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<インタビュー>望海風斗が1stアルバム『笑顔の場所』をリリース――「ただ寄り添うだけじゃない、戦うだけじゃない、そんなアルバムにしたかった」
Interview & Text:尹秀姫
Photo:Shintaro Oki(fort)
2021年に宝塚歌劇団を退団後も『イザボー』や『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』などミュージカル界でもトップスターとして活躍している望海風斗。宝塚在籍当時から歌唱力には定評があり、退団後もこれまでに3回、ソロコンサートを開催している。今年の3月にはアンジェラ・アキが楽曲提供した「Breath」でオリジナル曲にも挑戦。3月から4月にかけて開催された【ドラマティックコンサート『Hello,』】でも披露している。そんな彼女の1stアルバム『笑顔の場所』は、カバー曲に加えて、「Breath」と「Breath smile version」、そしてGRe4N BOYZが楽曲提供した「ミチシルベ」も収録されている。舞台で役を演じながら歌うことをしてきた彼女が自身の声で歌うことを選んだ理由と、アルバムに込めた想いを聞いた。
寄り添いながら、代わりに戦うようなアルバム
――メジャー1stアルバム『笑顔の場所』が8月28日にリリースされます。どんな想いでこのタイトルをつけられたのでしょうか?
望海:このアルバムは、聴いてくれる方や、日々がんばって生活しているみなさんに寄り添えるものにしたいと思っていたのですが、その想いの行き着く先ってなんだろうと考えた時、やっぱりみんなが笑顔になれる場所、それぞれがちゃんと笑っていられる場所だなと思ったんです。そんな想いを集約して、『笑顔の場所』というタイトルになりました。
――ジャケット写真ではマニッシュなスーツに赤いボクシンググローブを身に着けた姿が印象的でした。ミスマッチな組み合わせですが、ある意味、みんなの笑顔の場所を守りたいという想いの表れなのでしょうか?
望海:そうですね。本当はそっと寄り添えるようなアルバムになったらいいなという想いがあったんですけれど、私の個性を考えた時に、どこかに少し強さみたいなものがあった方が、よりこのアルバムに込めたメッセージが濃くなると思ったんです。みなさんに寄り添いつつ、代わりに戦うような気持ちも込めて撮影しました。撮影前にこのジャケット写真の絵コンテを見た時、すごくインパクトがあって面白いなと思いました。なので撮影も、強さで戦うだけじゃなく、寄り添うだけじゃなく、どちらも両立させるような絵になったらという意識で挑みました。
――1stアルバムをリリースするに至った経緯を教えてください。
望海:アルバムのリリースにはいつか挑戦してみたいとずっと思っていたので、私にとってこのアルバムはいわば夢が叶ったような感じです。宝塚を退団してから今までに3回、コンサートをさせてもらっているのですが、そこでいろいろな歌を歌ってきて、みなさんにもすごく喜んでいただいて。普段はミュージカルの曲をメインに歌っているんですけれど、こういうポップスとか、日本の楽曲をコンサートで歌った時に感じるものがあったんですよね。いい曲ってどんな時代にも寄り添ってくれるし、励ましてくれるんだなって。それに年代によっても聴き方が変わったり、曲に対しての思い入れも変わってくるんだなというのを感じたんです。そういう経験があって、このアルバムにたどり着いたような感じですね。
――寄り添えるアルバムにしたいというお話がありましたが、今回カバーした楽曲はそのテーマに沿ってセレクトされたんですか?
望海:そうですね。だから、今回のアルバムには入らなかった曲もたくさんあるんですよ。実は松任谷由実さんの曲では「翳りゆく部屋」のほかに、「ひこうき雲」も最後まで候補に残ってたんです。どちらも歌ってみて、「翳りゆく部屋」の方がこのアルバムにはいいのかなと感じて、そういう風に決まったものもありますし。「始まりのバラード」と「月光」、「田園」はコンサートでも歌っていた曲で、私自身もコロナ禍で励ましてもらった曲でもあり、コンサートでもみなさんの想いを昇華してもらった曲でもあります。アルバムのテーマにも沿っているし、ライブで歌うのとレコーディングで歌うのとでは全然違うと思うので、あらためてこの曲たちをレコーディングしてみなさまにお届けしてみたいなと思って選曲しました。当初は洋楽も入れようかという話もあったのですが、初めてリリースするアルバムなので、日本の素晴らしいアーティストの曲をカバーしたほうが、より伝えたい想いが伝わるんじゃないかと思って、こういう選曲になりました。
――望海さん自身がアルバムに入れたいと思った曲と、提案されて歌ってみたらよかった曲はなんですか?
望海:「始まりのバラード」と「月光」、「田園」は私もそうですし、音楽プロデューサーの武部聡志さんをはじめ、周りのスタッフからもこれはアルバムに入れたいねって意見が一致した曲ですね。「翳りゆく部屋」は武部さんが歌ってみたらと言ってくださって初めて歌ったんですよ。武部さんのピアノに合わせて歌った時に、この曲を自分でも歌ってみたいと思ったんですよね。「翳りゆく部屋」ってただ単純に寄り添う曲ではないじゃないですか。すごくドラマがあるし、ちょっと苦しくなったり、悲しくなったりいろいろな思いがあるんですけれど、でもすごく人間らしさが込められていて、言葉の力を感じたんですよね。もちろん、松任谷由実さんの声で成立している曲ではありますが、この曲を私が歌うことで、自分もその物語の中に入ってみたいなという気持ちが濃くなったんですよね。悲しいだけじゃない、いいエネルギーをいただける曲だと思います。
――3月から4月にかけて開催された【ドラマティックコンサート『Hello,』】ではアンジェラ・アキさんが楽曲提供された「Breath」を披露されています。3月にシングルとしてリリースされてはいますが、まずはこの曲について、アンジェラ・アキさんから受け取った想いや、望海さんが考えるこの曲の魅力について教えてください。
望海:自分と向き合う時間って、実は少ないんじゃないかなと思うんですよね。別にあえて向き合わなくても生きていけたりもしますし。でも、ふとした時に「私ってなんなんだろう」とか、「何のためにがんばって今これをやってるんだっけ」と思うことって誰しもあると思うんですよ。そんなふうに、自分に時間をかけることがないまま今まで来ちゃったな、というのをアンジェラさんにお伝えしたんですよね。ちょうどその時、アンジェラさんも活動をお休みされていたタイミングで様々なことを経験されていたということもあって、そんな私の想いに共感してくださったんです。それで自分の呼吸をもう一度見直すというか、自身に立ち返って本来の自分、今の自分をちゃんと受け止めて、もう1回前に進んでみようという想いを込めたこの曲が生まれました。誰かに励ましてもらうことも必要だけど、自分が自分のことをきちんと見ていないまま進んでいってしまうと、いつか立ち止まった時に“空っぽな自分”という壁にぶち当たってしまう気がするんですよね。私自身もそのことを感じていたので、今のこの現代を生きる人にはきっとそういう人が多いんじゃないかと思うんですよ。なので、この曲を聴いてもらっている間だけでも自分の呼吸を取り戻して、すごくシンプルなところに立ち返ってもらえたら、という想いがこの曲には込められています。「私ってこういうことを思ってたんだ」とか、「実はこれを苦しいと思ってたけど、見ないようにしていたんだな」とか、そういったことに気づいて、ちゃんと深呼吸して、空気を入れ替えて前に進んでもらえたらうれしいです。
――【ドラマティックコンサート『Hello,』】でもお話されていたと思いますが、コロナ禍でいろんなことが止まってしまった中で、再び動き出すことへの後押しをしてくれるような曲でもあるなと感じました。
望海:アンジェラさんご自身が、歌に自分を隠さず表現される方だと思うんですよ。人間って誰しも表と裏があると思うのですが、アンジェラさんの曲にはご本人の裏の部分だけでなく、曲を聴いている自分の裏の部分も感じられるんですよね。それでいて、そっと背中を押してくれるような力を持っていらっしゃる方だなと思っていたので、そんなアンジェラさんのやさしさが、「Breath」にも込められているなと思います。
――今回は「Breath」のsmile versionも収録されています。オリジナルとの違いや、レコーディングでの違いなどはありましたか?
望海:武部さんのピアノで演奏したバージョンで、より自分自身に近づく感覚はありますね。オリジナルバージョンは、部屋の中にぽつんと1人いたところから少しずつ光が膨らんでいくという様がより立体的に表現されていると思うんですけれど、smile versionは最初から最後まで“個”というか、より自分自身の内面に向き合えるようになっていると思います。飾りがない分、すごくシンプルで、この曲の芯の部分をお届けできるかなと。オリジナルのアレンジも、静の部分から動き出すという構成になっているので、自分の内面の動きに沿った曲になっているんですけれど、smile versionは、前に進むというよりも自分の中に入り込んでいくような感覚なんですよね。その違いを感じていただけたら嬉しいですし、この曲がアルバムの最後に入っていることで、今回のコンセプトがより明確になったなと感じています。音楽の力に励ましてもらって動き出せるということはあると思います。それでも、最終的にはやっぱり自分の力が必要だと思うので、最後に自分の呼吸に戻って、自分に立ち返ってもらえたらいいのかなと思います。
――今回のアルバムにはGRe4N BOYZさんが楽曲提供された「ミチシルベ」も収録されています。GRe4N BOYZさんとの出会いのきっかけと、この曲を歌うに至った経緯について教えてください。
望海:アンジェラさんとは対照的でありつつ応援ソングを歌われるような、パワーのあるアーティストさんにお願いできたらということで、武部さんからの紹介で楽曲を提供していただきました。
――「ミチシルベ」を初めて聞いた時の感想は? どんな想いをこの曲に込めたのでしょうか?
望海:アーティストさんによって個性が全然違うんだなというのをあらためて感じました。「ミチシルベ」を作っていただくにあたって、リモートでお話もさせてもらったんですよ。それで、「Breath」とはまた違った応援歌にしたいということで、「Breath」は“個”に近い内面の部分を描いている自分自身についての曲ですが、「ミチシルベ」はいざ一歩社会に出た時に後押ししてくれるような、それぞれのステージに立った時に応援してくれる、ファイトソングのような曲になったらいいなというのをお話したんですよね。それがこういう形で返ってくるんだ、お話したことがこういう音楽になって返ってくるんだなって、すごく感動しました。私のイメージとしては「Breath」は帰ってくる場所であって、「ミチシルベ」は自分が会社や学校、家庭もそうですが、何かの役割を果たす時に自分を励ましてくれる曲なので、外に出る時に「ミチシルベ」を聴いて、「よし、がんばっていこう」みたいな感じになったらうれしいです。今まで出会ってきた人やことが自分の道になっていて、これから先の出会いをさらに見つけていく、という曲です。
リリース情報
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“歌によって繋がれる”という喜びが
詰まっているのが音楽
――その他の楽曲はカバーとなっていますが、レコーディングしていて難しかった曲、逆に歌いやすかった、楽しかった曲、感情移入しやすかった曲についてそれぞれ教えてください。
望海:カバー曲は、その方の個性がありますので、もちろん全部難しかったですね。初めて歌った「明日晴れるかな」、「人生の扉」、「翳りゆく部屋」、「誕生」は特に難しかったです。「始まりのバラード」と「月光」、「田園」はこれまでのコンサートでも歌っていたので、その中でちょっとずつ曲への愛着とか、自分ってこういう想いをこの曲に乗せて歌うんだなというのが生まれてきた感覚はあるんですけれど、初めての曲にはそういうものがないところからのスタートなので。どれだけ自分の声に想いを乗せられるんだろうというのはすごくチャレンジングでしたね。みなさんに馴染みのある曲、聴いたことのある曲も多いと思うので、その印象がすごく強いと思うんですよね。そういった曲を私がどう歌おうかというよりも、どうやって自分の声でこの歌の良さをお届けできるか。それが大切なのではないかと、歌うたびに思いましたね。
そんな中でも「人生の扉」は歌いやすかったです。 今の年になって、この曲はすごく刺さった感覚がありました。今、40代に入ったばかりなのですが、これから50代、60代になっても、「人生の扉」のような生き方をしたいなと思いました。その年代でしか感じられないこともあるし、それを楽しめる人生でありたいなって。できないことに蓋をするよりも、その歳だから感じられることやできることに目を向けるような前向きな気持ちをいただいた曲でもあるし、きっとこれから先もたくさん聴くだろうなと思いました。年を取るほどに可能性がどんどん広がっていくと思っていた若いころに比べ、実際に年を重ねた今、できないことも増えていくし、年を取ることの不安も感じていました。でもこの曲に出会って、それも悪くないなって思えたんです。自分の人生の一瞬一瞬を大切に感じて、切り開いていくことを思ったら、年を取るってすごく素敵だなと思わせてもらった曲です。この曲を歌っていて、そういうポジティブなエネルギーをもらったし、そういう気持ちで歌えた曲でもあります。どの年代の方にも、自分の人生を楽しく進んでいこうと思ってもらえたらいいなと思いながら歌いました。
「誕生」はすごく大きなテーマを孕んだ曲だなと思いました。 普段、命について考えることってあまりないじゃないですか。でもこの「誕生」という曲は、歌っていていろいろな風景が浮かんだんですよね。自分の周りにいる人に対してもそうですし、もっと大きな規模で、この世界にはたくさんの人がいるけれど、誰しも最初に生まれてくることから始まっているのは一緒なんだな、とか。いろいろな情景を浮かべながら、歌詞の一言一言を紡いでいった感覚があります。どんなに遠くにいる人でも、この世界に生まれてきた人たちなんだというのは同じじゃないですか。生まれて死ぬことはどんな人にも共通していることであって、死には恐怖を感じるけれど、生まれたことに対しては恐怖はないですよね。生まれた瞬間の喜びは、自分では覚えていないけれど、でもここに生まれて出てきたことが素晴らしいというこのメッセージそのものが、なんて素晴らしいんだろうと強く感じた曲です。
「ミチシルベ」はレコーディングも楽しかったです。同時に難しくもあり、歌えるようになるまでがすごく時間かかりました。普段、バラードを歌うことが多いので、ポップスを自分の歌として歌うということがすごく難しくて、「ミチシルベ」は挑戦でしたね。曲をいただいて、すごくかっこいい曲だし、ワクワクする曲だし、「うわ、こんな曲を歌えるなんてうれしい」と思ったんですけれど、実際に歌ってみたら手も足も出ない状態からスタートしたので、自分の歌として歌えるようになれたのがすごく楽しかったです。レコーディングの時まではずっとできない、歌えない、という状態だったので、楽しんで歌えたというのがすごくうれしかった曲ですね。
――【ドラマティックコンサート『Hello,』】でもいろんなジャンルの曲を歌いこなす望海さんのシンガーとしての実力を存分に味わうことができました。今回のアルバムを通してシンガーとしてどのような姿を見せたいとか、このアルバムをどんな作品として届けたいという想いはありましたか?
望海:普段はやっぱりステージに立って何かの役を演じたり、素の自分ではない状態で歌をお届けしたり、劇場でお客様がいらっしゃる状態で遠くまで歌をお届けするということをずっとやってきたので、このアルバムに関しては、聴いてくださる1人1人に、本当の自分の声で、みなさんにそっとお届けする、というイメージなんですよね。だからそういう意味では、より近くに私の歌声を感じてもらえたら1番うれしいです。コンサートの時はエネルギーがいるというか、アドレナリンも出てるし、パフォーマンスも含めての楽曲だったりするのでパワーもいりますけど、アルバムではパワー系じゃない本来の自分の状態で曲をお届けしたいという想いがこのアルバムには詰まってます。
――【ドラマティックコンサート『Hello,』】を観ていて、望海さん自身が本当に歌を心から愛していて、曲の世界を表現することを大切にしていらっしゃるということを感じました。望海さんにとって歌うこと、音楽とはどんなものですか?
望海:歌によって繋がれる、という喜びが詰まっているのが音楽だなと私は感じています。音楽を聴いている時もそうですし、自分が実際に歌うことで聴いてくださる方と繋がれるという喜びもあるし、音楽を一緒に作るみなさんとの繋がりもそうですね。そういう1人ではないことを音楽で感じられるというのが私はすごく好きなんだと思います。そしてある意味では挑戦でもありますね。歌うことには終わりがないので、歌うことで自分が生きていることを実感できるし、まだまだたくさんの音楽があって、いろいろな曲を歌いたいなと思わせてくれます。聴いてくれる人がいるからこそ歌えるというものもありますしね。
――では、これからもアルバムのリリースは続くということですよね。今回のアルバムには入らなかったけれど、機会があったら歌いたいという曲はありますか?
望海:たくさんあります! 今回は人生に寄り添うことがテーマだったので、次は愛をテーマにするとか。あとはもともとミュージカルの歌劇を歌っているので、次は映画の曲を歌ってみたいという思いもあります。ドラマがはっきりしているものというんでしょうか。そういうのもいいなとか、いろいろ夢は持っています。
――普段、舞台で役を演じるということをされていらっしゃいますが、たとえばミュージカルで歌をうたうことと、コンサートやアルバムをとおして歌を届けることの違い、それぞれの魅力について教えてください。
望海:素の自分として歌った曲でアルバムを作るという経験が初めてなので、 「この人ってこういう歌を歌うんだ」とか、「こういう声なんだ」とか少しでも知ってもらえたらうれしいですよね。ミュージカルを観に来てくれている方にも、また全然違う姿を見ていただけると思います。舞台で歌うのと素の自分で歌うのとでは、単純にエネルギーの放出量が全然違うんですよね。舞台で歌うとなると、空間が大きいので劇場をどう振動させるか、波動を意識して歌うので、自然とブレスも大きくなるし、体全体を鳴らして歌うことをメインに考えるのですが、アルバムで歌をお届けするとなると、もっとみなさんの耳にダイレクトに届くことを考えなきゃいけないんです。だから圧をかけすぎず、聴いていて心地いいというのが、ベストかなと思っていて。でもそれが私には難しいんですよね。ずっと目一杯の力で歌ってきたので、力を抜いて歌うってすごく難しいんだなって、今回やってみて学びました。
――それぞれの表現がお互いにいい影響を与え合っているということはありますか?
望海:それは大いにありますね。今、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』の公演中なのですが、劇中で歌う曲はポップスが多いんですよ。去年から2年続けて公演させていただいているのですが、去年は初めてポップスの曲をミュージカルとして歌うという経験をして、どう折り合いをつけたらいいんだろうって悩んでいました。ポップスを歌ったことがない人間がポップスを歌うってどうなんだろうという戸惑いがあったんですね。今回、カバーアルバムに挑戦させてもらったことで、『ムーラン・ルージュ』でポップスを歌うことがしやすくなったというのはありますね。逆に、ずっと舞台でミュージカルをやってきているので、1曲1曲への背景やドラマを想像することは得意です。 いつもそうやって想像しながら歌っているので、舞台のような膨らませ方ができるし、そのやり方が私には合ってるのかなと思いますね。ただ、そこからそぎ落としていくのがレコーディングには必要なんだなっていうのもわかりました。だから、違うように見えて実はすごく繋がり合っているので、相乗効果でどちらもスキルアップしていけたららいいなと思いますし、実際にポップスのミュージカルも増えてきているので、ポップスを知ってるか知らないかの違いは大きいなと今回すごく感じました。
――望海さん自身はそぎ落とすことのほうが難しいですか?
望海:難しいですね。どれぐらいの振動、波動で合わせたらいいのか、すごく繊細な調整が必要なんです。私はずっと舞台をやってきたので物足りなく感じたりとか、そぎ落とすことにすごく勇気がいるんですよね。でも、手のかけ方が違うんだなと感じました。レコーディングって本当に一音一音、音にこだわっていくんだなと。本当にミリ単位で自分が届けたい想いを音に乗せていくというのがプロの仕事なんだな、というのをあらためて感じましたし、逆に細かいことをあまり気にしすぎると、舞台のような大きな空間ではスケール感がなくなってしまうこともあるので、そこはやっぱり違いますね。レコーディングの時の一音一音へのこだわりとか、リズムのこだわりとか、そういうのを私は今まで勉強してこなかったので、すごく細かく教えていただきました。でも、知らないことがいっぱいあるから、知っていくことの楽しさもおぼえました。
――今後、歌手としての望海さんがやりたいこと、目標は?
望海:これはいつか叶えたい夢なのですが、フルオーケストラで歌うのが夢です。ミュージカルの曲もそうだし、ポップスもそうだし、オリジナル曲もそうだし、いろいろなジャンルの曲をオーケストラに乗せて歌いたいんです。贅沢ですよね、フルオーケストラは。宝塚で『ファントム』を演じた時、“オケ合わせ”と言って劇場に入る前にオーケストラの方と歌や各シーンの音楽を合わせるお稽古をした際、初めてモーリー・イェストンさんが作曲された曲を生オーケストラで聞いて、素晴らしくて涙が出ました。こんな音楽と一緒に歌えるなんて幸せだなって感じましたね。ただ、フルオーケストラで歌うというのは、オケに負けない相当な技量が必要だとも思います。一度、玉置浩二さんのコンサートを聴きに行きたいんですよね。オーケストラと玉置浩二さんの音楽が合わさるとこんなことになるんだな、歌ってこうなるんだな、というのを体感したいです。テレビで玉置浩二さんがオーケストラの中で歌っている姿を拝見した時に、音楽にはこんな可能性もあるんだ、と感じたんですよね。ライブならではの波動もあるでしょうし、もともとガツンとストレートに人の心に音楽を届けてくださる印象があるんですけれど、それがオーケストラと一緒になったら魅力が倍増されるんじゃないかなと。なので私も、自分自身の歌を増やしていって、フルオーケストラの演奏に負けない歌を歌えるようになりたいというのが、ちょっと先の夢ですね。
――最後に、望海さんにとっての笑顔の場所とは?
望海:笑顔の場所はやっぱり人ですね。人がいる場所といいますか。自分の大切な人たちに会うと笑顔になります。中でも宝塚時代の仲間はやっぱり特別ですね。みんなに会うとすごく笑顔になれます。そう思うと、宝塚時代って毎日よく笑ってたなって思うんですよ。1日に何回笑ってたんだろうっていうぐらい笑っていたので、そういう仲間と会うと自然にワクワクしますね。
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