Billboard JAPAN


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<座談>TUBE春畑道哉xL’Arc~en~CielのKenxUNISON SQUARE GARDEN斎藤宏介が語る、ストラトキャスターの魅力とは?

インタビューバナー

 Fenderの代表格であるエレキギター「ストラトキャスター」の70周年を記念した、一夜限りのスペシャルライブ【~Stratocaster 70th Anniversary~ Fender x Billboard Live TOKYO presents The Strat Night 2024】が2024年11月23日にBillboard Live TOKYOにて開催された。

 ジミ・ヘンドリックス、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ゲイリー・ムーア、リッチー・ブラックモア、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジョン・フルシアンテなど挙げればきりがないほどに数多くの伝説的アーティストに愛用され、ロックやブルース、ジャズなどあらゆるジャンルの音楽シーンに影響を与えてきたストラトキャスターは、なぜ今も世界中で求められ続けているのだろうか。【The Strat Night 2024】の開演直前に出演アーティストであるTUBEの春畑道哉、L’Arc~en~CielのKen、UNISON SQUARE GARDEN , XIIXの斎藤宏介と、そのプレイを支えるスペシャルバンドの弓木英梨乃(Gt,Bandmaster)、TOKIE(Ba)、池尻喜子(Key)、SATOKO(Dr)をキャッチし、同イベントへの思いやストラトキャスターの魅力について語ってもらった。(Interview & Text:沖さやこ l Photo: Masanori Naruse)

ギター愛を爆発させられるライブになったら(斎藤)

――ストラトキャスター70周年を祝して開催される【The Strat Night 2024】。スペシャルゲストの春畑さん、Kenさん、斎藤さんはお声が掛かってどのように思われましたか?

春畑道哉:非常に光栄ですね。ギターを始めたての頃からストラトを使っていて、今も使い続けているくらいストラトが大好きなので。


Ken:僕も春畑さんと同じで、うれしいですね。


斎藤宏介:僕もギターヒーローに囲まれて幸せです。出演させてもらえるのがうれしいですし、ギター愛を爆発させられるライブになったらいいなと思っていますね。


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春畑道哉

――お三方の演奏を支えるスペシャルバンドの皆さんも、プレイヤーとして第一線で活躍されている方々です。

春畑:初めてご一緒する方もいますが、凄腕ミュージシャンが揃っていて最高です。SATOKOは前々から僕のソロライブでも叩いてくれているので、彼女がいてくれるのは個人的にも心強いですし、リハーサルがすごく順調だったのも弓木さんがバンマスとしてバランスよくアレンジなどを全部仕切ってくれたおかげだと思っています。


斎藤:本当にそうですね。リハーサルで初めて音を合わせてみて、スペシャルバンドの皆さんの演奏から楽曲をすごく丁重に扱っていただいて、しっかり練習していただいていることが伝わってきて、ありがたかったです。


Ken:進行表だけだとどんなイベントになるのか想像できなかったけど、リハーサルで音を出してみて全体像が見えました。いい感じの空気を感じてます。


弓木英梨乃:わたしたちもストラトの70周年という記念すべきイベントに、素晴らしい皆さんと一緒に演奏させてもらえるのは本当に光栄で。


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弓木英梨乃

TOKIE:こういうイベントでないとご一緒できない方々なので、参加できることをうれしく思っています。


池尻喜子:最初お話をいただいたときは、皆さん有名人すぎて恐れ多くて(笑)。鍵盤はギターと周波数がほぼ同じなので音が当たっちゃうことが多いのと、ストラトの音は鋭いイメージがあったので、皆さんの邪魔しないよう心掛けていたんです。でもリハーサルで実際に音を鳴らしてみて、皆さんの素晴らしいプレイに導かれて、後ろに下がるというよりは重なるようなイメージで演奏することができました。ストラトはアタックがすごく気持ちいいので、いつも聴いていて幸せな気持ちになりますね。


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池尻喜子

SATOKO:弓木さんと池尻さんがスタートをすごく一生懸命やってくださったんです。その次にTOKIEさん、わたしは最後に入れてもらったので、その時点でほとんど仕上がっていて。本当に感謝しています。


TOKIE:短期間でやらなければいけないこともたくさんあるなかでしたが、バンマスの英梨乃ちゃんのおかげで楽しくできました。英梨乃ちゃんとご一緒するのは、英梨乃ちゃんが10代の頃、プロとして軌道に乗る前に関わって以来だったんですけど、その間にすごく立派にご活躍されていて。英梨乃ちゃんと一緒にやれたことも、今回感動的でしたね。


弓木:ありがとうございます。SATOKOさんとTOKIEさんとは久しぶりで、池尻さんとは初対面だったので最初はどうなるかな……と思っていたけれど、まずこの4人で音を出したときからめちゃくちゃ楽しかったんです。リハーサルも限られていたので、お三方が選ばれたストラトキャスターの輝く名曲を、原曲に近いかたちで再現することに力を注ぎました。


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TOKIE

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好きな人がみんな持っているギターだったから、自然な流れで手に取った(春畑)

――春畑さん、Kenさん、斎藤さんは、プレイなさる2曲をご自身でお選びになったそうですね。

春畑:やっぱりストラトの名曲をちゃんとチョイスしたかったので、どの曲を演奏するかすごく考えたんです。それで「ゲイリー・ムーアをやりたい」とリクエストしたら、「もうKenさんがチョイスしてるんで他の曲にしてください」と却下されて(笑)。


Ken:【The Strat Night 2024】の話が来た頃に、たまたまずっと「The loner」を弾いてたんですよ。「2曲選んで」と言ってもらったので、じゃあちょうど弾いているこの曲にしようかなって。春畑さんより返事が早かったみたいで、弾けることになりました(笑)。


春畑:返事をするのが遅かった(笑)。ジミヘンはアンコールで全員で演奏することになっているし、レイ・ヴォーンもすでに入ってる! 俺がイメージするストラトの名曲が全部入ってる!まずい!と最後に思い出したのがリッチー・ブラックモアだったので、レインボーの「Maybe Next Time」を選びました。中学のときに大好きで、中学高校と弾き倒した青春の1曲ですね。


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斎藤宏介

――斎藤さんはUNISON SQUARE GARDENの「スカースデイル」とXIIXの「like the rain」と、ご自身のバンドの楽曲をチョイスなさっています。

斎藤:いろいろ考えた結果、ふたつバンドをやっているのでそれぞれのバンドから1曲ずつ選びました。ユニゾンの代表曲というと「シュガーソングとビターステップ」なんですけど、この曲を半年ぐらい前にSATOKOさんも参加なさっていたバンドでやったら、そのときの演奏メンバーから「覚えるのが大変」と非難轟々で(笑)。


一同:(笑)


斎藤:これ以上嫌われたくなかったので(笑)、シンプルな曲で、ストラトのエッジが映える曲、あと僕はBillboard Liveに出演するのが初めてだったので、歌声が綺麗に響く曲を選んだ結果、この2曲になりましたね。


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Ken

――皆さんがストラトキャスターに惹かれた理由や、今もなお弾き続けている理由とはどんなものでしょうか?

Ken:最初のきっかけは形のエロさですね。実際に手に取ってみると、クリーントーンがエッジがありながらも透明感のある音がして弾いていて気持ちよくて。歪みの感じも好きでしたね。


春畑:部品を取り外したり、ネックを付け替えたり、パーツを改造したり、どんどん自分好みにいじっていけるのも楽しみのひとつ。Kenはネックを削ってるもんね。


Ken:もうちょっとこんなかたちなら弾きやすくなるかなって。ブリッジ(サドル)の高さも1個1個変えられるし、自分に馴染むようにねじねじできるのも楽しい。それが結果的に音の気持ち良さにもつながってくるんでしょうね。


斎藤:ストラトって頑丈ですよね。


春畑:確かに(笑)。倒れても意外と大丈夫だったり、ジミヘンのパフォーマンスなんて冴えたるものだよね。斎藤さんは誰から影響を受けてるの?僕はリッチー・ブラックモア、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックス……好きな人がみんな持っているギターだったから、自然な流れで手に取ったけど。


斎藤:やっぱり僕の世代はジョン・フルシアンテとか、あと僕個人は日本のロックバンドですね。それこそ初めてスコアを買ったのはL’Arc~en~Cielで。楽器屋のお兄さんに「ラルクは難しいぞ?」と言われて、クソ!と思いながら一生懸命「HEAVEN’S DRIVE」のギターを練習しましたね。中学1年のとき、ブラッシングが難しくて一生懸命練習してました。


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斎藤宏介

Ken:いやいや、今日の斎藤さんのカッティングを拝見していたら、オリジナルなすごいものを感じました。


斎藤:その世代なので、バンドを組みたての頃は周りがみんなストラトを使ってたんですよ。みんなと同じは嫌だから無理して他のギターを使ってたんですけど、いろんな人から「お前は絶対ストラトだ」と言われて折れて。それでストラトを弾いてみたらすごくしっくりきました(笑)。他のギターより圧倒的に、弾きながら歌いやすかったんです。自分の歌っている音域との相乗効果が生まれるというか、歌と一緒に突っ走ってくれる感覚がストラトにはあったんですよね。


SATOKO:ストラトの音は抜けがいいので、ストラトでリズムを刻んでもらえると、ドラマーとしてはありがたいんです。でもプレイヤーによって音が違うのも面白いところで。斎藤くんはわたしと同世代だから好きな音が似ているなと感じるし、Kenさんの音は辛口で、あんまりストラトで聴いたことがない音だったから驚愕しました。春畑さんの音は王道で、それこそストラトを最初触った人が目指したい音だと思う。


Ken:春畑さんはすっごいモダンなところから枯れたトーンまでを行ったり来たりされるので、「Voodoo Child」での枯れた音はすごいなあと思いながら横で見てましたね。


春畑:やっぱりストラトの使い方にも世代が出るんだよね。Kenはディレイを駆使して浮遊するような斬新な音作りをしているし、斎藤さんは今回の2曲でもまったく違うアプローチをしていて、ノレる16分をソリッドに弾いたり、歌いながら激ムズのアプローチをしていて。ルーツの影響が根底にあって、そこに独自性が加わってその人の音になるんだろうなって。面白いですね。


Ken:弾いた人のトーンになっていくから、「どんなピックアップ使ってるの?」くらいまでは話せるけど、その先はそれぞれの個性になっちゃうから、「この人はこういう使い方なんやな」って。こうやってイベントで集まると、それぞれの音を聴いたりして、楽しいですね。


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SATOKO

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目の前の空間が音を鳴らす前と鳴らした後で全然別物になる(Ken)

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春畑道哉

――ストラトキャスターはエッジの効いていて煌びやかなサウンドという個性もありつつ、プレイヤーの理想を叶えてくれるギターでもあるんですね。

Ken:だから同じ音が出しにくいかもしれないですね。その人の弾いたようにしか音が出ないというか。


斎藤:うん、そんな気がします。自然と自分の色が出てくるギターかもしれないですね。


春畑:同じ機材を演奏しても、一人ひとり全然違う音が鳴るのが楽器の面白いところだよね。今日もみんなまったく違うエフェクターやアプローチを持ってるし、アイデアもみんな違うから、自分と違うストラトをこんなに近くで見られるのはすごくいい刺激になります。


斎藤:お二方とも自分がギターを始める前から耳馴染みのある音を鳴らす大先輩なので、根底にある憧れをすごくくすぐられるのに、色褪せないし圧倒的に説得力があるんです。勉強することばっかりですね。


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Ken

――斎藤さんも含め、皆さん深みを感じさせながらもずっとフレッシュな音を鳴らしていらっしゃると思います。その理由をご自身ではどう捉えてらっしゃいますか?

春畑:やっぱりどこまで行ってもギターは“趣味”なんですよね。仕事じゃないときもただなんとなく手に取って触っています。自分にとって気持ちいいコードを弾いて癒されることもあれば、Kenみたいなギター弾いてみたいなと思いながら、自分にはないフレーズを弾いてみるのも面白いし。


斎藤:実際春畑さんもKenさんも、このインタビュー中にずっとギターを触ってらっしゃいますもんね(笑)。やっぱりギターがあったら触りたくなっちゃいますよね……。こういう光景が見られることが僕はすごくうれしいんです。


春畑:やっぱりギターって楽しいよね。ギタリストもみんな得意と不得意があるから、学ぼうと思えば無限に学べるし、ゴールがない。だからずっと弾いていられます。


Ken:子どもの頃、最初に音を出したときから一緒なんですけど、目の前でちょっとしたコードをパッと弾いただけで、目の前の空間が音を鳴らす前と鳴らした後で全然別物になるなという感覚があって。その「鳴らした空間を味わいたい」という気持ちがずっとありますね。そのためには自分で弾くしかないじゃないですか。そのときの気分で音を鳴らして、この空気が満たされて。今まで弾いたことがないフレーズを練習っぽく弾いてる時はそれが出ないんだけど、そうこうしているうちにふとその空気が出たりするんですよね。それを味わいたくて弾いていて、あっという間に2024年になってました(笑)。


――最近はスマートフォンのアプリでも立派な曲が作れるので、楽器が弾けなくても音楽ができる時代でもありますし、「バンドはコスパが悪い」とおっしゃる方も多いですが、やはり楽器でないと味わえない感動はありますよね。

春畑:ベース、ドラム、ギターで一斉に同じ曲を演奏することの楽しさはね、やっぱりやった人にしかわからないですよね。ぜひ1回味わってほしいなあ。


斎藤:「バンドはコスパが悪い」は事実ほんとにそうだと思います(笑)。でもバンドは、不器用でも工夫次第でミラクルを起こせるんですよね。だからコスパは悪いけど、やればやるだけ見返りはあるんじゃないかな。ちょっと興味があるなら、一度ぜひやってほしいですね。


Ken:C maj 7とか弦を2ヶ所押さえてジャーンって弾けば鳴らせるので、子どもの頃の僕はこれだけで満足してた(笑)。


春畑:C maj 7をおすすめするのいいね。すごく簡単で、気持ちのいいコードだもんね。


Ken:あとEm7かな(笑)。このふたつを繰り返すだけですごくいい気分になりますね!そんな感じから気軽に気持ちいい空間を楽しんで、面白いと思ったらいろいろ足していくとか。もしおうちに弾いてないギターがあったらちょっと引っ張り出して久しぶりに音を出してみてほしいです!


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