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<インタビュー>わたしはわたしを選んでよかった――『あの子の子ども』の主題歌「わたし」でTHE BEAT GARDENが伝えたかったメッセージとは

インタビューバナー

Text & Interview: Mariko Ikitake
Photos: 辰巳隆二

 未成年が親という進路を選ぶ場合、どのような課題に直面するのだろうか。川上さち(桜田ひより)と月島宝(細田佳央太)の16歳の高校生カップルは、まさにその岐路に立っている。『あの子の子ども』は、突然の妊娠に悩みながらも、2人一緒の未来を前提に考え行動する彼らのストーリーを通して、「自分だったらどうする?」「自分が彼らの友人だったら、自分の娘・息子に同じことが起きたら?」を問いかける。

 そんなドラマの主題歌「わたし」を通してTHE BEAT GARDENが伝えるのは、〈わたしはわたしを続けてきてよかった〉〈わたしはわたしを選んでよかった〉と、自分が選んだ道はそうなる運命だったんだと肯定するもの。どのような選択も尊重されることを歌ったこの楽曲が完成するまでの経緯と隠されたメッセージを3人に聞いた。

 その前に、彼らの代表曲「Start Over」を入場曲に使っている阪神タイガース・島本浩也選手との再会の話題から。

左から:REI、U、MASATO

──6月23日に阪神甲子園球場で開催されたイベント【トラフェス】で島本選手と再会されたようですね。

U:当日はあいにく雨で、試合が中止になっちゃったんですけど、そのおかげで2曲パフォーマンスのところ、4曲歌えることになりまして。しまもっちゃんもほかの選手の方々も練習時間に抜けて見に来てくださって嬉しかったです。

REI:朝、会場入りするときに応援サポーターの方々にもご挨拶までさせてもらって。とても優しくて、僕たちが歌った外のステージにも最後まで残ってくださったり、売店の方々も応援しに見に来てくださったり、すごく温かい空間でした。

MASATO:会場全体に仲間意識があったよね。高校球児だった僕にとっては、夢の甲子園を叶えることができました。惜しくも球場内では歌えなかったんですけど、「またリベンジの機会を設けさせてください」って球団側が言ってくださって。僕らはその日に向けて準備をしておくだけだなって。温かい関西魂で僕たちを受け入れてくださって、僕らも阪神タイガースのファンとしてずっと応援していきたいです。

U:MASATO、グローブ持ってきたんです(笑)。

MASATO:いつでも出られるように、準備だけはしておこうと思って。1~2週間前から、Uさんとバッティングセンターに通って投げ込みました。ストラックアウトとか。

U:僕なんてかませ犬ですよ。まあ、準備してるやつにしかチャンスは来ないからね。野球のほかにもラグビーやバスケの会場にも行きました。京都ハンナリーズ!

──「Start Over」は『六本木クラス』の主題歌から、今では応援ソングに成長しましたね。そして、最新曲「わたし」が配信中です。これまでいろいろな書き下ろしをされてきた皆さんの苦労話を知っているファンも多いと思いますが、今回は実にメッセージ性の強いドラマ主題歌の挑戦となりましたね。

U:ドラマのプロデューサーや監督から、高校生が合唱できるような、覚えやすくて、すっと入ってくるメロディーのご要望がありました。温かいけど、ちょっと切なさもあるようなメロディー。歌詞はプロデューサーや監督との共作と言ってもいいぐらい、何度も何時間も練って完成させました。7、8パターン書き直して、たどり着いたって感じです。本当は第4稿ぐらいのときに全員でガッツポーズしたぐらい、自信があったんですけど、まだまだ言い回しが大人っぽかったりして、もう少し学校感というか、本当に高校生が歌うところに寄せていきながら完成させていきました。今回のメロディーはMASATOが作ったんです。

──メロディーでは、どういったところを意識されましたか?

MASATO:命がテーマでもあったので、すごくセンシティブで、どう捉えたらいいのかが、まず大きな悩みのひとつではありました。でも、それぞれの意見を尊重すること、強要してはいけないということに気をつけたときに、自分の中に出てくるメロディーは温かいものだったんです。Uさんにはこういうことを書いてほしいなとか、脚本を読んでこうなっていったらいいなっていうものを自分の中で構築していって、それをメロディーのプロットとして組み立てていきました。

──では、おふたりの話し合いも、結構あったり?

U:MASATOのメロディーに歌詞を書くのは昔から難しくて……REIと作るときは、譜割りに対して「ここは3文字なんですけど、(リズムが)跳ねても跳ねなくてもどちらでもいいです」っていう会話になるんですけど、MASATOは「絶対、ここはこういうメロディーじゃないとだめなんです、Uさん。ここを伸ばしたら死んじゃうんです!」みたいなことを言ってくるんですよ。しかも、よりによって僕が作詞で地獄を見ているときに(笑)!

でも、「わたし」のメロディーに関しては、1回聴いたら口ずさんでしまう自分がいて。ということは覚えやすいメロディーなんだって認めざるを得ないところがありました。確かにこのメロディーを崩したらその良さが消えてしまう感じがあったので、MASATOの譜割りに合わせて歌詞を書きました。

MASATO:自分が意図したどおりに歌詞が上がってきて、すごく感動してしまいました。僕が作った世界観を壊してほしくないとか、そういうことではないんですけど、アレンジしかり、本当に全てがバッチリはまったんです。


──REIさんは制作過程をどのように見ていましたか?

REI:閉じこもって自問自答しながら、構築しては破壊するのを延々と繰り返して、自分が本当に納得できるものを出すMASATOさんと、ドラマサイドと僕らチームの間に立って、ちゃんと自分の作品へ落とし込んでいくUさん。MASATOさんが好きなように最後まで突き進んだほうが絶対いいと思ったし、歌詞に関しても同じことが言えたし、僕はただ、いいものが上がってくることはわかっていたので、2人を信頼してました。

──REIさんは上がってきたものを自分の歌声でどう表現するかに注力したわけですね。

REI:誰がどのパートを歌うかは、ラララの段階である程度、各々わかるんです。Aメロではこう歌いたいっていうイメージが2人の中で明確にあったので、僕もどう歌おうかイメージはできてました。

U:〈もう少し大人になればあなたを悲しませるもの半分くらい持ってあげられるのかな〉から〈守りたい優しい未来があなたにあったよ〉までは、宝と福と生まれてくる赤ちゃんの気持ちを歌ってるんですよ。ここは3人じゃないとダメだと僕は思っていたんですけど、3人とも声質が違うから難しいだろうなって。しかも、MASATOがここのトーンを上げてきたときに「なんちゅうメロディーくれてんねん!」って、たぶん過去10年で一番キレた気がする(笑)。

MASATO:大人心を持ってから、初めて人に怒られました。

U:しかも、ずっとブース越しで爆笑してるんですよ、この人! で、いざ歌ってみると本人が誰よりも歌えないっていう(笑)。

MASATO:こんな難しい曲、いったい誰が作ったんだって(笑)!

U:メロディーを作った方が散々だったので、〈うずめた顔にやわらかい匂い〉のところは、REI君がカバーしてくれました。

──そんな背景があったとは(笑)。ちなみに、この曲のメインは福目線で書かれているのでしょうか?

U:実は宝でもあり福でもあり、僕自身でもあるんです。今の自分も不安にかられて眠れなくなるような夜もあるし、不安になる日もある。大人になっても拭えない不安はあるので、もちろんドラマや福のことを考えて書いた曲ではあるけど、高校生だけじゃなく大人全員にも通ずるものとして書きました。

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──第5話で医師の野田由紀(板谷由夏)から「子どもが親を選ぶ」というセリフがありましたが、〈わたしはわたしを選んでよかった〉の歌詞は、このシーンを意識されたのでしょうか?

U:はい、そこは脚本から反映させた部分でもあるんですけど、自分に言ってあげたい言葉でもあるんです。音楽を仕事としている自分には、ほかに選択肢がいくらでもあるし、辞める理由を見つけるほうがむしろ簡単でもあります。でも、どんな小さなことでも、僕たちはみんな選択をしているわけで。よくファンの皆さんに「自分たちを選んでくれてありがとう」、「あなたがあなたを選んでくれたから、今、僕たちは会えてる」って言うんですけど、それと通ずるものがある気がしますね。

──高校生の妊娠は、なかなか難しいテーマですよね。答えがないですし、誰かが口を出す権利もないと言いたいところですが、将来のことや金銭面など、未成年だけでは決められないところもあって……

U:でも、この年齢になってもまだまだ親に頼ることはありますよね。学生時代にラグビー強豪校に所属していたこともあって、宝と共通するところがあるんですけど、もし僕が宝だったら、大事な試合だろうがそれどころじゃないと思うんです。あのシーンは男子目線というか、宝の目線で見てました。親や周りからの援助がもらえない場合もあるわけで、そういった場合でも未成年が親としての道を選ぶとしたら、というひとつの例を提示してくれたように思います。

REI:自分が親だったら、たぶん宝と福を自分の子に置き換えるだろうし、後悔のない選択をそれぞれができることがベストだと思うんですけど、正解がないがゆえに難しいですよね。

MASATO:僕も正直、どれが正しい道なのかわかんないんですけど、僕はそれこそ子どもが親を選ぶように、授かるものだと思っているので、自分が当事者だったら腹をくくると思います。僕の周りにも授かり婚の方がいて、幸せな家族を見てきましたし、どんな運命でも幸せになれると思います。

──初回と最終話では視聴者の「わたし」の聞こえ方も変わってきそうですか?

U:一番と大サビは同じ歌詞ですが、使われているテイクはどれも違うんです。というのも一番はわたしを続けてよかったって思いたいから、自分にそう言い聞かせてる“わたし”がいるんですけど、ブリッジからは相手のことも思いやれるようになり、最後はこの選択で本当によかったって思っている“わたし”という流れでレコーディングしたんです。

先日、撮影現場にお邪魔したときに、11話の重要なシーンを撮影していたんですけど、訪れた学校に校訓が飾られていて、その校訓の最後が「私は私を続ける」っていうニュアンスの言葉だったんです。監督のアベラ(ヒデノブ)さんから「本当にこの曲と運命的なものを感じるんです」って言われて。ドラマ側が「歌詞とリンクしたところで(曲を)流します」とおっしゃっていて、制作の方々はこの曲を絶対に無下にしない人たちだってこともわかっているので、僕たちの意図もきちんと伝わると信じてます。

最初に僕が福と宝にだけ寄り添って書いた歌詞を、全国の高校生や社会人にも届くものに変えてほしいと言ってくれたドラマサイドのおかげで、いろんな方々に届く歌になりました。THE BEAT GARDENが一歩一歩前に歩き続けられたのは、やっぱりファンの力のおかげなので、これから出会う方も今まで付いてきてくれた方々も、ライブに来てくれる目の前の方々全員に届けるようにします。膝を突き合わせて一人一人と出会ってきた僕らなので、自分の人生を続けてよかった、出会えたことは宝物なんだってことを歌にできたこの曲はライブアンセムに育っていくと僕は思ってます。

MASATO:僕らがエレクトリック・ダンスロックからJ-POPにシフトチェンジした時期に、メッセージを届けていくことこそが僕らに求められているものなんだと気付いたんです。人に合わせて会話したり、自分自身をあまり前に出さなかったり、“わたし”を発信することが徐々に薄れてきていると僕は思うんですよね。だからこそ、こうやって文法としてしっかりと“わたし”という言葉を並べることで肯定感を強められたのかなと。自分たちの良さ、強みを知るきっかけをくれた曲なので、この曲を歌うたび、そう思い出していくと思います。

──様々な方たちに直接メッセージを伝えるという部分では、控えているワンマンライブ【FORTE】もそのひとつの場所になりますね。

U:タイトルどおり、大きく、強く、「もっと歌っていいよ!」って伝えたくて、このタイトルにしました。みなさんがもっと歌いやすくなる準備をしています。その中には、たとえば先にセトリを一部公開して、歌う練習をしてきてもらうっていうアイデアも。それか、事前に歌ってほしい曲のリクエストを募って、当日歌うとか。サプライズよりも、みんなで作っていくライブのほうが楽しいのかも、っていうモードに今、僕ら入っているんです。

REI:初めて来てくれる方も、披露される曲がわかれば、当日疎外感を感じずにすむのかなって。

U:REI君が今回のライブアレンジを担当するので、彼にはこれから地獄の期間が始まります。

──【「good error」】ではREIさんがキーボード、MASATOさんがギタープレイを見せる場面もありましたね。

REI:【「good error」】でいろんなことを試してみて、難しいことに挑戦していくより、曲が映えるような、いい意味でJ-POPのライブを見せていこうっていう話にまとまったので、曲が映えるSEだったり、ライブの軸はブレずに新しいものを見せていこうと考えています。

MASATO:【「good error」】で自分たちのことを好きになれたので、そこで踏ん切りがついた部分も実はあるんです。前回は一人一人にフィーチャーした場面を作りましたが、今回は“3人”を見せる部分を作っていくのはどうかなって。そこに皆さんが一緒に歌ってもらうことで、今までで一番高い熱量を作れる気がします。

──東京公演はクリスマスイブに開催ということで、より一層素敵な日になりそうですね。

U:僕らも一緒に過ごせて嬉しいです。一緒に盛り上がって、汗だくの聖夜にしましょう!

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