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<インタビュー>マオ 「自分も、ファンのみんなも、ただただ楽しむライブをずっと続けていきたい」――【habit】ツアーでの手応えとファンへの想い
Interview:杉江優花
シドのヴォーカリスト・マオが、“マオ”名義として初のフルアルバム『habit』を5月29日にリリースした。現在、同作を引っさげた全国ライブハウス・ツアー【MAO TOUR 2024 -habit-】の真っただ中である彼に、ツアーの手応えや、それを経て改めて感じているファンへの想い、そして今後の活動への意欲について、たっぷりと語ってもらった。
ライブハウス・ツアーでの手応え
――“マオ”名義でソロとして初めてリリースしたフルアルバムであり、全曲の作詞および作曲を手掛けたアルバム『habit』。その意欲作を携えての全国ライブハウス・ツアー【MAO TOUR 2024 -habit-】が6月29日からスタートしていますが、埼玉、神奈川、宮城の3公演を終えた現時点(※取材は7月上旬に実施)で、どんな手応えを感じていますか?
マオ:『habit』はもともと【MAO TOUR 2024 -habit-】に向けて作ったアルバムだったわけですけど、ツアーが始まってやっとアルバムの世界が完成しつつあるな、ということはすごく感じていますね。3本終えたところではまだツアー序盤ならではの緊張感みたいなものがあって、それも含めて楽しみつつ、宮城公演では早くも固まってきたかな、ツアーの雰囲気がかなり出来上がってきたな、という手応えもあります。
――長く応援してくれている方たちだけでなく、たとえば『habit』をきっかけに初めてマオさんのライブに足を運んでくれる方もいたりして?
マオ:そういう人、結構いるみたいなんですよ。それこそ、俺がシドを始めたころにはまだ生まれていなかったような年代の人もいたりとか。親子2代でとか、俺より年上の方もライブ会場に足を運んでくれたりするし、年齢層がだいぶ幅広いんじゃないかな。あと、俺のライブってお客さんのマナーがとてもいいんですよ。曲によってガーってステージ方向に押し寄せてきても、そのあとちゃんと定位置に戻るということが自然にできるので。そういうところもさすがだな、と思います。
――マオさんファンの方たち、素晴らしいです。そんなソロとしては初となるスタンディングでのライブハウス・ツアー、マオさんとしてはどんな準備をして臨んでいるのでしょうか。
マオ:暑くなる季節、体力は余計に必要になってくるだろうなっていうところで、半年前ぐらいからトレーニングメニューを変えたり準備をしたりはしていたんですよ。
――半年も前から。
マオ:ですね。身体って1か月とかでは作れないので。痩せた身体だとたぶん持たないな、ちょっと身体を大きくしないとまずいな、と思って。とにかくたくさん食べて筋トレする、っていうことは半年間続けてきました。
――そうやってライブのために肉体改造することは、マオさんにとって苦ではないのですか。
マオ:たとえば、お店をやっている人はどうやったらお客さんに来てもらえるか勉強するだろうし、問屋さんとどう交渉するかとか考えるじゃないですか。そういうのと同じで、ベストな状態でライブに臨むためにはいろんな人から知恵を授かったり学んだりしたいし、身体もしっかり作りたい。だから、言われてみれば苦とか楽とかってないかもしれないですね。
――なるほど、“覚悟”ができているということなんでしょうね。
マオ:そんな大仰なものではないかもしれないけど……好きなこと、やりたいことをできている人って一握りだと思うので。普段なかなか会えない場所の人にも、何か所も足を運んでくれる人にも納得してもらえるようなツアーにしたいし、やるからにはちゃんとやろう、とは思っています。
――実際、半年積み重ねてきたトレーニングの成果は、ステージに立っていて実感できているのでしょうか。
マオ:ステージに立っているときというより、ライブの翌日に実感しますね。筋肉痛とか疲労感とかがないんですよ。若いときはそれこそなにもしなくても余裕なんですけど、歳を重ねるとやっぱり、意識して日々地道に努力しないとだめだなって。
――日々の積み重ね、大事ですね。なお、埼玉公演、神奈川公演、宮城公演それぞれでの印象的な出来事があれば教えていただけますか。
マオ:どの公演でもメンバーさんがとても楽しそうで、それがすごく嬉しいですね。俺の現場では、サポートメンバーとしてではなくバンドのメンバーとしてちゃんと迎えていて、たとえばステージングにしても自分の好きなタイミングで好きなように動いてください、って伝えているんですけど……。
――おなじみのnishi-kenさん(Key.)はじめ、Ledaさん(Gt.)、Shoyoさん(Ba.)、DUTTCHさん(Dr.)、みなさんそれぞれいろいろな現場でサポートされていると思いますが、自由度の高さに驚かれたのではないですか?
マオ:確かに驚いていましたね(笑)。サポートする場合、自由にどうぞ!っていう現場はやっぱりあまりないみたいで。でも、そっちのほうが楽しいじゃないですか。
――バンドメンバーのみなさんが楽しんでいることがひしひし伝わってきますし、なにも知らずに今回のツアーステージを観た人はバンドなのかなと思うかもしれません。
マオ:それが理想ですよ。本当に今回のツアーは、「ライブハウスでやりたい」とか、「バンドっぽくやりたい」とか、そういう自分のやりたいことだけやれている感じはします。
――『habit』という作品にしても然り、今回のツアーにしても然り、その純度の高さもまた魅力的だなと感じます。ツアーではアルバム全曲を披露していて、セットリストはアルバムの流れを意識して組まれているのかなと感じましたが、マオさんの意図は?
マオ:そうですね、アルバムの流れはやっぱり意識しつつ、前からやっている曲を好きなファンも多いので、それをうまく入れつつ。あとはバラード少なめで、ライブハウスならではの高い熱量を保ちたいな、ということも考えて組んだセットリストではありますね。
――なかでも、ライブで披露してみて印象の変わった曲、ポテンシャルの高さを感じる曲はありますか?
マオ:「枯渇」かな。音源で聴く印象よりも、かなりハードに聴こえると思うんですよ。
――確かに、すさまじい圧倒感があります。
マオ:バンドメンバーががっつり支えてくれているおかげで、ライブハウスならではの胸にガツンとくる響きがあるなって。そういう「枯渇」はじめ、『habit』の曲たちを今回のツアーでどんどん成長させていきたいですね。
――また、アルバム完成後に「早く新曲を作りたい」と言っていましたが、今回のツアーで早くも新曲「mannequin」が披露されて、驚いています。
マオ:ライブに向けてセットリストを練っていくなかで、「ここに激しい曲があったらいいのにな」と思って作ったんですよ。
――刹那的な疾走感でフロアを瞬く間にヘドバンまみれにしてしまう、有無を言わさぬ力が「mannequin」にはあります。
マオ:「みんな、初めて聴いたのにこんなにノれる!?」って、初日で思いました。わかりやすさを意識したノりやすいアレンジではあるんですけど、それにしてもみんな飲み込みが早くて驚きですよ(笑)。
ファンがいるから全部成り立っているし、
本当にありがたい
――“マオ from SID”のライブとはガラっと異なる荒ぶる高揚感、観客との一体感ですが、ステージでどのように受け止めているのでしょうか。
マオ:客席との距離も近いし、めちゃくちゃ盛り上がってくれる人、目を輝かせて観てくれている人、深く入り込んでくれる人、曲それぞれに対しての反応がダイレクトに伝わってくるんですよね。曲中のコール&レスポンスもそうだし、MCとかでもやりとりみたいなのが生まれたりとかするし。「そうそう、こういうの楽しいよね」「俺もみんなも好きだよね」って共有できている感じもすごくあります。
――いっぽう、マオさんらしく歌力でとことん魅せるパートもありますが、ライブにおいて煽りモードからしっかりと歌を聴かせるモード、また煽りモードへと切り替えることができる秘訣は?
マオ:それはやっぱり、シドでの経験値があるからできることかもしれないですね。激しい曲の間で急に静かな曲を歌うってメンタル的に強くないとできないことだけど、シドでずっとやってきたから、それが当たり前になっているというか。あと、たとえば日によっては嚙み合っていない、うまくはまっていないって感じることもあるんですけど、静かな曲でカチっとはまる瞬間があって流れが変わったり、逆に激しい曲をきっかけに流れがよくなるときもあったり。そういうチャンスがいっぱいあるのが、ライブの面白いところですよ。
――そういうことも含めて、ライブを楽しめているわけですね。マオさんの場合、昔からポジティブ思考ができていたのでしょうか。
マオ:俺はファンが少ない時期、下積み時代が長かったんですけど、そのおかげで精神的に鍛えられたとは思います。今はね、ファンがいなかったころに比べて断然やりやすいし、みんながいればどういう状況であれ立て直せるので、そこは強みだなって。歌詞を忘れたんだったら、「アレンジちょっとやりすぎた」っていっそ自分でネタにしちゃえっていう(笑)。それもお客さんがいなければできないけど、今はお客さんがいて笑ってくれるので。ファンがいるから全部成り立っているし、本当にありがたいですよ。
――たとえば音が出なくなってしまったとか、そういうときのマオさん流トラブル対処法もあるのでしょうか。
マオ:ちょうど宮城公演で機材トラブルがあって、イントロで「じゃあ次の曲いくぞ!」って前振りしたけど音が出ない、みたいなことが3回くらい続いたんですよ。でも、そうなったらそれはそれで、5回音が出なかろうが10回音が出なかろうがオイシイって思っちゃうし。お客さんもお客さんで、最初の1、2回は心配そうでも、「だんだんこれはオイシイぞ」って思ってくれるようになるんですよね(笑)。機材トラブルなんかは、慌てたり深刻になったりしたところでどうしようもないときはどうしようもないし。いついかなるときもなんとでもできる、という自負はあります。
――マオさんがセンターにいてくれたら大丈夫、そういう絶対の安心感があります。ちなみに、ライブ当日これは絶対に欠かせない!というアイテムはありますか?
マオ:リップクリームはステージに置いていますね。しっとりしていないとイヤなんですよ。
――ステージの上ってあまり乾燥しないのかなと思っていましたけど……。
マオ:癖でどうしても唇を舐めて、自分で乾かしちゃうんですよね。だから、ステージにリップクリームがあると安心します。
――ライブ前日やライブ当日の朝、また本番までに楽屋で必ずすることはありますか?
マオ:昔は、ライブ前日はあまり寝られなかったりしたんですけどね。もはやそういうことはまったくないので(笑)、ライブ前日はたっぷり寝て。当日の本番2時間前にはご飯を食べておくとか、そのくらいかな。あと最近、Ledaくんが持ち込んできたラジオ体操を、本番前にメンバーみんなでやっていますね。
――その画を想像するとなかなか面白い(笑)。
マオ:メイクして、衣装を着たメンバーみんなでそろってラジオ体操している姿、なかなかシュールですよ(笑)。ツアー初日に、Ledaくんが「うるさかったら言ってください」って急にラジオ体操をかけ始めて、「ちょっと待って! 俺もやりたいんだけど」って言ったらほかのメンバーもみんな集まってきて。ちょっと体が温まるくらいの動きがちょうどいいし、変なことをみんなで一緒にやると和むし、これ毎回やってみよう!となって。今のところ3公演全部でやっています。
――今後、シドの現場にマオさんがラジオ体操を持ち込む可能性もあるのでしょうか。
マオ:シドのメンバーはやってくれなさそうだなぁ(笑)。でも、自分的にはライブ前のラジオ体操がすごくしっくりきているので、イヤホンしてひとりでひっそりやる可能性はありますね。
――なにしろ、ライブ前日やライブ当日にあまりナーバスにならずに過ごせているのですね。
マオ:喉を傷めてしまっていた時期は、もうなにをやってもダメでなにをやっていいかわからなくなっちゃって。ライブ当日もずっと歌って、リハーサルを何時間もやったりとか……今考えると、自分で自分を追い込んでしまっていたんですけどね。今はステージに出て万が一調子が上がらなかったとしても、そこまで一切手を抜かずに頑張ってきたわけだから、それはそれでその日の100%だ、って思えるようになりました。
――全力を尽くしたらあとは楽しんで、ファンを楽しませて。それが今のマオさんのライブですよね。
マオ:俺が喉の不調に苦しんでいた時期は、ファンのみんなも心配しながら楽しむっていうのが当たり前になっていたと思うので。何年も心配してきてくれたファンの人たちに(楽しみを)何倍にも増やして返したいし、これからは自分も、ファンのみんなも、ただただ楽しむライブをずっと続けていきたい。ツアーの中でその1本だけを観に来た人、何年かぶりに足を運んでくれた人、ツアー全公演通ってくれる人、いろいろいて、一人ひとりに合わせることはできないけど、自分が全力を尽くしたライブ1本1本が受け取った人の活力になれたら、それがいちばんです。
――マオさんを推してきてよかったと、ファンの皆さんが感じていることと思います。
マオ:この人を選んでよかった、好きになってよかった。応援してくれる人たちにそう思ってもらえたら、それ以上嬉しいことってないですよ。
――8月31日にSpotify O-EASTで行われる東京公演まで、ツアーはまだまだ続きます。3公演を終えたうえで、どんな期待を抱いていますか?
マオ:ツアーって、始まったと思ったらすぐに終わってしまうので。自分にとってのご褒美でもあるライブ1本1本を噛みしめて、楽しい!っていう瞬間をみんなと一緒に何度でも作っていきたいですね。
――それから、誕生日当日の10月23日には東京・恵比寿LIQUIDROOMにて【MAO 「20241023」】と題したワンマン公演も行われるのですよね。
マオ:これまで誕生日にファンクラブ限定の旅行イベントとかはやったことがあるんですけど、ライブを開催するのは今回が初めてなんですよ。いつかやってみたいなと願っていた夢が、またひとつ叶います。ファンクラブ先行の申し込みだけでたくさんの応募があって。すごく期待してくれているんだろうな、ということは現段階で伝わってきているので、そういうみんなの想いにしっかり応えたいと思っています。
――【MAO 「20241023」】でもまた新曲が披露される可能性は……。
マオ:あります。楽しみにしていてほしいな。あと、スタッフがどのタイミングでケーキを持ってきてくれるのかな、っていうのは気になりますね。どんなリアクションしようかなとか、今からこっそり練習しておきます(笑)。
――スタッフさんのハードルが上がったかもしれません(笑)。そして、2024年も下半期に突入しましたが、今年のうちに成し遂げたいこと、なにかあればお聞きしておきたいです。
マオ:体重を増やしたいかな。今みたいに食事面でも気を遣っているとなかなか太れないんですけど、あんまりガリガリでもまずい年代に突入しているので。2024年後半はしっかり食べてトレーニングして、この先もずっとステージに立って歌っていけるような身体をしっかり作っていきます。
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