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<インタビュー>運が味方をしてくれた――SNSきっかけに活動のフィールドを拡げるれん、メジャーデビュー曲「淡色の幸せ」で踏み出す新たな一歩

Interview & Text:森朋之
シンガー・ソングライターのれんが、配信シングル「淡色の幸せ」でメジャーデビューを果たす。
2003年生まれのれんが、本格的に音楽活動をスタートさせたのはコロナ禍の2020年。豊かな感情をたたえるれんの歌は瞬く間に拡散され、大きな注目を集めた。2021年には初のオリジナル曲「嫌いになれない」を発表。その後もリリースを重ね、「最低」「空っぽ」などがバイラルヒットを記録した。ライブにも積極的に取り組み、この春には杭州、上海、ソウル、台北で公演を行うなど、活動のフィールドを拡大し続けている。
メジャーデビュー曲「淡色の幸せ」は、ドラマ『ソロ活女子のススメ5』オープニングテーマ。カラフルなバンドサウンド、心地よく広がっていくメロディ、そして、〈色褪せてもいい あなたはあなたのままで/生きて欲しい〉というフレーズが響き合うこの曲は、ソングライターとしてのれんの魅力がしっかりと凝縮されている。これまでのキャリアと「淡色の幸せ」の制作、今後のビジョンなどについて、れん自身の言葉で語ってもらった。
音楽活動をはじめたきっかけ
――れんさんが音楽活動をはじめたきっかけは?
れん:歌はずっと好きだったんですけど、中3くらいのときに友達に「(SNSに)歌をあげてみれば?」と言われたのがきっかけですね。彼に言われるがままに、TikTokに歌唱動画をあげて。親戚の結婚式で歌ったONE OK ROCKのカバーをアップしたら、反応がめちゃくちゃあったんですよ。その後1か月くらいでフォロワーが6万人くらいになって、びっくりしました。
――その頃はいろんなジャンルの曲をカバーしてたんですよね?
れん:そうですね。ボカロ、洋楽、邦ロックなどジャンルレスにカバーしていました。(リスナーとしても)わりと幅広く聴いていると思います。
――そして2021年に初のオリジナル曲「嫌いになれない」を発表。ちょうどコロナの時期ですね。
れん:そうです。ずっとサッカーをやってたんですけど、高2のときにコロナで自粛期間になってしまって。それまで部活と学校に費やしてきた時間をすべて音楽に使えるようになったんですよね。もともとやりたかったアコギを弾き始めて、曲も書き始めて。「嫌いになれない」は自分の好きなコードを弾きながら、メロディを作るところから始めました。歌詞は、先輩の失恋のことを書いてるんですよ。電話で話を聞いて、受け答えしながらメモさせてもらって。手探り状態で作った曲なんですけど、今聴いても「いいな」と思うし、僕にとってもすごく大切な曲ですね。
「嫌いになれない」MV
――その後もリリースを続け、「最低」「空っぽ」などがバイラルヒット。れんさんは大学に在籍中ですが、高校時代から「音楽でやっていこう、プロになろう」という気持ちはあったんですか?
れん:いえ、なかったですね。僕は本当に運が良くて。もともと“好き”というだけでやっていたんですけど、曲を聴いてくれるリスナーの方がたくさん増えて、いつの間にかここまで来ていたという感じだし、それが現在進行形で続いているんです。待ってくれてる人がいるのが、いちばん制作意欲になるというか。もちろん今は「音楽しかない」と思ってますけど、好きだからやってるし、作りたいものを作ってるのも変わらないです。
――メジャーデビューについては?
れん:それも同じというか、どうしてもメジャーデビューしたいと思っていたわけではなくて。レーベル(トイズファクトリー)の松崎崇さんが僕の曲を自分のプレイリストに入れてくれてたんですよね。担当しているアーティストでも何でもないし、会ったこともないのに、曲だけで評価してくれてるんだなってずっと気になっていて。あと、松崎さんが担当しているりりあ。とは以前から知り合いで、いろいろ話を聞いて「会ってみたい」と思って。お会いしてみるとすごく相性がいいなと思ったし、何よりも僕の音楽を愛してくれている人と一緒にやりたいじゃないですか。
「最低」MV
――なるほど。ちなみにりりあ。さんとつながったきっかけは?
れん:TikTokです。高校に入ったときにはもう知り合ってたから、けっこう長いですね。
――アーティスト同士が直でつながる時代ですからね。
れん:そうですね。ONE OK ROCKのTakaさんとも高校のときにお会いできたんですよ。いちばん会いたい人にいきなり会えてしまって、「もう夢がなくなった」と思いました(笑)。オーラがすごすぎて震えましたけど、すごく優しい人で、いろんな話をしてもらって。神はサイコロを振らないの柳田周作さんともごはんに行かせてもらったり、音田雅則くんとはすごく仲がいいですね。一緒にゲームやってます(笑)。

――では、メジャーデビュー曲「淡色の幸せ」について聞かせてください。ドラマ『ソロ活女子のススメ5』オープニング・テーマですが、制作中はどんなところに焦点を当てていましたか?
れん:ドラマの主人公の五月女恵さんが「毎日自分に起きることをちょっとでも楽しめたり、味わえたりすれば十分だ」と話すシーンが印象的で。その言葉から派生させて、「人に自慢できるような夢や生きがいがなくても、生きたいように生きていってほしい」というメッセージを込めて作った曲ですね。僕自身もそんなに大それた夢や生きがいは持っていないし、自分が日々楽しめていればそれでいいというタイプで。五月女さんの言葉は「本当にその通りだな」と思ったし、歌詞もけっこうスラスラ書けました。
――れんさん、夢も希望もやりがいもめちゃくちゃありそうですけどね。好きな音楽をやって、それがたくさんの人に求められて。
れん:こう言うとすごいスカしたヤツみたいですけど、さっきも言ったように僕は音楽でプロになろうとは思ってなかったし、絶対にメジャーデビューしたいと思っていたわけでもなくて。人との巡り合わせとタイミング、運が味方をしてくれたという感じなんですよ。サッカーをやってるときもそうだったんですけど、音楽もただ好きだからやっているし、その他のことは気にならないというか。あとはいいなと思う人、好きな人と一緒にやれたら最高だなって。

リリース情報
公演情報
【れん ONEMAN LIVE TOUR 2025 -Molt-】
2025年6月14日(土)広島・Live space Reed
2025年6月15日(日)福岡・BEAT STATION
2025年6月21日(土)名古屋・BOTTOM LINE
2025年6月28日(土)石川・GOLD CREEK
2025年7月4日(金)宮城・darwin
2025年7月6日(日)北海道・PLANT
2025年7月11日(金)東京・LIQUID ROOM
2025年7月12日(土)大阪・BIG CAT
関連リンク
作曲した段階で、やりたいことの根本はそこにある

――もしプロのサッカー選手になっていたとしたら、お金よりも環境を重視してた?
れん :絶対にそうですね。いい環境でやってたら、自ずとお金もついてくると思うし。もちろんサッカーの場合は能力も大事ですけどね(笑)。
――確かに(笑)。「淡色の幸せ」に話を戻すと、聴き手を肯定するようなフレーズもちりばめられていて。
れん:特に意識していたわけではないんですけど、自然と入ってきましたね。全肯定というわけでもないんですけど、前向きになれるような曲にしたいというのは最初から思っていたので。あと、ドラマでは1番だけが流れるので、2番では聴いた人が驚くようなフレーズも入れたくて。メロディもすごくスムーズで、たぶん1日か2日でできたんじゃないかな。といっても1日に2時間くらいしかやらないんですけど。
――1日2時間って決めてるんですか?
れん:決めてるわけじゃないですけど、試行錯誤するのは2時間くらいですね。それ以上やってるといつの間にか別の曲を作り始めてしまったり、集中できなくなることが多いので。「淡色の幸せ」はそんなことなくて、けっこうすぐに出てきましたね。
――アレンジは竹縄航太さん(ex. HOWL BE QUIET)が担当。まさに“淡い色彩“を思わせるサウンドだなと感じましたが、れんさんから何か要望は出したんでしょうか?
れん:終わり方とか、少し意見を出させてもらいましたけど、最初の段階からすごくよかったんですよ。明るい雰囲気のなかにも影があるというか、開かれすぎてないアレンジがいいなと思っていたんですけど、まさにその通りで。アレンジャーさんにお任せすることで、曲がどう進化するか?もめちゃくちゃ楽しみにしているんです。それが楽しくて曲を作ってるところもあるかも。
――曲を作っていて、「こういうサウンドがいい」と思うこともありますよね?
れん:あるんですけど、それは僕の主観でしかないので。アレンジャーさんに弾き語りのラフなデモを聴いてもらって、そこから浮かんでくる音を形にしてもらったほうが良いものができると思います。作曲した段階で、僕がやりたいことの根本はそこにあるので、あとは「どんな衣装を着させてもらえるのかな?」って。

――歌のレコーディングについてはどうですか?
れん:今回初めてのスタジオだったんですよ。ちょっと慣れないところもあって、もう少し準備しておけばよかったなと思ったんですけど、それでもいいテイクが録れたと思います。竹縄さんがボーカル・ディレクションをやってくれて。僕の歌い方を尊重してくれたし、2番のBメロの早口になることころは「きれいにハメたほうが気持ちいいね」とアドバイスをくれたり。他の曲でも、アレンジャーの方にディレクションしてもらうことが多いんです。ある程度自分の歌い方は確立できてるんですけど、すべて自分の思った通りに歌うとエゴになってしまうし、サウンドを作ってくれた人に入ってもらうほうがいいなと。
――作詞・作曲には自分で責任を持って、アレンジや歌録りは人の意見を取り入れる。ハッキリしてますね。
れん:そうですね(笑)。制作のときは「どんなアレンジャーの人にお願いしたらいいだろう」とすごく考えるし、上がってきたアレンジが「ちょっと違うかも」と思ってリリースを見送ったこともあるんですよ。曲にはめちゃくちゃこだわってます。

――ライブについても聞かせてください。初ライブはいつですか?
れん:2022年3月ですね。会場はWWW Xだったんですけど、アコギとピアノの弾き語りだったんですよ。それって上手い人がやる形式というか、初ライブとしてはハードルが高すぎて……本当に大変でした(笑)。その後しばらく「ライブでアコギ弾きたくない」ってなっちゃったんですよ。最近はバンドと一緒にやることが増えて、「簡単なコードだったら弾いたほうが楽しいな」と思えるようになってきました。ライブ自体も回を重ねるごとに楽しくなってますね。
――この春は上海、杭州、ソウル、台北でもライブがあって。海外ライブ、どうでした?
れん:アンビリーバブルです(笑)。初めての海外ライブが杭州だったんですけど、オーディエンスの皆さんがすごく大きい声で歌ってくれるんですよ。始まる前から“れん”コールが起きてたし、すごくいい思い出になりました。

――そして6月から7月にかけて【れん ONEMAN LIVE TOUR 2025 -Molt-】が開催されます。メジャーデビューして最初のツアーですが、どんなモチベーションで臨もうと思っていますか?
れん:特にモチベーションはないんですよね。それがなくても楽しいし、やりたいことをやるだけというか。もしかしたらずっとそれでいいかも、と思ってるんですよね。インタビュー的にはおもしろくない答えだと思いますけど(笑)。
――大丈夫です(笑)。曲を書くことについてはどうですか? 曲を通して伝えたいこともあると思うのですが。
れん:歌詞は……大変ですね(笑)。メロディはいくらでも出てくるんですけど、歌詞がなかなか書けないことが多くて。今回の「淡色の幸せ」は“ソロ活女子”というテーマがあったから書きやすかったんですよ。
――れんさん自身、「この葛藤や悲しみを曲にしたい」というタイプでもなさそうですよね。
れん:そうですね。いつもわりとハッピーなテンションだし、そんなに気にしないんですけど、1人で制作しているときはどうしても自分と向き合わないといけなくて。特に作詞しているときは「本当に自分が思っていることって何だろう?」と考えているし、すごく新鮮な時間ですね。

――メジャーデビューをきっかけに、れんさんの存在を知る人もさらに増えると思います。将来的なビジョンも聞いてみたいですが、「こういうアーティストになりたい」というイメージもそんなになかったりします?
れん:あ、でも、武道館はやりたいですね。
――お、いきなりすごく具体的な目標が。
れん:アーティストとして活動するんだから、やっぱり武道館はやってみたくて。この前、「神はサイコロを振らない」さんの武道館公演を見させてもらったんですけど、すごくかっこよかったし……サッカーをやってるときもそうだったんですよ。「あのスタジアムで試合をやりたい」と思っていたし、音楽でもそれは同じかなと。もちろん、根本は”音楽が好きだからやってる”という感じなんですけどね。あとはとにかく聴いてくれる人たちを大事にしたい。ライブをやるのも、「ライブをやってほしいです」と言ってくれる人たちがいるからなので。
――真っ当なスタンスだと思います。音楽以外では、何をやってるときが楽しいですか?
れん : ゲームかな。あとはアニメを観てます。
――どんなアニメが好きなんですか?
れん:ただのオタクだと思われそうですけど、『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』が好きですね。江ノ島に聖地巡礼しちゃうくらいなんで。『俺だけレベルアップな件』もめちゃくちゃおもしろいです。エンディング曲が凛として時雨さんなんですけど、それもすごく良くて。
――アニメソングをやりたいという気持ちも?
れん:それは絶対やりたいです! それが叶ったらめちゃくちゃ満足するだろうな……それが目標ですね。
「淡色の幸せ」MV
リリース情報
公演情報
【れん ONEMAN LIVE TOUR 2025 -Molt-】
2025年6月14日(土)広島・Live space Reed
2025年6月15日(日)福岡・BEAT STATION
2025年6月21日(土)名古屋・BOTTOM LINE
2025年6月28日(土)石川・GOLD CREEK
2025年7月4日(金)宮城・darwin
2025年7月6日(日)北海道・PLANT
2025年7月11日(金)東京・LIQUID ROOM
2025年7月12日(土)大阪・BIG CAT




























