼラブル』の曲をたっぷりとお届けしたいと思っています。 最初に「On My Own」をやるか「夢やぶれて」をやるか悩みました。それは「On My Own」を歌う自分は想像できたけど、ファンテーヌ、女性が歌う「夢やぶれて」を歌っている自分の姿が想像できなかった。 だからあえて想像できないほうをせっかくの機会なので挑戦してみようと思いました。息が続くか心配ですけど…(笑)。



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── 野口さんは『レ・ミゼラブル』の日本版初演に、マリウス役で出演しましたが、やはり忘れられない時間と経験になっていますか?

野口:あの作品と、何よりも演出家のジョン・ケアードとの出会いが本当に大きかった。色々なことを教えてもらって、当時自信を失いかけていた僕と、一方でちょっと自信過剰になっていたバランスが悪い僕がいて、それを変えてくれたのが彼でした。 岩崎宏美ちゃんとのコンサートでは『レ・ミゼラブル』ソングを披露しているのですが、それが僕の糧になっていますが、そのコンサートにジョン・ケアード夫妻が観に来てくれて、感激しました。

── 昨年10月には佐藤隆紀(LE VELVETS)のオーケストラコンサートのステージで、初代マリウス役を演じた野口さんと、『レ・ミゼラブル』の現ジャン・バルジャン役の佐藤さんとのコラボが実現し、話題になりました。

野口:そうなんです、去年佐藤さんのコンサートにゲストで呼んでいただいて、39年前苦しみ抜いた「カフェ・ソング」を歌わせていただいて感無量でした。 その思いのまま、現在のジャン・バルジャン役を演じる佐藤さんと、初代マリウス役の僕が、時空を超えて「彼を帰して」を一緒に歌わせていただきました。 ジャン・バルジャン=佐藤君を愛おしみながら、途中一音半転調して「彼を帰して」を歌えて、本当に幸せで、涙が出るほど愛おしい時間でした。 今回のコンサートでも『レ・ミゼラブル』の曲達を大切に歌い、みなさんに届けたいと思っています。 他にも僕が好きな映画音楽や、洋楽のカバーなど、とにかく野口五郎というシンガー、ギタリストを形成している様々な音楽を聴いていただきたいと思い、セットリストを作りました。もちろんトークも楽しみにしてください(笑)。

── 今回は愛娘の文音さんもピアノで参加しています。

野口:共演した最初の頃は心配でしたけど、今はもう一人のピアニストとしか見ていません。彼女はクラシックのほかにもジャズ、ポップス様々な音楽に興味を持っているので、今回のコンサートはとても勉強になると思うし、刺激を受けるはずです。

── 今回のコンサートのタイトル【KEEP ON DREAMING】に込めた想いを教えてください。

野口:シンプルなタイトルにしたいと思いました。野口五郎としての夢ってなんだろうなって考えた時、やっぱり歌が全てで、歌が僕の人生の課題なんです。 その歌を今回は生で鳴る音、デジタルでは感じることができない“豊かな音”に乗せて歌って、みなさんに“何か”を感じていただきたいんです。 オーケストラの皆さんの思いや感情、そのエネルギーも感じ、背負いながらみなさんに歌を届けたい。

── 野口五郎という表現者の生き様を感じることができるコンサートになりそうですね。

野口:僕がこれまで色々なことをやってきたのは、常にその先の自分が見たいという好奇心が強いからです。 一か所に止まって横に広がっていくのではなく、常にその先を見たいんです。 今回もこのコンサートを終えた先には何があるのか、それが楽しみで仕方ないですが、55周年を迎えて、個人的には最終章のスタートとして、今の僕の歌を是非聴いていただきたいと思っています。



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