Special
<インタビュー>FAKE TYPE.、エレクトロスウィング“以外”を追求した新作『Cats are dangerous EP』に迫る
Interview & Text: ノイ村
昨年11月のメジャー2ndアルバム『FAKE SWING 2』のリリースを経て、2024年はFAKE TYPE.にとって大きな飛躍の年となった。同作を引っ提げての全国ツアーや結成10周年を記念したビルボードライブの開催、昨年のロサンゼルス公演に続くハワイとアラバマでの海外公演、初の音楽フェスティバル出演となる【JAPAN JAM 2024】への参加など、彼らの鳴らすエレクトロスウィングの旋風が、国内外を問わず次々と各地で巻き起こっていったのである。
だが、前作から約10か月ぶりにリリースされる新作『Cats are dangerous EP』は、意外にもエレクトロスウィング“以外”の楽曲に重きを置いたコンセプチュアルな作品。今回のインタビューでは、本人いわく“箸休め”と語るものの、とてもそう思えないほどに濃密な本作の制作背景や各楽曲の解説を中心に話を伺った。そこから見えてきたのは、ブレることなくやりたいことを突き進めてきたFAKE TYPE.が手にした、充実した「今」の姿である。
「やりたいことをやれているという状態が一番良いと思うんですよ」
――今年は昨年以上に幅広く活躍されているかと思うのですが、特に、FAKE TYPE.にとって初のフェスティバル出演となった【JAPAN JAM】について、それこそFAKE TYPE.を初めて知るような方々もいらっしゃったと思うのですが、実際の手応えや反応などはいかがでしたか?
DYES IWASAKI:楽しかったですね!まさに、これで初めて僕たちのことを見てくれたという方が多かったと思うんですけど、めちゃくちゃノッてくれましたし、音楽が好きで、ライブに慣れている人が多いからなのか、僕たちのことを初めて見るはずなのに、煽ったらちゃんと返ってくるような感じもあって、ものすごく楽しかったです。
――FAKE TYPE.の音ってものすごくフェスティバル映えすると思うんですよ。それこそ夏フェスで聞いたら、もう絶対に盛り上がるでしょうし。実際に、その破壊力のようなものって感じられましたか?
DYES IWASAKI:それはもう本当に感じましたね。他のフェスティバルにも出てみたいなと思いましたし、是非、来年はもっと呼んでほしいですね!。
――今回は『Cats are dangerous EP』のお話がメインではあるのですが、その前に、7月にDYESさんがソロでリリースされた『D.I. SWING』についてもお伺いしたいなと思っていて、この作品はどういった背景で制作されることになったのでしょうか?
DYES IWASAKI:実は昔からボカロPとして活動をしてみたいという気持ちがあったんですよ。それで、ずっと「じゃあ、何をしよう?」というのを考えていたんですけど、ある時、エレクトロスウィングの歌モノをボカロでやってみたいという気持ちが芽生えてきて、そこからですね。
――作品自体も、まずはゲストのVTuberの方々(宝鐘マリン、沙花叉クロヱなど)が歌うバージョンがあって、初音ミクが歌うバージョンがあって、インストゥルメンタルがあるという3部構成になっていますよね。個人的にもすごく画期的な作品だと思いました。
DYES IWASAKI:作品にも参加頂いているボカロPのbizさんに相談したら、ボカロ曲単体で出すんじゃなくて、歌唱者がいるバージョンとボカロのバージョンを同時にリリースしたら面白いんじゃないかというアドバイスを頂いて「確かに!」と。僕もボカロPとして活動するのは初めてだったので、面白いと思ってもらえる方々を呼んだ方が、もっとたくさんの方々に聴いていただけるのかなという想いもありましたし、それで好きな方々にお声がけしてみました。結構ダメ元でお願いしていたところもあったんですけど、意外とOKをいただくことができましたね。
【XFD】DYES IWASAKI 4th ALBUM 「D.I. SWING」
――アルバムにはTOPHAMHAT-KYOさんも作詞で参加されていますが、実際にDYESさんのソロ制作の様子を見ていていかがでしたか?
TOPHAMHAT-KYO:DYESがソロをやってみたいっていうのは、もうずっと言っていたんですよ。なので、それを忠実に形にしている、やりたいことをちゃんとやれているんだろうなというのは思っていましたし、それは曲だけではなく、曲を作る過程でちょっと話を聞いたりする中でも感じることができましたね。やっぱり、やりたいことをやれているという状態が一番良いと思うんですよ。だから、作品も素晴らしいんですけど、それと同じくらい、そういう状態になっているということが素晴らしいですね。
DYES IWASAKI:18歳前後くらいの頃に、MEIKOやKAITO(初音ミクの前に発売されたクリプトン・フューチャー・メディア社のボーカロイド製品)でボーカロイドというものを知って、面白いなと思っていたら初音ミクが爆発的にヒットして、その当時からボカロ曲を聴いていたので、やっぱりいつかやってみたいなというのは思っていたんですよね。実はこれまでにもやろうとしたことはあったんですけど、うまく形にならなくて。でも、あれから時を経て、やりたいことが明確に見えるようになったので、満を持してやってみました。
「エレクトロスウィングじゃない」方向性
――なるほど。実際、ソロ作品ではありつつも、まさに今のFAKE TYPE.のクリエイティブ面における充実ぶりを感じさせるような作品でもあると思うんですよね。そうした活動を経た上での今回の新作になるかと思うのですが、今回の『Cats are dangerous EP』はどのような経緯で制作されることになったのでしょうか?
TOPHAMHAT-KYO:実は元々、とあるエレクトロスウィングじゃない楽曲がありまして、それをリリースするために「エレクトロスウィングじゃない」コンセプトのEPを作りましょうという話があったんです。だけど、その曲は大人の事情で入れることができなくなってしまって、でもコンセプト自体は僕らとしてもやりたいと思っていたので、別にこれが入らなくてもいいからやろうということで、「Cats are dangerous」という楽曲が生まれたのを皮切りにして本格的に制作が進んでいきました。「Zillion playerZ」はエレクトロスウィングですけど、EPの制作時期に生まれた楽曲だったので、まぁ1曲くらいエレクトロスウィングの曲があっても面白いんじゃないかということで入れていますね。
「Cats are dangerous」ミュージック・ビデオ
――なぜ、今回は「エレクトロスウィングじゃない」方向性の作品を作りたいと思われたのでしょうか?
DYES IWASAKI:やっぱり、同じものをずっと食べ続けていると、ちょっと辛くなってくると思うんですよ。お寿司を食べている時にも、やっぱりガリを食べたくなるじゃないですか?そういう箸休め的なところはありますね。
――とてもガリとは思えないくらいに濃密な仕上がりの作品ではあると思うのですが…。
DYES IWASAKI:それはそうですね(笑)。でも、やっぱり同じことをずっと続けるよりも、たまには違うことをやった方がメンタル的にも健康的にも良いということで、ある種の息抜きのようなEPではあると思っています。
――なるほど。では、具体的な楽曲についてお伺いしていきたいのですが、まずはEPが本格的に動くきっかけにもなった「Cats are dangerous」ですね。
DYES IWASAKI:僕がいつもサポートしてくれているギタリストのJohngarabushiさんと一緒にトラックを作ってみようということで生まれたのがこの曲ですね。盆踊りのような「タッカ、タッカ、タッカ」みたいな跳ねたリズムを使ってみたいというのと、エレクトロスウィングを構成する楽器を使って何か別のことをやってみようというコンセプトのもとに作っていきました。それで、作っていく中で「コミカルな曲が作りたいね」ということで声ネタを入れる案が出たんですよ。ちょうどこの曲を作っていた頃に、猫ミーム(2023年頃からSNSを中心に流行した、猫が登場する面白画像や動画)が流行っていたので、試しにその声ネタを入れてみたら二人で「もう、これしか考えられない!」と(笑)。
――「Cats are dangerous」って猫ミームが元ネタだったんですか!
DYES IWASAKI:そうなんです。それをそのままAO(TOPHAMHAT-KYOの通称)に提出しました(笑)。さすがに元ネタをそのままサンプリングして使うのはNGだったので、声ネタの部分は自分たちで録音したものを入れていますね。
――なるほど。でも、「猫」というテーマを題材にしつつも、ミームやトレンドを風刺するようなリリックになっているというのは、FAKE TYPE.さんらしいですよね。
TOPHAMHAT-KYO:やっぱり、ただの「猫かわいい!」って曲にしちゃうと「FAKE TYPE.がおかしくなっちゃった」と思われますからね(笑)。ちょっとしたあるあるネタのようなものは織り交ぜつつ、あとは今回のMVミュージック・ビデオを作ってくれるPPPさんが「ケモノを描きたい」と言っていたので、そういう背景もあってこういう内容になりました。
――まさにFAKE TYPE.さんらしい、ちょっとダークな、寓話的な内容ではありつつ、でも「踊って歌って乗って乗って/世界中を虜」のような部分からは、お二人の姿も感じられたりして。
TOPHAMHAT-KYO:うん、確かにそうですね。そこは自分たちの想いなのかもしれないですし、他にも、色々と自分が普段思っていることを、猫というモチーフを使いながら言っているとは思いますね。
――そして、「Zillion playerZ feat. nqrse」。これはゲーム『ゼンレスゾーンゼロ』とのタイアップ曲で、まさに同作のテーマやモチーフがたくさん散りばめられている楽曲ではありますけれども、「俺等のカルチャー "Zero" にさせないぜ」というラインなど、すごくFAKE TYPE.らしさを感じる内容にもなっていますね。
TOPHAMHAT-KYO:そうですね。元々は案件ではあるので、求められていることを忠実にやるという部分はありつつ、タイトルにもあるように「ゼロ」という言葉がキーワードになっているじゃないですか。やっぱり僕ら二人も、nqrseちゃんも、ニコラップ(ニコニコ動画に投稿されたラップ音源の総称)のようなネットラップを出身にして、今でもこうしてお互いに音楽をやることができているので、自分たちがいた畑のことは忘れたくないっていう想いはあるんですよ。だから、俺らがいたネットラップというカルチャーをゼロにさせない、俺らが音楽をやっている限りはゼロにはならない、そういう意味合いも込めていますね。
――なるほど。ちなみに、ゲーム自体に共感する部分もあったのでしょうか?
TOPHAMHAT-KYO:『ゼンレスゾーンゼロ』ってストリートを題材としているところがあって、やっぱりそういう要素は好きですね。なので、ゲーム側からも色々とリクエストはあったんですけれど、書いていて楽しかったですよ。
「Zillion playerZ feat.nqrse」ミュージック・ビデオ
――3曲目に収録された「Apple Juice」は、まさに非エレクトロスウィング的な楽曲で、リリックについても冒頭の「自称ミュージシャン/卒業済み」からの一連のラインの時点でかなり強烈ですよね。これは、AOさんご自身の過去と現在について触れているのでしょうか?
TOPHAMHAT-KYO:そうですね、自分がもうその場所にはいないみたいな、卒業したということを書きたかったんだと思います。「自称ミュージシャン」っていうのは、もし僕が仮に犯罪とかで捕まってしまった時、確定申告をしていれば「ミュージシャン」なんですけど、していなければ「自称ミュージシャン」って報道されちゃうんですよ。でも、そもそも自分はちゃんと納めているので、「自称ミュージシャン」ではないんですけど最初は音楽を趣味でやっていたので、そこが「自称ミュージシャン」だったかなという意味合いですね。
「パパラッチアパッチ/卒業済み」っていうのも、昔は世間の噂やゴシップも好きだったけれど、今は時間の無駄だと思うようになったことを示していて、「排他的否定的/卒業済み」も、昔の自分は割と考えが凝り固まっていて、あまり新しいものを受け入れることができなかったんですけど、最近はそういう時期も終わって、もっと受け入れるようになったり、そういうことを散文的に書いたんだと思いますね。
――そういった想いが込められたリリックが、なぜApple Juice(リンゴジュース)というモチーフと繋がっていったのでしょうか?
DYES IWASAKI:実はこの曲って、元々あるアーティストと一緒にやれたらいいなと思って2016年頃に作ったトラックなんですよ。それは残念ながら実現しなかったんですけれど、当時の音源を僕が今の技術でブラッシュアップしたのがこの曲になっていて。
TOPHAMHAT-KYO:そう、リンゴはその頃の名残なんですよね。それが元々のきっかけではありつつ、りんごって元々は1個のものなのに、りんごジュースのように「みんなから求められるもの」になる場合もあれば、その絞りカスという「誰からも見向きもされないもの」になる場合もありますよね。これはどの界隈でも同じだと思うんですけど、誰かの不幸があって、幸運が成り立っているという、そういう感じを表現したかったんだと思います。やっぱり、頭を使わないと絞りカスの方になっちゃうよねっていう。
「Apple Juice」ミュージック・ビデオ
――そういう前提の元に、「Apple 真っ赤な嘘大感染/FAKE で真実を塗りつぶそう」という、まさにFAKE TYPE.さんの表現が広がっていくようなイメージが描かれているのが印象的です。
TOPHAMHAT-KYO:自分たちは「FAKE」って名乗っていますけれど、でも、そういうやつらがトップに立ったら格好良いみたいなところはあるじゃないですか。だから、うそぶいているわけではないですけど、そういう見え方、真っ赤な嘘のような表現としてそれが広まっていって、FAKE TYPE.という存在をみんなが認識してくれたら嬉しいという気持ちはありますね。
――ただ、一方では「いつでも潜んでいる転落/日々の積み重ね忘れりゃ天罰」のように、常に足元に気をつけているようなところもありますよね。
TOPHAMHAT-KYO:やっぱり、どうしても信じられないくらい歓声を浴びたら天狗になっちゃうじゃないですか。そこで、ちゃんと手綱を握りしめて抑制していかないといけないよというのを、自分自身に言っているところはありますよね。今回は「エレクトロスウィングではない」というテーマがあったので、結構自由に書いているんです。だから、自分のそういう内面的な部分がより出ているのかもしれないですね。
FAKE TYPE.にとって“FAKE”とは
――4曲目の「No more work feat.Sarah L-ee, Fuma no KTR」は、まずは何と言ってもSarah L-eeさんとFuma no KTRさんという二人のラッパーを起用されていることがポイントですよね。Fuma no KTRさんについては、まさに前回のインタビューの際にもAOさんが最近注目されている方として名前を挙げられていましたが、これはお二人からお声がけされたのでしょうか?
TOPHAMHAT-KYO:そうですね。今回はこういうEPということで、それぞれが呼びたいラッパーを一人ずつ選ぼうということになって、以前から繋がりもあったので、Fuma no KTRくんに直接声をかけました。
DYES IWASAKI:Sarahちゃんは、元々10年ちょっとくらい付き合いのある友達なんですけど、こういう格好良い系のトラックにバチバチのラップを乗せてくれたら良いんじゃないかなってずっと思っていたんですよ。いつか一緒にやれたらいいなと思っていたので、今回提案してみたら快諾してくれました。
FAKE TYPE. のNew リリース
— Fuma no KTR (@Fuma_no_KTR) August 23, 2024
「Cats are dangerous EP」
4. No more work feat. Sarah L-ee,Fuma no KTR
に参加させていただいております!😈
僕のラップの色んな部分に影響を与えてくれているFAKE TYPE. との楽曲!是非お楽しみに🥰https://t.co/NwlgxCDhdW
――実際にFAKE TYPE.の楽曲に二人のヴァースが入ってみていかがでしたか?
TOPHAMHAT-KYO:(DYESの方を見て)やっぱりちゃんとしてたよね?
DYES IWASAKI:そうだね! 思っていた以上にめちゃめちゃ良いものを出してくれて、最高でしたね。
――このリリックは、働いている身としてはなかなかに耳が痛いものがありますけれども…。
TOPHAMHAT-KYO:やっぱり、そもそも日本人は働き過ぎな傾向があると思っているので(笑)。(ゲストの)二人には、タイトルと自分のヴァースと、あとはサビだけを完成させた状態で、特にテーマや詳細を伝えずに「こういう感じでやりたい」と渡してみたんですけど、ちゃんと汲み取ってくれましたね。二人の仕事感みたいなものをちゃんと表現してくれているなと思います。やっぱり汲み取り力というのもラッパーの能力値だと思うので、改めて二人とも素晴らしいラッパーだなと思いましたね。
――これはトラックもオールドスクール・ヒップホップ的で、めちゃくちゃ格好良いですよね。
DYES IWASAKI:これも2017年くらいに作った過去のトラックで、いつか使いたいなと思ってずっと温めていたんですよ。それをちょっとだけブラッシュアップして作りました。やっぱりヒップホップらしいものがやりたくて、サンプリングをメインに打ち込みを織り交ぜながら作った曲ですね。
――ちなみに、トラックを作る上で意識されたり、参考にされていたアーティストっていらっしゃるんでしょうか?
DYES IWASAKI:これは確かPSGのトラックを参考にしていて、「PSG現る1972」とかだったかな...。ずっと昔のことなのであんまり正確には覚えていないんですけど、その辺りのリズム感を参考にしていた記憶はありますね。
――そして、最後の曲が「文 -2024-」。これはまさに、これまでFAKE TYPE.が辿ってきた道のりを想起させるようなエモーショナルな名曲ですよね。
TOPHAMHAT-KYO:FAKE TYPE.を始める前に、初めて二人で作った曲が「文」なんですよ。10周年ということで、やっぱりエモい曲を作りたいなというのがあって、DYESに「「文」とほとんど同じトラックが欲しい」と伝えてこのトラックを作ってもらいました。コンセプトとしては、全然うだつが上がらなかった10年前の自分たちへのメッセージソングみたいな感じですね。別に当時とやっていることは変わっていないし、何か意識的に変えるようなこともしていないので、「同じことをやり続けていれば、想像できないくらい楽しい未来が待っているよ」という曲になっています。
――未来への希望はしっかりと感じられつつ、その過程の辛さ、大変さみたいなものも込められていますよね。
TOPHAMHAT-KYO:そうですね。今考えると、結構いかれたことをやっていたなと思いますし…。でも、そんなの当時の自分たちには分からないですよね。だって、それしか知らないんだから。大変だったなというのはありつつ、でも、それは間違いじゃなかったよという、自分たちを肯定してあげるような曲でもありますね。やっぱり、やり続けていないとモチベーションを保てないし、金銭面でもしんどくなってしまうんですよ。やっぱり、夜になってネガティブなことを考えてしまうという時期もありましたから。
――これを書けるということ自体が、FAKE TYPE.にとっての大きな変化でもありますよね。
TOPHAMHAT-KYO:でも、これってクリエイターにとってのあるあるなんじゃないかとは思うんですよね。やっぱりみんなそういう時期を経験しているんじゃないかなって。
DYES IWASAKI:(AOに向かって)でも、報われる人もいれば、報われない人もいるからね。この曲って報われていないと書けないものだと思うし、今の状況があるからこそできたという素晴らしさがあるんじゃないかな。
――まさにそう思いますよ。リリックもすごく力強い言葉が並んでいますし、「奪い取ったビートから芽生えた」というラインが特に印象的ですよね。
TOPHAMHAT-KYO:実は、本当はオリジナルの「文」のトラックはDYESが他の人のために作っていたものだったんですよ。でも、俺がそれを聞いて「めちゃめちゃ良いトラックだ!」って気に入っちゃって、そのまま勝手に「文」を作っちゃったという経緯があるんです(笑)。ちょっとそれで揉めたりもしてしまったんですけど、でも、それがFAKE TYPE.が生まれるきっかけになったので、やっぱりやってきたことは間違っていなかったんだなと思いますね。
――今回は非エレクトロスウィング的なコンセプトではありつつも、やっぱり今のFAKE TYPE.らしさや魅力が濃密に詰まった作品になっていると思います。作品の中でも、FAKE TYPE.を象徴する「FAKE」という言葉がとても印象的に使われているかと思うのですが、10年を経て、この言葉との向き合い方に変化などはあったのでしょうか?
TOPHAMHAT-KYO:僕たちは音楽を学んだりしてきたわけではなくて、お互いに独力でずっとやってきたので、やっぱり「FAKE」と言って差し支えないとは思うんですよ。でも、そう自らを名乗っておきながらもシーンの良い位置までたどり着けたら、それは立派な一つの歴史になるのかなとは思っていて。やっぱり、歴史って辿っていくと面白いじゃないですか。だから、その歴史を自分たちが紡いでいけたら最高ですよね。
――今年は本当にさまざまな活躍をされた一年で、今回のEPもさらなるきっかけになるでしょうし、以前のインタビューの際に目標として語られていた「YouTubeチャンネル登録者数100万人」や「武道館ライブ」についても、だいぶ見えてきたのではないかなと思っています。
DYES IWASAKI:そうですね、チャンネル登録数はこのまま続けていけば辿り着けるんじゃないかと思うんですけど、ただ、ライブの動員を増やすためにはもっと頑張らないと、というのはありますね。
TOPHAMHAT-KYO:それこそ、もっと色々なフェスに出て、かますことができれば見てくれる人も増えるんじゃないかなとは思うんですよね。あとはバズを起こしたり、何かそういうことがあれば、また景色が変わるんじゃないかなと。まずはもっと色々な方にFAKE TYPE.を届けられるように、これからも頑張っていきたいと思います!
関連商品