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<インタビュー>和楽器バンド 無期限活動休止前ラストインタビュー 10年分の感謝とバンドの成長がここに
Text & Interview: 西廣智一
Photos: 筒浦奨太
今年1月7日、日本武道館で開催した【和楽器バンド 大新年会 2024 日本武道館 ~八重ノ翼~】にて、2024年をもって無期限で活動を休止することを発表した和楽器バンド。2014年にボカロ楽曲で構成されたアルバム『ボカロ三昧』でメジャーデビューして以降、和楽器を用いた特殊なバンドアンサンブルと鈴華ゆう子(Vo.)の個性的な歌唱スタイルが唯一無二の世界観を確立、現在に至るまで国内外で華々しい活躍を遂げてきた。そんな彼らが10年にわたる活動を一度締めくくるためのベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS ~八奏ノ音~』をリリース。バンドの歴史を語る上で欠かせない楽曲が並ぶ本作には、リレコーディングした初期の代表曲6曲のほか、「GIFT」「八奏絵巻」という新曲も用意されている。
なぜ彼らはこの大きな節目に無期限活動休止という道を選んだのか。鈴華、蜷川べに(津軽三味線)、黒流(和太鼓)、町屋(Gt. & Vo.)、山葵(Dr.)の5人にその真相を率直に聞きつつ、ベストアルバムの制作過程について語ってもらった。
左から:山葵、町屋、鈴華ゆう子、蜷川べに、黒流
──今年1月の無期限活動休止に関する発表には、大変驚かされました。改めてこの場で、皆さんの口から活動休止に至るまでの経緯を聞かせていただけますか?
鈴華ゆう子:私たちはバンドを組んでからデビューまでが1年ないぐらいで、そこから怒涛のような10年を送ってきたんですが、結成時点ではメンバーはみんな自分のバンドを持っていたり個々で音楽活動を行っていたりしていました。このバンドが一気に注目を集めたことによって、それまでやっていた活動をストップさせて和楽器バンドにすべてを注ぎ込んできたんです。だからこそ、なんとなく10年ぐらいをめどに一度歩みを止めて、音楽家としての個々の活動に再び力を入れてみたいという、決して後ろ向きではない話も出ていたんです。このタイミングでひとまずバンドとしての動きを止めて、それぞれの活動に専念するタームに入っていってもいいんじゃないかっていう話し合いを、1年以上前から重ねていて。
──なるほど。
鈴華:最近、私はこのバンドをアベンジャーズに例えることが増えているんですけど、それは一人ひとりが得意とする世界を持っていて、全員集まったときにアベンジャーズのような強力な存在になるから。なので、ここからはそれぞれが散り散りになり、いろんなことを吸収するために必要な時間という、前向きな活動休止と捉えています。
──思えば、デビュー作『ボカロ三昧』以降からここまでの流れは怒涛でしたものね。
町屋:当初は3年ほどで活休する案もあったんですよ。それも戦略的に、ピーク時にあえて一度活動を止めるという案だったんですが、最終的にはバンドとして10周年までは休まず動こうという話になりました。なので、今回は一度頭を冷やしてもいいかなっていうタイミングでもありますね。
──アーティストによっては数年に一度アルバムやツアーという方も少なくないですが、そういう意味では毎年のように新曲を作り、ステージを作っている和楽器バンドって、めちゃめちゃ勤勉に映るんです。
蜷川べに:それは、私たち自身プロデビューするのが(年齢的に)遅かったのも大きいと思います。みんな下積みの期間がすごく長くてとても苦労してきたから、そういう意味ではちゃんと大人だし、8人で続けていこうっていう気持ちが強かったし。なので10年しっかり走り切って、そのあとは自分自身を見つめ直して、さらにレベルアップできる時間が必要なんじゃないかなと。なので、レベルアップしてからまた集まって、さらにもっといい音楽ができるようにするための前向きな結論なんです。
鈴華:決して下り坂ではないタイミングでの活休発表に、衝撃を受けた方もいるかもしれないけど、無期限としたのは単に期限を決めていないっていう意味だけで。
──その無期限という言葉に対して、解散同然ではと受け取っている方も少なくないようです。
鈴華:特に海外では誤って解散と伝わっていることが多くて、私のもとにも海外から問い合わせが多く届きました。
町屋:音楽マーケットの仕組みも、僕らがデビューした頃からだいぶ変わりましたしね。自分たちも人生の折り返しに入ってきているので、これからどういう音楽人生を歩んでいくか、一旦自分の足元を見るのにもいい機会なんじゃないかと思います。
──僕も今まで、活動休止前や解散前のバンドと何度かインタビューを経験していますが、今日はそういうケースとも空気が違うんですよ。要は、今まで何度かお話を聞いてきたときと雰囲気がまったく変わらないんです。そこに「ああ、バンドを続けるための休みなんだ」と安心を得ることができました。
黒流:なるほど(笑)。
蜷川:それは貴重な意見ですね(笑)。
山葵:地雷はないんで(笑)。
鈴華:この10年、やることが次から次へと決まっていったので、目の前のことをこなすことから一度解放されて新しいことに挑戦するタイミングが欲しいなってずっと考えていたんです。ファンの皆さんにとっては衝撃だと思いますが、人生の中ではすごく自然な流れではありますよね。
蜷川:本当に一人ひとりの人生をちゃんと考えたときに、ここらへんで一度じっくり自分を見つめ直して、もう一度力を貯めるっていう、そういう意味合いです。
鈴華:それに、この8人でやることの重要性を常に大切にしてきたので、この10年で作ってきた8人での空気感を守るためにも、休むときは休み、やるときはやるっていうメリハリを付けてもいいのかなって感じています。
──本当に誠実なバンドだと思いますよ。だって、何も言わずに数年休むことだって普通にまかり通るのに、こうしてちゃんと次を見据えた上で言葉にして伝えてくれるんですから。
鈴華:そう思っていただけるとありがたいですね。
──年末の活動休止に向けて、今年は水面化でいろんな準備をしていたと思います。今回リリースされるベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS ~八奏ノ音~』もそのひとつですよね。実際に聴かせていただくと、この10年の歴史をたどっていくような構成がすごくドラマチックで、胸にくるものがありました。
町屋:やっぱり代表曲をただ並べただけのベストアルバムにはしたくなくて。過去にもベストアルバムは何枚か出してはいるんですけど、今回はデビュー10年という節目なので初期の楽曲をリレコーディングして、ファンの方々と歩いてきた10年間を振り返れるような内容にしようと考えました。そういう意味では、今回のアルバムはかなり力を入れて作りましたね。
──これだけお馴染みの曲がずらりと並ぶ構成なのに、ベストアルバム感があまり感じられないというか。新たなオリジナルアルバムに触れるようなストーリー性が伝わってきます。
町屋:例えば『オトノエ』(2018年)はいろんなジャンルに挑戦して、アプローチも一番自由だったアルバムで、コロナ禍に出した『TOKYO SINGING』(2020年)は当時の情勢を捉えて自分たちが思っていることがコンセプトになったアルバムでしたが、今回は10年間の我々の歩みをテーマにしています。だから曲順もいろいろなパターンを考えたんですけど、リリース順に並べることで我々の軌跡をともに辿ることができるという、かなりコンセプチュアルな構成になっていると思います。
蜷川:しかも(リレコーディングした)初期の曲になればなるほど、音質が(当時の音源と聴き比べると)まったく違うものになっているので、そこはファンの皆さんにとっても喜んでもらえる部分だと思います。
町屋:録り直して「前のほうがよかった」とか「勢いがなくなって落ち着いちゃったね」って言われることが、我々としては一番懸念していた点ではあって。基本的にフレーズはオリジナルから変えていなくて、この10年間ライブで演奏し続けてきて、それぞれの手癖とかでフレーズが変わってきた程度しか演奏的には変わってないんですよ。この10年で培ってきた我々のアンサンブルのセオリーを用いて、初期の6曲を録り直したって感じですね。
鈴華:私も昨日聴き返したけど、音圧がめっちゃすごかった。
──わかります。特にリズムのズシンとくる感じがより増していて、本当に気持ちよくて。
山葵:特に「六兆年と一夜物語」のオリジナルはだいぶ軽く聞こえますしね。
町屋:腰が上がってるよね。
山葵:そう、すごい腰高で。疾走感の強い曲だから、本来はずっしりと構えていなくちゃいけない部分もあるんだけど、当時はまだそこまで表現できなかった。でも、こうやって10年間培ってきたもののおかげでようやく形になったというか、10年分の重みをサウンドでも感じてもらえるのかなって思います。
──山葵さんに関して言えば、この10年で肉体的にも変わりましたものね。
山葵:そうですね(笑)。デビュー当時はひょろひょろだったので、今は一発のパワーが全然違うでしょうし。
蜷川:当時は細かったもんね(笑)。
町屋:あと、途中でドラミングのスタイルが変わったよね。
山葵:手数を減らしてでも一発一発を強く叩く系のドラミングに途中から変えたんですよね。
町屋:それこそ、神永(大輔)も尺八奏者としてはとても器用なので上達っぷりがあまり伝わらないかもしれないですけど、それでも10年前と比べると古典とかの静かなものの演奏がすごくしっかりしてきたと思っていて。8人それぞれに成長したポイントはあると思います。
──リレコーディング・バージョンを聴いて、和太鼓の存在の大きさも改めて感じました。低音をただ重く太く聴かせるだけじゃなくて、音に奥行きというか広がりを持たせている大事な役割を果たしているなと。
町屋:チューニングはまた別の話として、ドラムの音色って楽器の構造的にわりと決まりやすいんですけど、それに比べて和太鼓って不確定要素がとても強い楽器なんです。それは太鼓だけでなく、和楽器全般的に不自由で不安定。改良され続けて今の形に至る西洋楽器と、途中で進化をあえて止めてそのまま存続している和楽器はまったく別ものだと思っていて。かっちりとした西洋楽器の音色にはないオーガニックなものを和楽器は持っているので、そこをうまく調和させることこそ和洋折衷だと思うんですよね。
黒流:そうですね。そもそもロックはギターやベース、ドラムがあれば成立するわけで、和楽器は必ずしも必要ではない。ただ、このバンドでは邪魔にならないように入ればいいのではなくて、絶対に必要な存在にならなければいけないし、必要だから入れている音にしないといけない。和楽器バンド以前は実例がひとつもなかったですし、それは今も続いていますが……ずっと試行錯誤している最中でもあります。最初の頃はノウハウもないから、和太鼓の音がドラムやベースとぶつかって消されてしまうのが当たり前でした。
そういうところから和楽器隊はスタートしているんですけど、今はまっちー(町屋)がエンジニアとして関わっているから、全部クリアに聞こえる状態になっていますよね。アルバムに先駆けて「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」と「千本桜(Re-Recording)」が配信されていますけど、僕はフレーズも掛け声も、なにも変わっていないんです。ただ録り方が変わったからか、いろんな人に「和太鼓のフレーズが増えた」とか「掛け声が増えた」って言われるんですよ。そういう意味では、自分の存在意義も含めてどうすれば和楽器がより豊かに感じられるのかの挑戦と結果が、このリレコーディング・バージョンに表れていると感じますね。
蜷川:三味線も、この10年間で和楽器との相性がいいエンジニアさんと出会えたことで、一つひとつの音がちゃんと粒立ちした生の音を聞かせられるようになりました。三味線のフレーズは和太鼓と一緒で、「細雪」以外はほとんど変えていなくて。手癖が加わってライブで変わってきたところもあるんですけど、やっぱり三味線の音の出方が以前とはまったく違うので、ようやく完成の域に達したのかなと感じています。
──ボーカルに関してもオリジナル・バージョンの魅力を引き継ぎつつも、より深みの感じられるものに進化していると感じました。
鈴華:肉体が楽器であるボーカリストにとっては、この10年間たくさん聴かれてきた楽曲を録り直すことにかなりのプレッシャーがあるんです。原曲が一番好きだというファンって絶対にいるじゃないですか。でも、先行配信された2曲に対する皆さんからの感想を聞くと、歌も含めてちゃんとバンド全体の成長を感じ取ってくれていて安心しました。
──アルバムにはリレコーディングされた初期の6曲以外にも、「GIFT」「八奏絵巻」という本作のために制作された2つの新曲が用意されています。「GIFT」はゆう子さんが作詞・作曲を手がけた、ポジティブなアップチューンです。
鈴華:このアルバムを作る際にスタッフを含めたチームでの話し合いの中で、新曲を2曲入れることになって。それぞれ感謝を伝えるための曲っていうテーマのもと、それぞれが書き下ろす時間があったんですけど、私はそのテーマをいただいた瞬間に一番早く曲を書き上げたんですね。今伝えたいメッセージが言葉としてつらつら出てきたし、とにかく10周年のラスト、かつ活動休止前のライブの自分がどういう姿で、どんなメロディを歌っていたいかをイメージして、前向きで明るいメロディで、テンポもパッと浮かんで、ピアノの弾き語りで1日ぐらいで完成させました。歌詞にはコロナ禍からよくMCで口にしてきた言葉を散りばめているので、ファンの方々には「いつもゆう子さんが言っていた言葉だな」と受け取っていただけると思います。「GIFT」というタイトルも、私にとってこのバンドはギフトだったから。このバンドが誕生したおかげで自分の人生がガラリと変わったし、この8人で紡いできた音楽がファンの方々にとってもギフトであってほしいという思いはもちろん、双方にとって人生を大きく変えてくれた存在が和楽器バンドっていうテーマの曲になっています。
蜷川:伝えたいことは全部、この曲に詰まってるよね。
──この曲を聴いたら、バンドの前向きさがしっかり伝わると思います。
町屋:このインタビューを読んでからこの曲を聴いていただければ、活休をネガティブに捉えていた方々が想像していたものとは少し違うことがわかっていただけるかもしれないです。
鈴華:海外の方にもこの思いが届いてほしいですね。
──この爽快感が「次に向けて進むんだ」っていうポジティブさにつながって、こちらも安心して見送れるところもあります。
鈴華:本当にそれを伝えたかったんです。音を聴いたら「あ、前向きな活休なんだ」ってわかってもらえる曲を書きたかったので。
──ファンの皆さんも笑顔で「待ってるからね」と見送ってくれる1曲なんじゃないかと思います。
鈴華:泣くなって言ってるけど、みんなで泣こう(笑)。
蜷川:マスタリングのときも1曲目から聴いていて、2人(鈴華、蜷川)はこの曲ぐらいから様子がおかしくなりましたから(笑)。1曲目から続けて聴くと、この10年の歴史が走馬灯のようによみがえって、「GIFT」でゆうこりんが泣かせにくるという。最高の流れです(笑)。
──で、ラストにはもうひとつの新曲「八奏絵巻」。この曲は作詞・作曲が和楽器バンド名義になっています。
町屋:作ったのは僕なんですけど、「GIFT」がデモの締め切り日よりも2週間ぐらい前に上がってきて、それを聴いた瞬間に「感謝を伝えるメッセージ枠はこの曲でいいな」と思って。今回のベストアルバムが今までと大きく違うのが、ファンから(収録曲に関して)アンケートを取っていたこと。アンケートの上位曲を中心に選曲したんですけど、選ばれる曲ってある程度は想像できるじゃないですか。トップ100のうち、ガバッと抜け落ちる中間の曲もたくさんあるわけで、そういう曲に投票した人たちの期待に添えるように、可能な限りマッシュアップできないかなというところから曲作りをスタートさせたんです。
──ああ、なるほど。それでクレジットがバンド名義なんですね。
町屋:はい。実際ものすごく時間と労力がかかる作業なので、まずこの意見が通るかどうかを選曲会議のときに曲を持っていかずにプレゼンをしてみて。その段階では1stアルバムと2ndアルバム『八奏絵巻』までの分析は終わっていたんですけど、それ以上やって企画が通らなかったら徒労に終わるので、続きは企画が通ってからにしようと思ったんです。で、この企画が通ったんですが、メロディの抑揚とかでAメロ、Bメロ、サビみたいな決め方ができるのかなと思っていたら、楽曲によって歌詞での言葉遣いが全然違うことに気づき、そこもある程度統一しなくちゃいけなくなって。その調整も大変でした。実質僕が作業したものではありますが、みんなで作ったフレーズをサンプリングした、みんなで作った作品なので、初めて和楽器バンド名義にしました。
制作中もファンの方々の顔がちゃんと見えていて、バンドメンバーやスタッフ全員のことを頭に浮かべながら作ったので、そういう意味ではバンドの原点に立ち返ることができた曲ですね。
蜷川:「GIFT」で感謝の気持ちを全部伝え、10年間の楽曲がちょっとずつ散りばめられている「八奏絵巻」で、それを探していくことも楽しんでもらえると思います。
町屋:最終的に何曲使ったかは忘れちゃいましたけど、僕がサンプルで取ったのは80曲強。全部メロディとコードを同じキーにして書き出して、そこからワード抽出をしてという作業を2週間ぐらいしていました。理想を言えば1~2か月は欲しかったんですけど、楽曲制作なんてだいたい締め切りの上で成り立っているところもあるので(笑)。
山葵:この曲の答え合わせが欲しいですよね。僕たちも全部を把握しきれていないので、どこにどのサンプリングがあるのかは知りたいな。
黒流:同時に流れてるのもあるの?
町屋:左チャンネルと右チャンネルで別の曲のサンプリングを流しているものもあります。
──活動休止に入る前の作品でここまで実験的なことをして遊んでくれるんだっていう。音楽ファンとしてはただただ嬉しい限りです。
町屋:これまでの活動をフェーズ1として、その区切りをどうすべきかを音源ベースで考えたときに、感謝の気持ちを伝えた上で10年間の歩みをすべて辿れる曲があったらいいなと思っていたので、うまいことできてよかったです。
今まで以上にカッコいいライブを
──このアルバムを聴いてよりポジティブに感じられたポイントがあって。1曲目の「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」に入る前に映写機の音が入るじゃないですか。あれは「ここから過去を振り返っていきますよ」というちょっとした演出なのかなと思っていたんですが、アルバムがエンディングを迎えてもこの映写機の音が止まるような演出は入っていない。それはつまり、バンドはここからも新しい物語を描いていくんだという意志の表れだと思ったんです。
町屋:しっかり伝わっていましたね。映写機の演出はどこかで使いたいなって最初から思っていて。最初は我々の初めてのオリジナル曲「華火」に映写機の音を乗せようと考えていたんですけど、アルバムの全体像が見えてきたときに「やっぱりプレイヤーの再生ボタンを押したときに映写機が回ってほしいよな」と。そうすることで1曲目からリリース順に並んでいることにも意味が出てきますし。
鈴華:気づいてもらえているかわからないですけど、「GIFT」の中に〈歯車は誰も止められない〉っていう歌詞があるんですけど、私の中では8つの歯車という気持ちを乗せて書いていて。カチッとはまった8つの歯車は周りがどんなことを言おうが、回りだしたら誰にも止められないっていう気持ちの表れなんです。映写機が止まらなかったとおっしゃいましたけど、本当にそのイメージのとおりで、ずっと回り続けていく思いは、この一節にも込められています。
町屋:アルバムの終わり方も結構考えたんですけど、やっぱり本編のラストは「GIFT」なので、「八奏絵巻」のエンディングでくどく引っ張りたくなくて。去り際、散り際に美しさが見られるのが日本の侘び寂びのいいところだと思うので、最後はカットアウトで終わる形にしています。それぐらいあっさり終わると、ループしても「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」がまた聴きやすいんですよ。
──確かにボリューミーなわりには長いとは感じず、繰り返し聴きたくなる構成です。このアルバムを携えて11月から12月にかけてツアーを回り、10年にわたる活動に一区切りをつけることになります。ツアーはひたすら楽しいものを期待すれば間違いないですよね?
黒流:そうですね。活休に対する悲しさや寂しさが頭の片隅にある中で皆さんにチケットを買っていただいているので、ライブではそれを1秒でも多く上回ってほしくて。「とにかく楽しかった」とか「今日来てよかった」とか、未来が明るく見えるような、しょんぼりしていた人も元気になって帰っていただきたいんです。そういう意味でも、今まで以上にカッコいいライブをやっていきます。
町屋:いつものツアーだと作品をリリースしたその週や翌週から各地を回って、お客さんと一緒にその作品や楽曲を育てていましたが、今回は年末が近いということもありますし、感覚的には毎年新年に行っている【大新年会】に近いのかなと。特に今回はライブの本数が少ないというのもあるし、届けられるお客さんの絶対数があるので、ライブで新曲を育てている時間も足りない。なので、初日から【大新年会】ぐらいの出来上がった状態で我々のフェーズ1の散り際を見届けていただきたいです。
山葵:散るんですか?
蜷川:一旦ね(笑)。そう思うと、ツアー一発目からプレッシャーが……頑張ろう!
町屋:ファイナルに向けてエンジンをかけていく感じが今回はないから、始まりから全力で臨むという。
黒流:【大新年会】を5回やる感覚だよね(笑)。
蜷川:和楽器バンドはライブが真骨頂って言い張ってるぐらい、みんながパフォーマンスに自信を持っていますし、8人の誰を見ればいいのか、目の行き場に困るぐらいのステージを心がけてやっているので、和楽器バンドのライブにまだ来たことがない方にも来てほしくて。マジでこの機会を逃したらしばらくは見られないので、海外の方もぜひ来てほしいですね。
──しばらくの見納めであると同時に、再会を約束する場所でもありますからね。
鈴華:ですね。今から何を話そうって考えているんですけど……。
町屋:メンバー何人泣くかな?
黒流:むしろ、1曲目から俺が涙声で煽ってるかも(笑)。
山葵:泣いて黒流さんの声が裏返ってそう(笑)。
蜷川:最後の砦の黒流さんが泣いたら全員泣きますよ。
町屋:黒流さんが泣いてることに感動して、こっちが泣いちゃうかもね。
鈴華:皆さん、そんな黒流さんを抱きしめにきてください(笑)。
リリース情報
ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS ~八奏ノ音~』
2024/10/9 RELEASE
<初回限定LIVE盤(CD+Blu-ray)>
UMCK-7253 8,500円(tax in.)
<初回限定Document盤(CD+DVD)>
UMCK-7254 5,280円(tax in.)
<CD Only盤(2CD)>
UMCK-1778 4,290円(tax in.)
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Live Blu-ray『和楽器バンド 大新年会 2024 日本武道館 ~八重ノ翼~』
2024/10/9 RELEASE
<初回限定盤 Blu-ray(本編DVD付き)>
UMXK-9042 12,100円(tax in.)
<通常盤Blu-ray(本編DVD付き)>
UMXK-1117 8,800円(tax in.)
Blu-ray購入はこちら
ツアー情報
【和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS ~八奏ノ音~】
11月22日(金)・23日(土)東京・LINE CUBE SHIBUYA ※SOLD OUT
11月28日(木)大阪・オリックス劇場 ※SOLD OUT
12月8日(日)愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール ※SOLD OUT
12月10日(火)東京・東京ガーデンシアター
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※すべて税込み
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