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木村カエラ 『+1』 インタビュー
強い木村カエラ。とにかく楽しくって面白くってウキウキワクワクさせてくれる、彼女のアルバム『+1』。その根底には、とにかく楽しくって面白くってウキウキワクワクするための強さがドーン!とある。前作『Scratch』リリース時のインタビューで他者との繋がりについて熱弁してくれた彼女が、それからの生活・音楽活動の中でどのように強くなっていったのか。そのすべてをとにかく素直に語ってもらった。
音楽も面白い方がいいじゃん!
--アルバム『Scratch』以来のインタビューになるんですが、あのアルバムのリリースから今作『+1』の完成に至るまでの期間は、カエラさんにとってどんな期間となりましたか?
木村カエラ:ライブをいっぱいしていて。その中で、自分の、木村カエラとしての立ち位置というか、「自分が何をしていけばいいのかな?」というのを考えた一年でしたね。自分の大好きな音楽をやって、それをたくさんの人がお金を払って観に来ているわけですから、そういうところで前よりも「さぁどうしよう?」みたいな感じで考えたというのはあります。
--去年6月には、初の日本武道館公演がありました。
木村カエラ:「良いモノを作りたい」っていう必死な想いがあったので、そのときはただただライブに集中してました。楽しいのと「どんなライブになるんだろう?」っていう緊張感を常に持っていたので、あんまり記憶がないと言えばないんですよね。
--僕はあの武道館公演を観てですね、自由にライブを楽しんでいるカエラさんを見て、「あ、木村カエラは本当にどこにいたって、何をやったって、ありのまんまの木村カエラで生きていける人なんだな」と思ったりしたんですが、自分ではどう思いますか?
木村カエラ:自分はね、自分のライブを観たことがないので、何とも言えないですけど、でもまぁどこでやるのも同じ気持ちでやりたいなとは思ってますね。どんだけ会場が大きくなっても変わらないっていうのはありますけど。
--で、その武道館に限らず、ゲップツアー(【木村カエラLive 2007~Gepp Tour~】)でも年末の主催イベント【オンナク祭オトコク祭】でも、めっちゃ笑顔じゃないですか、最近。あれはなんで(笑)?
木村カエラ:なんか、楽しんじゃないですか(笑)!?
--(笑)。
木村カエラ:楽しくなかったらきっと笑顔じゃないと思うので。いつも緊張しているライブの中で笑顔になっているときっていうのは、きっと本当に楽しいんだと思う。もしくは、面白いお客さんを見つけたときか(笑)。
--そんなライブでは実に開放的で、どんな悩みもふっ飛ばせそうなテンションを感じさせてくれるカエラさんなんですが、実際、よく悩んだり葛藤したりっていうのは、相変わらず?それとも結構変わってきました?
木村カエラ:あんまり悪いことは考えなくなりましたね。やっぱり時間の使い方が上手になってきたというか。簡単に言えば、この仕事のペースに馴れてきたんだと思う。自分自身っていうのをすごく見つめる仕事でもあると思うので、その中で「自分自身がどんな人間なのか?」「一体何を求めているのか?」「何をすれば落ち着いたり興奮したりするんだろうか?」とか、そういうことについてすごく考えたりしてきて、今は、自分がどうすればどうなるのかっていうのが、よりよく分かるようになったのかなって思います。
--その影響もあってか、今回のアルバム『+1』に向けての1年は、何に捕らわれることもなく面白いことをやりまくっていたイメージなんですが、本人的にはどうだったんでしょう?
木村カエラ:人がただ「これ、良い曲だな」って思ったりする。私は別にそういうのはやる必要がない人間なのかなって思っていて。自分自身がやっぱり「こんな写真アリなんだ!?」とか「こんなファッションとかあるんだ!?」とか、そういうところに興味が湧いたりするので、そういった意味では「音楽も面白い方がいいじゃん!」みたいなところがあって。人の期待を良い意味で裏切るというか、とにかく面白いと思ったモノだけを出していっちゃう。その先にあるアルバムのことも考えずに(笑)。
実際、ロックというモノを今までやってきてると思うんですけど、「ロックって何だ?」って逆に思っちゃう感じが常にどっかにあって。ジャンルって別にどうでもいいというか。精神面で言うところのロックは好きだけど、音楽的なジャンルには捕らわれてない。単純に、やればやるほど出来る音楽の幅が増えてきたのもあるんですけどね。それが今の時点でいろいろと爆発し始めてるんじゃないかな?
Interviewer:平賀哲雄
めっちゃ悪口書かれてるわけじゃん(笑)!
--『Samantha』も『Yellow』も『Jasper』もえらい新感覚な作品でしたよね?これまでも常に新感覚な作品を出してましたけど、結構誰にも想像できないような作品をガンガン出してて。それはすげぇ楽しかったですか?
木村カエラ:うん。実際リアルに聴いてくれた人たちの感想を聞けるわけではないので、何とも言えない部分はあるんですけど、ただ、やってる本人が楽しければそれでいいかなっていう。それって伝わるというか、分かっちゃうじゃないですか。観てる人、聴いてる人に。だからその気持ちだけは大切にしておこうと思って。そこは中途半端にはしないようにしてます。
--あの、『Yellow』のミュージックビデオのラストシーンあるじゃないですか。スーパーサイヤ人が怒ったときみたいなシーン。俺、あれを見たとき、めちゃくちゃ羨ましくて!俺もあんなのやりたい!って(笑)。
木村カエラ:(笑)。
--まぁ今のは一例ですけど、「俺もあんなのやりたい!」って思わせる要素がライブにおいても作品においても、ここ一年の木村カエラにはたくさんあったと思うんですよ。
木村カエラ:つまんないよりは楽しい方がいいじゃないですか。とにかく楽しむ。私的には、本当にただそれだけで。
--その楽しくて仕方ない感じが、今回のアルバム『+1』にはどっぷりと出ているわけですけど、自身では今作の仕上がりにどんな印象や感想を持たれていますか?
木村カエラ:まだ完成して間もないので何とも言えないんですよ。いっつも自分の曲を「自分の曲だ」と一致するまでに時間が掛かって、ライブツアーを廻り終えてからようやく「あ、この曲って自分の曲なんだな」って思うような感覚なんですよ。だからまだね、今回のアルバムについてリアルに語ることができないんですけど、ただ、ちゃんと自分がやろうとしていることだったり、「人に伝えていければいいな」って思ってることだったりが、ちゃんと形に出来ているなと思います。その上で、収録曲はそれぞれ個性があって面白いし、飽きないアルバムが作れたなって。さすがに4枚目のアルバムということもあって、歌詞も面白いモノが書けたし、「成長してんだな、見えないところで」って自分で思いました(笑)。
--どうして『+1』というタイトルにしようと?
木村カエラ:ずっとアルバムのタイトルになる言葉を探してて、外国でパーティーとかに連れていく相手のことを「+1(プラスワン)」って言ったりするんですよ。「今日は私の+1がいないからどうしよう?」とか、そういう自分ありきで人までもが「+1」になってしまうような言い方が私の中で「面白いな」って引っ掛かって。で、今回のアルバムで伝えたいことっていうのが、『Samantha』で書いたことにも繋がってくるんだけど、自分自身が生活をしてて楽になったりとか、楽しく物事が考えられるようになったのって、やっぱり自分の素直な気持ちを見つけたからなんですよ。何かから抜け出そうと思ったとき、それが一番手っ取り早いんですよね。それは、デビューしてからいろんなことをやって、いろんなことを学んでる中で気付いていった、自分の中での解決策なんだけど。
例えば、夕陽とか見て「赤くて綺麗だなぁ」とか「なんか、寂しいなぁ」とか「もう夕方だなぁ」って、目で見て直で出てくる素直な気持ち。そうした気持ちって普段生活している中で意外と気付かないじゃないですか。だから素直な気持ちって意外に分からないモノで、自分のことも「分かってる」って思ってても分かっていなかったりする。そうしたことを私自身感じていたので、人にとって素直にさせてくれるモノって何なのか、あなたにとって「+1」が何なのか、それを探してほしいという意味も含めて『+1』というタイトルにしたんです。
--前回のインタビューで、カエラさんは「ただ自分のことをぶつけるだけじゃなくて、まず相手の気持ちを分かった上で話をするのが大事」とか「これからはちょっとしたことでも伝えるべきことは全部伝えよう」って言ってて、それを多分生活の中でも実行しただろうし、それを踏まえた上での作品作りもライブ作りもしただろうし。それがあってこその今回のアルバムだったり、今のカエラさんの話だったりするのなって思ったんですが。
木村カエラ:そうですね。やっぱり常に切ないことも残念なことも世の中にはあるんだけど、でも結局自分自身の問題で、自分がどうするかなんですよね。例えば、前回のインタビューでさせてもらったイジメの話に戻るとしたら、いじめる側もいじめられる側もその人の責任・問題だと思うの。私なんて、言っちゃえばさ、インターネットの掲示板とか開いたらめっちゃ悪口書かれてるわけじゃん(笑)!
--(笑)。
木村カエラ:だから、良いことも悪いことも半分半分を背負っていかなきゃいけない。私は掲示板に書いてることなんて笑い飛ばせるんですよ。でもそれを見て落ち込む人だっているし、実際、私と同じように表に出てる人に「ああいうこと書いてあって、本当に落ち込むんだけど、どうしてんの?」って聞かれることだってあるし。でもそんなの関係ないんですよ。「じゃあ、やってみればいい、同じことを」って言うだけだから。自信を付けたりとか、自分自身のことを分かっていったりすると、そういう強さが生まれてくる。なので、何か人に言われたって「自分はこうだ!」って分かってて、自分が突き通している自信のあるモノをちゃんと作り上げていくことが良いのかなって。
でもそれってすごく難しいことじゃないですか。やっぱり時間も掛かるし、私自身、このアルバム『+1』に辿り着くまで、デビューしてからの4年間、ずっとそのことについて考え続けていたでしょ?なので、すごく難しいことだとは思うんだけど、だからこそ、このアルバムを聴いて「私は私でいい」って、少しの人でもいいから思ってくれたらいいなって。多くは期待しないけれど、そうやって思ってくれたらいいのになって。その想いは強いです。
Interviewer:平賀哲雄
家にいるのと変わんない(笑)。
--ちなみに今作『+1』、サウンド的には、かなりニューウェイヴを意識したようですが、これはなぜ?
木村カエラ:それは、シングルを全くもってアルバムのことを考えずに出してるからですね(笑)。ロックなモノだったり、生音でちょっと変わった音楽やったり、テクノだったり。で、その生音と打ち込みの間を取れるのは、ニューウェイヴかなと。あと、元々私自身がプライベートでCSSとかザ・ラプチャーとか、生音だけどちょっと変わったピアノの音も出すみたいな、そういう打ち込みも入ってるような音楽がすごく好きで、何年も何年もずっと聴いてるので、その感じが今作に入ったら、自分のやりたいこともできるし、シングル曲の間も取れるかなって単純に思って。
--その、いろいろぐちゃぐちゃしてるんだけど、妙にドキドキワクワクさせる感じ。サウンドだけじゃなく、歌詞にも出てますよね?
木村カエラ:そうですね。なんか、変わった詞書いてんなって(笑)。
--(笑)。
木村カエラ:本当にパズルを埋めていくみたいな、遊び感覚がありましたね。妙に力が抜けてる。例えば、韻を踏んだりとかもそうですけど、あんまり同じ言葉を使いたくない。っていう自分の中だけの決まりがあって。前に使った言葉の組み合わせとかしたくないし、例えば、『リルラ リルハ』の「忘れないで♪」っていうフレーズはすごく人の印象に残ってるから、もう「忘れないで」は使えない!みたいな。そういう縛りを自分の中でしてしまう感覚があって。でも今回はその中で詞を書いていくのが逆に楽しかったっていう。だから難しい言葉とかもあるんだけど、なんか、暑苦しく伝えるよりは面白く伝えようと思ったり、そうした感覚のままに書いてしまったアルバムですね。
--『STARs』で「ハッスル Get you NO.1」と書いたと思えば、『1115』では「張り裂けそうな 時代を纏うか」ですからね。
木村カエラ:(笑)。
--あの、もちろんこれだけのアルバムが生むっていうのは、いろんな紆余曲折や葛藤や苦悩があってこそだとは思うんですけど、すげぇ幸せなんじゃないですか?
木村カエラ:そうですね~。幸せです!まずアルバムが完成した時点で「うぉぉ!」って思いました。「詞から解放される!」「地獄から抜け出した!」って(笑)。
--素直なお答えありがとうございます(笑)。それにしても木村カエラ、作品に対しても、メディアに出る際にも、年々素直になっていきますね。元々フラットはフラットでしたけど。
木村カエラ:結構ありのままでいる感じですよね。家にいるのと変わんない(笑)。だんだんそうなっていってるのは自分でも感じるんですけど、最初はいろんな嫌な緊張もしましたし、自分自身のことを分かってないのに自分のことを客観視して「今はこういう風にやろう」とか作っていく感じがあって。だけど今は一人の人間になってる感じ。今は「自分が面白いと思えばいいや」「そうしたら絶対に面白いはず」って思っているので、そこは前と比べると変わりましたね。だからこそ自分自身のままどこにでも出ていける。
それは、最初にも言いましたけど、去年ライブをたくさんやった影響が大きくて。その中で「飾る必要がないのかな」って素直に思ったんです。そうしたらふと気が楽になって。あと、どこかで満足したんじゃないですかね?自分が大好きな歌をうたって「こんなにたくさん人が来てくれた」っていうのに満足したから、次のステップに行こうと思ったのかもしれない。
--その結果、何でも楽しめている状況が生まれたと。
木村カエラ:そうですね。ただ「何かしなきゃ」とは、常に思っているので、昔よりもいっぱいいろんなことを知識として入れるようにしてます。でもそれが全然苦じゃなくて、すごく楽しいっていう感じ。もちろん好きな歌をやってるからなんでしょうけど、「頑張らなきゃな」って思って、そこからちゃんと行動に移すまでの力がどこかにあるんですよ。なかなかね、「やんなきゃ」と思ってもやんなかったりするじゃないですか。でも今はどんどんやれるから、それが楽しい。
--ちょっとこっ恥ずかしい質問しますけど、今の自分、結構好きでしょ(笑)?
木村カエラ:前よりは好きですね(笑)。それはやっぱり自分がちゃんと落ち着けるようになったからだと思う。
--では、最後に、敢えて前回のインタビューの最後と同じ質問をさせて頂きます。「将来的に叶えたい夢とか目標があったら聞かせてもらえますか?」という質問なんですけど、前回、タイツ屋さんと、絵本作家と、おばあちゃんになったら“みんなのうた”を作ることと、その前に子供を産みたいことと、バンジージャンプと、車の免許取得は言っているので、それ以外に何か増えていたら、ぜひ。
木村カエラ:え~っ!?じゃあ、塩むすびがめちゃめちゃ上手く握れる人になりたいです。
--今、上手く握れないんですか(笑)?
木村カエラ:今、特訓中なんです。多めにご飯を炊いて、わざわざ塩むすびを作る分を残してます(笑)。ちょっと前に、塩むすびを作ってもらったことがあって、「なんだこれ!?旨い!こんな旨い塩むすび、食べたことない!」って思って(笑)、それで自分でも作ってみたんですけど、全然おいしくなくって。それで塩むすびを上手く握れる人を探していたら、カメラマンのアミタさんの塩むすびがすごく上手いって聞いて、「今度、対決しに行きます」と。そのために練習してるんですよ。
--なるほど。
木村カエラ:あとは、あっ!サメに会えるやつあるじゃないですか!?ハワイとか行くとサメが檻の中に入ってるやつ。あれ、やりたい(笑)。あともうひとつ、いいですか?
--どうぞ(笑)。
木村カエラ:坂本龍馬がまわったところ全部まわる。あと、ガンダムのモビルスーツを全部憶える。
--じゃあ、次回のインタビューでは、ガンダムクイズを織り交ぜつつ(笑)。
木村カエラ:お願いします(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
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