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<インタビュー>4人組管楽器ガールズグループMOS、甲子園ブラスバンドフェスティバル2024サポーターアーティストへの意気込み語る



インタビューバナー

 主役は吹奏楽部——昨年6月に阪神甲子園球場に野球&吹奏楽の強豪校が集結し、初めて開催された【甲子園ブラスバンドフェスティバル2023】。春夏の高校野球甲子園大会には欠かせない、アルプススタンドで試合を盛り上げ、球児たちを鼓舞するチア、応援団の応援を含めての吹奏楽部の演奏。そんな、応援する高校生にスポットを当てた野球応援曲のフェスティバル【甲子園ブラスバンドフェスティバル2024】が、6月16日に今年開場100周年を迎える阪神甲子園球場で開催される。

 今年は4人組管楽器ガールズグループMOS(モス)がサポーターアーティストとして高校生の熱い思いを受け止め、イベントをさらに盛り上げる。そのパフォーマンスが世界も魅了しているErna(トロンボーン)、Miyu(トランペット)、AMI(アルトサックス)、Lotta(テナーサックス)の4人にインタビューし、MOSというグループについて、そして【甲子園ブラスバンドフェスティバル2024】のサポーターアーティストとしての意気込みを聞かせてもらった。

 管楽器を振り上げてステップを踏むキレのある、ダンスとブラスバンドを組み合わせた“ブラダン”というスタイルが注目を集め、2021年にSNSで『ジョジョの奇妙な冒険』のBGM「JOJO's Bizarre Adventure "il vento d'oro"」の動画をアップしたところ大きな話題に。再生回数は500万回を超え、東京パラリンピック閉会式ではパフォーマンスを披露した。MOSの始まりはオーディションだった。
(Interview & Text:田中久勝/Photo:SHUN ITABA)


MOS結成について

── Billboard JAPANのインタビューに初登場ということで、まず結成のいきさつから教えていただきたいのですが、プロデューサーの「若い管楽器プレイヤーの活躍の場をもっと設けたい」という思いから、開催されたオーディションに出場したことがきっかけとお聞きしました。


Erna:私達全員音楽大学出身で、将来どういうふうに活動していくか考えているタイミングでこのオーディションに出会って。そこでダンスをしながら演奏するというコンセプトを聞いて、今までそういうチーム、バンドがなかったので面白いかもと思い、全員ダンス経験はなかったのですが、飛び込みました。不安もありましたがでも新しいことに挑戦するワクワク感が大きかったです。

Miyu:ずっとクラシックをやってきたのですが、でもクラシックというと敷居が高いと感じている人がまだまだ多くて、パフォーマンスをしながら楽器を演奏するとか、スタイルを変えることでもっと身近に感じられるのでは、と思っていたのでMOSのコンセプトを聞いた時に、「これだ!」って思いました。

AMI:MOSに入るまではもちろん楽器を吹くことしかやったことがなくて、そんな中でダンスをやることになって手探りでやっていく中で、新しい音楽の見せ方に気づかされたというか。自分自身の可能性の幅が広がったと思っています。今までは聴いてもらうための音楽と思っていたけど、今は聴いてもらうプラス、見て楽しんでもらえるエンタメ感があるものを、みなさんにお届けすることができるようになったので、自分的にはこのジャンルに出会えて本当によかったなって思ってます。

Lotta:私は音楽はもちろん、ダンスを見るのも、とにかくエンターテインメントというものが好きでした。だからエンタメを一緒に作っていく仲間が欲しかったので、オーディションを受けました。

Miyu:マーチングとか吹奏楽の振り付けとは全く違うものなので、まずダンスレッスンを時間をかけてやりました。最初はダンスのリハーサルと演奏だけのリハーサルを別でやって、最後に合わせるというやり方をやっていました。


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── 音楽大に進むきっかけというか、4人が楽器を始めたきっかけを教えてください。


Miyu:元々ピアノをやっていたのですが、私は通っていた小学校にマーチングバンドがあって、運動会で先輩達がマーチングを披露するんですけど、1年生の時からそれを見て憧れていました。それで4年生になった時、ずっとかっこいいなと思っていたトランペットを始めました。

Erna:私も小学3年生からトロンボーンを始めて、今身長が170センチあるんですけど、小学生の時から高い方で吹奏楽部に入った時、多分スライドが届くっていう理由でトロンボーンになって。自分から希望したわけではないですが、どんどん好きになって今に至ります。

AMI:私もずっとピアノを習っていたのですが中学校で吹奏楽部に入って、華やかな楽器がやりたくて、サックスとトランペットとドラムを志望したら部内でオーディションがあって、サックスが向いていると言われました。始めたらすごく好きになって、ひとつのことを極める楽しさや上手になれる自分も楽しいし、他の楽器が目に入らなくなりました。

Lotta:私も3 歳からピアノを習っていましたが、中学で吹奏楽部に入って、カッコイイなと思ってサックスを始めました。

── そんな4人(当初は6人)がオーディションで出会いMOSを結成して、スタートしましたが、プロフィールを見ると4人の好きな音楽がバラバラですが、楽曲制作はどうやって?


AMI:本当にみんな好きな音楽はバラバラですが、プロデューサーと私達でこういうジャンルのものをやってみようとアイディアを出したり、他のアーティストさんとコライトして楽曲を作ることも多いです。その中で最初はブラダンとして映える曲、みんなが乗れるような曲をテーマに作っていました。今年私達は、ライブを例年にもましてたくさんやって、真のライブアーティストを目指そうという目標を立てたので、ブラダンというテーマだけではなくライブで盛り上がるというのをテーマに楽曲を作っています。


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── 今まで新宿駅前や日比谷OKUROJI他、数多くストリートライブを経験して、楽曲の反応をダイレクトに感じることができたと思います。ストリートライブで手にしたこと、感じたことを教えてください。


AMI:丸1年やりました。やっぱり色々鍛えられたし、どんな環境でもできるんだという自信がつきました。

Lotta:生音でマイクがない環境でずっとやってきたので、私達たぶん音が大きくなったと思います。

Miyu:楽器をいかに鳴らせるかということも学ばせてもらいましたし、いろんな環境で演奏する耐性もつきました。

AMI:小さなギターアンプ1個で、40分間ノンストップで4人で合わせて踊って吹いて、人が足を止めてくれるように常に考えて工夫して、本当に体力勝負でした。

Lotta:気持ちも強くなったし、どうやって見てくれている人にアプローチしたらいいのかということを勉強させてもらいました。でもそれ以上に表現することがただただ楽しかったです。同じセットリストでも、お客さんの層や私達の気持ちも違うので、毎回違うライブになったし、メンバー同士で目を合わせて笑う部分が違ったり、楽しかったです。

── 管楽器って気温や湿度に影響されそうですよね。ストリートでは楽器の管理や調節も大変そうです。


Miyu:それはすごくあります。夏と冬とでは状態が全然違うし、特に冬は唇も気づかないうちにかじかんでいるみたいで、思うように吹けないこともありました。

Erna:吹いて息が入ると楽器が温まるので、大きい楽器と小さい楽器とでは、ピッチにすごく差が出るんです。小さい楽器はすぐに温かくなって高い音が出るけど、大きい楽器はなかなか音程が上がらないので、合わせようがない時がありました。


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── 昨年アメリカの大型オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に出演して、見事審査員満票の4Yesを獲得、セミファイナルの『AGT Live Shows』にも出演するなど大きな注目を集めました。出場しようと思ったきっかけは?


Miyu:私達は動画をそれぞれのインスタやTikTokに上げているのですが、そのインスタのリールを見てくださった番組のプロデューサーさんからDMをいただいたことがきっかけです。

AMI:現地では番組のプロデューサーさんや担当のディレクターさんと話をしながらどういうステージにするかを決めて、チームで戦った感覚です。本当に一瞬の出来事で、今本当に吹いてたのかなって、ああいうのを夢心地って言うんだって思いました。

Erna:初戦はもちろん緊張していたと思うけど、自分たちの中で吹き終わった後、力を出しきって、やった!って感じでした。

Lotta:一生に一度経験するかどうかのことが人生で起きたと思いました。

── 名物審査員のサイモン・コーウェルを始め、審査員もお客さんも大絶賛でした。


Miyu:1回目は弾丸日程でしたが、セミファイナルは2週間ぐらい滞在して準備もしっかりできたので、意外と冷静でした。

Lotta:セミファイナルの時は、世界各国から参加している出演者のパフォーマンスを見て、すごいって思いましたが、でも「いける」って自信を持ってパフォーマンスできました。

── 審査員の一人がMOSについて「すごく難しいことを楽しそうにやっている」とコメントしていましたが、まさにそれがMOSの強さだと思います。


AMI:楽しんで吹こうということは常にメンバー内で言っています。

Miyu:息切れしてます(笑)。踊りながら吹くって意外と大変で(笑)、でもそれをいかに表に出さず楽しくやれるかっていうのを必死に練習してきたし、色々なところでたくさんライブをやってきたからこそできていることだと思います。

AMI:たくさんの人に挑戦してほしい。新しいジャンルとして私達が提示して広げていきたいので、MOSを真似してチームを組んでくれる子供たちが出てきたら、本当に嬉しいです。

Erna:SNSにMOSの真似をして動画を投稿してくれている学生さんも増えてきていて、もちろん全部見させていただいてます。


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── 最新配信シングル「I Need U / hajime feat. Miiakiis」はラップユニットMiiakiisとのコラボで話題ですが、インストと今回のようなコラボとでは、全く違うアプローチなんでしょうか。


AMI:私達は自分達が主役のインスト曲でも、誰かとコライトしてコラボするのも、そのどちらのフィールドにも立てるというか。コラボ相手に合わせることもできるし、自分たちを主張することもできる。その点で今回のMiiakiisさんも、これまでコラボさせていただいた方も、この楽曲のこの部分に関してはこのアーティストの素敵なところを出すためのスパイスになりたいと思っています。もちろんバックのホーンセクションにはならないようにMOSらしさも入れつつ、でもいつものMOSともちょっと違うというか。相手のアーティストの匂いを入れながら、でもMOSらしさも残すということに大切にしています。「I Need U」はどちらのよさも出た、いい楽曲になったと思っています。

── 6月16日に開催される吹奏楽の祭典【甲子園ブラスバンドフェスティバル2024】のサポーターアーティストに就任することが発表されました。


Miyu:管楽器のこんな大きなフェスに呼んでいただけて、MOSが今までやってきたことが認めてもらえたような気がして、本当に嬉しかったです。私達が伝えたいことが伝わっていることが実感できました。今回出場する高校は野球もブラバンも強い有名校なので知っている学校ばかりで、だから甲子園球場ではみなさんが先輩だと思っています。

── 高校生とのコラボもあるとお聞きしました。


AMI:ブラバンの強豪校が揃っていて、そういうみなさんとコラボさせていただくのは私達も刺激になるし、一緒に練習して本番を迎えるまで本当に楽しみです。

Lotta:めっちゃ嬉しいです。誰もができることではないし、しかも甲子園が100周年という記念すべきタイミングで、楽しみながらやりたいしその時間を大切にしたいです。

AMI:この話を友達にしたら甲子園の土を持って帰るようにと言われました(笑)

Erna:元々野球好きなんですが、高校時代は甲子園とは無縁でした。ようやく甲子園に行けるって感激しました。Miyuも言っていましたが、MOSもこの舞台に立てるくらいみんなに知ってもらえたのかという喜びがありました。最近甲子園の応援で「JOJO's Bizarre Adventure "il vento d'oro"」を吹いている学校が結構増えていて、直接私達がSNSでこの曲でバズったことが理由なのかは定かではないですが、そこから採用する高校が増えたイメージがあったので、より高校のブラスバンドに注目するようになりました。


── 今後の野望を教えてください。


Lotta:国内だけではなくグローバルに活動をしたいので、ワールドツアーを目指しています。


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