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<コラム>Omoinotake、念願の“ヒット曲”「幾億光年」が初の“JAPAN Hot 100”チャートインにして上半期トップ10入り――その理由を解き明かす
Text:Maiko Murata
Omoinotake「幾億光年」のチャート記録がめざましい。
島根県松江市出身の藤井怜央(Vo. / Key.)、福島智朗(Ba.)、冨田洋之進(Dr.)からなるスリーピース・バンド、Omoinotake。2012年に東京にて結成、その後は渋谷を中心に、路上ライブやライブハウスでの地道な活動を続けるなか、メジャーデビュー前よりタイアップを獲得。なかでもテレビ東京系ドラマ『チェリまほ』シリーズの主題歌であった「産声」「心音」は、どちらもBillboard JAPANダウンロード・ソング・チャート“Download Songs”にてチャートインを果たすなど、着実にファンベースを築いてきた。
そんな彼らが公言していた目標は「ヒット曲を作る」。「幾億光年」では、Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”で、自身初のチャートインにして最高位2位(2024年4月3日、10日公開チャート)をたたき出したことに加え、チャートイン4週目にあたる2024年2月21日公開チャートから現在(6月5日公開チャート)に至るまで、じつに16週にわたってトップ10圏内をキープ。この好成績で、2024年上半期“JAPAN Hot 100”でも7位とトップ10入りを果たし、名実ともに2024年上半期を代表する“ヒット曲”に。かねてより掲げ続けてきた目標を鮮やかに達成してみせた。
この好調な成績は、週を追うごとにじわじわと伸びたストリーミングが主軸となっている。“JAPAN Hot 100”における各指標の推移を見ると、チャートイン初週の2024年1月31日公開チャートでは、ダウンロードがその週「幾億光年」が獲得した指標最高位(19位)であったが、登場4週目からはストリーミングが抜き、その後も同指標が成績を牽引している。Billboard JAPANチャートでは、ストリーミングをはじめ各指標は毎週上位300位までを集計対象としているのだが、そもそもOmoinotake楽曲がストリーミングにおいて集計圏内=300位以内を記録したのは「幾億光年」が初。このことから、これまで築いてきたファン“以外”の層にも、広く確実にこの曲が刺さったことがわかる。
ストリーミングが牽引し、“JAPAN Hot 100”で週を追うごとに存在感をあらわしてきたといえば、この少し前に彗星の如く同チャートに現れ、同じく2024年上半期“JAPAN Hot 100”でも好成績を記録した、シャイトープ「ランデヴー」やtuki.「晩餐歌」を思い浮かべた人もいるだろう。この2曲と「幾億光年」の違いは“勢い”だ。2024年4月24日公開チャートにて、「幾億光年」はBillboard JAPANチャートにおけるストリーミング累計再生回数が1億回を突破。チャートイン12週目での記録となり、これはKing Gnu「SPECIALZ」やスピッツ「美しい鰭」、Official髭男dism「ミックスナッツ」などと並ぶ速さだ。「ランデヴー」「晩餐歌」はどちらもチャートイン16週目で1億再生を突破したため、「幾億光年」のほうが4週早く突破したことになる。なお、2024年にリリースされた楽曲としては、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」に次ぐ、史上2曲目の1億再生突破曲となった。
Omoinotake「幾億光年」ストリーミング累計1億回再生突破 https://t.co/nQ1pzaLeGe
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) April 23, 2024
では、「幾億光年」がここまで凄まじいストリーミング支持を獲得できた理由は何なのだろうか? 同指標をもっと細かく見てみると、この曲が書き下ろし主題歌となっていたTBS系ドラマ『Eye Love You』の盛り上がりとの相関がはっきりと見られる。まず、「幾億光年」がチャート最高位を記録した2024年4月3日公開チャートは、チャートイン10週目にしてストリーミングがこの曲の当指標獲得ポイント最高値を記録した週でもあるのだが、ストリーミング指標はチャート登場からのこの9週間右肩上がりに上昇し続けており、その伸び率は初週比1,000%を超える。また、4月3日公開チャートの集計期間は2024年3月25日~3月31日。ドラマ『Eye Love You』最終話の放送が3月26日だったため、まさにドラマのクライマックスへの盛り上がりと合わせて、楽曲への接触が加速度的に増えているのだ。特に、同ドラマはNetflixやTVerでのタイムシフト視聴での支持を集めていたのだが(※)、チャートアクションもドラマ第2話放送週(2月7日発表チャート)より大きく跳ね上がっており、このドラマ初回放送~第2回放送までに、タイムシフト視聴含めてのドラマ視聴、それに付属する楽曲接触が大きく増えたことがうかがえる。
また、ストリーミング獲得ポイントはドラマ放送終了後より緩やかに減少しているものの、動画再生指標に注目すると、その獲得ポイント数はドラマ放送前後で大きな変動はなく、現在に至るまで安定し続けている。そして、同指標のピークは4月24日公開チャートと、ドラマ最終話放送日およびストリーミング指標のピークより後ろに来ており、ここにも、先に述べたNetflixやTVer等でのドラマ“後追い視聴”層の勢いが表れている。
加えて、「幾億光年」が初めて“JAPAN Hot 100”でトップ10入りをした2月21日公開チャート以降は、『CDTVライブ!ライブ!』(2月26日放送)を皮切りに、『ラヴィット!』(3月26日放送)、『Venue101』(4月6日放送)、『ミュージックステーション』(4月12日放送)、先日も『with MUSIC』(6月1日放送)と、テレビでの楽曲パフォーマンスの機会をコンスタントに獲得している。つまり、チャートで上位を記録することによって、テレビ歌唱をはじめとしたアーティスト本人のメディア出演が増え、それをきっかけに楽曲の新規接触が起こり、ストリーミング支持へつながる……というループができあがっているのだ。ここに、ドラマの地上波放送終了から2か月が経とうとしている今も、この曲が未だに高い順位を保ち続けられている理由がある。
「幾億光年」Special Live Video / Omoinotake
以上をまとめると、「幾億光年」は、これまでの地道な活動で獲得した固定ファンによるダウンロード+ストリーミング支持から、ドラマ視聴者によるストリーミングの活発な動き、さらにドラマを後追い、もしくは未視聴ながら楽曲に接触する層のストリーミング+動画再生の動き……と、3つのユーザー層が面グラフのように重なったこと。そして、チャートをきっかけとするメディアへの露出によって、新規楽曲接触層をコンスタントに獲得できたことで、ドラマ放送後も13週にわたってトップ10入り、さらにうち11週はトップ5入りという好成績を収めることができたのである。
なおOmoinotakeは、「幾億光年」ヒットの熱もさめやらぬ6月12日に、国外からも熱烈な支持を集めるTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第7期エンディング・テーマである新曲「蕾」をCDシングルでリリース。また、9月からおこなわれる自身過去最大規模のツアーには、初の海外公演となる台湾・台北、韓国・ソウル公演を含み、チケットは両公演ともさっそく完売している。代表曲にして念願の“ヒット曲”を引っさげ、いよいよ世界にまで飛び出していく彼らの今後が楽しみだ。
蕾 / Omoinotake
(※)ドラマ第1話は、2024年1月22~1月28日のNetflix「週間TOP10」および「今日のシリーズTOP10」(いずれも日本)で1位を獲得。またTVer、TBS FREEによる第1話の無料配信総再生数は配信1週間で250万回を突破(ドラマ公式サイト内「Topics」より)
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