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<インタビュー>BRADIO「みんなが笑顔になれたらそれでいい」ファンキー&パーティーなアルバム『PARTY BOOSTER』について語る



<インタビュー>BRADIO「みんなが笑顔になれたらそれでいい」ファンキー&パーティーなアルバム『PARTY BOOSTER』について語る

 「みんなが笑顔になれたらそれでいい」そんな想いのもとファンキー&パーティーなニューアルバム『PARTY BOOSTER』を完成させたスリーピースバンド・BRADIOにインタビューを敢行。

 先日、チリで開催された【SUPER JAPAN EXPO 2024】でのライブも大成功!とグローバルな盛り上がりを見せている彼らが、本作についてはもちろん、メンバーそれぞれの音楽遍歴や、最初は「ファンクバンドをやろう」と思っていなかった彼らがここに辿り着くまでのバンドストーリーについても語ってくれた。笑顔になりたいすべての人々に『PARTY BOOSTER』と共にご覧頂きたい。

BRADIOメンバー
真行寺貴秋(vo)
大山聡一(g)
酒井亮輔(b)

Interviewer:平賀哲雄

「ファンクバンドをやろう」と思って組んだバンドじゃなかった

--2010年の結成から14年。今、BRADIOはどんなバンドになっていると感じていますか?

真行寺貴秋:よく「ファンキーなバンド」とは言われるんですけど、それをようやく自覚してきた感じですね。最初から「ファンクバンドをやろう」と思って組んだバンドじゃなかったので、この髪型もフロントマンは目立ってなんぼだろうと思ってアフロにしただけだし、ファンクカルチャーを引っ張っていくみたいな意識もなかったんです。でも、ここ数年で自他共にじゃないですけど、ようやく「ファンキーなバンド、踊れるバンド」というパブリックイメージに自分たちの意識も合ってきた感覚はあって。

--どのような変遷を経て今の音楽性になったんですか?

真行寺貴秋:2013年に1stミニアルバム『DIAMOND POPS』をリリースした辺りで「ファンキーなバンドだね」と言われ出して、そこで初めて「あ、そうなんだ」と一回認識したりとか、これまでいろいろポイントはあったんですけど、1年前のアルバム『DANCEHALL MAGIC』ぐらいから「ファンキーって何だろうね?」と考えるようになって、今回のアルバム『PARTY BOOSTER』はパーティーがテーマだったりするんですけど、ここ数年でファンキー、パーティー、ダンスみたいな自分たちの持ち味であろうところを特化させていく流れになったんです。

--そういう成り立ち方でファンクやっているバンドって珍しいですよね。初めて会ったかもしれない。

真行寺貴秋:そうですよね。元々やりたいことがいっぱいあるバンドだったんで、別に迷走していたわけではないんですけど、アルバムごとにやっていることが変わっていってるんですよ。それが僕らの良さだなとも思っていて。だから、今も、どんどんファンキーにはなっているとは思うんですけど、ファンクに寄り過ぎないファンキーをやっている感覚はありますね。

--そんなBRADIOの各メンバーがどんな音楽を栄養にして育ってきたのか伺いたいんですけど、まず酒井さんから聞かせてもらえますか。

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▲酒井亮輔

酒井亮輔:僕のバックボーンは……音楽を始めたきっかけはB'zだったんですけど、そこでまずギターを弾くようになったんですよね。で、1年ぐらい立ってからベースを持ち始めるんですけど、そのときはちょうどX JAPANとかLUNA SEAとかバンドが流行っていた時期なので、そういう音楽を聴いたりして。あと、洋楽だとハードロック。MR.BIGとかボン・ジョヴィとか。僕が10代、高校生の頃はみんなハードロックを聴いていたんですよね。

--洋楽=ハードロックだった時代ですね。

酒井亮輔:ただ、家の中では、親がマイケル・ジャクソンとか流したりしていて。音楽の専門学校に入ったときにマーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイン・オン」を課題曲として演奏することになって、そこから自発的に「こういう音楽もあるんだな」と思ってモータウンの音楽も聴くようになったんです。当時はジャミロクワイとか流行っていたんですけど、あんまりそっちには行かず、ルーツ的な音楽を好きになって吸収していった感じですね。なので、雑食と言えば雑食だったのかなと。

--続いて、大山さん。

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▲大山聡一

大山聡一:僕は思春期と呼ばれる10代前半は、酒井と地元が一緒で幼馴染みだったんで、似たような音楽を仲間内みんなで聴いていて。当時はレンタルCD全盛期だったし、友達ともいろんなCDを貸し借りして、MDに録音したりしていましたね。それこそLUNA SEAとか第二次バンドブームを牽引していた人たちだったり。そこから洋楽に入ってハードロックを聴くようになって、そこで自発的に聴く音楽のアイデンティティは構築されていきました。その時期にギターを始めて、特にハードロックはギターが花形の音楽だったりするので、いわゆるギターヒーローと呼ばれる人たちの影響は受けましたね。

--それが大山さんのギターのルーツになっているんですね。

大山聡一:その後、ポップパンクやハードコアのバンドに取り憑かれていた時期もあって、本当にバンドキッズみたいな。モッシュとかダイブとか巻き起こるようなライブに足を運ぶようになって、地元の先輩のライブでもよく暴れていましたし、フェスも【SUMMER SONIC】とか行って海外勢の物凄い格好良いライブを「なんとしても最前で観るぞ!」みたいな感じで突進していったり。高校を卒業してからは、海外のニュースクールのハードコアバンドが代官山UNITとかに来たら「あのバンドがこんな距離で観れるのか!」と思って行ったりしていましたね。

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「みんなが笑顔になれたらそれで良いんじゃない?」

--その間、ご自身でもギターは弾き続けていたんですか?

大山聡一:専門学校でギターを学んだり、ギターに関してはずっと興味があるというか「ギターをやっていきたい」という気持ちがあって、だからバンドにどんどん陶酔していったんですよ。それで自分でもバンドを立ち上げて、新宿のライブハウスとかでライブをやって、その中で貴秋に出逢ったんですけど。なので、自分の中には色濃くそういうバンドサウンドの音が染み込んでいる。逆に今、BRADIOでやっているような音楽は、当時ちゃんと聴いていなかったんですよ。だから、リズムギターの魅力とかグルーヴの強いダンスミュージック、ディスコ、ファンクの面白さにハマっていったのは大人になってからなんですけど、僕が弾くBRADIOのギターサウンドは、ナイル・ロジャースの影響がデカいかもしれない。あの人生謳歌している感じの生き様も含めて憧れていて。僕にとって永遠のアイドルですね。

--続いて、真行寺さん。

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▲真行寺貴秋

真行寺貴秋:中学校1年生のときに英語の先生がビートルズをすごく好きで。その影響で僕もビートルズにハマっていって、それが「音楽好きだな。自分もプレイしたいな」と思ったきっかけです。そこからハイスタ(Hi-STANDARD)とかL'Arc~en~Cielとかいろんな日本のバンドも聴くようになって。だから、僕もファンクとかソウルとか好きになったのは、BRADIOを結成した2010年辺りからなんですよね。

--そんな3人がどんな経緯でバンドを組むことになったんですか?

真行寺貴秋:当時、僕が組んでいたバンドとふたり(酒井亮輔、大山聡一)のバンドがよく対バンしていたんですよ。新宿のライブハウスで。そしたら同じぐらいのタイミングで両方のバンドが解散することになって、自分は「ここで音楽はおしまいだな。辞めよう」と思っていたんですけど、どうにも踏ん切りがつかなくて。それで「最後にもう1回だけバンドやってみようかな」と思って、ふたりがどういうプレイヤーなのか知っていたので、彼らを誘ったら面白いバンドが出来るんじゃないかなと。それで声をかけてBRADIOが結成されたんです。

--その時点では、どんな音楽をやろうと思っていたんでしょう?

真行寺貴秋:展望も何もなかったです。とにかく「最後にもう1回だけバンドをやろう。それで花が咲いたらいいな」ぐらいの感じで始めたので、バンドのヴィジョンはなかったんですよね。ざっくり集まって「これからどうしていく?」みたいな。なので、本当にゼロから始まったんです。それでスタジオに入って、とりあえず音を合わせて、細かいネタをみんなで膨らませていったのかな。そのときの自分たちの中にあるトレンドみたいなものを引っ張ってきたりして。ただ、当時はメンバーそれぞれバラバラの音楽性だったから、最初は本当にごった煮みたいな感じでしたね(笑)。

--そこからどういう流れで今に至るまでの軌道に乗っていったんでしょうか?

真行寺貴秋:最初のポイントは、僕ら5人でバンドを組んでいたんですけど、そこからギターがひとり抜けまして、ツインギターからギター1本になったからサウンド的に変わらざるを得ない状況になってしまい。そこでみんなで悩み、試行錯誤した結果「ベースをグルーヴィーに、ギターはカッティングを取り入れて」みたいな感じでなんとなくシフトしていったんですよね。それで「ファンキーだね」と言われるようになってきたのが、2013年の『DIAMOND POPS』。でも、そういう経緯で今のスタイルになっていったので、コテコテのファンクではないんですよね。そこがBRADIOの一番良い特徴になっている。これはBRADIOの譲れないところだなと思っています。

<インタビュー>BRADIO「みんなが笑顔になれたらそれでいい」ファンキー&パーティーなアルバム『PARTY BOOSTER』について語る

--そのBRADIOの魅力を存分に詰め込んだ作品が、今回のニューアルバム『PARTY BOOSTER』だと思うんですけど、実際にはどんなテーマで創り上げていったんでしょう?

真行寺貴秋:前作『DANCEHALL MAGIC』は「ファンキーとは何ぞや? ファンキーなアルバムを創ろう」みたいなテーマで制作したんですけど、ちょうど今のレコード会社・日本クラウンに入ったタイミングだったんですよね。なので、心機一転じゃないですけど、気持ちを新たにあのアルバムを制作して。で、あれから1年経って『DANCEHALL MAGIC 2』みたいな感覚で完成させたのが『PARTY BOOSTER』なんです。ただ、今回は最初に「PARTY」という言葉がキーワードとして出てきまして、すごく自分たちに似合っているし、BRADIOにしか出来ない「ファンキーとは何ぞや?」に続くすごく良いテーマだなと。そこから曲を絞りながら創っていきました。

--今、やるべきことはこっちに振り切ることだ。そんな意識もあったんですかね?

真行寺貴秋:ありました。別にネガティブな意味じゃないんですけど、もっと自分たちで自分たちのことを知るべきだなと思ったんですよ。それは、自分たちが思っているよりもっとBRADIOって凄いバンドなんじゃないかと感じていたからで。で、何がBRADIOの特徴なのか考えてみたときに「パーティー、ファンキー、心が昂揚するような、元気が出るようなバンド」といったワードが浮かんできて、そういうシンプルなことで良いのかなと思ったんですよね。それまでもっと複雑に考えすぎていたんですよ。「こうならなきゃいけない」とか「良いこと言わなきゃいけない」とか「アッパーな曲だからこそ、悲しいことも言って心をえぐらなきゃいけない」とか。でも、最終的に「みんなが笑顔になれたらそれで良いんじゃない?」というシンプルな答えに辿り着いたんですよね。

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  2. 制限なく自由に表現できる「面白かったらそれでいい!」
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制限なく自由に表現できる「面白かったらそれでいい!」

--実際、そこに特化したアルバムになってますよね。

真行寺貴秋:めちゃくちゃシンプルな思考になれたからなんですよ。それが『DANCEHALL MAGIC』からずっと良い意味で続いてきていて。だから今回もテーマはパーティーだし、そこから膨らませたものがひとつのアルバムとして形になったという。

大山聡一:いろんなパーティーが詰まってるよね。みんながイメージするようなザッツ・パーティー的な楽曲もあれば、ひとりで家にいるときに……例えば仕事をめっちゃ頑張って手応えを感じた日、家に帰って缶ビールを開ける瞬間もパーティーじゃないですか(笑)。

--それもまた打ち上げですからね(笑)。

大山聡一:そういうイメージのパーティーもあるし、あらゆるシチュエーションのパーティーが『PARTY BOOSTER』には詰まっている。で、総じてすげぇ楽しいパーティーアルバムっていう。アルバムタイトル通りの音楽を上手くパッケージできた手応えはありますね。

<インタビュー>BRADIO「みんなが笑顔になれたらそれでいい」ファンキー&パーティーなアルバム『PARTY BOOSTER』について語る

▲アルバム『PARTY BOOSTER』通常盤

--1曲目「パーティーヘッド」を聴いた時点で、それこそ「人が笑顔になれたらそれで良いんじゃない?」という意識やグルーヴが完全に体現されていて、その後もあらゆるアプローチでひたすら昂揚され続ける感覚があって、めちゃくちゃ楽しいアルバムになっていますよね。

大山聡一:序盤の「パーティーヘッド」「Stepper's Fight」が土台になっていて、そこからいろんなパーティーに派生していった感じ。それは制作していたときもあったかもしれない。特に「パーティーヘッド」は僕の中でザッツ・BRADIOなんですよ。これがあって「このお皿には何でも乗せられます」みたいな雰囲気を生み出せたので、この曲が今作の舵を切ってくれた感覚はありますね。

--個人的には「永劫DISCO」もそれこそ今日話してくれた音楽遍歴あってこそのキラーチューンだなと感じました。フュージョンっぽいギターソロが入ってきたと思えば、ベースソロもエモーショナルだし、聴いててめちゃくちゃテンション上がります。これぞBRADIOでしか生み出せない音楽ですよね。

大山聡一:ありがとうございます! いまどき、32小節のギターソロを弾かせてくれるバンドもあんまりいないと思うんで(笑)。そこを楽しんでもらえたのは嬉しいです。そういうことを制限なく自由に表現できる「面白かったらそれでいい!」っていうバンドではあるし、そこがBRADIOの良い持ち味だと思うんですよね。

--酒井さんは『PARTY BOOSTER』を制作されてみて、どんなことを感じたりしましたか?

酒井亮輔:聡一の家に集まって創った曲が多いんですけど、僕の場合はギリギリまで粘っちゃうというか、ギリギリのほうが追い込まれて良いモノが出てきやすいんですよ。だから、結構悩みましたね。特に「パーティーヘッド」はレコーディング最終日だったかな? 朝方まで粘って粘って何とか搾り出せた記憶があります。アルバムの仕上がりに関しては、他の作品に比べてシンプルなところと複雑なところのグラデーションが激しくて面白いし、個人的には歌えるベースのところが増えたというか、ベーシストとしてアピールできるポイントがたくさんあったから嬉しかったですね。それもあってファンキーでもあるんですけど、ディスコ感も強い。本当に踊れる『PARTY BOOSTER』というタイトルに相応しいアルバムになったと思います。この先のツアーで披露するのも楽しみですね。

--歌えるベースというのは、いつも演奏時に意識されているところではあるんですか?

酒井亮輔:そうですね。最近だと、アメリカのジョー・ダートという「久々にベースヒーローが出てきたな」と思わせるタイプのベーシストがいるんですけど、手数が多いというより、お客さんも演奏に合わせて歌えるようなベースを弾くんですよ。自分もそういうベースが弾きたくて、その意識は今回のアルバムにも反映されていると思うので、よかったらそんなところも注目してほしいです。

--そんな『PARTY BOOSTER』の最後を飾る「ファンファーレ」。こちらはアニメ『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』オープニングテーマとして新しいリスナー層にも届いた1曲ですが、本作の中ではどんな役割を担ってくれたと感じていますか?

真行寺貴秋:制作してから結構時間は経っているんですけど、今回のアルバムの最後に腰を据えても全然ファンキーだし、パーティーだし、「ファンファーレ」という言葉も『PARTY BOOSTER』の最後を飾るに相応しい感じだし、意外と歌っていることも今と変わっていないし、この曲があって良かったなと思いましたね。ちゃんと最後を締め括ってくれました。

--そんなニューアルバム『PARTY BOOSTER』を引っさげた全国ツアー【PARTY BOOSTER Release tour 2024】の開催も決定しております。どんなツアーにしたいと思っていますか?

真行寺貴秋:今回はもう『PARTY BOOSTER』と名付けちゃったんで。これ、ありそうでなかったタイトルなんですよ。そのタイトルに相応しいライブを各所で繰り広げていきたいと思ってます。楽しいパーティーにするのはもちろんなんですけど、来てくれる人たちには普段の生活があって、それぞれに泥にまみれながら日々を送っていると思うんで、そういう生活のブースターになるような時間にしたいですね。みんなが笑ってくれたらいいな。

Interviewer:平賀哲雄

「パーティーヘッド」MV
「真夜中プライスレス」MV

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