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<来日公演開催記念>ベン・クウェラー、雑誌『snoozer』に掲載された約15年前の来日時インタビューを公開
20年以上にわたり音楽ファンと批評家の心を鷲掴みにするインディー・アイコン、テキサス出身のシンガー・ソングライター、ベン・クウェラーが長年の友人であるオロノ(スーパーオーガニズム)とパンデミック以降初となる来日公演をビルボードライブ東京、そしてビルボードライブ大阪で開催する。久しぶりに彼の歌心に触れるスペシャルな機会を目前に、約15年前の来日時にベンが1997年から2011年まで発行された伝説の音楽雑誌『snoozer』で行った、彼の音楽への愛とルーツが垣間見える貴重なインタビューを振り返ってみたい。
My Life in Music - 『snoozer』2009年12月号 より
最後に登場するのは、去る9月のくるり主催【京都音楽博覧会】出演も記憶に新しいベン・クウェラー!1994年に14歳でバンド、ラディッシュでデビュー、その後2002年ソロ活動をスタート。今や子煩悩パパに。ベン流音楽教育と今年初頭リリースの最新作『チェンジング・ホーセズ』のルーツを紐解く俺祭になりました。
ベン・クウェラー:(フォトグラファーのカメラを見て)それって、デジタル?
――彼は、フィルムで撮るんですよ。
ベン・クウェラー:フィルムの方がいいよね。音楽もそう。デジタルで音楽を作ると、コンピュータの画面を見て作ることになるよね。だから、 音楽を聴かずに作ってしまうんだ。
――確かにそうですよね。では今日は、あなたのこれまでの人生のある瞬間を彩った曲やレコードを訊いていきますね。最初に覚えている曲やレコードはなんですか?
ベン・クウェラー:子供の頃に聴いていた音楽だと、まずブルース・スプリングスティーンかな。「ボーン・イン・ザ・USA」とか「グローリー・デイズ」を、おもちゃのギター片手に踊りまくってたんだ。
▲Bruce Springsteen - Born in the U.S.A. (Official Video)
▲Bruce Springsteen - Glory Days (Official Video)
ベン・クウェラー:でも、自分で曲を書きたいと思ったきっかけになった曲は、ビートルズの「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」。まだ9歳の頃で、父親が持ってたレコードを何度も繰り返し聴いてて。あまりにも美しい曲だから聴いてるうちに泣けてきちゃうんだよね。歌詞はまったく理解出来てなかったけど、自分もビートルズみたいなことをしたい、自分の曲で誰かが泣いてしまうようなものを書いてみたいって思ったんだ。曲の途中のコード進行が最高だと思ったんだ。(ギターを手に取って)えっと、三回目のサビの「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ~」でコードが変わるじゃない? 初めて聴いた時、そこにほんと鳥肌が立ったんだ。それで、こんな風に人の心を動かす音楽を作りたいと思ったんだ。
――では、自分のおこづかいで初めて買ったレコードは?
ベン・クウェラー:トゥイステッド・シスターの「ステイ・ハングリー」。しかも、カセット・テープね(笑)。10歳ぐらいかな。
――ビートルズに感動した1年後ってこと?(笑)。
ベン・クウェラー:そうそう(笑)。でも、姉に『買え』って言われたんだよ。すごくいい曲だからって。
――わかりました(笑)。『自分がこの曲を書きたかった!』と思うような、悔しかった曲はありますか?
ベン・クウェラー:ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」! (ギターをまた持って歌い出す)ごめん、僕がギター持つとインタビューにならないよね(笑)。
――はい(笑)。では、音楽をやろう、ミュージシャンになろうと思うきっかけになった曲は?
ベン・クウェラー:曲作りを始めたきっかけはビートルズの曲だけど、バンドをやりたいと思ったのは、ニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」なんだ。あの曲を聴いた時、バンドを組んで人前で演奏してみたいと思ったんだよ。
▲Nirvana - Smells Like Teen Spirit (Official Music Video)
――そういえば、カート・コバーンが出てくる前までは、ガース・ブルックスがアイドルだったと聞きましたが、今は誰があなたのアイドルですか?
ベン・クウェラー:息子のドリアン(笑)。ちょっと見せたいものがあるんだけど……(iPodドリアンちゃんのドラム演奏映像を見せる)結構リズム感あると思わない?(笑)。この時はまだ1歳半ぐらいで、もうすぐ3歳になるんだ。彼のフェイヴァリットはガンズ・アンド・ローゼズなんだよ。
――(笑)。男の子が生まれたと聞いていたので、訊こうと思っていたのですが、彼にはどんな音楽を聴かせたい?
ベン・クウェラー:彼が今ハマってるのはガンズ、それからジョーン・ジェット。「アイ・ラブ・ロックンロール」ね。でも赤ん坊の頃は、まずボブ・マーリー『レジェンド』から入って、ニール・ヤング「ハーヴェスト・ムーン」、トム・ペティ『ワイルドフラワーズ』を聴かせてた。
――それはあなた自身がセレクトして聴かせるの?
ベン・クウェラー:うん(笑)。でも、ガンズはどうやって見つけてきたのかわからないんだよね。多分、ラジオとかで聴いたんだろうけど、突然「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル、ベイビー!」って歌い出してさ。だから誕生日プレゼントに『アペタイト・フォー・ディストラクション』を買ってあげたんだ(笑)。
――(笑)。絶対聴かせたいレコードってありますか?
ベン・クウェラー:うん、たくさんあるよ。ビートルズ、ハンク・ウィリアムスとか……でも僕が知らない音楽でもいいんだ。彼には自分で好きな音楽を見つけて欲しい。で、逆に僕が教えてもらうのもいいかなって。
――じゃあ、逆に、絶対聴かせたくない曲は?
ベン・クウェラー:特にないかな。これはダメとか制限したくないし。ラップを聴いてもいいし。実際、僕の両親もどんな音楽でも自由に聴かせてくれたから、僕も自分の子供には何でも聴かせようかなって。
――うん、でも、例えば、今のアメリカのトップ・チャートに入ってるような劣悪な曲でも聴かせる?
ベン・クウェラー:うん。最近だったら、ビヨンセの「シングル・レディース」がお気に入りでさ。YouTubeでビデオを見せたら、あのダンスを『すげえ!』って顔して見てた(笑)。
▲Beyoncé - Single Ladies (Put a Ring on It) (Video Version)
――(笑)。では、変わって、初恋を思い出させるような曲やレコードってありますか?
ベン・クウェラー:うん、あるある! あ、でもちょっと考えさせて……子供の頃に好きだった子は二人いたんだけど、思い出す曲はそれぞれあって。ひとりはアラニス・モリセットの「アイロニック」。もう一人の子は、モトリー・クルーの「ホーム・スウィート・ホーム」。モトリーの方は、12、13歳ぐらいで、その子は、スケート場でキスしたぐらいなんだけど。ちょうどクリスマスの時期で、プレゼントでモトリー・クルーのカセット・テープをもらったんだよね。その後、14、15歳の頃、最初のガールフレンドが出来て、エミリー・トーマソンって子なんだけど、彼女はいつもアラニスを聴いてた(笑)。
――そうなんだ(笑)。失恋で思いつく曲はありますか?
ベン・クウェラー:ベン・フォールズの「ソング・フォー・ザ・ダンプト」。『金返せ、俺の白いTシャツ返せ』って歌詞でさ。
――あははは!
ベン・クウェラー:あれは最高の失恋ソングだよね(笑)。
――NYからオースティンに引っ越したそうですが、それぞれの場所を象徴する曲、レコードを教えてください。
ベン・クウェラー:自分の曲なんだけど、「フォーリング」かな。タイムズ・スクエアとダラスの高層ビルが歌詞に出てくるんだ。NYだったら、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド『ローデット』で、その中に入ってる「スウィート・ジェーン」。それと、テレヴィジョン『マーキー・ムーン』。テキサスとかオースティンだったら、スティーヴィー・レイ・ヴォーン。他にはバディ・ホリー、ウェイロン・ジェニングスやウィリー・ネルソンとか。
――ちょっと似た質問ですが、地元のヒーローといえば?
ベン・クウェラー:オースティンでだったら、同率でスティーヴィー・レイ・ヴォーンとウィリー・ネルソンだな。それから最近だったら、スプーンも。
――YouTubeで観たんですけど、ツアーで、コナー・オバーストと一緒に『ゴーストバスターズ』のテーマ・ソングを歌ってましたよね。そういう、これからカヴァーしてみたい曲ってありますか?
ベン・クウェラー:一番はやっぱり「スタンド・バイ・ミー」あ、それから、ニール・ヤングの「ハート・オブ・ゴールド」にもトライしたいな。
――ベンが歌う「スタンド・バイ・ミー」やニール・ヤング聴いてみたいですね。明日のライヴでは演奏する?
ベン・クウェラー:ううん(笑)。D調のハーモニカを持ってくるの忘れちゃったんだよね。でも、持ってきてるかも……もしかしたらやるかも……多分。多分だけど!(笑)。もし、明日歌うんだったら、キミに歌うよ。
――イエー、ありがとうございます。ほんと?(笑)。
そして、ここ日本で1stアルバムと2ndアルバムのリリースを担当したスタッフからも、当時の裏話と温かいメッセージが到着。涙を流す用意をして、ベン・クウェラーとオロノがステージ上で起こす予測不能な化学反応を堪能してほしい。
ベン・クウェラー(BK)は昔ツアーバスの冷蔵庫に大量の納豆を入れて、バンドメンバーから苦情が出るくらいの親日家であり、昔はセブンスターを好んで吸っていたが、もう20年が経ち、タバコもやめ、すっかり大人になっていることでしょう。その彼のひさしぶりの来日(京都でのくるりのフェス出演以来??)。昨年にはベン・クウェラー名義のデビュー作にして名盤『Sha Sha』の20周年デラックスをリリースし、ウィーザー、ベン・フォールズといったメロディとバンド・サウンドの美味しいところを濃縮したような、当時ストロークスやロングウェイブなどのNY勢(当時はBKもNY在住)の中にあっても、抜群のソングライティングが改めて高い評価を獲得。大傑作3rdアルバムからはアメリカン・ルーツ系に回帰し、テキサスのオースティンを拠点にカントリーなどの要素も取り込みながら、ソングライターやプロデューサーとしての活動を充実させてたBKが、久々に帰ってきます。20年で色々あったけど、元気でやってるよのファンの皆さん、全員集合でおねがいします。(1st & 2nd アルバムの日本のレーベル担当:K より)
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