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岩田華怜×河森正治が語る、AKB0048対談
岩田華怜×河森正治が語る、AKB0048対談!
2013年1月よりオンエアがスタートしたオリジナルTVアニメ『AKB0048』第2期 “next stage”。本家ともリンクする重厚なドラマ性や、細部までこだわり抜いたステージシーンなどなど、リアルAKB48ファンなら必見の同作について。『マクロス』シリーズや『創聖のアクエリオン』で知られる総監督の河森正治と、主要キャラ 本宮凪沙のCVを担当するAKB48メンバー 岩田華怜のスペシャル対談だ。
まだ誰も観てくれなかった時代からの成長を重ねた
▲テレビアニメ「AKB0048」next stage PV第一弾 / AKB48[公式]
--アニメ『AKB0048』第1期では岩田華怜さんらが演じる研究生を題材に、黎明期のAKB48、まだアイドルが不遇だった頃の彼女たちの軌跡を描いているように思えました。
河森正治:そうですね。自分はどちらかと言うと、完成された物よりも、何かが生まれたり、成長していくプロセスが好きなんですよね。
--AKB48と言えばサプライズや衝撃的なドラマ性も注目されていますよね。それをアニメで表現していくのは難しい挑戦だとも感じたのですが。
河森正治:その辺が凄く検討を重ねた所ですね。史実を基にした作品は、幕末ものでも戦国ものでも、題材が現実に存在した時間から離れているからこそ客観的に見られる部分がありますよね。でも、AKB48は様々なメディアでプライベートがどんどん公開されるし、どんな時でもドキュメンタリーカメラが入ってるしで(笑)。
そうなってくると、普通に活動を描いたアニメをわざわざ観なくても、ドキュメンタリーやGoogle+を観たり、握手会に参加すればいい。では、どうエッセンスを抽出したら……って考えていた時に、“襲名制”(※1)を思いついたんです。
ただ、AKB48の誕生から成長までをゼロから描くのは、今の時代のテンポ感では難しい。かといって成功して大きくなったグループからスタートするのも違う。そこで襲名メンバーと、そのポジションを目指す研究生という形にして、研究生にはAKB48のスタート時、まだ誰も観てくれていなかった時代からの成長を重ねた感じですね。
岩田華怜:アニメには細かい部分にも実際のAKB48とシンクロする要素がたくさんあるんですよ! 例えばテレビ番組の控え室で、先輩たちに椅子を譲って研究生は椅子に座らず待っていたりだとか(笑)。本当にみんながむしゃらに何事も諦めずに必死でやって、それでも悩み、もがき、みたいな所が自分の研究生時代と本当に重なります。もちろん今もその頃に負けないくらい何事にも頑張っていますけれど(笑)
特にAKB0048の1期が放送されている頃は私も研究生だったので、凪沙(※2)と一心同体でしたし友だちのような、一番信頼できる同期みたいに思っていました(笑)。「分かるよ~!」って毎回泣いてました。それくらい現実と重なる部分がありますし、感情を入れやすいですね。
リアルAKB48だって言えるくらい毎日が戦場
--監督は『AKB0048』に臨む上で、取材もかなり綿密に行ったそうですね。
河森正治:シリーズ構成や脚本の岡田麿里さんや、共同監督の平池芳正さんと一緒になって、秋葉原の劇場はもちろん、選抜総選挙やじゃんけん大会、握手会だったりを取材させて頂いて。 前もって話は色々聞いていたんですけど、その裏を垣間見せて頂くと……、本当に大変ですよね(笑)。10代半ばくらいでここまで過酷な想いというか、体力的にも精神的にも大変に感じるのは尋常じゃないよね?
岩田華怜:『AKB0048』の戦闘シーンを観て「アイドルはこんなことしないでしょ!」って思うかもしれないですけど、あれは逆にリアルAKB48だって言えるくらい、毎日が戦場なんですよ。元々想像していたアイドルは、かわいい衣装を着て歌って、楽しくお菓子食べて、みたいな……。
--そのイメージでAKB48に入った訳ですよね。
岩田華怜:でも、実際にやってみたら想像とは違う部分が大きくて。楽しく歌って踊るのはもちろんなんですけど、本当にAKB48って体育会系な部分もあって……、AKB48の総監督を見て頂ければ分かると思うんですけれど(笑)。
--あの御方ですね、分かります(笑)。
岩田華怜:本当に『AKB0048』の戦闘訓練みたいな感じで、それでもみんな楽しんでやってるんです。AKB48の日常の激しい部分が、戦闘シーンで表現されているんですよね。
河森正治:劇場や握手会に行けば会えるし、ドキュメンタリーで裏側まで見えている。だったらプラスアルファをしないと現実の方が面白くなっちゃうよなって所で、マクロスシリーズ(※3)で培った戦闘と歌を絡めて描いた方がショーアップできると思ったんですよ。これは信じてもらえないかもしれないけど、裏側は本当にそれくらい大変なんですよ。よくスタッフと言っていたのが、“現代日本で一番戦場に近い女の子たちだよね”って。
--昨年公開された映画『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』も、戦場映画だと評されていますしね。
岩田華怜:ホントですよね!
河森正治:自分も学生時代から仕事をしていて、寝ないだけなら勝負できるくらいだけど顔出ししないしなァ~……(笑)。また、驚いたのが、普段の姿からはそれだけハードな現場を潜り抜けてきたように見えないんですよね。一つ突き抜けちゃってる感じがあって、一線を越えないと重圧で潰れてしまうと思う。
もちろん、一人になった時に落ち込んだりはあるんだろうけど、メンバーが集まっている時はそんなハードさを微塵も感じさせないようなテンションがある。これは何なんだろうな……っていうのは今も作りながら探っていますね。
アニメ「AKB0048」“next stage”放送中!
tvk 毎週土曜 25:00~、TOKYO MX 毎週土曜 25:30~
チバテレ、TVQ九州放送、テレビ埼玉、サンテレビ、とちぎテレビ、KBS京都、広島テレビ、福島テレビ、TBC東北放送、三重テレビ、BS11、HTB北海道テレビ、群馬テレビにて放送中!
放送時間など詳細はこちら >>
関連リンク
Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
©サテライトAKB0048製作委員会
総選挙は日本の新しい秘境?
--ただ、やっぱりメンバーはライバルでもある訳で、『AKB0048』でも1期にはたかみな争奪戦(※4)がありましたし、2期には総選挙が控えています。アニメの視聴者層を鑑みた時に、そのドラマ性をどこまで見せるべきなのかという線引きは難しいのでは?
河森正治:それがもの凄くセンシティブで、企画がスタートして1期2期と構成している時から、総選挙をやるべきなのかはずーっと論議していましたね。やったとしても本物に適わないんじゃないか。これは実際に武道館に行ってみて感じたことですけど、本当に空気が歪むんですよ(笑)。あの異様さは他で経験したことがないです。
例えばスポーツ競技だったら、その場で結果が出るから応援でお互いのテンションが変わっていったりもしますよね。でも、総選挙は既に結果が出ている訳じゃないですか!? 発表だけなんですよ!(笑) そういう状況であの異様な緊張感が起きるっていう事態が考えられないです。
もちろん、総選挙で順位を付けることに問題が無い訳ではないと思います。追い詰められるプレッシャーはキツイし、個々の全てを評価している訳ではなくて、ある時期での人気の瞬間を捉えている。他に凄い実力があっても順位に反映されないことがあるとか、実際にメンバーたちの姿を見ていると、順位を公開されてしまう故に、陰にこもらずにすんで、逆に仲間意識が出るのかなって。
ただ反面、一時期学校とかで順位を付けないために、みんなが手を繋いで並んでゴールインするなんて話もありましたけど、それと対極にある感じがしますね。
この作品を作っているとグループや仲間って何なのか、いつも考えさせられますね。ハードな状況を超えた時のキラキラ感っていうギャップには、凄く可能性を感じています。今の時代に足りないものがあって、それ故に多くの人に伝わっているんじゃないかなって思いますね。
--だから『AKB0048』もビジュアルはかわいらしいし歌にダンスにと華やかですが、ストーリーは重厚ですし、いわゆるアニメと捉えて観るとびっくりします。
河森正治:観れば観るほど想像と違う(笑)。総選挙の回とかも、スタッフが全力をあげてくれて、本当にやってよかったと思える仕上がりになっていて、ちょっと大げさですが、アニメの歴史に残るような回になれたんじゃないかって。NO NAME(※5)の華怜たちはもちろん、襲名メンバーを演じてくださっている名うての声優陣の芝居が素晴らしいんですよ!
名前が挙がってステージに上がる子もそうだし、それを下から見ている子もそう。作っていてもドキドキするし、取材してきた甲斐がありました。周囲からは“ここで終わっていいんじゃないか?”とか言われるんですけど、まだ2期は半分も終わっていないというね(笑)。
岩田華怜:リアル総選挙には、嬉し涙もあるし悔し涙もありますよね。だけどそれ以上に、それを超えた何かがあって、私は名前を呼ばれたことも順位を頂いたこともないから分からないかもしれないけど、見ているだけでも伝わってくるものがあって。会場から溢れ出す雰囲気と抑えようのない感情がダイレクトに伝わってきて、本当に独特ですよね。
河森正治:感情にまるで圧力があって、目に見えるような感じ。あんなのは体験したことがないですよね。僕はアマゾンとかジャングルとか、狼がいる所とか世界の色んな所を旅している方ではあるんだけど、そういう秘境と同じくらいの原初的なパワーがある(笑)。
--ある意味、日本の新しい秘境だと。
河森正治:そうそう(笑)。現代というよりは古代に芸能が誕生した頃、芸能は神話的な力を借りるみたいに言われていた時代に持っていたパワーの一端を垣間見るような……。アイドルの直訳である偶像と真実みたいなものを、襲名と本名という形で重ね合わせてみたりしています。とにかく色々と渦巻いていて、それを単純に面白いと言っていいのか分からないんですけど、描き甲斐は凄くありますよね。
岩田華怜:去年、初めてリアル総選挙に参加した時、恥ずかしいんですけど正直「私は呼ばれないだろうな」って気持ちがあって。「今日は先輩たちの背中を見て学んで帰ろう」って思っていたんです。でも、同期が二人ランクインしたのを見て、「何で私は諦めてたんだろう……」、「“無駄な期待はしちゃダメだ”って何で思っちゃったんだろう……」って。
恥ずかしくてもかっこ悪くても、最後まで諦めないでやり続けたら、結果が一緒でも気持ちが違ったんじゃないかなって。名前が呼ばれなかったことよりも、自分の気持ちが負けてたことがショックだったので、『AKB0048』で研究生の子が「諦めちゃって、私、恥ずかしいな」って言ってたのを観た時は本当に共感できました! 重なる部分が本当にあるんですよ!
河森正治:こうやって聞いていても分かるんですけど、華怜はこれで14歳ですからね。うちの会社の若い男どもに聞かせてやりたい!(笑) 普段の姿は小学生みたいにキャッキャやってるのに……っていうギャップは、ちょっとイイですよね。
--また、先ほどNO NAMEのお話も出ましたが、今回ではオープニング「主なきその声」、エンディング「この涙を君に捧ぐ」と2曲の新曲が起用されています。
岩田華怜:1期のオープニング「希望について」はかっこいい系でゾクゾクくる神曲だったんですけど、今回の「主なきその声」はアニメ感がてんこ盛りで大好きです。あと、これまではずっと私の声で歌ってきたんですけど、今回はちょっと凪沙寄りの声で歌ってみようかなって思ってました。
……でもですね! これは1期の時から思っているんですけど、自分が演じさせて頂いているキャラクターが歌っている曲って凄くないですか!? 私はアニメが大好きなので、それだけでも本当に嬉しくて! 今回のは前回の2曲とは違った世界観が生まれてきたんじゃないかなって思いました。
アニメ「AKB0048」“next stage”放送中!
tvk 毎週土曜 25:00~、TOKYO MX 毎週土曜 25:30~
チバテレ、TVQ九州放送、テレビ埼玉、サンテレビ、とちぎテレビ、KBS京都、広島テレビ、福島テレビ、TBC東北放送、三重テレビ、BS11、HTB北海道テレビ、群馬テレビにて放送中!
放送時間など詳細はこちら >>
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Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
©サテライトAKB0048製作委員会
アニメで一人一人の個性をどう表現できるか
--また、例えばライブシーンで全員が同じダンスをしている時でも、9人それぞれにしっかり特徴があって、微妙に違う動きをしていますよね?
河森正治:これは実際に劇場を観に行った時に分かったんですけど、本当に一人一人の個性が出るんですよね。しかもその時の体調、ノリとかで「アレ、前回観た時より振りが大きくなってるぞ!?」とかね。華怜はドーム公演でも目立つんですよ、振りが大きいから(笑)。
これは良し悪しの話ではないんですけど、昔ロシアの有名なバレエ団が来日した時に、余りにも正確に合いすぎていて何かつまらなかった(笑)。自分はでっこみひっこみがあってもいいから、個性が見える方が好きなんです。それは作画班もデジタル班も凄く気を配っている所ですよね。当然、振り付けの時も個性の違いを出して欲しいって言ってますし。
岩田華怜:あれって実際に踊っているんですよね?
河森正治:そうです。その上でさらにアニメーターがニュアンスを描き足したり、デジタルも細かい表情や演技を付け足してるんだよね。
岩田華怜:劇場公演曲の「初日」が『AKB0048』でも使われているんですけど、イントロのダンスにパッと起き上がる振りがあるんです。その時に、よく見るとキメでちょっとよろけちゃってるメンバーがいるんですけれど、実際に私も公演でよろけることがあるんですよ!(笑)
--そういう細部までこだわり抜けるのは、AKB48が題材というビッグプロジェクトならではですよね。
河森正治:それは本当にありますねぇ。アニメーションで一人一人の個性をどう表現できるかっていうのは、ずーっと問い続けていますし、演出陣にも作画メンバーにも「とにかく棒立ちさせないでくれ。どんな時でも一人一人の姿勢は変えて欲しい」って言ってるんです。そういう所をとことんやってみたいと思いますよね。
総選挙の回はリアルタイムで観て欲しい
--そしてストーリーは今後も、センターノヴァの復活(※6)や襲名問題など見所は満載です。
岩田華怜:1期の1話から観て頂いている方なら分かると思うんですけど、2期はイベントが圧倒的に多くなってきているので面白いと思います。AKB48ファンとしてこのアニメを観て下さっている方なら、「確かにこんな感じ!」って分かってもらえると思います。そしてAKB48はよく知らないでアニメを観て下さっている方にも興味を持って頂けるんじゃないかってお話になっているので、これからの見所は……どこまで言っていいんですか!?
河森正治:“誰が”とかを言わなければだいじょうぶだよ(笑)。
岩田華怜:意外なあの人が……とか(笑)。絶対に観ていて飽きないと思いますし、1話ずつ全部面白いです! 今からでも絶対間に合うと思うので、是非観て欲しいです! 涙が出てくるよ! 本当に!!!!(笑) こんな素敵なアニメに携らせて頂けたことに感謝しながら毎回やっているので、私たちの成長と一緒に楽しんでもらいたいと思います。
河森正治:1期は、普通の女の子が憧れや夢を持って、色んな試練を潜り抜けながら研究生としてステージに立って認められる。AKB0048メンバーになるまでを描いたので、なるべく子どもの視点、彼女たちの年齢から見た世界っていう作り方をしていたんですね。
一方、デビューして活動して、特別な力を持ってしまった。それ故の責任はあるし、でもオフになれば普通の女の子。大人の階段を半分登った……っていうのは14話の階段のシーンで象徴していたんですけれども、芸能禁止だったりセンターノヴァだったりファンとの交流だったりに対する目線が変わり始めた女の子たちの前には、どんな景色が広がるのか。それが2期なんです。
普通だったら後半に持ってくるであろう総選挙を16~17話でやってしまっても、後半幾らでもネタがある(笑)。ただ、本当に総選挙の回はリアルタイムで観て欲しいなって思いますね。結果が分からない緊張感を同時に体験して欲しい。
今の時代って、情報が多くなっているせいで予定調和が求められてしまっているというのかな。次に何が起きるか分かっていないと心配とか、安心できないと観ないとか。そういう人が増えてしまっているからこそのサプライズ。何が起きるか分からないけど、とにかく何とかしていくっていうチャレンジ精神がある子は、現代の日本では絶滅しかけていると思っていたら、こんなにもいた訳ですよ(笑)。
--200人以上いたと。
河森正治:そうそう。歌あり日常のかわいらしさありメカ性もあり緊張感のあるドラマもあり……。言ってしまえば自分が30年以上も携ってきた、世界からはジャパニメーションと言われるエッセンスを全部入れた作品なので、“ながら観”をしてると追いつけないんですよね(笑)。
それと、できれば大画面大音量で楽しんで欲しいですね。ジャンル分け不能みたいな作品を目指してスタッフ一同ボロボロになりながら作ってますので(笑)、期待して欲しいです。
アニメ「AKB0048」“next stage”放送中!
tvk 毎週土曜 25:00~、TOKYO MX 毎週土曜 25:30~
チバテレ、TVQ九州放送、テレビ埼玉、サンテレビ、とちぎテレビ、KBS京都、広島テレビ、福島テレビ、TBC東北放送、三重テレビ、BS11、HTB北海道テレビ、群馬テレビにて放送中!
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Interviewer:杉岡祐樹|Photo:佐藤恵
©サテライトAKB0048製作委員会
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