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<インタビュー>miwa、ベストアルバム『miwa』とともに“常に新しいことに挑戦し続けてきた”15年を振り返る「音楽で私の人生が構成されて本当によかった」
Interview:永堀アツオ
Photo:堀内彩香
miwaが、デビュー15周年を記念したベストアルバム『miwa』を3月26日にリリースした。潔いセルフタイトルの通り、大学在学中であった2010年3月3日のデビュー以来駆け抜けてきた15年、さらには高校時代にギターと出会い“miwa”が誕生してからの彼女の歩みが、CD収録上限ギリギリという2時間38分38秒に詰め込まれた濃厚な作品だ。
今回のインタビューでは、15周年を迎えた心境について、当時のライブやアルバム収録曲とともに振り返ってもらいながら訊いている。昨年2024年8月からは生活の拠点をカナダへ移すなど、アーティストとしても人間としてもチャレンジを楽しみ続けるmiwaのマインドを、改めて言葉にしてもらった。
音楽で私の人生が構成されて
本当によかった
――3月3日にデビュー15周年を迎えた心境から聞かせてください。
miwa:アーティストとしては15歳になるので、こんなに長い間歌を歌うことができて、すごく幸せだなと思います。15年前から一緒のバンドメンバーやスタッフさんもいるし、ファンの皆さんもきっといる。でも、この15年の間にも(新しく)出会ったファンの方やメンバー、スタッフの人がいて。どんどん輪が広がっていって、たくさんの人に支えていただいた15年間だったなって、感謝の気持ちでいっぱいです。
――振り返ってみて、ご自身にとってはどんな15年間でしたか。
miwa:いろんな楽曲が生まれて、いろんな場所で歌うことができて。弾き語りライブで47都道府県を回ることもできた。自分の歌を届けるということを15年やり続けられたことは当たり前じゃないと思うし、すごくありがたいですね。デビューしたときは10代で、大学生でしたから、そこから20代は全部音楽に捧げてきたという感じがあって。でも、それが私の人生だなって思うんですね。音楽をやっていなかったら出会えない人ばかりだし、できなかった経験ばかりだった。振り返ってみても、改めて、音楽で私の人生が構成されて本当によかったです。本当にいろんな景色を見ることができたなと感じますね。
――いろんな景色の中で特に印象に残っているのは?
miwa:難しいですね~。自分の活動を年表にすると、重要なターニングポイントや重要なライブがあって。メモリアルな瞬間っていうのはたくさんあったなと思いますね。たとえば、初めての武道館や武道館での弾き語りライブ。後は、【渋谷物語~完~】とか、47都道府県を回った【acoguissimo(アコギッシモ)】とか。
――思い出すのはライブの景色なんですね。
miwa:そうですね。作品に関しては、思い出もありますけど、今もライブで歌っている曲も多いので、あんまり過去のものって感じがしないですね。

――2010年3月3日にデビューをして、初の東京・日本武道館公演【miwa live at 武道館 ~卒業式~】はそれから約3年後となる2013年3月29日の出来事でした。
miwa:大学の卒業と同じタイミングでできて。武道館でのワンマンライブはデビューからの夢だったので、実現できたことが嬉しかったですね。夢がひとつ叶って、さらに大学生活も終わって。シンガー・ソングライターとしてやっていくっていう覚悟が決まった瞬間だったなと思います。
――その年の年末には「ヒカリヘ」で『紅白歌合戦』にも初出場しています。
miwa:初めての『紅白』はすごく緊張しましたけど、家族や親戚とか、自分以上に周りの人が喜んでくれて。みんなに恩返しができるなっていう気持ちでしたね。
ヒカリヘ / miwa
――そして、翌年の3月8日と9日の2日間にわたって、東京・国立代々木競技場 第一体育館でワンマンライブ【miwa spring concert 2014 “渋谷物語~完~”】を開催しました。デビュー記念ライブを行ったshibuya eggmanから始まって、2011年のSHIBUYA-AX、2012年の渋谷公会堂(現:LINE CUBE SHIBUYA)、2013年のNHKホール(紅白歌合戦)を経て、渋谷物語を完結させて。
miwa:デビューから一歩一歩、着実に活動してきた気がしていて。それが、まさに会場の大きさでもわかるようなストーリーになっているんです。弾き語りのライブツアー【acoguissimo】も2011年から始めて、2018年に全47都道府県を巡ったツアーとして完成したんですよ。そういうのが私らしいなという感じがしますね。
――2015年3月には、女性ソロアーティストでは初となる武道館での弾き語り公演【miwa live at 武道館 ~acoguissimo~】もありました。最初の武道館とは違う感慨がありましたか。
miwa:武道館で弾き語りライブをしてみたいっていうのはデビュー前からの夢だったので、高校生の時に思い描いていた夢が叶った瞬間、って感じがしましたね。弾き語りが原点なので、まさに過去の自分というか、自分の原点と今が繋がったなという気がして。より夢が叶った実感が大きかったかなと思いますね。
――さらには神奈川・横浜アリーナでの弾き語りライブやアリーナツアーも行い、俳優として映画やドラマにも出演していますね。
miwa:そうですね。常に新しいことに挑戦し続けてきたなっていう実感はありますね。偶然の出会いによって、挑戦させてもらえたことがたくさんあって。自らが変わろうとしなくても、変わっていくチャンスをたくさんもらったなって思っているんです。だから、飽きずに、情熱を持ち続けてやり続けてこられたんじゃないかなと思います。
――昨年8月にはカナダへの移住も発表されましたが、デビュー以来、常に新たなことに挑戦し続けてきていますよね。変化を恐れない姿勢はどこから来るものなんでしょうか。
miwa:なんなんでしょうね(笑)。今回のベストアルバムに入っている「TODAY」も〈何か違う今日になれば/いいのにな いいのにね〉と歌っていて。高校のときに作ったインディーズ時代の曲なので、きっと当時から毎日、違う今日を望んでいたんだと思います。それは今も変わらないですね。

――本質的には変わらないながらも、音楽的には変わり続けてきた15年間を目一杯まで詰め込んだ2枚組のベストアルバムですが、制作時はどんな作品にしたいと考えていましたか。
miwa:過去にリリースした、シングルコレクション『miwa THE BEST』(2018年7月リリース)とバラードコレクション『miwa ballad collection 〜graduation〜』(2016年1月リリース)とは被らない、その2作にまだ入っていない曲も聴いてもらうというコンセプトでした。リリースが違う時期の曲が入っているので、この曲を聴いていたときに、自分が何歳だったとか、学生だったなあとか、そういう自分の思い出とともにたどれるセットリストになっているんじゃないかなとも思います。『mi』盤はロックチューン、アップテンポの曲が中心になっていって、いつものmiwaのイメージから少し飛び出ているような楽曲も多く収録されていて。『wa』盤のほうは歌詞をじっくり聞いてもらいたい曲たち――それこそ、ご自身の人生を振り返りながら、「このとき何してたかな?」という記憶とともに聴いて、振り返ってもらえたらいいな。一応、“エモーショナル盤”と“チルアウト盤”というくくりで分かれています。
――『mi』盤のほうは、デビューシングル『don’t cry anymore』のカップリングで、miwaさんが高1の時に作った「Wake up, Break Out!」から始まります。
miwa:15周年を記念して開催した1stアルバム『guitarissimo』の再現ライブツアーでも最後の曲としてやっているんですけど、この曲を歌うと、高校1年生のときのことを思い出すんですよね。ギターを始めた頃に作った曲で、もしかしたら最初にギターで作った曲かもしれない。本当にギターを弾き始めた頃、曲を作り始めた頃の気持ちが蘇ってくる一曲だし、私の音楽の原点という感じがしますね。
――「醒めない夢」も原点の曲ですよね。デビュー前に自主制作したインディーズ盤には「君の隣でおやすみ」というタイトルで入っていました。
miwa:そうだそうだ! 忘れてましたね(笑)。
―― 一方で、初収録された「Our Time」のセルフカバーもあります。
miwa:佐久間みなみアナウンサーが歌う楽曲として、『すぽると!』のテーマソングとして書いたんですけど、歌詞は佐久間アナウンサーの取材をもとにしていて。スポーツが主ではあるけど、スポーツだけじゃなくて、いろんな人の背中を押せるようにという意味を込めて書いた、〈私達の〉という意味の「Our Time」だったんですね。同じ時代を生きる全ての人に届くといいなあと願いを込めて作った楽曲だったので、セルフカバーができてよかったなと思っています。
――すごくパワフルなアンセムになっていますよね。
miwa:今の同じ時代を生きる人たちの背中を押せたらいいなという。私自身も自分を鼓舞して、ともに戦うという意味を込めていますね。
――『wa』盤のほうは、2月にリリースされたばかりの最新シングル「リアル」で幕を開けます。
miwa:コロナ禍があったからこその思いですね。リアルに同じ空間にいて、たとえば食事を囲んでいたら、ご飯の温かさや匂いを共有できる。ライブも配信ライブじゃなくて、目の前に聴いてくれる人がいて、お客さんの声が聞こえてきて、熱気も伝わってきて……という中で歌えるようになった。私達の日常が戻ってきて、これが「生きてる」という実感だし、リアルだなという気持ちで書いた楽曲で。だからこそ、今の時間を大事にするという意味で、まさに今聴いてもらいたい楽曲でもありますね。

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今の私が、ライブで歌う歌を聴いてもらいたい
――「Classic StudioLive ver.」とついている4曲も新録ですよね。
miwa:そうですね。ビルボードライブ(【miwa CLASSIC】シリーズ)のアレンジで歌う、今の歌も聴いてもらいたいなと思って、このアルバムのためにスタジオレコーディングしました。
――バイオリン、チェロ、ギター、ピアノの編成で、15年目の“今の声”に焦点を当てています。
miwa:やっぱり、曲に対する理解や自分自身の成長みたいなものを歌に込められるから。ここ4年、毎年やっているビルボードライブ公演は、自分にとってすごく大切にしているライブなんですよ。しかも毎回、そのためのアレンジをしていて。ビルボードに来られない人もたくさんいると思うので、(CDで)聴いてもらえたらいいなと思いましたし、ライブの歌っていうのは、レコーディングで歌うものとはまた別なんですよね。普段のレコーディングとは違う、今の私がライブで歌う歌を聴いてもらいたいなと思って。
――たとえば、「Who I am」の歌声は、2019年に(この曲を)LAで制作した当時とは全然違っていて。
miwa:書いたときの状況と心境は(今と)違うから……あの時にバッサリ切った髪も、今はもう伸びてる。だからこそ、今の私が歌う「Who I am」を聴いてもらいたいと思ったし、毎年(バンドマスター/キーボードの)ejiさんがアレンジしてくれているんですけど、ライブの6公演だけじゃもったいないなって、毎年のように思っていて。念願のスタジオレコーディングができて、ベストアルバムのタイミングで聴いてもらえて嬉しいですね。
――逆に「そばにいたいから」はかなり初期の曲ですよね。デビュー前に自主制作でリリースしたシングルにも収録されていました。
miwa:そうですね。アルペジオで弾いていて、なんか「昔!」って感じ。デビュー前はストロークよりもアルペジオのほうが得意だったから、デビュー前の弾き語りの感じが出ている曲ですね。「あまやどり」も高校3年生の時に録音した音源のままだから、だいぶ高校生のmiwaが存在感を発揮しているかもしれない(笑)。最後の2曲は、ボーナストラックのようになっていて。「TODAY」と「Song for you」は高校生のとき、作った当時の音源をそのまま収録しています。改めて聴くと、やっぱり声が若いですね。でも、ギターとピアノに関してはよくがんばっているなと思います。あとは、(音源を)自分でミックスして偉いな〜っていう気持ちもありますね。今はスマホでデモを録って、スタジオで詰めていくスタイルだから。

――(笑)。2枚組で全37曲、トータルで2時間38分38秒の大ボリューム盤となりましがが、完成して、ご自身ではどんな感想を抱きましたか。
miwa:やっぱり、曲を作った当時の記憶は残っています。そのときの景色とか、どこのスタジオで作ったとか、前の実家で作ったなとか。そういう記憶はずっと色褪せていないんですよね。それが、聴く人にとっても同じだったらいいなと思っていて。この曲を聴いたら、あのときの景色がよみがえるっていう。あのときに住んでいた家、あの時に通っていた学校、あの時に誰と一緒にいて、どんな日々を過ごしていたのか。そういうことが思い出せるアルバムになっていたらいいですね。
――また、今回はジャケット写真を1stアルバムと同じシチュエーションで撮っていますね。
miwa:1stアルバムのジャケ写再現が15年後にできるっていうのが、奇跡みたいなことだなと思いますね。でも、(当時の)スタジオはもうなくなってしまったんですよ。だから、近い見え方のスタジオを探してもらったんですけど、「15年ってそういう年月なんだな」というのを実感して。“自分”は残っていてよかったなと思います。ほんとに、15年(経つ)ってそういうことですよね。


――これからの活動についてはどう考えていますか。
miwa:10周年はコロナ禍の最中だったので、ファンの人に会うことができなかったんです。だから、15周年はファンの人にたくさん会って、感謝の気持ちを直接伝えて、今の成長を直接見てもらえる場をたくさん作っていきたいなと思っています。3月26日のアルバム発売日には路上ライブもやることが決まっているし、久しぶりに地方のラジオやイベントに出るキャンペーンもやろうと思っていて。原点に戻って、いろんな活動を精力的にやっていきたいし、皆さんと直接会える機会を増やしていきたいと思っています。
――アニバーサリーイヤーの先に何か見えているものはありますか。
miwa:今カナダに住んでいるからこそ書けるアルバムを1枚作りたいかなあ。
――10代の頃の曲は目黒川や川沿いの公園、駅前にあったCD屋さんや本屋さんが浮かぶ曲が多かったので、miwaさんが今生活している先でどんな曲が出てくるのかが楽しみです。
miwa:カナダの生活はすごく良くて。やっぱり住みやすいんですよね。街に流れている音楽も違うし、街で聞こえる言語も違うし、生活で見えている町並みも違うし、流れる時間の速度も違う。だから、これまでとは全然違う曲が書けるかもしれないし、それは私自身も楽しみにしています。今、カナダではパラモアが毎日流れていて。カフェに行っても、スーパーに行っても、パラモアの昔の、特定の曲が謎に流れているんですよ。すごくカルチャーショックでしたけど、みんなトレンドとかじゃなくて、それぞれが好きなものを聴いているんですよね。好きなものを聴けばいいっていうマインドになったことで、気持ちが楽になったなとも思いますね。

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miwa
2025/03/26 RELEASE
SRCL-13244/5 ¥ 4,180(税込)
Disc01
- 01.Wake Up, Break Out!
- 02.again×again
- 03.Storyteller
- 04.ATTENTION
- 05.Aye
- 06.LOUD!~憂鬱をぶっとばせ~
- 07.ヒカリヘ
- 08.リブート
- 09.醒めない夢
- 10.いくつになっても
- 11.ありえない!!
- 12.DAITAN!
- 13.Jexxxa
- 14.hys-
- 15.あなたがいないと世界はこんなにつまらない
- 16.Sparrow
- 17.アイヲトウ
- 18.321
- 19.Our Time -miwa ver.-
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