Special
バルーン企画アルバム『Fall Apart』鼎談 Reol/椎乃味醂が示したもう一つの「レディーレ」
Interview & Text:ヒガキユウカ
「シャルル」「雨とペトラ」「メーベル」など立て続けにヒットソングを生み出し、2010年代を代表するボカロPの一人となったバルーン。ボカロPとしてはv flowerを愛用していた一方で、自らが歌唱したセルフカバー版もより一層の人気を集め、2017年からは須田景凪名義で活動も行っている。そんな彼が2025年4月16日に、企画アルバム『Fall Apart』をリリースする。バルーンとしてリリースした既存楽曲たちを、彼自身がリスペクトするアーティストたちがアレンジカバー。さらにヒトリエを客演に迎えた新曲 「WOLF」を加え、全6曲を収録予定だ。
収録楽曲のひとつ、「レディーレ」は歌唱をReol、アレンジを椎乃味醂が担当した。バルーンの数年来の友人だというReolはもともと、ニコニコ動画で歌い手として頭角を現しカルチャーを代表する存在に。創作に対するバイタリティと唯一無二の歌声を武器にJ-POPシーンへと羽ばたいた後も、「劣等上等」「ULTRA C」などボカロシーンにとって重要な楽曲を提供しており、キャリア上バルーンとは共通点が多い。一方の椎乃味醂は、ボカコレ2020冬に投稿した「じゃあ君の思想が死ねばいい」で評価され、Adoはじめアーティストへの楽曲提供はもちろん、アート作品の出展、自主制作プロジェクト「StudioGnu」の主宰など、音楽表現の拡張に積極的に取り組んでいる。21歳という若さも印象的だが、彼がインタビュー等で明かしている現在の名義が生まれるまでの過程を思えば、クリエイターとして誰よりも高濃度な半生を歩んできたと言えよう。
今回はそんな3人の鼎談が『The VOCALOID Collection(ボカコレ) ~2025 Winter~』の開催に併せて実現。Reol・椎乃による「レディーレ」再解釈の過程や、全員のルーツでもあるニコニコ動画・ボカロカルチャーへの思いについて、今だから話せることも含めて語ってもらった。
自分の曲に「驚異的な中毒性」タグがついたらうれしい
バルーン:まず、Reolも椎乃くんも、今回はマジでありがとうございます。
Reol:いえいえこちらこそ。嬉しかったです。
椎乃味醂:僕「レディーレ」がめちゃくちゃ好きだったんですよ。ボカコレ2022秋のプレイリスト企画でも、「椎乃味醂の人生を変えた曲10」のひとつに入れていたくらいで。
バルーン:え! 知らなかった。
――Reolさん、椎乃さんはいつからバルーンさんをご存じだったんですか?
Reol:気づいたら友達になっていたので、これを機に記憶をさかのぼってみたんですけど……。最初は「花瓶に触れた」を聴いて、バルーン名義の方を知ったんです。その後に須田景凪名義の「MOIL」の実写MVを見て、もともとボカロシーンにいた人間が自分の声で歌うという活動スタイルもそうだし、メジャーデビューの時期も自分と近くて、注目するようになったんですよね。それで辿って行ったら「あ、この人バルーンか!」とつながった感じです。

▲花瓶に触れた/flower

▲MOIL/須田景凪
バルーン:僕もまさにReolとは、気づけば友達になっていた感覚でした。知ったきっかけは覚えていないんですが、「レッド・パージ!!!」の歌ってみたとか昔めちゃめちゃ聴いてたし、オリジナル曲だと「ちるちる」とかもリアルタイムで聴いてました。
特に印象的だったのは、「ギミアブレスタッナウ」のMVですね。当時ニコニコ出身の人って、自分の姿を出すことにとても慎重だったんですよ。その中でReolはもう、ものすごい勢いで公開して。当時はまだ知り合ってもいなかったけど、そういう見せ方みたいな所も含めて、すごくストロングな精神を持ってやっている人なんだろうなという印象がありました。

▲〔れをる〕 レッド・パージ!!! 〔歌ってみた〕

▲[MV] REOL - ちるちる

▲[MV] REOL - ギミアブレスタッナウ
椎乃味醂:厳密には覚えていないんですけど、確か小学生くらいの頃に3DSでニコニコ動画を見ていて、「v flower」のタグから「シャルル」を見つけたのがきっかけだと思います。小学生の頃の僕はボカロしか聴いていなくて、特にボカロックが大好きでした。2016年ごろって、それまで速いのがトレンドだったボカロ曲のBPMがだんだん遅くなってきて、おしゃれなロックが増えた時期なんですよね。

▲シャルル/flower
Reol:私もニコ動に出会ったときは、ボカロの存在が衝撃的でしたね。それまではJ-ROCKが好きで残響レコードや東京事変に傾倒していて、電子音楽は聴いてこなくて。しかも、「ボカロ」自体は音楽のジャンルではなく、あくまでソフトの名前なので、いろんな音楽がそのひとつのカルチャーの中に存在できる。それでいて毎日誰かが新曲を投稿するから、刺激的でずっと張り付いていました。
バルーン:僕は歌ってみたとか、二次創作からボカロに入っていったんです。さっきの話の流れでいうと「レッド・パージ!!!」という曲がいいなと思ったら、曲名のタグでいろんな人の歌ってみたを聴いて、自分だけの“レッド・パージ!!!マイリスト”を作ったりして。
Reol:カテゴリーランキングも見てたし、当時の流行みたいなものも追ってはいたんですけど、一方で「感性の反乱β」っていうタグがあって。再生数とかではなく、尖った表現をしている曲とか、思想をぶつけてくる感じの曲につくタグで。それを辿るとメッセージ性の強い曲が並ぶので、よく見てましたね。
バルーン:あったあった。それこそ、味醂くんの曲もつくタイプだと思う。
Reol:クリエイター側からすると、あのタグがつくとちょっとうれしいんだよね。
――ほかにもみなさんにとって「ついたらうれしいタグ」ってありますか?
Reol:最初のころは「もっと評価されるべき」かなあ。
椎乃味醂:僕は「驚異的な中毒性」をずっと見ていたので、自分の曲についたときはうれしかったですね。
バルーン・Reol:ああ~~~! めっちゃわかる(笑)
リリース情報
バルーン企画アルバム『Fall Apart』
特設サイト:https://fallapart.jp/購入リンク:https://balloon0120.lnk.to/FallApart_CD
<収録内容>※3形態共通
・WOLF / バルーン × ヒトリエ
・メーベル / なとり
・雨とペトラ Prod. by 東京スカパラダイスオーケストラ / 高畑充希
・レディーレ Prod. by 椎乃味醂 / Reol
他、全6曲収録予定
公演情報
【須田景凪 LIVE 2025 "花霞"】
2025年4月19日(土)東京・日比谷公園大音楽堂
OPEN 17:00 / START 18:00
チケット:7,300円(tax in.)※入場特典付
イベント情報
『The VOCALOID Collection ~2025 Winter~』
開催期間:2025年2月21日(金)~24日(月・祝)開催場所:ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか
公式サイト:https://vocaloid-collection.jp/
公式X:https://x.com/the_voca_colle
協賛:東武トップツアーズ
メディアパートナー:テレビ朝日ミュージック/interfm/AIR-G'/RADIO MIKU/GAKUON!/Music House/smart/関内デビル/SCHOOL OF LOCK!/クリエイターズ・スタジオ with ボカコレ/SBS
公演情報
『ボカニコ 2025 Winter POWERED BY ボカコレ』
2025年2月24日(月・祝)東京・渋谷 HARLEM
OPEN 14:30/START 15:30
チケット:4,000円(tax in.)※別途ドリンク代600円
販売URL:https://eplus.jp/sf/detail/4125530001?P6=001&P1=0402&P59=1
出演アーティスト:R Sound Design、市瀬るぽ B2B いるかアイス、サツキ、椎乃味醂、大漠波新、駄菓子O型、タケノコ少年、DJ'TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ、夏山よつぎ、なみぐる、picco、Fushi、宮守文学、もちうつね、吉田夜世、LonePi(五十音順)
「レディーレ」は、カルチャーへの別れを覚悟して書いた曲
――4月16日にリリースされるバルーン企画アルバム『Fall Apart』にて、Reolさんと椎乃味醂さんによってアレンジカバーされた「レディーレ」が収録されますが、今回バルーンさんは、なぜお2人に「レディーレ」でオファーしたんでしょうか?
バルーン:僕が「レディーレ」を書いたときのことから話したいんですけど、当時は、須田景凪という名義を設けることを水面下で考えていた時期でした。あのころ、ボカロカルチャーから外に出ていく人間って、「もうこの分野に帰ってこられないかもしれない」というリスクみたいなものを多少なりともはらんでいて。「お前も外行っちゃうのかよ」という空気感があったんですよね。

▲レディーレ/flower
Reol:うん、うん。
バルーン:だからレディーレは、「もしかしたらこれが僕の最後のボカロ曲になるかもしれない」と思って書いた曲だったんです。それに加えて、当時は事務所にも入っていなくて、書き下ろしの仕事もして、須田景凪名義のことも考えて、一人では抱えきれないタスクを抱えていた時期で。しばらく自分では聴けなかったくらい、すごく複雑な心境の中で書いた曲でもありました。
Reolは歌詞も歌声も人間性も、自分とは違って、ストロングな部分が外からも見える人だと思うんですよね。知り合う前からそういう印象を持っていたんですけど、友達になってみて、やっぱりそれは正解だったなと思っていて。そういうReolに、昔自分が複雑な心境の中で書いた曲を、今度は晴れやかに歌ってみてほしいと思ったんです。
Reol:景凪くんには、同志や同級生みたいな感覚が自分の中にあったんです。ニコニコ動画やボカロをやっていた当時には交わることがなかったけれど、その先で出会ったような存在で。ニコニコ動画からメジャーデビューを経験した人って、この文化がルーツにあることを誇れるようなことをしていかなくちゃいけないという、ある種のプレッシャーみたいなものがあるんです。
だからさっき景凪くんがカルチャーとの一旦のお別れを覚悟しながら「レディーレ」を書いたと聞いて、「あ、それで私に預けてくれたのかな」とも思いましたね。
バルーン:椎乃くんのことは、確か「ヘテロドキシー」で知りました。もちろん大好きな音楽ではありつつ、同時に「自分の音楽性とは真逆だ」とも思って。真似したくてもできないうらやましさを感じていて、そういう方だったら、自分の曲をどう解釈し直してくれるんだろうって気になっていました。彼の音楽とReolの音楽が交わったときにどうなるかは、正直まったく想像できていませんでしたね。

▲ヘテロドキシー - 可不・flower
――今回のアルバムのタイトル『Fall Apart』は「破壊する」という意味ですが、バルーンさんはお2人へのオファーにあたって何かオーダーはされましたか?
バルーン:アルバムタイトルは「そうなってくれたらうれしいな」という自分の中での裏テーマであって、具体的なオーダーはしていません。あくまで、みなさんの解釈を信じたかったので。
――では、お2人はリアレンジ・歌入れの際どんなことを意識していましたか?
椎乃味醂:僕、本当に悩んだんですよ(笑)。原曲が完成されすぎているから。ただ、今回は歌唱がReolさんとうかがって、僕が普段作っている音楽もそうだし、Reolさんの音楽性的にもエレクトロなサウンドが合うのかな、と思って。あとはBPMを早めたり、シャープなシンセを入れたりすることで、せわしなさが強調されるようにサウンドをデザインしていきました。
Reol:より切実さを感じる曲になったかなと思いますね。私が味醂くんを知ったきっかけは「じゃあ君の思想が死ねばいい」だったんですけど、「自分の中に哲学がめちゃくちゃあって、それが溢れ出しちゃったような曲を書く人だなあ」と思ったんですよね。今回「レディーレ」のアレンジが届いたときも、歌詞はバルーンのものなのに、音からすごく椎乃味醂の哲学を感じられて。

▲じゃあ君の思想が死ねばいい - flower
バルーン:わかる、すごくわかる。Reolの歌が入る前に、一旦椎乃くんの音源を聴かせてもらったんですけど、もうびっくりしちゃって。全然知らないものが飛んできた感じ。その時点で「オファーしてよかった」と思いましたね。
Reol:私は、そんな味醂くんの音に埋没するような気持ちで歌いました。キーはちょっと悩んだかな。どこに設定するかで歌い方も変わるので、味醂くんに2パターン書き出してもらって、試しながら決めていきました。
――データのやりとりはご自身同士でされていたんですか?
Reol:はい。でも都度ディスカッションを重ねたというよりは、作業の中身を通して会話をしていたようなイメージで。最初に「こんな感じでいこうと思います」というアレンジが届いて、それに対して私が「このキーで歌うとしたらこういう表現をします」という一発録りのようなボーカルを送って、それを受けてさらにアレンジされたものが届いて。聴いてみて初めて「あ、ここにドロップを入れたんだな」とわかる。そういうやりとりを通して曲ができて、今ようやく初めて味醂くんと喋ってます(笑)。
歌入れにあたって原曲を聴き直したんですけど、印象的だったのが、サビの「また」と歌う所。いろんな解釈があって良いと思うんですけど、私には叫びのように感じたんですよね。ここをちょっと崩すことで、自分の中に抱えている鬱屈としたものをサビで解放しているのかなって。それを今回のカバーでも表現できたらいいなと思いつつ、でも味醂くんのアレンジを聞いたら「それ一辺倒で終わってしまいたくもないな」と思って、最後に向けてちょっと歌い方を崩していっているんです。より切実さが増していくように。
椎乃味醂:ReolさんからいただいたデータをDAWのプロジェクトに入れてみたら、全体を通した声の緩急と僕のつくったオケの展開がすごくあっていて、さすがだなと思いましたね。
バルーン:そう、そこのグラデーションがすごく絶妙だったから、「一体2人はどういうディスカッションをしたんだろう」と思っていたんですけど、まさかここで初めて喋っているとは……(笑)。
リリース情報
バルーン企画アルバム『Fall Apart』
特設サイト:https://fallapart.jp/購入リンク:https://balloon0120.lnk.to/FallApart_CD
<収録内容>※3形態共通
・WOLF / バルーン × ヒトリエ
・メーベル / なとり
・雨とペトラ Prod. by 東京スカパラダイスオーケストラ / 高畑充希
・レディーレ Prod. by 椎乃味醂 / Reol
他、全6曲収録予定
公演情報
【須田景凪 LIVE 2025 "花霞"】
2025年4月19日(土)東京・日比谷公園大音楽堂
OPEN 17:00 / START 18:00
チケット:7,300円(tax in.)※入場特典付
イベント情報
『The VOCALOID Collection ~2025 Winter~』
開催期間:2025年2月21日(金)~24日(月・祝)開催場所:ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか
公式サイト:https://vocaloid-collection.jp/
公式X:https://x.com/the_voca_colle
協賛:東武トップツアーズ
メディアパートナー:テレビ朝日ミュージック/interfm/AIR-G'/RADIO MIKU/GAKUON!/Music House/smart/関内デビル/SCHOOL OF LOCK!/クリエイターズ・スタジオ with ボカコレ/SBS
公演情報
『ボカニコ 2025 Winter POWERED BY ボカコレ』
2025年2月24日(月・祝)東京・渋谷 HARLEM
OPEN 14:30/START 15:30
チケット:4,000円(tax in.)※別途ドリンク代600円
販売URL:https://eplus.jp/sf/detail/4125530001?P6=001&P1=0402&P59=1
出演アーティスト:R Sound Design、市瀬るぽ B2B いるかアイス、サツキ、椎乃味醂、大漠波新、駄菓子O型、タケノコ少年、DJ'TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ、夏山よつぎ、なみぐる、picco、Fushi、宮守文学、もちうつね、吉田夜世、LonePi(五十音順)
ボカロは今また、若者にとっての原体験になれている
――みなさんのルーツでもあるニコニコ動画についてもうかがっていきたいと思います。「実家」と表現する活動者が多いですが、みなさんにとってニコニコ動画はどんな場所ですか?
バルーン:僕も「実家」という言葉に尽きちゃいますね。都合よく言えばいつ帰ってもいい場所でもあるし、一方で、外に出て行ってからもルーツであることを誇れるような存在にちゃんとなりたい、と思える場所でもある。惜別の気持ちを持ちながら「レディーレ」を書いた後、何年か経ってまたボカロ曲(2020年「刹那の渦」)をニコニコ動画にも投稿したとき、自分が思っていた以上に受け入れてもらえたんですよね。その際に、「ここは自分のペースで帰ってきてもいい場所なんだな」と安心しました。

▲刹那の渦/flower
Reol:最初は、「逃げ場所」でしたね。「ここが自分の居場所だ」と思えない時期があって、そんな中で出会ったニコニコ動画は、鬱屈とした気持ちを全部受け止めてくれて。しかも昔のニコ動やニコ生は、すごくしょうもないことも許されていて、むしろみんな喜んで「しょうもない」と言われにいくような空気感がありました。それが自分にとってはすごくありがたかった。今の若者たちにとっても、ニコ動から派生したカルチャーやプロセカ(『プロジェクトセカイ』2020年にサービス開始したボーカロイド楽曲を題材にしたゲーム)だとかが、そういう逃げ場所として機能している側面があるんじゃないかなと思います。
――ニコニコ動画は創作の場であるだけでなく、現実に閉塞感を抱く若者のサードプレイスとして大きな意味を持っていましたよね。椎乃さんはまた世代が異なると思うのですが、いかがでしょう?
椎乃味醂:Reolさんが最初に「ボカロのもとにいろんなものが集まってくる」という話をされたと思うんですけど、僕はニコニコ動画もそれだと思っています。ニコニコ動画という看板の下でなら何をしても良いというか。ニコニコ技術部もそうですしボーカロイドもそうですが、いろんなジャンルがごちゃまぜになっていて、そのカオスさが僕はめちゃくちゃ好きですね。そういう土台があったからこそボカロ曲にもいろんなジャンルが生まれて、アンダーグラウンドな曲やニッチな曲にも出会える。もちろん他のプラットフォームにもいろんなコンテンツはありますけど、ニコニコ動画は先ほどお話にも出たタグ機能含め、検索面でよりユーザー主体の能動的設計になっていて、自分がまったく興味なかったジャンルにいきなりぶつかることも多いですし。
――ボカコレの影響についてもうかがいたいんですが、バルーンさんは「パメラ」でボカコレ2021秋に参加されました。どういった思いがあったんでしょうか?
バルーン:あのときは須田景凪名義のアルバムを何枚か出し終えてライブも終わって、いろいろと落ち着いた期間だったんです。次は何をしようかなと考えていたときに、映像作家のアボガド6さんと「久しぶりにボカロ投稿したいね」という話になって。ちょうどボカコレの期間と重なったので、投稿させてもらった感じです。
ただ、自分が一番ボカロをやっていた2015~16年頃と比べると、また別の盛り上がりがあったのが印象的でしたね。リスナーについては、こちらからはコメントしか見られないので具体的にどう変わったかまではわかりませんが、より広い年代に届いていて、「ボカロがより広い存在になったんだな」という実感がありました。

▲パメラ/flower
Reol:それこそプロセカの影響もあると思うんですよね。私は「劣等上等」で久しぶりにボカロ曲の作詞をしたり、最近もちょこっとギガ(Giga)とやりとりをしたり、プロセカあたりから視聴者層に変化を感じていて。母数が増えたというよりは、ボカロが今もう一度、若い子たちが原体験にできる存在になったのかなと思います。第二次ブームというか。
バルーン:うん、確かに。
――椎乃さんは過去すべてのボカコレに作品を投稿されています。ご自身にとってどういう場になっていますか?
椎乃味醂:ボカロが最盛期だった2010年前後の頃の、ニコニコランキングで競い合う感覚って、僕たちの世代は味わえていないんですよね。ボカコレというお祭りのおかげで、それが再び楽しめるようになったと思っています。もちろん作品に数字をつけることの善し悪しはあるんですけど、ニコニコ動画のごちゃまぜ感は、ランキングのおかげでもあると思うんですよ。それを体感できる機会が2025年にもあるのはありがたいですね。
――みなさんは今回、ボカコレ2025冬のプレイリスト企画に参加されています。それぞれどんな基準で選んだか、教えてください。
バルーン:ニコニコ動画で出会った音楽が自分の第二の原点だと思っていて、10年前くらいの僕を構築してくれた楽曲を選ばせていただきました。ニコニコ動画にはいろんな衝撃を与えてくれた音楽がいっぱいあるんですが、中でも「ここを避けてはボカロのこと喋れないよね」という偉大な方々を選ばせていただいています。特にMarudarumaさんは、自分にとってバンド系ロックとボカロの架け橋になってくれたような存在です。
Reol:テーマを「もうひとつの学び舎」とは置きつつ、近年の曲まで、新しい順に選んでみました。カバーしたことのある曲は言うまでもなくおすすめなので、したことのない曲が対象です。私はボカロに出会ってシンセサウンドがすごく新鮮に刺さって、sasakure.UKさんをよく聴いたし、DatekenさんのおかげでR&Bというジャンルに出会えたし、ボカロラップのTaskさん……あとはトーマさんですね。上げてる曲は少ないけど、外せないなあと。
椎乃味醂:昔、ニコニコ動画に投稿されたボカロ曲を全部聞くのに挑戦したことがあるんですけど、再生数が少なくても良い曲ってたくさんあるんですよ。そういうのも知ってほしいなと思って、個人的に2000曲くらい登録している1万再生以下のマイリストから、特に好きなものをランダムで選びました。自分は1,2か月くらいで全曲チェックを挫折してしまったんですが、「ボーカロイド新曲リンク」というタグを使ったり、「Kiite Cafe」(※クリプトンが運営する音楽発掘サービス)を覗いたりしていました。
Reol:今の話もそうですけど、今日話してみて感じたのが、味醂くんってすごく探求心のある人で、すごく好感持てるなあと感じました。あと、今回は企画上ボカロ曲に限った選曲ですけど、私はニコラップのタグにハマっていた時期があって、ニコラップのタグなら全部チェックも可能なんですよ。そもそもラッパーが少ないから。3日もすればいろんな事象が起きて、それが面白くて見ていたのを思い出しました。
――ありがとうございます。せっかくなので、椎乃さん、バルーンさんからも今日の鼎談の感想をいただけますか。
椎乃味醂:バルーンさんはもちろん、Reolさんもユニット活動をされていたときからずっと見ていて、まさかお二方とこういうふうに話せる機会があると思っていなかったです。まずは本当にありがたい限りだなと。それぞれ物を作ることに対する美学があって、普段あまり表に見える部分ではないと思うので、そこをお聞きできてうれしかったです。
バルーン:この前味醂くんが参加している現代アート展にお邪魔したんですけど、音楽というものを飛び越えて造形物で表現している場だったんですよね。それがすごく、ロジカルなんだけれどわかりやすくて、メッセージがストレートに伝わってきて。すごくしっかりした哲学を持っている人なんだろうなという印象を持っていました。
Reolは数年前から仲良くさせてもらっているんですけど、なかなか普段はこういう真面目な話はしないんですよ。そんな2人から音楽に対する考え方をたくさん聞けて、すごく良い日でした。
あと、僕もボカロ系以外でおすすめのタグがあるんです。「ニコニコインディーズ」というオリジナル曲投稿用のタグで、死ぬほど良い曲がたくさんあるのでぜひチェックしてもらいたいですね。
リリース情報
バルーン企画アルバム『Fall Apart』
特設サイト:https://fallapart.jp/購入リンク:https://balloon0120.lnk.to/FallApart_CD
<収録内容>※3形態共通
・WOLF / バルーン × ヒトリエ
・メーベル / なとり
・雨とペトラ Prod. by 東京スカパラダイスオーケストラ / 高畑充希
・レディーレ Prod. by 椎乃味醂 / Reol
他、全6曲収録予定
公演情報
【須田景凪 LIVE 2025 "花霞"】
2025年4月19日(土)東京・日比谷公園大音楽堂
OPEN 17:00 / START 18:00
チケット:7,300円(tax in.)※入場特典付
イベント情報
『The VOCALOID Collection ~2025 Winter~』
開催期間:2025年2月21日(金)~24日(月・祝)開催場所:ニコニコTOPページなどのネットプラットフォームほか
公式サイト:https://vocaloid-collection.jp/
公式X:https://x.com/the_voca_colle
協賛:東武トップツアーズ
メディアパートナー:テレビ朝日ミュージック/interfm/AIR-G'/RADIO MIKU/GAKUON!/Music House/smart/関内デビル/SCHOOL OF LOCK!/クリエイターズ・スタジオ with ボカコレ/SBS
公演情報
『ボカニコ 2025 Winter POWERED BY ボカコレ』
2025年2月24日(月・祝)東京・渋谷 HARLEM
OPEN 14:30/START 15:30
チケット:4,000円(tax in.)※別途ドリンク代600円
販売URL:https://eplus.jp/sf/detail/4125530001?P6=001&P1=0402&P59=1
出演アーティスト:R Sound Design、市瀬るぽ B2B いるかアイス、サツキ、椎乃味醂、大漠波新、駄菓子O型、タケノコ少年、DJ'TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ、夏山よつぎ、なみぐる、picco、Fushi、宮守文学、もちうつね、吉田夜世、LonePi(五十音順)
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