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WEAVER 『Handmade』 インタビュー

WEAVER 『Handmade』 インタビュー

昨年は3人だけで回ったツアーやプログレやジャズをも取り込んだ一夜限りのライブなど、これまでのイメージとは異なる展開を続けてきた。“順調に歩んできた中にもいろんな迷いも生じた”。そう語る彼らが欲したものとは何だったのか。
そして遂に、『Handmade』という音楽マニアにもオススメの素晴らしい1枚を完成。変拍子やテクニカルな技術にも挑戦しながら、ピアノバンドとして大きく進化した3人に今を語ってもらった。

3人の力が上に行かないと、次の一歩が踏み出せない

WEAVER Live House TOUR 2012 DOCUMENT
▲WEAVER Live House TOUR 2012 DOCUMENT

--今年の秋に開催した渋谷WWWでのライブでは、既存曲にジャズやプログレ風のアレンジを加えて、本格的なサウンドを展開しました。これまでのWEAVERのイメージを一新するあのライブは驚きでした。

奥野翔太(b,cho):1日限りだったので特別なライブをしたいって想いがあったんですけど、その前にBillboard-LIVEでやった【MTV Unplugged】で、初めて既存とは違うアレンジに挑戦したんです。僕もアップライト(ベース)を弾いたりとか。そういう経験があったからこそ、色んなことにトライできたのかなって。
良い意味でお客さんを裏切れるライブをできたらと思っているんですけど、いつもはやり慣れた演奏をしている所もあったので、あの日は本当にセッションをしているような気持ちで臨めて刺激的でした。

河邉徹(dr,cho):コンセプトとしては“プレミア感のある”ということで、全曲アレンジした楽曲を演奏すれば、みんなに楽しんでもらえるんじゃないか。それプラス新作『Handmade』に入っている新曲を聴いてもらうという内容で。新しいことをしているって分かりやすいアプローチとかも考えましたね。

--音楽マニアと呼ばれるような人たちにおけるWEAVERのイメージを変えられるライブだったと思いました。

杉本雄治(p,vo):その想いは強くあって、この1年でやってきたことっていうのは、そういう面を表現することだったんです。自分たちも元々は言葉の分からない洋楽の楽器やサウンドに惹かれて音楽を好きになった所があるし、もっともっとライブバンドとして全面に打ち出していきたいなって。

--また、2012年春のツアーでは原点に返るをコンセプトに3人だけでツアーを回り、機材の搬入なども自身で行っていったんですよね?

河邉徹:2011年まではサポートメンバーであったり、舞台監督さんとかもいて、みんなでステージを作り上げている感覚があったんです。でも、それだと人任せにもなりかねないし、もっと前に進んでいくためには核となる3人の力。ここが上に行かないと次の一歩が踏み出せないんじゃないかと思って、3人だけで回ろうと決めました。

自信を持って出せる身分証明のような1枚

--WEAVERは鮮烈のデビューからドラマ主題歌やCMソングでのヒットがあってと、ある意味、順調に進んできました。そうやって盛り上がっていく周囲に対し、足元が覚束ないような不安もあったのでしょうか。

杉本雄治:それが一番大きいです。順調に歩んできた中にもいろんな迷いも生じて、そういう中で改めて自分たちの音楽に向き合ったとき、3人のグルーヴ感を築き上げ切れていない状態でドンドン進んできちゃったんじゃないかなって想いはありました。今、自分たちに一番足りない音楽的な部分を、もっともっと確固たるものにしないといけない。それがきっかけですね。

--確かにニューアルバム『Handmade』は今仰った意識を感じさせつつ、純粋な音楽作品としても素晴らしい1枚になったと思います。

河邉徹:2012年のコンセプトを形にしたのがこのアルバムで、1年間の経験があったからこそできた作品だと思います。

--しかも、いわゆるフルアルバムって実は初めて(※1)だったりするんですよね(笑)。

杉本雄治:嬉しいですねぇ~!(笑) 一番大きいと思っているのは、自分たちで作って一つ一つの音にちゃんと責任を持てる。何処からどうツッコまれても応えられるっていう自信が持てているので、それが今までとは違う点ですね。

奥野翔太:「WEAVERってどんなバンドなの?」って訊かれた時に自信を持って出せる身分証明のような1枚になっていると思います。2012年は色んな選択肢がある中で悩んだことも多かったし、決して楽しいだけの道のりではなかったんですね、色んな壁もあったし。3人だけでやり遂げられるのかっていう不安もあった分、詰め込んだ想いは今までとは比べ物にならないし。そういう意味でも嬉しいですよね。

河邉徹:タイトルは1stアルバム『Tapestry』に繋がるものでありたいと思ったし、今までの経験があった上での初期衝動というか、ピアノバンドとしての音楽を作ろうって意識。そういう意味では1stアルバムっぽいテイストになっているのかもしれないですね。

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自分たちの殻を破っていく勇気がなかったのかも

WEAVER「偽善者の声」
▲WEAVER「偽善者の声」

--2曲目「Shall we dance」を聴いてまず感じたのが、音楽的な面白さを追求しながら、そのコンセプトに逃げないということで。コーラスの妙なども含めてしっかり突き詰められた音楽になっている点が素晴らしいです。

杉本雄治:3人の音だけで収めてしまうのは違うって思っていて、曲が一番良い形でちゃんと伝わる音楽にしたいって気持ちが中心にあるので。それは今までやってきたことが身になっていると思いますね。

--ただ、「Shall we dance」にはプログレっぽく展開していくパートなどもありますよね。

河邉徹:そういうアプローチは音源ではやってこなかったですね。それこそ昨年春のツアーではセッションっぽいことやフュージョンっぽいアプローチをやりましたけど、それが楽曲にも詰め込めて伝わるものになったら面白いんじゃないかって。

杉本雄治:今までは曲作りの中でも心地良さを求めていた、意識していた部分があって。でも、この1年では心地良さを大切にしつつ、部分部分にあるヒリヒリ感、スリル感も大事だなって。

--例えば3曲目「風の船 ~Bug’s ship~」も、今までのイメージを一新する迫力がありながら、歌のメロディは今までと同様に心地良く響いています。

杉本雄治:もう必死です、この前のライブとかも(笑)。今までだったら作る時に「これ、歌いながら弾くの難しいやろな……」とか、何処かにあったりはしたんですよね。

奥野翔太:元々WEAVERっていうのは、歌もちゃんと聴こえてくるけど、3人の楽器が楽しそうに主張しているのが理想なんです。2012年を経て洗練されたものが、「風の船 ~Bug’s ship~」だったり「Reach out」だったりに集約されてると思います。ベーシストとして演奏していて楽しいし、WEAVERのスタイルとして大事なポイントになるんじゃないかなって。

--4曲目「Reach out」は変拍子の楽曲になりますが、これまでのファンにこうした楽曲の面白さを提示したいという想いはありますか?

杉本雄治:それは多いにありますね。ただ変拍子にするだけなら何でもできると思うんですけど、変なことをやっただけで終わらせないように考えながら作っていますね。

河邉徹:これまでもやりたかったけれど、歌を伝えるのを大事にしている部分と上手く両立させられていなかった。自分たちの殻を破っていく勇気がなかったのかもしれないですね、もしかしたら。

良い意味でエゴイスティックな部分が出せた

--アルバムは中盤以降、今までのWEAVERらしい楽曲が続いていきますが、例えば6曲目「アーティスト」などを聴いていても、リズム隊の音が一つ太くなったと感じました。

奥野翔太:ライブハウスツアーであれだけ回ってきた経験が、一番大きいかなって思いますね。2日おきにライブみたいなスケジュールもあったし、リズム隊の2人が先にリハーサルに入って練習したりもしたし。成長できたと思います。
それに今までだったら歌を殺しちゃうんじゃないかとか、音質の面であんまり主張しずぎちゃいけないとか考えちゃう部分もあって。でも、セルフプロデュースということもあって、良い意味でエゴイスティックな部分が出せたのかなって思いますね。

--また、「アーティスト」は歌詞も面白いですよね。“心に金額をつけて売ったら儲かるか”など、これまで河邉さんが書いてきた詞とは明らかに質感が異なります。

河邉徹:「アーティスト」や「偽善者の声」みたいなことって、今までだったら“言わなくていいんじゃないか?”っていうか、そこまで書く勇気もなかったというか。どこかで抑えていた所もあるかもしれないです。でも今回のタイミングなら、すんなりというか偽りなくというか、こういうことを歌っても届くんじゃないかと思って書きました。
もしかしたら「こんな直接的な言葉は、詞的じゃないから良くない」っていう人がいるのかもしれないけど、今回はそういう意見に対しても胸を張れるというか。「僕はこう思っているんです」って戦えるような気がします。

--また、8曲目「ふたりは雪のように」はAメロのベースラインやドラムがシンプルに聴こえますが、気持ち良く聴かせるのが難しいパターンですよね。その上で歌のメロディはしっかり立っているという、ある意味今作を一番象徴している楽曲だと思います。

杉本雄治:今言ってもらったことがズバリなんですけど、今回は音楽的コンセプトを持ちながら作れたのが大きくて。もちろんエンジニアさんに色々アイディアをもらったんですけど、この曲はレニー・クラヴィッツだったりジョン・レノンの「イマジン」だったり、レコーディングならではのサウンドの遊び方ができれば、アルバムとして幅が広がるしいいんじゃないかとか。

奥野翔太:元々はドラムがもっとオーソドックスな8ビートを刻んでいて、サビで広がってストリングスが鳴ってみたいな、今までやってきたWEAVERっぽい楽曲に仕上がるのかなって思ってたんです。
でも、そうなってくると“一皮剥けた自分たちを見せたい”っていうコンセプトの中では違うんじゃないかなって行き詰まった所があって。あえて同じパターンのドラムを叩き続けたりと削ぎ落としていくことで新しいものができるんじゃないかとか。そういう所に自然と取り組めるスタンスに3人がなってて、一皮剥けられた曲かなって思いますね。

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この曲が最後にできたのは、自分の中でも大きい

WEAVER DVD Single 「REPLAY~Medley of Handmade~」2013.1.1 Release!!
▲WEAVER DVD Single 「REPLAY~Medley of Handmade~」2013.1.1 Release!!

--しかも「ふたりは雪のように」みたいなサウンドだと、普通はもう少し変化球的な歌詞の方がマッチしやすいですよね?

河邉徹:そうなんですよ、元々は全然違う詞だったんです。この曲の詞は制作の後半にできたんですけど、アルバム全体のバランスを見た時に「リリースのタイミング的にも、冬のラブソングがあった方が共感してくれる人が増えるんじゃないか」って話になって。今まで季節モノのラブソングって書いたことがなかったので、挑戦してみました。

--そして作品は、11曲目「The sun and clouds」という迫力のミドルバラードで締め括られています。

杉本雄治:一番最後にできた曲なんですけど、色んな試行錯誤や挑戦して作ってきたからこそ、改めて自分たちの中心になるメッセージ性があって、今回挑戦してきた音に対するこだわりも追及できた1曲だと思ってます。
だから「風の船 ~Bug’s ship~」や「Reach out」を作ってなかったら、こういう王道でスケール感のある曲は合わないんじゃないかって不安になってたと思うんです。色んな面を打ち出せて、自信を持って作れた。この曲が最後にできたのは、自分の中でも大きいですね。

--歌詞に関しては、今作の中でも最も普遍性のある言葉で綴られています。

河邉徹:初めてメロディをもらった時に、本人から歌詞のリクエストが今まで以上に……、「そんなに指定するの……?」ってくらいあって(笑)。それだけ思い入れがあるって分かったので、2人で色々と意見を交わしながらできあがった歌詞ですね。

杉本雄治:この曲は特にそうなんですけど、河邉が書く詞はファンタジックな部分もあるし、それとは別にスケール感のある歌詞を書く人だと思ってます。今回はどちらかというと自分の中にある自問自答とかがたくさんあったと思うんですけど、「The sun and clouds」は自己の中で終わって欲しくなかった部分もあって。
過去に「Shine」で表現したスケール感みたいなものを、この曲で思いっきり発揮して欲しいなって。最初はサビで日常的な表現になっていたんですけど、大袈裟に大きくいって欲しいって色々お願いしました。

その可能性に僕たち自身も期待している

--そしてこのアルバム『Handmade』リリースの2週間前には、シングル『REPLAY~Medley of Handmade~』がリリースされました。今回はアルバムがオーソドックスなフルアルバムだったのに対し、シングルが特異な形態です(※2)

杉本雄治:どの曲がリード曲とかは自分たちで選べなくて、どうしようか3人で悩んだんですが「全部聴かせたいなら、全部繋げちゃえば?」って話になって(笑)。参考になったのはスターズ・オン・45っていうオランダのバンドで、ビートルズメドレーだったりをダンスビートに合わせて作っている人たちが80年代にいて、そういう風にしたら面白いんじゃないかって。

河邉徹:これまで一緒にやってきて信頼できる亀田(誠治)さんがミックスしてくれたので、できあがったものを聴いても凄いと思いました! あと、DVDの映像はBillboard-LIVEで撮影したんですけど、普段のミュージックビデオと違ってライブっぽい映像になっていると思います。より映像作品を作る意識で撮影に臨めました。

--そして春からは新たなツアーを控えていますが、アルバム『Handmade』を引っ提げてのツアーとなるだけに、音楽マニアも楽しませられるライブとなりそうですね。

杉本雄治:そういうライブをしたいなって気持ちは溢れていますね。ライブでも自分たちがやってこなかった音楽的なこと、新しいことをやって、今まで来てくれていたお客さんにももっともっと興奮して欲しいし。そういうヒリヒリ感をたくさん感じてもらえるライブにしたいと思います。

河邉徹:2012年に1年間、色んなことに挑戦してきて、今までだったらできなかったこと、やらなかったことに挑んできたので、“Piano Trio Performance”と付けられたツアータイトルに見合うようなライブにしたいと思います。

奥野翔太:これだけの曲数が収録されたアルバムを出すのが初めてなので、選ぶ幅が凄く増えたんです。今まで何回もライブに来てくれた人から「新しいものが見れるんじゃないか」って期待をしてもらっても応えられるものを作り上げられると思う。その可能性に僕たち自身も期待しているし、新しいWEAVERに出会えると思うので、是非とも観に来て欲しいですね。自信はあります。

Music Video

WEAVER「Handmade」

Handmade

2013/01/16 RELEASE
AZCS-1022 ¥ 2,934(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Performance
  2. 02.Shall we dance
  3. 03.風の船 ~Bug’s ship~
  4. 04.Reach out
  5. 05.blue bird
  6. 06.アーティスト
  7. 07.君がいた夏の空
  8. 08.ふたりは雪のように
  9. 09.偽善者の声
  10. 10.Free will
  11. 11.The sun and clouds

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