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木村カエラ 『HOCUS POCUS』 インタビュー
『どこ』から受けた衝撃を残したまま、新しい自分探しの旅に出た木村カエラ。果たしてこれから何を私は発信していくべきなのか? その答えを出せずにアルバム制作へ突入した彼女は、とにかく今思い浮かぶ限りの言葉を難産に苦しみながらも綴っていった。これはシリアスなアルバムになってしまうかもしれない……。そんな予感もあったそうだが、気付けば、本人曰く「ムカつく」ぐらい(笑)いつにも増してポップなアルバム『HOCUS POCUS』が完成。一体そこにはどんなメカニズムが働いたのか、本人と共に探った。
今まで歌ってこなかった“未来”を歌っている
--3月30日からの1週間「saku saku」MC復活。とてもスペシャルなことではあったと思うんですが、とてもナチュラルに楽しんでましたね。不思議なぐらい、あの屋根の上が似合う人なんだなと、改めて思いました(笑)。
木村カエラ:アハハ! 3年ぶりだったので収録前は意外と緊張もあって。少なからず当時は今より子供だったので、あの根拠のない自信とだらだら感は出せないんじゃないかと思っていたんです。もうあの頃と違う自分が今はいるからなぁって。でもあそこに行くとあの空気になりました。普通に「ただいま」って家に帰ってきたみたいな感じであの場に座ることができたんです、意外に。不思議な感覚でしたね。
--木村カエラが持つコミカルさって、あの番組がなかったらあんまり前に出てなかったかもしれない。なんて思ったりもしたんですけど、自分ではどう思いますか?
木村カエラ:どうなんでしょうね? でもあの番組で私がどんな人か知ってもらえたし“木村カエラってこういう人だよね”って印象付ける決定的な番組だったと思います。あそこまで普通に会話しているところを見せる場は他になかったと思うので、もし出てなかったら今頃もうちょっとアーティスト色が強かったかもしれない(笑)。
--また、念願の「NEWクレラップ」CM出演もありましたけど、本当この人はやりたいことを気付いたら叶えてる人だなと改めて思いました。
木村カエラ:嬉しかったですね~。あの話が決まったときはすごく興奮しました。で、実際に撮影に参加してみて感じたのが「このノリ、好きだな~」って思うモノって、作ってる人もやっぱりそういうノリなんですよね。そういう人たちに出逢えるのはすごく有り難くて、ましてやそのCMに出れるなんて夢みたいなことだから。そういうモノをどんどん叶えられるのは、本当に幸せなことだと思う。
--そんな面白トピックがたくさんある中、ここ半年ぐらいの音楽制作はどんなモチベーションやシチュエーションの中で行っていたんでしょう?
木村カエラ:そろそろアルバムを発表するタイミングなのは分かっていたので「どんな感じで書こうかなぁ?」と思ってはいましたけど、基本的にはいつもと変わらなかったです。いろんな仕事と同時進行で進めていた感じですね。
--今年1月にリリースした『どこ』で、木村カエラがこれまで歌ってきたことをひとつにまとめてしまった訳ですが、前回のインタビューで「あ、このタイミングで自分はもう変わらなきゃダメだ」と思ったと言ってましたよね。その変化の探求は今どんな状況に?
木村カエラ:変わらず。あの『どこ』から受けた衝撃を残したままアルバムを作りました。自分探しの旅みたいな感じで。でも今回のアルバム『HOCUS POCUS』を作り終えたからといって「どんな風に変わったのか?」「ここからまた変わっていくのか?」っていうところはまだハッキリとは見えていないんです。こうしてインタビューを受けたりする中で、なんとなく「こうだったんだなぁ」って徐々に分かってきてる状態ですね。
--その自分探しの旅みたいなモノは楽しめた感じ? それとも苦しい作業だったんでしょうか?
木村カエラ:どちらかって言うと苦しい作業でした。前回のアルバム『+1』を出したときに「次のアルバムはマイナスできる勇気を持って作りたい」と思ったんです。自分の妄想の世界だけに浸るんじゃなくて、人に分かりやすい言葉だったり、音楽的にもコアではないモノをやりたいと思っていて。で、それだけでも挑戦だったんですけど『どこ』を歌ったことで更にハードルが上がり、あとデビュー5周年であることとか、もういろんなプレッシャーを自分で自分に与えてしまったんですよね。で、答えを導き出したいんだけど、それができないまま制作期間に入ってしまって。もう何を自分が言いたいのか分からない状態で作っていました。
--でも、個人的には『BANZAI』で変化の片鱗を見た気がしました。例えば「飛び上がれ 僕らの未来」というフレーズ。人の心は誰かによって突き動かされ、この世界によってかき乱されることを知った木村カエラだからこそ、打ち出せたメッセージに感じられたんですが、自身ではどう思われますか?
木村カエラ:なるほど。でも『BANZAI』もそこまで意識して書いていた訳じゃなくて「飛び上がれ 僕らの未来」っていう言葉もどうして出てきたのか、あまり憶えてないんです。とにかく『BANZAI』というテーマに沿ってみんなが喜んでるイメージを浮かべながら必死に書いていました。だから深く語れる言葉が自分からは出てこないんですけど。でもこれまで何曲も書いてきて、それなりに経験して分かってきたことだったりとか、自分が求める格好良さをちょっとずつでも見出してきた中で、やっぱり「人がこれを見たらどう思うだろう?」っていう言葉の選び方は少なからず昔よりは出来てると思います。
--そんな必死に変化を求める中で生み落とされたニューアルバム『HOCUS POCUS』なんですが、自身では仕上がりにどんな印象や感想を?
木村カエラ:今までで一番ポップなアルバムが出来上がったと思います。それは曲調もそうですし、歌詞もポップな気がしますね。シリアスなモノももちろんあるんですけど、全体を通して聴いたイメージが今までで一番ポップだなって自分の中で感じました。
--そのアルバムのタイトルを『HOCUS POCUS』にしようと思ったのは?
木村カエラ:コンセプトを決められなかった。っていうのがまずひとつあったんですけど、そもそも自分が『どこ』をリリースした後に初めて書いたのがタイトルトラックの『HOCUS POCUS』だったんですよ。ただミト(クラムボン)さんからもらったデモテープを聴いたのは『どこ』を出す前で、だからその時点では「書きたいことがいっぱい出てくるし、いろんな想像が膨らませられるし、この詞を書くのがすっごい楽しみ」って言ってたんです。でも『どこ』の後にその詞を書こうとしたら一切書けなくなって。ほんと、面白いぐらいに。
で、その状態のままでアルバムを作っていったんですね、ずっと。でも徐々に「もう書けないのは仕方ない。真面目な言葉とか出てくるだけまだマシだから」って思うようになって、その中から好きな言葉を選んで、前後の関係性とか気にせずにバンバン曲に当てはめていったんです。そうやって出来たモノの中から「これはさすがにズレてんな」ってモノを外して、最後にどんな歌詞になっているのか自分で再確認する流れでしたね。だから今作はある意味諦めることが出来たから完成まで持っていけたアルバムなんです。
ただ、完成したアルバムを聴いてみると、特に『HOCUS POCUS』っていう曲はそうなんですけど、自分がいつどんなときに聴いても元気になれる音楽、応援歌になっていて。自分に対してのエールに聞こえるんですよね「頑張れ!大丈夫」って。それは初めての感覚でした。あと今回のアルバム収録曲のすべてに共通しているのが、今まで歌ってこなかった“未来”を歌っているところで。未来のことを決めつけるのは好きじゃなかったし、それを歌にするのも好きじゃなかったんだけど、今回は自分がスランプ状態だったこともあって「大丈夫、できるはず」って自信が無くても言い聞かせられる力を曲に求めたんです。
「もう悩まなくてよくない?」って言われたいから、ちょっと現実逃避的なチチンプイプイ=『HOCUS POCUS』になったんですけど、でも現実を見ていかなきゃいけないし、妄想ばかりしていられないから、この言葉が逆に自分の中では痛く刺さるんです。
Interviewer:平賀哲雄
人が夢とか希望を持たなかったら時間は止まってしまう
--そのチチンプイプイなモードで過去作品を作ったことってあるんですか?
木村カエラ:ないです。これまではすべて妄想に任せてしまえばいくらでも書けたんです。もちろん身を削って書いていたと思うし、それなりに時間が掛かることだから「面倒くさい」っていつも思うぐらい嫌だったけど(笑)でもテーマが決まったりとか、自分の妄想がパン!って曲と一致した時点ですっごい楽しくなるんですよ。言葉を探していくのが。でも今回はそれが一切なかったのでパニックになっちゃった。それこそ「アルバムが出来ないんじゃないか?」って思うぐらいシリアスな心の持ちようで、ずっと詞を書いていて。なのに完成してみたら今までで一番ポップなアルバムになったから、自分の中ではすごくビックリしてるんですよね。
これまでも、元気で幸せなときには暗い詞がたくさん出てきたり、悩んで悩んで頭の中がぐちゃぐちゃしてるとすっごい明るい詞が出てきたりして。だからそのメカニズムみたいなモノは分かってはいたんですけど、今回は全曲に対して頭の中がぐちゃぐちゃな状態で向き合っていたので、もうシリアスにしかなりようがない感覚だったんですよ。でも出来上がったときにポップだったから、逆にちょっとムカつきましたね(笑)。
--(笑)。でも『どこ』で「心よ今日はどこ向かうのだろう」と歌った先がこの世界で良かったね。
木村カエラ:本当に。暗い作品は作りたくないと思っていたし、やっぱり5周年だったり、前回のアルバムを作り終えたときに決めていた「今こそ外に向けて詞を書かなきゃ」という自分の目標から抜け出せなかったでしょうね。こういうアルバムが完成して良かったなって思いました。
--では、そのアルバム『HOCUS POCUS』の収録曲について触れていきたいんですが、まず1曲目の『Dear Jazzmaster '84』。これまでも様々な音楽を飲み込んできた木村カエラですが、この曲ではいよいよケルトミュージックにまで手を出しました。
木村カエラ:元々ようちゃん(4106(SCAFULL KING))に曲を書いてほしいなって思っていて。バンドメンバーなので。それで作ってもらったんですけど、私はバグパイプの音を入れてる曲がずっと欲しかったんですよ。イギリス大使館のお祭りとかで、バグパイプのリアルな音を聴きながら小さい頃から育ってきたので。それで「いつか出来ないかな?」と思っていたら、そんな話を一切していないのにようちゃんがこの曲を作ってきたんです。で、この曲を1曲目にしたのは、バンドメンバーの曲が1曲目であることが凄く私の中で大切な意味を持っていたということと、バグパイプの音が本来戦いに行くときに吹く楽器なので、そういった意味でもピッタリだなと思って。
--続いて、驚愕の4曲目。MO'SOME TONEBENDERの藤田勇(dr)さん作曲による『乙女echo』が、今回のアルバムの中で最もキュートという。驚きを隠せない感じなんですが、これ良いですね。
木村カエラ:私も好きです。これは私が乙女ということじゃなくて、乙女を客観視してるんです。『乙女echo』=乙女の反響という意味なので、イメージ的には女子たちがカフェで盛り上がってる感じ。スタイルの良い女の子が歩いてるときに「わぁ!あの娘、超スタイル良いじゃん」って1人の子が言ったら「本当だ!超可愛くない?」って同じような言葉を繰り返し言うのが“echo”なんです。女性ってひとりひとりはすごく強い生き物だと思うし、前に進んでいくパワーって半端ないと思うんですよね。後ろも振り向かないし。でも「お喋りが大好きで、ひとりじゃ何もできない」みたいなイメージを抱いている男性は少なくないと思うんです。ただそれは見せかけの姿なんで(笑)。だからキュートな曲調ではあるんですけど、最終的には何でも蹴っ飛ばしながらどんどん先に進んでいく女の子の強さを、私が客観視しながら歌ってる曲なんです。
--その曲に続く『Butterfly』。映画のワンシーンみたいなチャペルソングになってますが。
木村カエラ:私の親友が結婚することになって「結婚式で歌をうたってほしい」って言われたときに、「じゃあ、サプライズで歌おう」と思って作った曲なんです。その後に「ゼクシィ」のCMで使って頂くことになったので、すごく嬉しかったんですけど。結婚する大切な親友に宛てた手紙のような曲なので、その曲を大切な人たちと幸せを分かち合う場で使ってもらえるのは「有り難いことだなぁ」って心から思ったりしました。
--リスナー側からすると物凄く新鮮でした。「木村カエラが!?」っていう。
木村カエラ:ですよね! 私も思いました。この曲はいろんな方法で何回も書き直したんですよ。ただいつも通りに歌詞を書いてしまったら、みんなが知らない歌を結婚式で耳を澄ませて聴いてるときに、伝わりづらくなると思って。だから手紙の感覚で書こうと思ったんです。それで結婚式で歌ったら友達は大号泣だし、みんな「良い曲ですね」って喜んでくれて。ただ、今回アルバムに入れてみたときに「え!? 私、こんな詞が書けるんだ」って思いました(笑)。だから私も新鮮でしたね。
--そして『どこ』です。この曲をこの位置へ置いたのは?
木村カエラ:『どこ』が「カエラちゃんは心に振り回されている人で、こういう風に生きている」って考えながらしのっぴ(渡邊忍(ASPARAGUS))が書いてくれた歌でもあったので、『Butterfly』と隣同士にすることに自分の中ですごく意味があったんですよね。
--で、さっき語って頂いた『HOCUS POCUS』からの流れで聴く『Another World』。これは『どこ』で一度辿り着いたかのように見えた、木村カエラのデビュー時からの「人の心はどこへ向かっていくのか?」というテーマに、更にもう一歩踏み込んで描いたような曲だなと思ったんですが、自身ではどんな印象や感想を?
木村カエラ:自分が「こんな世界が良いな」って思う世界を描いたんです。言葉的には重いモノが最後に来ていたりするんですけど、でもね、自分の中ではすごくポジティブな曲。例えば「世界がもっとより良くなればいい」と思うし、大切な人たちが苦しんでいるのであれば、その人を笑顔にすることが私にとって一番の幸せだと思うし、そういうポジティブな想いを発してる曲なんです。ただ、いろんなことを書いていて。人の生き死にもそうですけど、ニュースで見る悲しい事件、みんなが同じような服を着てる世界。今って人に何かをしてあげる世界というよりは、人を求めているのに会話をしない世界っていうイメージがあって。他人と同じ服を着たり、他人と同じ音楽を聴いたりして「私はあなたと一緒よ」って同じモノを共有することで会話をしてる。そういったモノすべての原因になっているコミュニケーションの不足とかにも目を向けて、まとめて書いてしまったんです。
私的に思う『Another World』を砂時計に喩えると、その砂の一粒一粒が人の夢とか希望で出来ているから、人が夢とか希望を持たなかったら時間は止まってしまうんですよ。でもそこに夢や希望、信じる力が増えていけばいくほど、時間はいつまでも続いていって、私達が日々過ごせる時間もできるっていう。そんな世界になれたらもっとよくなるのになって。そういう「より良くしたい」って思ってる気持ちがここに酷いぐらい出てます(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
まず「ひとりじゃない」って感じてもらいたい
--『Another World』もそうですけど、このアルバムは『どこ』『HOCUS POCUS』を超えた辺りでふと気付くことがあって。どの曲も「誰かと共に生きていくとはどういうことなのか?」それを歌った楽曲ばかりになってるんだなって。『season』や『キミニアイタイ』はそれがとても顕著に出てますし。自分ではどう思いますか?
木村カエラ:気付いたらそういう歌ばかりになってました。人に向けて歌ってるので、自然と対象の人物が出来上がっている。私の中では一人じゃなくて、知らない人も含めた全員を対象に書いているんですけど、でもそれを聴いたときには、特定の人、聴いてくれている個人に向けて響くモノであってほしいなぁって。
--だからこのアルバムはいつにも増してポップなんだと思うんですが、そのポップを生んでるモノっていうのはきっと納得いかない日々だったり、救ってあげられなかった誰かの存在だったりして。そこへの想いを素直に伝えられるようになったのが、今の木村カエラなんでしょうね。
木村カエラ:自分の中で素直な言葉を話したり詞にすることが物凄く苦手で、プライベートでも「何言ってるかわかんねーよ」って言われるぐらい(笑)。だから本当に伝えなきゃいけないことを伝えるのも下手で。でもその苦手な部分を克服しようと一生懸命この詞たちを書いてきたようなものなので、だからこそ難産だったんですよね。ただ、今回素直な表現が多少できるようになったとしても、それはまだまだだし、他のアーティストさんに比べて得意になった訳じゃないし。でもこれが木村カエラが今できる素直な表現の精一杯なんです。
--そんな今作のラストを飾る『Super girl』は、今日語ってもらった要素のすべてが詰まった曲ですよね。
木村カエラ:そうですね。この曲のテーマは「答えを人に求めちゃいけない」ということで、パッと聴きは本当にポップな曲だし、未来に繋がる元気な曲だと思うんですけど、結局は「自分自身にすべてが掛かってる」っていうことを歌っていて。どう克服するかも未来をどう変えるかも自分自身。人に頼ってばかりじゃ何も始まらない。それは例えば“Super girl”みたいな超特殊な人間であっても変わらなくて。だから世の中には完璧な人間なんていないんですよね。それなりにみんな藻掻きながら生きてる。でもその中で自分のためだけじゃなく、誰かのために何かをしていこうとすることで、いろんな物事の見え方やこの先の未来が輝かしいモノに変わっていくと思うんです。それがこの曲で伝えたいこと。
--みんなと笑ったり泣いたりしながら明るい未来を掴みたい。でもそれを許さない現実もあったりして。木村カエラがどんなにポジティブをメッセージしようと襲ってくるネガティブはあって。でも、それでも『Super girl』みたいな曲たちを歌い続けていくっていうのは、みんなや未来への想いが尽きないからなんでしょうね。
木村カエラ:そこは尽きないですよね。自分自身が生活している中でも浮き沈みなんて当たり前にありますし。その中でも自分で幸せを見出したり、悲しみから抜け出すパワーは持っていて、それはみんなもそうだと思うんですけど。でも世の中には「がんばれ」っていう言葉が苦しみになるような人もいる。私はそこに目を向けて詞を書いてる感覚が強くて。自分でどうにかできるのは素晴らしいことだと思いますし、恵まれてると思います。でもそうじゃない人たちがどれだけ苦しんでるか?って思うと、そこのテーマからは抜け出せないんですよね。
--だからポップになるし、強引にでも明るい世界や未来へと走り出したくさせるような表現も出てくるし。
木村カエラ:そうですね。でも、ただ「がんばれ」って言うことが答えではない気がしていて。だから私は『どこ』を歌うまで「心はどこへ向かうんだろう?」をテーマにしていたし。『マスタッシュ』でも言ってますけど、気持ちを得られる幸せというのはあって、悩めることは本当に素晴らしいこと。だってその悩みを抜けたら輝ける自分になれるでしょ。それに、悩むことを知らずに生きていたら、周りの人の痛みも何もかも分からなくなって鈍感の人間にしかならない。人の痛みが分かるっていうのはとても大切なことですからね。そういうことを歌いたいっていうのは『リルラ リルハ』からずっと変わらないんです。
--先程、世の中には「がんばれ」っていう言葉が苦しみになるような人もいる。と仰っていましたが、ではこのアルバム『HOCUS POCUS』がそういう人たちにどんな風に響けばいいなと思いますか?
木村カエラ:まず「ひとりじゃない」って感じてもらいたい。やっぱり誰もが人を求めているし、ひとりでいても幸せにはなれないし。でも人って悩めば悩むほど自分のことばっかり考えて、自分の痛みさえ分かってもらればいい、そういう悪循環を生んでいくと思うんですね。その悪循環から抜け出せるかどうかは気持ちの持ちようだと思ってるので、そこはそれぞれが力強くなっていかなきゃいけない部分。私にはどうにでもできない部分なんです。ただ、その方法を打ち出すこと、提案することだったら私にもできると思っていて。それを音楽で表現することでもし「ひとりじゃない」って感じてもらえたら、それは素敵なことだと思ってます。とても難しいことだけど。
--今作『HOCUS POCUS』のリリース後には、デビュー5周年記念ライブ【LUCIDO-L presents GO!5!KAELAND】が開催されます。どんな1日にしたいですか?
木村カエラ:この日はファン感謝デーですね。みんなが楽しめるように遊園地みたいな空間を創りたいと思ってます。ライブだけじゃなくて、写真を撮って楽しめたり、子供が来ても遊べる場所を用意したり、ライブ会場全体で楽しめるようにしたい。あと私の体をイメージした会場にしたいと思っていて、客席は私の心臓で、ステージは私の脳で、入場口は口で、出口は肛門みたいな(笑)。そのすべてでみんなの気持ちや感情を感じたいと思ってます。
--楽しみにしてます。あと最後にもうひとつ。前回のインタビューでは、肌質が第二世代を迎えたので「美容と健康に気を付けたい」という衝撃のコメントがありましたが(笑)。
木村カエラ:アハハ!
--その後はいかがでしょうか?
木村カエラ:相変わらずの第二世代です。しかも今タイムリー過ぎてビックリしたんですけど、昨日、食べるコラーゲンをスーパーで買いました(笑)。
--とうとう食べようと?
木村カエラ:はい。その効果の結果は次回のインタビューで、私の肌を見て確認してください(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
HOCUS POCUS
2009/06/24 RELEASE
COCP-35635 ¥ 3,080(税込)
Disc01
- 01.Dear Jazzmaster ’84
- 02.マスタッシュ (album ver.)
- 03.Phone
- 04.乙女echo
- 05.Butterfly
- 06.どこ
- 07.HOCUS POCUS
- 08.Another world
- 09.season
- 10.キミニアイタイ
- 11.Jeepney
- 12.BANZAI (album ver.)
- 13.Super girl
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