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<インタビュー>aikoが1年半ぶりにアルバムをリリース――“aiko節”が光る、こだわりが詰まった『残心残暑』を語る

インタビューバナー

Interview & Text:武市尚子



 aikoが、前作から1年半ぶりとなるアルバム『残心残暑』を8月28日にリリースした。本作には、劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の主題歌「相思相愛」やTVアニメ『君は放課後インソムニア』の主題歌「いつ逢えたら」など、全13曲が収録。今回のインタビューでは、『残心残暑』の聴きどころや制作エピソード、6年ぶりの開催となった【Love Like Aloha vol.7】の思い出など、たっぷりと語ってもらった。

「音楽って自由なんやな」って
これまで以上に感じる様になった

――8月28日にリリースされた16枚目のアルバム『残心残暑』は発売日当日からたくさんの方々が聴いていらっしゃいますね。いろんなところから感想が耳に入ってきています。

aiko:すごく嬉しいです。普段からみなさんの反応をついついエゴサしてしまうんですけど(笑)、いろいろと感想を書いてくださっているのを見ると、本当に嬉しくなります。「あー、この人はこんな聴き方をしてくれてるんやなぁ」って。


――いろんな捉え方があるのが楽しかったりしますよね。恋をしてる最中に聴くか、別れ話をしてる最中に聴くか、どんな状況や心境で聴くのかでもすごく変わってくると思うんです。

aiko:そうですよね。自分はこんな想いで書いたんだけど、そんな風に思って聴いてくれたんやなって。聴いてくださった方がそう思ってくれたんだったら、それでいいと思うんです。ライヴで楽しそうに聴いてくださっているのを見ると本当に幸せな気持ちになれるというか。「ずっと歌っていたいな」って思います。




『残心残暑』trailer movie


――アルバムリリース2日後の8月30日に神奈川・サザンビーチちがさきで行われた【Love Like Aloha vol.7】でも、シングル曲「相思相愛」をはじめ、「よるのうみ」「skirt」という新曲も歌われてましたもんね。

aiko:はい。【Love Like Aloha vol.7】はフリーライヴなので、新曲じゃなく、なるべくみんなが知ってくれている曲がいいなと思っていたのもあって、アルバムの曲はあまりセットリストに入れるつもりはなかったんですけど、「よるのうみ」「skirt」は歌いたくて。「よるのうみ」はギターのトレモロがあの場所に似合いそうだなと思って歌うことにしました。


――アルバム制作はいつ頃から始まったんですか?

aiko:今回、アルバムを作ろうと思ったキッカケは、【Love Like Aloha vol.7】が出来ることが決まって、だったらその前に頑張ってアルバム出したい! ってことになって。そこからアルバム作りが始まっていったんです。それが今年の4月くらいで、レコーディング自体は5月に入ってから始まりました。


――8月リリースのアルバムのレコーディングが5月から!?

aiko:そうなんです(笑)。レコーディングしてるミュージシャンのみなさんも「え!? これ来年出すアルバムじゃないんですか!? 本当に8月ですか?」って。「はい。8月です!」って言ったら、ビックリしてました(笑)。無事リリース出来て良かったです(笑)。本当にみなさんのおかげです!


――その時点で、大まかな構想とかはあったんですか?

aiko:いえ、なかったんです(笑)。本当に急に「アルバム作ろう!」ってなって。


――楽曲のストックはあったんですか?

aiko:ストックはなんとなくいつもある状態なんですけど、今回のアルバムの中には、そこまですごく古い曲というのはないです。1曲だけ「ガラクタ」という曲は、5、6年前にはありましたけど、あとは最近です。アルバムの中で一番新しいのは「blue」で、今年の6月に書いた曲です。レコーディング中に作った1曲だったんですけど、たまたまパソコンを見てたら“blue”っていう文字が目に入ってきて、ふと曲を作りたくなって、感じたままをピアノで弾いて、曲にしたのが「blue」だったんです。


――「blue」はアルバムの1曲目ですよね。最初に『残心残暑』を聴いたとき、すごく新しさを感じたんです。

aiko:ありがとうございます。私も「blue」には新しさを感じました。


――「blue」はハッとさせられたんです、初めて聴いたとき。

aiko:自分でも作っていく段階も含めて新しさを感じました。浮かんだ気持ちとかメロディラインをギュッと詰め込んだ、新しい曲の出来方だったから、嬉しかったですし、いろんな曲の作り方ってあるんだな、まだまだやっていないことがいっぱいあるなって思ったキッカケにもなった曲です。今回は初めてこういう作り方をして、自分的にもいいなって思える曲が出来て良かったって思ってます。


――aikoちゃんは楽曲を作るとき、基本詞先(歌詞先行)ですもんね。

aiko:そうですね。でもここ数年、ツアーをやっていく上で「音楽って自由なんやな」って、これまで以上に感じる様になったこともあって、この先は、曲作りもより自由にやっていけたらいいなと思っています。その場の感覚で物を作っていくって、本当に快感なんです。「blue」は、歌詞も少し大人になれてる自分を感じました。そう思えるようになって良かったなって思えた1曲でもあったんです。


――アレンジもすごく素敵ですよね。先日ドキュメンタリー番組『情熱大陸』を拝見したんですが、レコーディング時のやり取りとかもすごく楽しそうでしたよね。いつもこんな感じでaikoの音楽は出来上がっていくんだなぁって、すごく興味深かったです。

aiko:アレンジャーの皆さんも。ミュージシャンの皆さんも本当に素敵なんです。「blue」のアレンジは島田さん(島田昌典)なんですけど、「ガラクタ」のアレンジも同じく島田さんにやっていただいて。本当にすごく素敵に仕上げてくださいました。「ガラクタ」のピアノは、ピアノに毛布をかけてレコーディングをしていて音が切なくて、くぐもっていて、「ここモスクワかな?」って思いました!


――たしかに、「ガラクタ」のピアノ音色は魅力的でした。

aiko:常に曇天の北欧の映画みたいな空気感で、とても素敵で感動しました。


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ライヴハウスツアーにしたい

――音色へのこだわりは今作でも随所に感じますよね。ピアノで言うなら、「skirt」はイントロのちょっと暗めで影のあるピアノのフレーズこそ、aiko節だなと。1音目から“aikoしか感じない”くらいに“aiko節”だったんです。

aiko:そこを“aiko節”だって感じてもらえるのがすごく嬉しいです。




『skirt』music video


――「鮮やかな街」のイントロも素敵でした。

aiko:「鮮やかな街」はトオミさん(トオミヨウ)がアレンジしてくださったんですけど、トオミさんがアレンジを上げてきてくださったものを聴くと、更にそこからメロディーを付け足したくなるんですよ。もっと歌いたくなるというか。


――素敵な相乗効果ですよね。「blow」の間奏のベース音と絡まっている音がすごく気になって。あの音は?

aiko:あそこはフルートを重ねているんです。繊細でとても好きです。「blow」も島田さんのアレンジです。


――心地良いというか、ずっと音に身体ごと沈めていたくなるというか。

aiko:レコーディングのとき、まさにそんな感覚でした。「素敵! もっとなんかしたい! もっともっと!」って思ってしまって。


――終わりがないですね(笑)。

aiko:そうなんです、終わりたくないんです(笑)。


――aikoちゃん、ライヴでもいつも「終わりたくない!」って言いながら歌ってますもんね、最後の曲のときとか(笑)。

aiko:最初にも言ったんですけど、ずっと歌っていたいです。


――ずっと聴いていたいです。aikoちゃんとファンのみなさんの関係はそういう意味でも、“相思相愛”ですね。

aiko:そうであってほしいし、ずっとそうであってくれたら嬉しいです!


――少し肌寒くなってきた今の時期、『残心残暑』っていうタイトルもすごく響いてきます。

aiko:ありがとうございます。今回、8月30日に【Love Like Aloha vol.7】が決まって、8月28日にアルバムを発売することが決定したちょっと後に、タイトルは『残心残暑』にしようと決めました。そのときは本当に思い付きだったんですけど、作っていくうちに、自然とその言葉に導かれていった感じだったんです。なんかいい言葉だなって。


――ちょっと寂しく、切ないですよね。でも、そこからキラキラとした思い出が覗いて見えるみたいな。

aiko:そうですね。そんな思いが、曲を通して伝わってくれたらいいなって思ってます。結果的に、いろんなことが全部繋がっていったらいいなって。


――先程、ライヴへの心情の変化も語ってくださいましたけど、ライヴについてもお聞きしていいですか? 少し前になりますが、6年ぶりの【Love Like Aloha vol.7】はいかがでしたか?

aiko:本当に楽しかったし、最高でした! 直前まで天候の心配はありましたが、スタッフの皆さんと慎重に安全策を練って無事開催することができました。


――ライヴでもそのままの気持ちをMCで叫んでましたよね。

aiko:はい。本当に嬉しくて。みなさんに感謝しかないです。そんな想いもあって、無事に開催出来たライヴでもあったので、最高に楽しかったです!


――10月3日からは【Love Like Rock vol.10】(10月3日の東京・Zepp Hanedaから2025年3月29日の大阪・Zepp Osaka Baysideまで9か所32公演で開催)が始まりました。

aiko:年を跨いでライヴが出来るのもすごく嬉しいし、声出しもOKになってディスタンスの規制も自由になってからは、初めてのライヴハウスツアーなので、みんなに思いっきり近づいて、濃厚なライヴハウスツアーにしたいなって思ってます! ホールもアリーナも全部大好きなんですけど、やっぱりライブハウスも大好きです。


――全力で走り回ったりするから、“aikoちゃんには大きい会場が似合う”って思っている人も多いと思いますが、ライヴハウスのaikoちゃんのライヴは、またホールとかとは違った魅力があるんですよね。

aiko:自分がライヴハウスでライヴを観に行ってたとき、あの距離でライヴが見られることがすごく嬉しかったのが、今も忘れられないんです。みんなにもそう思ってもらえるようなライヴが出来たらいいなって思っているので、全力で頑張ります!


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