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<インタビュー>沖縄アクターズスクールから13歳のアーティストNeilがデビュー 牧野アンナが語るアクターズ再始動の軌跡
Interview & Text:岡本貴之
Photo:興梠真穂
2023年に約20年ぶりに活動を再開した沖縄アクターズスクールから、13歳のシンガー・Neilが今夏ワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビューする。ミュージシャンとして活動する両親の元に育ち、幼少期から常に生活の中に音楽があったというNeil。一聴して耳に残るハイトーンボイス、ギター、ウクレレ、ベース等の楽器演奏、8歳からレッスンを受けていたというダンス・パフォーマンスには、持って生まれた豊かな才能を感じさせる。デビューを前に東京で行った今回の取材でも、堂々とした立ち振る舞いと天真爛漫な明るいキャラクターで、こちらが圧倒されるほどのエネルギーを放ち、早くも大物ぶりを発揮した。
さらに今回は、Neil本人に加え、沖縄アクターズスクール再始動の先頭に立つ牧野アンナ氏にもインタビューを実施。安室奈美恵、DA PUMP、三浦大知、MAX、SPEEDといった数々のスターを世に送り出し、華々しいエンターテイメントの世界を目指すものにとって登竜門だった沖縄アクターズスクールは、90年代に日本の音楽シーンにダンスと歌によるパフォーマンスを定着させた立役者的な存在といえる。かつて自らもステージに立ち、育成経験もある彼女は、今の時代にステージを目指す生徒たちをどんな思いで見つめているのだろうか。スクール再始動から現在までに感じている想い、Neilのデビュー、今後の展望についてたっぷりと語ってもらった。
「今が下積み時代」音楽大好き少年がデビューを掴み取るまで
――Neil君が音楽を好きになったきっかけを覚えてますか?
Neil:自分が生まれたときから、ずっと家で音楽が流れているような環境だったんです。それと、両親がミュージシャンでリハーサルとかライブとかをついて行っていたので、そこでお父さんが歌っていたブルーノ・マーズの「ザ・レイジー・ソング」を初めて聴いて、音楽が好きになりました。
――「ザ・レイジー・ソング」はどんな曲でしたっけ?
Neil:(体を揺らしフィンガースナップしながら歌い出す)♪ Today I don’t feel like doing anything~ わかりました?
――わかりました(笑)。すごい! 本当に音楽が体に沁みついている感じですね。
Neil:ありがとうございます(笑)。
――ブルーノ・マーズは去年、今年と2年連続で来日公演を行いましたけど、観に行きましたか?
Neil:もちろん観に行きました。もう10分ぐらいで終わっちゃったと感じたぐらい、最高に楽しかったです。
――ブルーノ・マーズを好きになってから、自分でも音楽をやりたいと思った?
Neil:そうです。まずそのときに思ったのが、「ブルーノ・マーズに会いたい」ってことで、最初はいろんなダンススクールに通って、歌もやり始めました。だんだんそこから目標が変わっていって、今はもうちょっと違う世界の音楽を作り出していきたいと思うようになりました。ブルーノ・マーズと会うのを目標にしつつ、大きな夢は、みんなとは違うNeilだからできる音楽を聴かせられたらなって思っています。
――沖縄アクターズスクールに入ったのはどうしてなんですか。
Neil:まず自分の曲を売り出したいと思っていたんですけど、ただダンスと歌をやってるだけじゃなくて何か変化が欲しいと思ってアクターズに入って、デビューを目標にして頑張っていたら、デビューが決定したんです。でもまだ完成じゃなくて、今からだと思っています。
――アクターズスクールは、Neil君にとってどんな場所ですか。
Neil:挑戦への第一歩だと思っています。今が本当に下積み時代というか、アクターズスクールがいろんなことを助けてくれて、メジャーデビューのきっかけを作ってくれたので、本当に嬉しいです。
――一緒に練習している仲間のことはどう感じているのでしょうか。
Neil:もちろんすごく勉強になることも多いですし、ライバルも多いので、お互いに上がっていってるのが感じられます。みんなめっちゃ成長しているし、Neilが越されているところもあるし、逆にNeilが越えているところもあるし、そういうライバルたちがいるから、「自分ももっとがんばろう」って思います。
▲ウェルカムギフトのジャケットを受け取るなり、気に入って撮影全編で着用したNeil
――6歳から独学でベースを練習し始めたそうですけど、どうしてベースから始めたんですか。
Neil:ベースを始めたきっかけは、バンドの音楽を聴いていたときに重低音の「ボンボンボン」って音が好きだなって思ったからなんです。お父さんのバンドのベーシストの人がめっちゃかっこよかったんですよ。そのベーシストの人に惚れて、お父さんに「ベース買って!」って言ったり、ダンボールのベースを作ったりした結果、誕生日にベースをもらえたんですよ! そのベースで、ジャズを聴いたり独学で練習したりしたんです。ベースってかっこよくないですか!?
――すごくかっこいい楽器ですよね。
Neil:特にリズムが好きっていうか、ドラムもそうだし、リズムがある楽器ってかっこいいなと思います。その後、お兄ちゃんがサックスを習っている教室でたまたまベースも教えていたから、お母さんにお願いして入って、そこで基礎を学びました。人前でもベースを披露したし、そこでちゃんと人前で音楽を見せるってことを始めました。
――その頃はベースプレイヤーになりたかったんですか。
Neil:いや、プレーヤーというかとにかく音楽をしたいって思いが強かったです。リズムがかっこいいから最初にハマったのがベースだったというだけで、他の楽器も全部好きですよ。
――ギターやウクレレを弾きながら歌っている映像もありますもんね。
Neil:そうです。ベースだけじゃなくて、ウクレレもやっていて、あとはエレキギター、アコギぐらいですね。アコギは最初独学で覚えました。YouTubeでタブ譜の読み方とか書いてあったんですけど、それを見ずに音を聴きながら「こういうことなんだ」って自分で考えながら弾いていたんです。読み方がわからないのに弾けたんですよ。自分でもすごいなって思いました(笑)。
――確かにそれはすごい。それぐらい、感覚的に音をキャッチできるという経験は小さい頃からあった?
Neil:ありました。指で覚えるというより、音程で覚えるみたいな感じがあります。「今この音だから次はここ」みたいな感じで弾いているんです。それはベースだけじゃなくて、ギターもウクレレも全部そうです。
――ピアノも弾けるんですか。
Neil:ピアノは、一応YouTubeを見てクイーンの…「♪ママー」って曲、なんでしたっけ?
――「ボヘミアン・ラプソディ」。
Neil:そうそう、「ボヘミアン・ラプソディ」です。あの曲の最初のイントロだけ弾けました。次に、ブルーノ・マーズの「ホエン・アイ・ワズ・ユア・マン」も弾けました。ただ、ピアノはちょっと苦手というか、やればできると思うんですけど、まだハマってないから、まずは歌に集中しようと思いました。歌の練習も結構やってるけど、もっと大人っぽく歌う方法とかを自分で研究したいです。やっぱり、自分の声じゃないですか? だから人に教えられても多分自分にしかわからないから、自分で発見して自分で声の出し方を学びたいです。始めたのは楽器の方が先だったけど、最近は歌を強化しています。
――作詞・作曲もしているそうですが、それは何歳ぐらいから?
Neil:小4か小5ぐらいの時に作り始めて、小5のときに1曲できました。
――それはどんな曲だったんですか?
Neil:イメージは平井大さんの曲みたいな感じで、ハワイアンなウクレレを使ったコードで、ちょっとフラダンスできるような。だけどポップスのリズムがミックスされている音楽です。
未来の自分に言いたいことは……
――いろんな音楽要素を取り入れているわけですね。影響を受けているアーティストもたくさんいるでしょうけど、ブルーノ・マーズ以外に目標にしている人はいますか。
Neil:お父さんを越えたいです。もちろんブルーノ・マーズもすごいんですけど、お父さんは人を楽しませる力が本当にすごくて。お母さんもそうです。2人がライブをしてるときって、本当にみんな笑顔になってるし、ジャンプしてるんです。誰がお客さんであろうとそうなんですよ。お父さんは、ライブ中にずっと携帯を見てる人がいたら、その人の隣に座って腕を組んで歌うんですよ。ヤバくないですか!?
――それはヤバいですね(笑)。
Neil:そういう人を楽しませられる、ドキッとさせられるような、お父さんとお母さんを越えられるアーティストになりたいです。
――ライブでダンス・パフォーマンスを見せる前に、MCでお客さんを煽ってましたよね。ああいうことも人を楽しませたいという気持ちからなんですね。
Neil:ある程度喋ることは頭に入れてるけど、あれは練習じゃなくて本番でしかできない即興な感じでした。やっぱり人を楽しませたいので。ファンが増えたら絶対自分の羽になるから、ファンって大事だなって思います。
――自分の音楽をどんな人に聴いてもらいたいですか。
Neil:もちろんファンのみなさんにも聴いてほしいんですけど、まずは家族に聴いてほしいです。やっぱり家族はNeilのことをずっと赤ちゃんの頃から見てきているので、「これだけ歌が上手くなったよ」っていうのを見せたいです。
――7月13日(土)沖縄のパレット市民劇場でライブが行われますが、見どころを教えてください。
Neil:ダンスソロ曲があります。ガツガツにダンスをしているNeilってファンの人たちも見たことがないと思うんですけど、1曲全力でやるのでそこに注目してほしいです。あとはオリジナル曲を初披露します。「良い曲」だなって思ってもらいたいです。
――改めて、Neil君のデビューしてからの目標と夢を聞かせてください。
Neil:とにかく目標は両親を越えることです。それと、ファンのみなさんに愛されるアーティストになりたいです。夢は、海外でもライブをたくさんしてみたいですね。それとやっぱり、いつかブルーノ・マーズと一緒に曲を作って歌ってみたいです。海外で一緒にライブができたら最高ですよね。Neilはこれから“チェンジ・ザ・ワールド”します。未来の自分に向かって言いたいです。“チェンジ・ザ・ワールドしてるか!?”って。
Neil プロフィール
ミュージシャン、カメラマンとして活動する両親を持ち、生まれた時から音楽、アートに触れて育つ。
常に音楽と共に生活する環境にあり、特にBruno Marsに大きな憧れを抱くようになる。
6歳から独学でベースを練習し始める。8歳からダンススクールにてダンスレッスンを開始。
11歳からウクレレとギターを、12歳からはドラムを両親のミュージシャン仲間から教わっており、驚異的なスピードで習得中。
2023年に再始動した沖縄アクターズスクールが同年4月に行った第1期生オーディションに、圧倒的な存在感で合格。
同年11月に行われた沖縄アクターズスクールのコンサートにて、ソロでBruno Marsの「Just The Way You Are」をウクレレの弾き語りで披露。また、バックダンサーを携えて、同じくBruno Marsの「That’s What I Like」を披露。魅力的な歌声、規格外の歌唱力、パワフルかつ繊細なダンスセンスを余すところなくアピールした。
2024年2月にはタイで行われたJAPAN EXPOにてパフォーマンスを行い、その歌唱力は現地のオーディエンスの驚嘆を呼んだ。
沖縄アクターズスクールのプロデューサーである牧野アンナ氏も「唯一無二の逸材」と絶賛するNeil。
マルチな才能に溢れるNeilは将来のJ-POP界を背負って立つのみならず、世界の音楽界、グラミー賞も本気で狙うことのできる類稀なる原石である。
三浦大知、MAXら卒業生が背中を押してくれた
牧野アンナが語る沖縄アクターズスクール再始動
――沖縄アクターズスクールが再始動したのは、三浦大知さんの言葉がきっかけだったそうですが、改めてお伺いできますか。
牧野:2022年10月に【沖縄アクターズスクール大復活祭】というイベントを開催したんですけど、それはもう本当に1回限りのお祭りという位置づけで、卒業生たちがみんなで集まる企画だったんです。うちの父(マキノ正幸氏)がちょっと体調が悪くなったというのもあって、励ます意味も込めてみんなで集まろうって。それまでは、私もアクターズスクール(以下・アクターズ)を辞めてから20年ぐらい離れていたりとか、卒業した子たちもあんまりアクターズという名のもとに集まって何かをする機会が全くなかったんですよね。そんななかで企画がスタートしたんですけど、みんなで集まって練習したら、10代の頃にタイムスリップしたような楽しさがあったんです。それで本番をやったら、みんなが「めちゃくちゃ楽しい!」って言いながらステージを降りてきて、全員がステージ袖でお互いのパフォーマンスを見て、ものすごく盛り上がったんです。たぶんみんな、自分が大人になって初めてアクターズを体感したときに、「アクターズってめちゃくちゃ楽しくて、すごかったんじゃないか!?」みたいな気持ちになったんですよね。
――みなさん子どもの頃にアクターズにいたから、大人になって改めて気が付いたんですね。
牧野:そうなんです。その日みんなのステージを客席から見ていたら、出てくる子出てくる子、みんなすごいなって思ったんです。今思えば、こんな小さな島のこんな小さな学校に、これだけ才能のある子たちが同じ時期に集まっていたということが、何か奇跡みたいなことだったんだなって気持ちになったんです。それでイベントが終わったら(三浦)大知から、「アンナさん、アクターズスピリッツ、アクターズのメソッドは絶対残すべきです」って言われたんです。そもそもこの大復活祭の中の企画として、アクターズを知らない世代の子たちにレッスンを受けてもらってステージに出てもらう「ドリームステージ」って企画をやっていたんですよ。100人ぐらいの子供たちが応募してくれて私がレッスンをして最終レッスンを大知が見て、その子たちがステージに出ることになったんですけど、その中にNeilもいたんです。
――そうなんですね!?
牧野:そのときにNeilはアクターズのレッスンを受けて、尚且つ大知と対面してバトルもしてるんです。そこで舞台に立ったことで、Neilは「アクターズでやりたい」という気持ちが芽生えたみたいなんです。大知が「絶対残すべきです」って言ったのは、大知もアクターズにいたのが子どもの頃だったから、自分で何をやってたかよくわかってなくて、ただ楽しかったって思ってたんですよね。でもドリームステージのレッスンを通して、「“アクターズが教えてることはこんなすごいんだ”って大人になって改めて知りました」って言っていて。それで、やっぱりこれは残した方が良いって私に言ったんです。
――牧野さんも同じ気持ちになっていたんですか?
牧野:私はもう、全然アクターズをやるつもりはなかったんですけど、本当にこの1日で「これはやっぱり残した方がいいんじゃないかな」って感じたのと、大知が背中を押してくれたこと、ISSA(DA PUMP)やMAX、知念里奈とかも「アンナさん、やった方がいいです。やるんだったら、私たちも応援します」って言ってくれたので、「みんなでやるんだったらできるかもしれない」と思って、もう1回やることを決めました。それで、イベントの翌日うちの父のところに行って「アクターズスクールを継がせてください」ってお願いして、再始動に向けて動き出したんです。それが2022年の10月で、11月には「アクターズを復活します」って発表して、翌年3月にオーディション開催して、そこにNeilたちが応募してきてくれたというのが現在に至る経緯です。
――怒涛の始まりって感じですけど、そこから約1年いかがでしたか。
牧野:もう、Neilたちと過ごした時間が1年しか経ってないっていうのが信じられないぐらい濃厚なんですけど、でもあっという間に過ぎましたね。
――Neil君と出会ったとき、どんな印象を持ったのでしょうか。
牧野:100人の中の1人だったんですけど、その中で歌える子を探そうと思って30人ずつ歌わせて聴いたんです。そのときにバーって声が響いてきた何人かに、「後で1人で歌聴かせて」って言った中の1人がNeilで、そのときは単純に「めちゃくちゃうまいな」って思いました。
――アクターズをまた始めるにあたって、Neil君のようなアーティストを育てて世界に発信したい、という目標も牧野さんの中にはあったわけですか。
牧野:もちろん、今度アクターズをやる以上は、これまでやってきたことを越えないと意味がないと思っていたので、やっぱり次に目指すんだったら世界だって思っていました。やり方も今までと違って、本当に「才能の育成」に特化しようと考えていたので、オーディションで選んだ子しかレッスンが受けられなくて、それも無料でレッスンをすることにしました。そこで選んだ子は全員スターにするという目標を持って始めています。第1回目のオーディションで49人選んでいるんですけど、「この子たちは全員スターになる」という確証を持って選んでる子たちなので、私の中ではそういう気持ちで今も育成しています。ただ、こんなに早い段階で1人が飛び出すとは全く思ってなかったんですけど(笑)。
――それがNeil君だったわけですね。
牧野:そうです。みんな、とにかくこっちの想定をはるかに超えるスピードで育っていくんですけど、その中でもやはりNeilに目を惹かれずにはいられないというか、周りがみんな「この子はなんだ!?」ってなるんです。それこそ、グラミー賞を受賞した宅見将典さんからも「この子は絶対今、世に出した方がいいです」って言われて。自分たちの想定をどんどん変えていかないといけないなと思いました。私たちの想像力が子供たちの成長に追いついてないことを感じて、方針を切り替えて動き出すことにしたんです。
Neil プロフィール
ミュージシャン、カメラマンとして活動する両親を持ち、生まれた時から音楽、アートに触れて育つ。
常に音楽と共に生活する環境にあり、特にBruno Marsに大きな憧れを抱くようになる。
6歳から独学でベースを練習し始める。8歳からダンススクールにてダンスレッスンを開始。
11歳からウクレレとギターを、12歳からはドラムを両親のミュージシャン仲間から教わっており、驚異的なスピードで習得中。
2023年に再始動した沖縄アクターズスクールが同年4月に行った第1期生オーディションに、圧倒的な存在感で合格。
同年11月に行われた沖縄アクターズスクールのコンサートにて、ソロでBruno Marsの「Just The Way You Are」をウクレレの弾き語りで披露。また、バックダンサーを携えて、同じくBruno Marsの「That’s What I Like」を披露。魅力的な歌声、規格外の歌唱力、パワフルかつ繊細なダンスセンスを余すところなくアピールした。
2024年2月にはタイで行われたJAPAN EXPOにてパフォーマンスを行い、その歌唱力は現地のオーディエンスの驚嘆を呼んだ。
沖縄アクターズスクールのプロデューサーである牧野アンナ氏も「唯一無二の逸材」と絶賛するNeil。
マルチな才能に溢れるNeilは将来のJ-POP界を背負って立つのみならず、世界の音楽界、グラミー賞も本気で狙うことのできる類稀なる原石である。
沖縄アクターズが目指すのは“世の中にないグループ、世の中にないスタイル”
――牧野さんがアクターズで教えていらっしゃった頃とは、やはり生徒さんたちのダンスや歌唱力のスキルはだいぶ違いますか。
牧野:そもそも沖縄って、すごく才能のある子たちが多いんです。ただ、やっぱり今の方が環境が整っていますし、以前と比べて芸能界に出るハードルが低くなってますよね。スクールに通って自分の芸を磨いて、テレビに出たいって人たちがもういないんじゃないかと思ったんですね。なので、「今更スクールをやっても」って思っていたんですけど、やってみたら本気でやりたい子たちが集まったんです。逆に言うと、当時のアクターズに集まっていたほとんどの子たちが音楽をやりたいというよりも「デビューしたい」子たちだったんです。だから最初にやらなきゃいけなかったのは、「いかに音楽を好きになる環境を作るか」ということだったんですけど、今のアクターズに来る子たちってそもそも音楽が好きで学びたいって子たちなので、デビューというところにあんまり意識がいってないんですよね。今回オーディションで選んだ子たちの中にも、最初から音楽的な基盤ができてるというか、Neilみたいに楽器をいろいろ弾けるみたいな子がたくさんいました。もともと自分でボーカルトレーニングをずっとしていたり、音楽的な積み重ねをしてる子たちが割と多いんです。そういう意味では技術的なレベルは非常に高いと感じています。
――本気で歌とダンスを身に付けようという意欲を持ってきているんですね。
牧野:そうなんです。今、歌とダンスっていうとK-POPがめちゃくちゃ強くなっていて、みなさん本当に歌唱力もダンスの力もすごいですし、ルックスもかなりハイレベルですよね。そこを見たときに、そのクオリティを目指したら絶対かなわないって思ったんです。アクターズ全盛期の頃に、韓国からいろんなプロデューサーの人たちが、「どうやったら安室奈美恵みたいな人ができるのかを知りたい」って視察に来ていたんですよ。だから多分、今のK-POPの流れってどっちかって言ったら奈美恵のパフォーマンスに近い、容姿端麗でスタイルが良くてクールにピシッと揃ってみたいな流れなんですけど、そっちに行くともう本当にがんじがらめにして徹底的に揃えていかなきゃいけないので、逆にアクターズは、いかに個性がバラバラでエネルギッシュで、はみ出る面白さを見せられるかを目指しているんです。だからNeilみたいな中学生の子もいれば、高校生の女性もいたり、いろんなタイプの子たちが入って、みんなが歌が大好きで楽しくて盛り上がっている。今まで世の中にないものを目指さないとたぶん勝てないなって思っています。今、世界の中でどこに行けば、「日本」というものを背負って勝てるのかなって考えると、海外の物真似だけでは駄目だし、そこをどういうふうにしたら生み出せるんだろうってところを、今いる才能のある子たちと突き詰めながら模索してやっているところです。
――グローバルなグループにも日本人のメンバーがいますけど、K-POPに寄っているイメージもあります。
牧野:そうなんですよね。でも、新しい学校のリーダーズがいたり、ONE OK ROCKみたいなバンドもいるし、いろんな形でそれぞれ力を持っている人たちがどんどん世界に出始めていて道ができ始めているので、世の中にないグループ、世の中にないスタイルの子をドンって出していきたいと思っています。それを卒業生のみんなも結構ちゃんと見てくれていて、アクターズに見にきてアドバイスをくれたりしているんです。それこそ大知がNeilを見てくれていたりとか。
――Neil君のデビューにあたっては三浦大知さんも関わっているんですか?
牧野:Neilのデビューが決まったときに大知に「こういう子のデビューが決まりました」って報告をしたら「アクターズのインスタを拝見させていただいているので知ってますし、見てますよ!」って言っていました。アクターズのソロで歌とダンスで、しかも子供の頃からハイトーンボイスというのは、アーティストとしては大知の流れなので、やっぱり「大知を目指せ」的な感じでデビューさせたいなとは思ったんですけど、大知は「僕を目指すというより、Neil君にしかできないオリジナルなエンターテイメントを追求してNeil君らしく活動していっていただけたら!」みたいなことを言ってくれていて。(卒業生の)みんながそうやってアクターズから出る自分たちの後輩を楽しみにしてくれていますね。
――それを聞くと、Neil君自身はすごいプレッシャーを感じるかなと思いますけど、さっきお話した感じ、そんなことなさそうですよね。
牧野:あはははは(笑)。全然ないかもしれないですね。
――牧野さんがこれまでいろんな子たちを見てきた中で、Neil君のどんなところに魅力を感じていらっしゃいますか。
牧野:本人の中で、何か確立されてるものがあるんです。自分のスタイルもそうだし、こうなりたい、こうしたいってことが、憧れじゃなくて、もう「世界に行く」って決めてるというか。自分が世界で活躍したらこういうメッセージを世の中に伝えたいんだみたいなところまで、彼の中で見据えて動いてるんです。去年まだ彼が小学生の頃にそういう話をしていたので、音楽界の大谷翔平じゃんみたいな(笑)。私は彼にそれだけの期待をしているんです。場さえ作ってあげれば、彼はその場に合わせてどんどん成長していくと思うし、ステージが大きくなればなるほどそこに自分のモチベーションを合わせてどんどん力をつけていくと思います。だから周りの大人がするべきことは、彼のために大きいステージを作ること。彼はそこでみんなの心を掴みにいくんだっていう思いでステージに立つと思います。それが例えば小さな規模であろうと、スタッフの人たちに対するプレゼンであろうと、何百人何千人というお客さんを前にしたステージであろうと、彼は同じだと思います。同じように緊張するし、同じようにステージで一生懸命自分のやれることをやって人々の心をどうやったら掴めるんだろうってスタンスで彼はステージに立つので。そこにちゃんと導いてあげられれば、Neilは人々の心を掴んでいくと思っています。
――夏以降にNeil君のデビューシングルが配信リリースされるということですが、どんな方向性の曲ですか。
牧野:これはまだ何曲か上がっていく中で絞り込んでいる段階なんですけど、ダンスが見せられる曲と、しっかり声が聴かせられる曲の2曲の方向でいけたらなというところで、今まさに進めている最中です。ダンス曲の方は本人が歌詞を書いています。
――2025年3月16日には、27年ぶりとなる日本武道館でのライブイベント【沖縄アクターズスクール完全復活祭】が開催されますが、そちらも含めて今後の展望をお聞かせください。
牧野:今Neilが所属しているB.B.WAVES jr.というグループが、先日2期生のオーディションを経て、現在56人のメンバーがいるんですけども、そのグループごとデビューさせてスターにしたいと思っているので、武道館のタイミングでのデビューを目指して今やっているところです。そのグループとしてのパフォーマンスも見応えのあるものなんですけど、その中にNeilがいたり、女の子の3人組ユニットがいたり、小学生だけのグループがあったりとか、このグループを切り取っていくとまた全然違う才能が見えて面白い、でも1つのグループにもなるみたいな、今の世の中にないようなグループを目指しています。世界に旋風を巻き起こせたらなと思って、全身全霊をかけてみんなで頑張ってやっていますので、楽しみにしていてください。
Neil プロフィール
ミュージシャン、カメラマンとして活動する両親を持ち、生まれた時から音楽、アートに触れて育つ。
常に音楽と共に生活する環境にあり、特にBruno Marsに大きな憧れを抱くようになる。
6歳から独学でベースを練習し始める。8歳からダンススクールにてダンスレッスンを開始。
11歳からウクレレとギターを、12歳からはドラムを両親のミュージシャン仲間から教わっており、驚異的なスピードで習得中。
2023年に再始動した沖縄アクターズスクールが同年4月に行った第1期生オーディションに、圧倒的な存在感で合格。
同年11月に行われた沖縄アクターズスクールのコンサートにて、ソロでBruno Marsの「Just The Way You Are」をウクレレの弾き語りで披露。また、バックダンサーを携えて、同じくBruno Marsの「That’s What I Like」を披露。魅力的な歌声、規格外の歌唱力、パワフルかつ繊細なダンスセンスを余すところなくアピールした。
2024年2月にはタイで行われたJAPAN EXPOにてパフォーマンスを行い、その歌唱力は現地のオーディエンスの驚嘆を呼んだ。
沖縄アクターズスクールのプロデューサーである牧野アンナ氏も「唯一無二の逸材」と絶賛するNeil。
マルチな才能に溢れるNeilは将来のJ-POP界を背負って立つのみならず、世界の音楽界、グラミー賞も本気で狙うことのできる類稀なる原石である。
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