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<コラム>国内外で人気拡大中のロクデナシ その魅力を紐解く



コラム

Text: 森朋之

 音楽プロジェクト・ロクデナシが、自身最大規模となる1stワンマンライブ【「思い出にならないように」】の国内ファイナルを東京・Zepp Sinjukuで迎えた。大阪と東京での公演に続き、Zepp Shinjukuでの追加公演をもって国内公演は一幕を下したのだが、韓国と台湾での公演が4~5月に行われる。そして、早くも8月からは全国3都市を巡る2ndワンマンライブが予定されている。

 ロクデナシのライブの特徴は、その確立されたスタイルにある。ボーカリストの「にんじん」の歌声とバンド演奏、幕に投影される歌詞やイラストが融合し、その美しさが際立つ。日本だけでなく、アジアを中心とした海外リスナーから高い支持を得ているのも、その音楽スタイルが後押ししているのではないだろうか。Spotifyでは、日本に次いでインドネシア、アメリカ、台湾で聞かれており、Spotifyが発表した2024年に海外で最も再生された日本人アーティストの上位50曲に「ただ声一つ」が入った。海外公演も積極的に行い、オンライン/オフラインで現地ファンを魅了しているロクデナシの魅力と躍進ぶりを紹介しよう。


▲【1st Oneman Live「思い出にならないように」】Zepp Shinjuku公演より

 ボーカリストの「にんじん」と気鋭のボカロPをはじめとするコンポーザー陣による音楽プロジェクト、ロクデナシ。2021年に活動をスタートさせ、日本のみならず、アジア各国でも幅広く支持されており、昨年以降、急激に注目度を高めている。その要因は、J-POP~ボーカロイドの良質なエッセンスを抽出した音楽性、繊細な感情をリアルに映し出すリリック、そして何より、聴き手の心に真っ直ぐに届く「にんじん」の歌声だ。

 ロクデナシの名前が広く浸透したきっかけは、2021年12月にリリースされた「ただ声一つ」。「マシュマリー」「ハナタバ」などで知られるボカロP・MIMIが作詞・作曲を担当した、切なさや悲しみを優しく包み込むミディアムチューンだ。

 にんじんの声の魅力が映える「ただ声一つ」は、香港Spotifyバイラルチャート50で最高1位を獲得(23日間連続)。アジア10か国のSpotifyバイラルTOP50にランクインし、ベトナム、シンガポールでも1位を獲得するなど、アジア全域でバイラルヒットを記録した。ミュージック・ビデオの再生回数は1.6億回を超え、今もなお多くのリスナーを魅了し続けている。

 その後も「愛が灯る」(作詞・作曲/MIMI)、「スピカ」(作詞・作曲/ナユタン星人)、「子供騙し」(作詞・作曲/煮ル果実)、「眼差し」(作詞・作曲/カンザキイオリ)などを発表。そして2023年12月に1stアルバム『愛二咲花』をリリースした。ボカロシーンを代表するクリエイターとコラボを重ねることで、にんじんは自らのボーカル表現を豊かに広げてきた。繊細な気持ちの揺れ、不安や葛藤を感じさせながらも、曲を聴き終わった瞬間、聴き手に安心感や前向きな兆しを与えてくれる歌声は、まさに唯一無二だ。


 また、楽曲の世界観を拡張するイラストレーションもロクデナシの特徴。夜空などの情景美にこだわったイラストは、海外ユーザーからオリジナルのアニメコンテンツだと認識されるほどのクオリティで、視覚的な訴求につながっている。

 

 そして、昨年夏からは待望のライブ活動がスタート。初ライブは7月に行われたインドネシアの日本ポップカルチャーフェス【Impactnation Japan Festival 2024】。8~9月には、初のワンマンライブ【ロクデナシ Oneman Live「Vol.0」】を東京・渋谷ストリームホール、Spotify O-EAST(追加公演)で開催し、緻密に構築されたアレンジを高い精度で再現するバンドサウンド、紗幕に映される映像によって楽曲の世界観やストーリーを伝える演出、そして、ライブならではの生々しい鼓動や感情表現をたたえるボーカルによって観客を魅了した。韓国でも公演が行われ、チケットは数秒でソールドアウトに。さらに年末には【COUNTDOWN JAPAN 24/25】に出演。ライブ活動開始からわずか半年で、国内最大級のフェスのステージに立った。

 2024年は音楽的なフィールドも大きく広がった1年だった。最大のポイントは、アニメやドラマとのコラボレーションだ。1stシングルの表題曲「ユリイカ」(作詞・作曲/傘村トータ)は、TVアニメ『終末トレインどこへいく?』のエンディング主題歌。孤独と愛情で揺れる状態をリアルに映し出す歌詞、緊張感と解放感のコントラストが印象的なメロディ、そして、力強く響くサビのボーカリゼーションが一つになったこの曲は、ロクデナシの音楽的な幅を大きく押し広げたと言っていい。


 また、Amazon Originalドラマ『【推しの子】』第二話の主題歌となった「草々不一」(作詞・作曲/カンザキイオリ)は、第二話でフォーカスされたキャラクター・有馬かなにリンクした楽曲。ピアノとストリングスを取り入れたサウンドから放たれるのは、〈傷つくだけの夜が今/あなたの言葉で明け出した〉というフレーズ。主人公・星野アクアとの出会いによって踏み出そうとする有馬かなの心情を見事に結晶化し、“ロクデナシ×『【推しの子】』”の化学反応に大きな注目が集まった。


 

 楽曲制作、ライブの両面で大きな躍進を遂げたロクデナシは、2025年2月にミニアルバム『溜息』をリリース。リード曲「心の奥」は、「ただ声一つ」でタッグを組んだMIMIの作詞・作曲によるバラードナンバー。囁くように紡がれるAメロ、繊細なファルセットを響かせるサビ、〈ねぇ、今日だけ/ねぇ、愛していて欲しくて〉というあまりにも切実なフレーズが溶け合うこの曲は、ロクデナシの音楽世界がさらに深まっていることを明確に表していると思う。


 

 【ロクデナシ 1st Oneman Live「思い出にならないように」】は、4月9日に行われた追加公演(Zepp Shinjuku)を含めてすべてがソールドアウト、4月18日の韓国公演、5月9日の台湾公演もチケットは即完した。会場はどちらも2,000人以上のキャパ。ロクデナシのリスナーは海外の比率が高く、海外でのライブの需要はさらに高まることが予想される。

 10~20代を中心に、国内外の若いリスナーを引きつけているロクデナシ。聴き手の感情を揺さぶるにんじんの歌声は、言語や国境を越え、さらに多くの人々に共有されることになりそうだ。

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