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<インタビュー>「自分ぐらいは自分のことを信じてあげないと」Ourin-王林-が明かす“青森産”ダンスナンバーに込めた確かな思い

インタビューバナー

Interview: 永堀アツオ
Text: Mariko Ikitake

 タレント、モデル、女優、アパレルプロデュースなど、幅広い活動をする王林が、“アーティスト”Ourin-王林-として本格的なソロ音楽活動を始めてから約1年。DRAMA ADDICT『初恋不倫~この恋を初恋と呼んでいいですか~』に起用されている「So what」とカップリング曲「踊るりんご」を収録した2ndシングルがリリースされた。両曲とも自身のルーツである青森県とリンクさせながら、自身の考えや経験を主軸に制作されたものだ。

 Ourin-王林-が本シングルで伝えるのは、自分の人生は自分で決めるということ。“青森の魅力”を音楽で発信することが自身の目標とも語るOurin-王林-に、楽曲に込めた思いを聞いた。

──去年の10月からソロ活動が始まって、まもなく1年が経ちますね。

Ourin-王林-:2022年3月にグループを卒業してからの2年間はバラエティがメインだったので、王林がアイドル活動をやってたことを知らない方もすごく多かったんですよね。だから、音楽活動を始めてから、りんご娘の時のファンじゃない方々からも言葉をもらえるようになって。Ourin-王林-として、新しい音楽活動がスタートしたんだなっていうのをじっくり感じた1年だったなと思います。

──どんな反響がありましたか?

Ourin-王林-:まず、「王林、歌えるの?」っていうのと、「歌は訛らないんだ」っていう言葉が多かったです(笑)。私は「自分が歌ってるところをそんなに見たことなかったんだ」ってびっくりしましたね。あとは、バラエティとはまた違う一面を出すことが多かったので、カッコよくてスタイリッシュな部分がすごいって言ってもらえることも多くて。私にはそういうイメージがないんだなっていうのを感じましたね。

──ソロで音楽活動をするにあたってはどんな思いでスタートしましたか?

Ourin-王林-:私は変わらず、音楽で青森のことを伝えていきたいっていう気持ちがずっとあって。だから、歌詞に津軽弁が入っていたり、ミュージック・ビデオの撮影を青森でさせてもらったりしてるんです。音楽から青森を知ってもらうことができるのがすごく嬉しいですし、そこにこだわっていきながら、誰でもできるようなパフォーマンスとかじゃなくて、Ourin-王林-ならではの音楽を作っていけたらいいなって思います。

──改めて、これまでリリースしてきた曲を振り返ってもらえますか。

Ourin-王林-:去年の10月に先行配信したデビュー曲「Play The Game」は、バラエティ番組とは違う、カッコいい一面が出せた曲かなと思います。「王林ってこんな一面があるの?」って、みんな驚いたと思う。お客さんの前で歌う機会もあったんですけど、「あ、王林ちゃんなんだ!!」って途中で気づいてくれる方もいて。

──クールなダンスナンバーになってますが、歌詞はラブソングですよね。

Ourin-王林-:恋にそそられるっていうよりも、「私と恋してみない?」って誘うような強い女性ですね。「恋愛においても、人生においても、女の人が強くあってもいいんじゃない?」っていう気持ちが込められています。


──それはご自身の気持ちとも重なりますか?

Ourin-王林-:はい! 同時配信した「ハイテンション」にも関わってくるんですけど、最初に上がってきた歌詞が、“女の子女の子”してて、ちょっと恋に悩んでるような歌詞だったんですね。アイドルのときは、そういうものを自分なりに表現することができたらいいなと思ってたけど、ソロになってからは自分の感覚や価値観を込めてパフォーマンスしていきたいなと思って。「ハイテンション」の歌詞は大幅に変えていただいたので、自分の恋愛観や人生観に通ずるものがあるなって思ってます。

──「ハイテンション」の作詞作曲は青森の八戸出身の内澤崇仁さんでしたね。

Ourin-王林-:はい。お願いしたら、ありがたいことに、トントンってお話が進んで。でも、内澤さんが最初に書いてくれた歌詞が、男の人から見るかわいらしい女の子のものだったんです。お会いしたときに、「私、こういう女の子じゃなくて……」ってお話して(笑)。自分の恋愛観もお伝えしたら、「じゃあ、変えましょう!」って違う歌詞を書いてくれたんですね。「Play The Game」は恋する女の子だけど、「ハイテンション」は別れてからの女の子のお話なので、失恋した人たちがこの曲を聞いて、前に進めたらいいなって思います。あとは、曲を作ってくださった方も青森の方だし、MVも全部青森で撮ったので、ぜひ注目してほしいです。青森の方だったら見たらどこかわかるラーメン屋さんが出てきたりして。

──あのラーメン屋さんは?

Ourin-王林-:本当に王林が行きつけの「みね」っていうラーメン屋さんです。撮影中にもかかわらず、ラーメン二杯と炒飯一皿を食べちゃって。

──あんなにがっつり食べてるMVは初めて見たというコメントもありました。

Ourin-王林-:あははは(笑)。MVよりも飯テロだとか言われて。本当におすすめのラーメン屋さんで、お母さんが一人でやってる、すごくこじんまりとした場所なんです。そういう雰囲気も青森の魅力の一つだなと思って。ほかにも踏切とか、地元の人はすぐわかる場所でたくさん撮って。聖地巡礼に行ってくれる方も多かったので嬉しかったです。

──お母さんが一人でやってる店だと、あんまり大勢で詰め掛けたら困っちゃいますね。

Ourin-王林-:そうなんですよ。だから、青森に来てくれるのは嬉しいんですけど、あんまり行かないでほしい気持ちもあって(笑)。私もあれから行ったのですが、すごく人が並んでて諦めることも多いので、そこは心優しくいていただけたら嬉しいです。


──(笑)。恋愛観としては、笑顔でさよならするってことですか?

Ourin-王林-:私自身、落ち込んでるときも楽しんでいる自分を作って、暗い自分の気持ちを切り離すタイプなんですね。この曲を聴いて、嘘でもハイテンションでいたいとか、「もう、どうでもいいよ!」っていう感情になってくれたらいいですね。

──MVは最後、“バカ”と表示が出る彼の電話を取ってますよね。

Ourin-王林-:そうなんですよ。そこがすごく恋愛っぽくて。それでも求めてしまうところがある、かわいらしい女の子を描いています。

──あのあと、ヨリを戻すのでしょうか?

Ourin-王林-:いや、私はバカっていう人の電話を取って、あらためて「こいつバカだな」ってわかって、吹っ切れる未来を描いてやりました(笑)。次のステップに進もうって思えるような曲にしたかったんです。

──続いて、今年3月には友情ソング「Dear My Friend」を配信リリースしました。

Ourin-王林-:MVに仲良しのラッパーのRISANO(ex. lyrical school)や、りんご娘の今のメンバー(スターキングデリシャスと金星)に出てもらって。何かもがいている人に対して自分がかけたい言葉が詰まった曲なので、自分の大切な人と一緒に出たいと思って、RISANOにも出てもらいました。

──Ourin-王林-さんにとって、お友達はどんな存在ですか?

Ourin-王林-:深いですね。歯磨きみたいな感じ。

──そのわけは(笑)?

Ourin-王林-:絶対に必要なものだし、楽しくてハッピーですっきりした気持ちにもしてくれるし、嫌なものも消しちゃってくれるじゃないですか。会うとすっきりできるというか、嫌なこともハッピーなことも一緒に乗り越えられる存在が私の友達には多いなって思います。

──今のりんご娘の最年少の2人をMVに起用したのは?

Ourin-王林-:あの2人が唯一高校生で同い年なんですけど、私も(在籍時に)同い年のメンバーがいて、同じ高校に行ってたんです。同じ高校の友達でもあり、一緒に同じ目標に向かって頑張る相棒みたいな存在でもある2人だからこそ出せる空気や表情があるかもって思って。いまどきな女の子たちというか、女子高生のリアルが描かれていたので、大切な人との時間に寄り添える曲になっていたらいいですね。


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「私の人生は私のものだから、しっかりしないと!」って自分に言い聞かせる歌詞だなって

──そして、4曲目の「So what」がドラマの主題歌になってます。初のドラマ主題歌を担当することになった心境から聞かせてください。

Ourin-王林-:嬉しかったです。これまでの3曲よりも、さらにOurin-王林-が考えていることや思っていることが歌詞になってるんですね。自分に対するメッセージとして受け入れてたけど、ドラマの内容を知ってからこの曲を聴くと、また違う曲にも聞こえてきて。この曲自体の世界を広げてもらえる機会だったなって思います。

──ドラマの話が来る前からあった曲だったんですね。

Ourin-王林-:はい。青森出身の岡嶋かな多さんに曲を書いてもらいたいとずっと思っていて、今回お願いしたのが始まりでした。岡嶋さんとお話する機会を作っていただいたので、王林が人生で一番悩んでた時期に綴ってた日記を見せて、気持ちの共有をしたんです。ネガティブだけどリアルな思いに光が差す、前を向いていけるような曲になったら嬉しいですっていうお願いをしてできた曲です。

──いつ、どんな悩みを抱えていたんですか?

Ourin-王林-:りんご娘の卒業が近いときだったかな。日記ではもっと強い言葉で書いてあったんですけど(笑)。誰も信用できなかったし、今の世界ってSNSが全てになってる感じがあって。SNSで生きてる人たちもいるし、嘘とホントが入り混じる世界だなと思って。じゃあ、誰を信じるかって考えたときに、自分自身を信じて、自分が信じたい人を信じるしかないなって思ったんです。だから、無理に明るくなれる曲よりも、自分自身を信じて強く生きていける曲が私には必要だと思って作っていただきました。

──歌詞を受け取ってどう感じましたか?

Ourin-王林-:〈わのもの〉は津軽弁で“私のもの”っていう意味なんですけど、誰かのために生きたり、誰かの人生の脇役として生きたりするより、自分の人生は自分のものだから、自分を信じて、自分が信じた人たちを信じて、自分らしく、自分がやりたいことをやっていこうって思えました。悩んだとき、ちょっと心がふらつくときに、「私の人生は私のものだから、しっかりしないと!」って自分に言い聞かせる歌詞だなって。

──自分の信念を歌ってたんですね。“ワタシなりの価値観”というフレーズもありますが、不倫ドラマの主題歌として聞いていたので、“わのもの”も略奪愛と捉えてました。

Ourin-王林-:そうなんですよ、そういうふうにも聞こえますよね。ドラマを見てからだと不倫の話にも聞こえて、それもある意味、すごく面白いなと思いました。自分が伝えたいって思ってたところじゃないところにも刺さる方々がいると思うと、よりこの曲の深さを感じて面白いです。

──ドラマで流れたのは見ましたか?

Ourin-王林-:はい。ドラマ内で振り付けも作っていただいて。不倫相手と踊ってるんですけど(笑)、それを見ると、いろんな人たちの感情が交差する歌詞がドラマの中とリンクして、自分の曲じゃないような感覚で新しく聞こえました。

──〈「始まること」さえ もう怖いよ〉も、結婚してるのに好きになっちゃった人のことかなと感じたりするし。

Ourin-王林-:ね! 始まりには終わりがあるんだと気づいて、もう何も始めたくないし、何かを始める勇気もなかったときに出てきた言葉だったんですけど、ドラマとリンクしてみると全然違う言葉に聞こえて、ちょっとびっくりです。

──タイトルにはどんな意味が込められているんでしょうか?

Ourin-王林-:3年前くらいに、いろんな人たちの言葉を聞く機会が多くて。そのどれも聞くようにもしていたんですけど、それぞれ意見があって、自分がわかんなくなってしまうことも、いっぱいあったんです。聞いた言葉を素直に受け入れることを今までしてきたけど、「だからなんだ、So what?」って。嘘も正解もたくさんあるなかで、自分が何を選ぶかで人生は大きく変わるから、私は私なんだって跳ね除ける力も、大人になるにつれて必要だってことを感じて、そういう意味のタイトルにしました。青森の人は、「So what?」って聞くと、「どんだば」に聞こえるらしくて。「どういうこと?」「なんだんだ!?」みたいな意味で、ちょっと似てるんですよね。その意識はなかったんですけど、それも面白いです。

──王林さんは自分を見失ってしまったときに、どうやったら、自分らしく戻れますか?

Ourin-王林-:結局は自分自身を信じるしかないですよね。例えば、誰かが言ったことをやろうって決めて、それがうまくいかなかったときに、その人のせいにしてしまうのは違う。自分の人生は自分で決断していくことがすごく大事だと思うんですね。王林は、自分自身も信じられないぐらい、ふらついてしまってた時期があったので、「自分ぐらいは自分のことを信じてあげないと」って思って。自分の可能性や自分を信じることは、周りにいる人たちも信じることになるから、自分の気持ちに素直に従って生きていこうって思うようにしてます。

──MV撮影はいかがでしたか? 青森国際芸術センター(ACAC)で撮ってますね。

Ourin-王林-:また青森で、青森の撮影チームの皆さんと、すごい安心感のある環境で撮影しました。「ハイテンション」もそうだけど、青森にああいう場所があることをほとんど知られていないと思うんです。王林も、あそこにわざわざ行くことは今までなかったんですけど、撮影中に散歩でしている方も結構いて、知ってる人は知ってる場所なんです。青森のすごく素敵な場所なので、これを機に知ってもらえたらいいなって思うし、そんな森の奥まで行ってないのに深い森の感じが出ているので、青森の自然も感じてもらいたいです。


──MVを見てから調べて、安藤忠雄の建築だって知りました。

Ourin-王林-:そうなんですよ。トンネルみたいになってるところは木で作られてて、そこから日がちょっと差して、緑もあるから、木漏れ日がすごく綺麗なんです。夜は夜で全然違う雰囲気になって。この素敵なところが知られてないなんて、もったいないと思いました。青森はリンゴしかないって思われてるから(笑)。そんなことないって思ってます。すごく広くて、気持ちいいところなので行ってみてほしいですね。

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音楽は自分をストレートに表現できる場所

──カップリングにOurin-王林-さんを象徴したようなタイトルの「踊るりんご」という曲が収録されてます。

Ourin-王林-:この曲を作ってくれたBENAは昔からの友達で、実際に青森にまで行って、青森の空気を感じた上で書いてくれたんです。リンゴの収穫には実すぐり作業っていうのがあって。5個くらい実がついたら、1個の実に栄養を集中させるために他の実を全部落とす作業で、コロナ禍にずっとリンゴ農家の仕事をしてたので、それがすごく悲しかったんです。せっかく実がなったのに、ほとんどが落ちちゃうのは悲しかったんですけど、落ちたリンゴもちゃんと土の栄養になって、意味のないものではないっていうか。

冒頭に“実すぐり”って言葉が出てくるんですけど、落とされたっていうよりも、そっちの道を選んだっていう意味もあるなと思って。選ばれなかったほうの道を進む人たちに、あなたは選ばれなかったわけじゃなくて、あなたにはあなたの人生があるんだっていうことを伝えたいっていう話からできた曲です。

──津軽三味線が入ってますね。

Ourin-王林-:そうなんですよ。それもわざわざ青森に録りに行ってくださって。津軽三味線で音階を表現するのって結構難しいんですね。最初に仮で入れていた音はもう少し違う音階だったんですけど、変に加工するよりも、リアルな津軽三味線の音にしようってことで、昔からよく知っている津軽三味線のチャンピオンの渋谷(和生)さんに弾いてもらいました。途中、Ourin-王林-以外の人の声も入ってるんですけど、友達が実際にレコーディングしてくれたので、みんなで楽しめる曲になりました。

──2曲揃って、ご自身にとってはどんな1枚になりましたか?

Ourin-王林-:「So What」は自分自身が背中を押される曲になったと思ってて。かな多さんに話した悩みは、自分でもどう明るい方向に持っていっていいのかわからない思いだったんですけど、この曲でやっと前に進める感覚になったので、同じ思いで悩んでる方の背中を押せたらいいなって思いますし、どちらかと言ったら謙虚であまり自分を前に出せない方が新しい扉を開く曲にもなったらいいなって思ってます。自分に訴えかけてくるようにも感じてて。これからの人生のパートナーになる曲と出会えた感じもあるし、誰かにとってもそうなってほしいですね。「踊るりんご」も含めて、今までよりも王林の感情が入ってる2曲なので、青森で生まれた王林だからこその歌詞やMVを感じてもらえたらいいなって思いますし、ライブでも一緒に盛り上がれる曲だと思うので、ぜひ生で聴いてくれたら嬉しいです。

──〈「始まること」さえ もう怖いよ〉と歌ってた「So what」から、「踊るりんご」では〈始まっちゃうわ/きっと次のステージ〉となってます。次のステージはどんなものを目指してますか?

Ourin-王林-:青森で音楽フェスを主催するのが自分の目標だってずっと言ってて。デビュー2曲を出してからは、そこまで音楽をやる時間がなかったので、音楽もやってる王林を知ってもらい、そこでできた輪や繋がりをいつか青森の音楽フェスで活かせたらいいなって思ってます。

──この半年は、テレビのバラエティ番組はもちろん、アパレルを立ち上げ、ドラマに出演し、写真集も出してます。多方面で活躍する中での音楽活動はどんな場所になってますか?

Ourin-王林-:一番自分らしくいられる場所だなって思います。ずっと音楽やライブで皆さんと心を一つにしたり、自分の気持ちを乗せたりしてきたから。喋ると意図してないところで笑いが起きたりするし(笑)、「ちゃんと伝わったかな?」って思うことが多いんですけど、音楽は自分をストレートに表現できる場所だし、音楽で青森を表現してる人はなかなかいないので、自分だからこそできることをやれると思ってますし、すごくやりがいも感じてます。

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