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<インタビュー>S.A.R.と新東京が初共演――シーンを切り拓く気鋭のバンド総勢10名で語り合う音楽への情熱と今後の展望

インタビューバナー

Text: 黒田隆憲

 ナノ・ユニバースの創立25周年を記念したイベントが、神奈川・ビルボードライブ横浜で9月10日に開催される。初回を飾るのは、ジャズやR&Bを共通のルーツに持ちながら、独自の音楽スタイルを確立したS.A.R.と新東京のツーマン公演だ。S.A.R.は、音楽だけでなく映像やアートワークまで自ら手掛ける6人組で、今年3月にリリースした1stアルバム『Verse of the Kool』が話題を呼んでいる。一方、新東京は2021年の結成以来シングルを次々と発表し、今年2月には待望の1stフルアルバム『NEO TOKYO METRO』をリリース。4人の個性が融合した独創的なサウンドで、J-POPの新たな可能性を示している。今回は、総勢10名のメンバー全員にインタビューを行い、彼らの音楽に対する情熱や今回のライブへの意気込みを語ってもらった。

――まずはお互いの印象についてお聞かせください。S.A.R.の皆さんからお願いできますか?

santa(Vo):新東京さんは、何度か自分たちのライブに遊びに来てくれたことがあって、お話しする機会もありました。楽曲も何曲か聴かせていただいたんですが、すごくかっこいいなという印象を持っています。

Attie(Gt):SNSでもよくお名前を耳にする機会が増えていて。今回、とても素敵な場所でご一緒できるのを楽しみにしています。

Imu Sam(Gt / MC):前から(保田)優真くんとは仲が良くて、個人的に交流もありました。ワンマンライブも観に行かせてもらったことがありますし、今回もすごく楽しみです。

Taro(Key):Instagramとかもたまに見ているんですけど、結構セッション動画とかを積極的に上げていて、精力的に活動しているなと思っていました。

Eno(Ba):すごく都会的な印象ですね。

may_chang(Dr):何度かライブを見に来てくれたりして、顔を合わせる機会はあったんですけど、共演は初めてなので僕も楽しみです。


S.A.R.

――では、新東京の皆さんもお願いします。

杉田春音(Vo):S.A.R.の音源がとても好きで、普段からよく聴かせていただいています。シグネチャー性にあふれた素敵なバンドだと思っていますね。

田中利幸(Key):SNSとかでよく流れてくるんですけど、ジャケ写やMVなどアートワークにすごくこだわっていらっしゃる印象がありますね。

大蔵倫太郎(Ba):個人的に好きで、ライブも観させていただいているので、今回共演できて嬉しいです。

保田優真(Dr):何度かライブにお邪魔させていただいています。最初に観たときは「こんなかっこいいバンドがいるんだ!」とびっくりして。今回、共演できることをとても楽しみにしています。


新東京

――S.A.R.は今年3月に1stアルバム『Verse of the Kool』を、新東京は今年2月に1stフルアルバム『NEO TOKYO METRO』をリリースされました。聴きどころやこだわった部分など教えてもらえますか?

santa:ボーカルは、聴いてすぐ覚えられるようなフロウを意識しました。

Attie:ギターに関しては、とにかくボーカルの邪魔をしないこと、そしてトラックを引き立てる役割に徹しようと思いながら演奏していましたね。

Imu Sam:ラップをやらせていただいたり、ギターを弾かせていただいたり、その時その時で楽しみながら一生懸命取り組みました。曲の中にセッション的な要素を入れたり、曲と曲をインタールードで繋げたり、そういった部分もかなりこだわって作ったアルバムです。

Taro:鍵盤も、「演奏する」というよりは「サンプリング」みたいな感覚で弾きました。「ピアノの歌心」というよりは、「ヒップホップの歌心」を自分なりにちょっと消化した感じですね。そうすることで、さっきAttieが言っていたようにボーカルをより活かすことができたのかなと思います。

may_chang:ドラムは特に、タッチやトーンにこだわりました。

Eno:何度も聴いて楽しめるよう、あまり整えすぎないことを心がけました。人って「完璧なもの」を、求めていないような気がしていて。必要なのは、ダメなところも含めたバランスだという持論があります。DIY精神を持って制作に臨みましたね。


杉田:今作は、自分たちの考える“理想郷”を表現しつつ、そこからひるがえって現代社会を描くことをコンセプトにしていました。歌詞は、マクロとミクロの二面性のアプローチで捉えています。そのため曲ごとにテーマも異なっていて、そこが聴きどころの一つなのかなと思っています。

田中:自分にとってアルバム制作は、人生で初めての経験だったので、「アルバムであるべき理由」を強く考えました。これまでシングルやEPをたくさん出してきましたが、前後の繋がりやテーマの統一性などにこだわることで、アルバムとして表現できる幅はグッと広がるのだなということを学びましたね。

大蔵:納期的に結構ギリギリで、レコーディングのスケジュールが詰まってしまい、後半は寝ながらレコーディングができるようになりました(笑)。2週間くらいで10曲分くらいを仕上げたのですが、今となってはいい思い出です。

保田:ドラムはアルバム全編通して打ち込みだったので、演奏というよりもフレージングの部分で、「新しいけど耳なじみが良い」というような攻めたものができたと自負しています。

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初のビルボードライブ公演開催に向けて

――今回のイベントは、ナノ・ユニバースの創立25周年を記念しビルボードライブと共同で開催されるものです。その初回に2組が抜擢されたわけですが、率直な感想を聞かせてもらえますか?

santa:光栄ですし、楽しみです。

Attie:アパレルブランドさんとのつながりは今回が初めてだったので、オファーをいただけたことがとても嬉しいです。

Imu Sam:会場のビルボードライブには、今までお客さんとして観に行かせてもらったことはありますが、自分たちがそこで演奏できるなんて全然想像もしていなかったので、すごく楽しみにしています。

Taro:こういった企画なので、いつもライブに来てくれる人とはまた違う方たちにも聴いていただける良い機会だと思っています。


may_chang:個人的にビルボードライブは、高校生の時から通ったり観に行ったりしていたので、シンプルにそこでできるのが嬉しいです。ナノ・ユニバースさん自体も高校生の時によく通っていたんですよ。田舎の高校生だったから、そういうアパレルのショッパーに体操服を入れているのが“ちょっとおしゃれ”という文化だったし。そんな思い出も含め、すごく楽しみですね。

Eno:記念すべきイベントの初回に選んでいただけたのは本当にありがたいです。そして、ビルボードライブ横浜でライブができるのも光栄です。


杉田:僕もEnoさんと同じく、アニバーサリーに呼んでいただけることがとても光栄です。場所がビルボードライブというのも、ナノ・ユニバースさんの理念やこだわりが伝わってきます。この日を僕たちで素敵な日にできればと思っていますね。

田中:先日も、メンバー全員でナノ・ユニバースさんへ伺って衣装合わせをしてきました。おしゃれな格好でステージに上がるのがとても楽しみです。

大蔵:この周年をより良いものにするために、S.A.R.さんと一緒に全力でお力添えできたらと思っています。

保田:ビルボードライブはずっと出たかった会場ですし、しかもS.A.R.さんとご一緒できるのは僕にとってすごく嬉しいことです。張り切って頑張りたいと思います。


新東京

――2組ともビルボードライブでの公演は初めてだそうですが、どんなイメージがありますか? もし思い出もあれば聞かせてください。

田中:実は会場にまだ行ったことがないのですが、特にビルボードライブ横浜は2階層で見やすい場所だと聞きました。

杉田:僕らは普段、お客さんがたくさん入った小さなライブハウスで演奏することが多いので、今回はゆったりと楽しんでもらえるんじゃないかと思っています。

大蔵:僕も横浜は初めてなので楽しみにしています。

保田:一度ライブを観に行ったことがあるのですが、演奏はもちろん、会場のゴージャスな雰囲気も相まって、普通のライブハウスとは違う特別な時間を過ごすことができました。今回、自分たちがそこで演奏ができるのをとても光栄に思っています。

santa:僕もまだ一度もビルボードライブには行ったことがないんですけど、メンバーの何人かは行ったことがあって。いろいろ話を聞いていたのでとても羨ましく思っていました。

Attie:普段、僕らが演奏しているライブハウスとはまた全然雰囲気の違う場所なので、今からすごく楽しみです。

Imu Sam:僕はアリ・シャヒード(・ムハマド)と、あとは君島大空さんと石若駿さんのデュオを観に行ったことがあるのですが、どちらも素晴らしかったです。演奏ももちろんですが、音がめちゃめちゃ良くてびっくりしました。

Taro:僕は2年前にザ・ルーツのライブを観に行ったことがあるのですが、自分にとってターニングポイントになるような素晴らしい内容でした。そんな場所で自分たちがライブをすることも嬉しいですし、自分たちも素晴らしいライブができたらいいなと思っています。

may_chang:僕は、高校生の頃から東京に何度も行ったことがあって。クリス・デイヴやロバート・グラスパー、それから沼澤尚さんが参加しているNothing But The Funkもよく観に行っていました。ビルボードライブ横浜では、TaroとEnoと一緒にザ・ルーツを観たり、6月にバーナード・パーディを観たりしていて。ずっと憧れの場所でしたし、いつかこういうところで演奏してみたいと思っていたので本当に楽しみです。

Eno:横浜ではザ・ルーツとBEGINを観ましたし、東京ではミシェル・ンデゲオチェロやアリ・シャヒードを観ました。ビルボードライブはステージとお客さんの距離がすごく近いし、アーティストが楽屋から客席を通ってステージに上がってくることもあるじゃないですか。「クエストラヴ、こんなに大きいんだ!」とびっくりしたり、そういう体験ができるところも素晴らしいと思います。


――では最後に、今後の展望や抱負を一人ずつお聞かせください。

santa:S.A.R.としては、今より少しでも音楽に集中できる環境を作りたいです。個人的には日本語の歌詞を歌う曲をもっとやってみたいと思っていますね。

Attie:S.A.R.は現体制になってから2年くらいになるのですが、ありがたいことにこういう素晴らしい機会に恵まれることが多くなってきていることを感じています。チャンスをうまく活かしながら、自分たちのやりたいことをやってそれらを良い形で繋げていけたらと思っています。

Imu Sam:S.A.R.も自分も一緒に良い方向へ進んでいけるよう、これからも頑張っていきたいです。

Taro:ライブも音源もどんどん良いものにしていけたらと思っています。

may_chang:Taroと同じく、良い音源を作り続けていきたいです。そしてライブではドラマーがアンサンブルの軸となるので、来てくれたお客さんが楽しんで帰ってもらえるようなプレイをこれからも心がけていきたいです。

Eno:日本に新しい文化をつくりたいです!


S.A.R.

杉田:今、ピザ窯が欲しくて(笑)。今年中に手に入れ、ピザ作りをマスターするのが目標です。ピザと音楽を両立できるよう、精進していきます。

田中:これからもっと海外公演も増やしていけたらいいなと思っていますね。台湾や韓国ではやったことがあるのですが、中国も含め色々な国を回りたいです。

大蔵:同じく、アジアツアー行きたいですね。あとは杉田がピザをちょっと分けてくれれば、僕はそれで十分です(笑)。

保田:11月に新宿でワンマンライブが予定されているので、そこに向けてライブの質をどんどん高めていきたいと思っています。個人的には演奏の質をもっと磨き、ボキャブラリーを増やし、その場で弾きたいフレーズを瞬時に叩けるようにするのが今年の目標です。