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<インタビュー>台湾出身バンドElephant Gymが来日公演開催――小西遼(象眠舎、CRCK/LCKS)と語る国を超えたコラボの意義

インタビューバナー

Interview & Text:大石始 / Photo(Live):Chiaki Machida / Interpreter:飯田千春

 この10月、台湾・高雄出身のスリーピース・バンド、Elephant Gymが再来日を果たす。彼らは今年1月と4月にも日本ツアーを行ったが、今回の日本公演は最新作『WORLD』リリースに合わせて行われてきた大規模なワールドツアーの締めくくりとなる。以前はマスロックやポストロックなどのジャンルと共に語られてきた彼らだが、世界各地で賞賛される変幻自在のライブ・パフォーマンスは、もはやジャンル名すら必要としないだろう。

 今回は待望の再来日を前に、Elephant Gymと小西遼(象眠舎、CRCK/LCKS)の座談会を企画した。今年1月の日本ツアーでは象眠舎がホーンセクションとして帯同。11月に予定されているElephant Gymの台北公演では小西が参加することが決まっているなど、両者は固い絆で結ばれているようだ。4人の対話を通じ、Elephant Gymの魅力や国を超えたコラボレーションの意義について考えてみたい。

国や言語を超えたコラボ

――Elephant Gymと小西さんが初めて会ったのはいつごろなんでしょうか。

チャーチン(ドラムス):TENDREさんの台湾公演でElephant Gymがオープニングアクトをやったことがあるんですけど、そのとき(TENDREのバンドメンバーとして参加していた)小西さんに初めて会いました。それ以前から小西さんという素晴らしいサックスプレイヤーがいるということは友人から聞いていたので、会うのが楽しみだったんですよ。小西さんは英語も堪能なので、会ってすぐにいろんな話をしたことを覚えています。そのとき「いつか一緒にやりたいですね」という話もしました。


――小西さんはそのときどんな話をしたか覚えていますか?

小西:よく覚えてます。会う前から彼らの音楽を聴いていたんですが、実際のステージが本当に素晴らしくて、涙が出るほど感動しました。彼らの音楽にはエモーションが込められていて、強力なエネルギーを感じましたね。あと、KTはライブ前後でビールを呑みながらみんなと談笑していて、すごくいい雰囲気のバンドだなと思いました。彼らは僕が今やってるCRCK/LCKSのことを知ってたし、そのバンドのドラムである(石若)駿のこともよく知っていたので、お互いの活動のことをいろいろ話しました。

――そこから今年1月の象眠舎とのコラボレーションに繋がるわけですね。

テル(ギター、ピアノ):そうですね。コラボレーションは僕らの日本のマネージャーさんからの提案でもあったんですよ。僕らにとっては海外アーティストと、ツアー全体で一緒に回るのは初めてだったので、ちょっと緊張しました。

小西:台湾で最初に会ったときは楽しく話をしましたけど、実際にコラボレーションするとなると、やっぱり少し緊張するところはありますよね。そこは僕も一緒です。


――オファーがきたとき、小西さんはどう感じました?

小西:Elephant Gymのファンなので、すごく興奮しました。どちらかというと、自分のプロジェクトに誰かミュージシャンを招くことは多いんですけど、自分が呼ばれるケースは本当に少ないんですよ。なので、すごく嬉しかったですね。


――今年1月の日本ツアーでは、象眠舎は各公演とも6曲に参加しましたね。事前のやりとりはどのように進めたのでしょうか。

テル:最初、僕らからスコアを送ったんですが、小西さんのほうでアレンジをするかもという話がありましたよね。実際は、元のスコアで演奏することになったんですが。

小西:そうそう。変える必要もないと思ったので、そのままやることになりました。

KT(ベース):そのあたりのやりとりもすごくスムーズでしたね。最初のリハーサルもバッチリでしたし。ただ、遼さんがどうしても一音だけミスしてしまうフレーズがあって、何度やってもうまくいかなかったんですよ。うまくいかないから、気分転換にビールを呑むことにしました(笑)。

小西:あのビールは美味しかったね(笑)。

――日本ツアーの感想を聞かせてください。

チャーチン:日本でツアーをしたことはそれまでもあったんですけど、日本のプレイヤーと一緒に回るのは初めての経験だったので、とても楽しかったです。お互いのことを知る機会にもなりましたね。

小西:あのツアーは素晴らしい体験でした。Elephant Gymの3人とは育った国も違うし、環境や文化的背景も言語も違うけど、だからこそ互いの違いがわかって、話していても楽しいんですよ。リハーサルの段階で音楽に対する彼らの姿勢が伝わってきたし、とにかくヴァイブスが良くて。

KT:あのときは音楽のことや人生のことについても話しましたね。そういえば、「Ocean In The Night(夜洋風景)」という曲の歌詞について聞かれたことがあったんですよ。「これって悲しい歌なの?」と聞かれたんですが、まさにそんな内容の歌なので、説明しなくても歌詞の内容まで理解してくれているんだなと嬉しくなりました。

小西:彼らの音楽にはどこか寂しさや悲しみのような感覚を感じるんですよね。「Ocean In The Night」は特にそういう感覚を感じたので、歌詞について質問したんですよ。あのツアーでは政治や個人的な悩みについても話したし、自分たちと同じような悩みを抱えてるんだな、とも思いました。そんなに熱く議論するような感じではなかったけど、KTはハードコアで熱いよね(笑)。

KT:そうかな(笑)。



▲「Ocean In The Night(夜洋風景)」MV

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海外で活動できている現状が信じられない

――小西さんはElephant Gymとライブを重ねてきたわけですが、そのうえでお聞きしたいと思います。小西さんが考えるElephant Gymの魅力とは?

小西:うーん、そうですねえ、言葉で説明するのはすごく難しいな……

KT:えっ、何の魅力もない?(笑)

小西:いやいや!(笑) 彼らの音楽を聴いていると、風景のようなものが浮かんでくるんです。それも自分が手の届かないような遠くの美しい風景というか。Elephant Gymが心から作り上げている音楽だからこそ、そういう風景が見えてくるんじゃないかな。一緒にやるときは自分の色を加えることで風景を壊してしまいそうな気がしていたので、忍び込むようにして風景の一部になることを心がけていました。言葉で説明するのは本当に難しいんだけど、そこがElephant Gymの音楽の魅力だと思います。

KT:ありがとう、泣きそうです(笑)。

――特定のジャンルやシーンにこだわるのではなく、むしろジャンルやシーンを軽やかに横断していくところもElephant Gymと小西さんの共通点だと思うんですね。ジャンルやシーンに対するElephant Gymの考えを聞かせていただけますか。

KT:音楽的にいうと私たち3人は好きなものが違うし、出してくる楽曲のアイデアもバラバラなんです。それをまとめようとすると、自然にジャンルレスなものになってしまうんですよ。

テル:音楽を作るうえではできるだけ民主的でありたいと思っているし、メンバーの意見を平等に反映していきたいんですよ。なので、曲を作ったメンバーがその曲をプロデュースすることにしています。作曲者それぞれのイメージで作っているので、いろんなジャンルの要素が入っているんだと思います。


――音楽的なバックボーンの違うメンバーから出てきたさまざまなアイデアをひとつにまとめるという作業は、小西さんがCRCK/LCKSでやってきたこととも繋がりますよね。

小西:まさにその通りですね。ひとりでやるのは簡単だし、バンドでの作業は困難も伴うけど、やっぱりやっていて楽しいんです。作業するうえで葛藤や困難があるからこそ、美しいものができあがるんじゃないかと思います。

――海外での活動についてElephant Gymの3人はどう考えていますか? 欧米でも頻繁にツアーをやっていますが、そうした活動を見ていると「海外に進出」という大それたものではなく、むしろ海外で演奏し、海外のアーティストやプレイヤーと共演するのが日常になっているような感じがするんですよ。

チャーチン:そうかもしれないですね。ただ、自分たちにとっては海外で活動できている現状が信じられないことなんですよ。僕らとは文化的背景が異なるオーディエンスがElephant Gymのことを理解して、楽しんでくれているということが奇跡みたいなものなんです。

テル:日本だと海外でもアニメが見られているので、日本文化がある程度知られていると思うんですけど、台湾にはそういうものがないんですね。だから、ライブではいつも現地に合わせるようなマインドでやってます。僕らはメジャーなロックスターなんかじゃなくてDIYなインディーバンドなので、その土地のローカルバンドだと思って演奏するようにしているんですよ。

――場所によってオーディエンスの反応も違いますよね。

テル:そうですね。そういえばヨーロッパで「Ocean In The Night」を演奏したとき、カップルが突然キスをしだしたことがありました(笑)。こっちはロックソングのつもりで演奏してるんだけど、向こうだとラブソングに聴こえるみたいで。そういう違いも楽しみながら活動しています。


――そのうえであえてお聞きしたいのですが、アジア間でコラボレーションする意義や可能性などはどのようなところにあると思いますか?

テル:僕個人の意見ですが、アジアの人たちはよくオーガナイズされていると思うんですよ。時間も守るし、礼儀正しいし、自己中心的な人も少ない。そういう意味でも共同作業がしやすいんですね。以前アメリカを一緒にツアーしたバンドはツアー中にメンバー同士が喧嘩してドラムがいなくなったこともありました(笑)。

KT:突然いなくなっちゃったんですよ(笑)。

テル:アジアのバンドだとそういうことはないんですよね。11月、小西さんを台北に呼んで一緒に演奏するんですが、僕らは小西さんのことを信頼してるし、一緒に演奏したいという気持ちがあるので台北に呼ぶことにしました。

小西:嬉しいですね。個人的にも台湾に親しみを感じているんですよ。今後は日本だけで完結するのではなく、アジア各地のアーティストとコラボレーションしていきたいと思ってます。

初のビルボードライブ単独公演について

――10月にビルボードライブ横浜で開催される、日本公演はどんなものになりそうでしょうか。

KT:アメージングなショーになります!(笑)

チャーチン:最新作『WORLD』の曲を中心に演奏しますが、サプライズも用意するつもりです。しばらくやっていない曲もやるかもしれないし、これから力を入れてリハーサルを重ねて、みなさんに素晴らしいライブをお見せできればと思ってます。

テル:今回は台湾からサックスとフルートの、2人のプレイヤーを連れていきます。ビルボードライブにはピアノがあるので、それも活かしたいですね。ぜひ遊びにきてほしいです!

Elephant Gym「WORLD」

WORLD

2023/12/20 RELEASE
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