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<インタビュー>メジャー2周年を迎えるCody・Lee(李)、特別な会場でのアニバーサリ ー・ライブと“やりきった”完成直後の最新アルバムを語る

インタビューバナー

 メジャーデビュー2周年を迎えるCody・Lee(李)が、インディーズ時代から出演を熱望していたビルボードライブ東京と、神奈川・江の島OPPA-LAの2会場でアニバーサリー・ライブを開催する。

 「我愛你」のミュージックビデオが世界中で話題となり、メジャーデビューアルバム『心拍数とラヴレター、それと優しさ』を携えた8都市を巡る全国ツアーはソールドアウト、大型フェスへの出演のほか海外公演も成功させるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの彼らのステージは必見だ。

 6月にリリース予定の2ndアルバムを完成させたばかりの4人に、アニバーサリー・ライブへの意気込みや海外進出に対する思い、そしてもちろん最新アルバムについてもじっくりと話を聞いた。(Text:黒田隆憲 Photo:辰巳隆二)

自分たちの楽曲の振り幅の大きさを見せられるいい機会

――今回、メジャーデビュー2周年のアニバーサリー・ライブを開催するビルボードライブ東京と、江の島OPPA-LA、それぞれの会場に対する思い入れや意気込みをお聞かせいただけますか?

ニシマケイ:ビルボードライブ東京は、今まで映像では見たことがあったんですけど、実はまだメンバー全員が実際には行ったことがなくて。


力毅:すごくアダルトな雰囲気のライブハウスという印象だったので、僕らがやれる日が来るのはもうちょっと貫禄がついてからかなと思っていました。まさかこんなに早く出演できるとは思っていなかったです。


高橋響:僕はSPECIAL OTHERSのライブ映像で初めてビルボードライブの存在を知ったんですけど、ステージ後方の大きな窓から六本木の夜景が見えるじゃないですか。街と音楽が一体になる感じがすごく素敵だなと思っていました。お酒やご飯も出てくるらしいね。


力毅:着席スタイルというのも、僕らにとっては珍しい。きっとファンの方たちも新鮮な気持ちでCody・Lee(李)を楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。


高橋:セットリストや機材セッティング、衣装など、ビルボードライブならではのちょっと特別な感じにしたいですね。1日2部制だし、昼と夜で少しテイストを変えてみるのも楽しそう。


原汰輝:いずれにせよ僕らにとって、チャレンジングなステージになると思いますね。


高橋:江の島OPPA-LAもロケーションが素晴らしいですよね。こちらは自然と音楽がつながっている感じ。開放的な雰囲気の中、それぞれの会場にあった内容にしていきたいです。僕らの初期レパートリーに「江ノ島電鉄」という曲があるのですが、これは僕が初めて江ノ島へ行った時に書いたんですよ。それをOPPA-LAで演奏できるのも感慨深いなと。


力毅:OPPA-LAはビルボードライブよりカジュアルな雰囲気だよね。どちらもCody・Lee(李)の音楽は合うと思うし、自分たちの楽曲の振り幅の大きさを見せられるいい機会だと思う。その辺りを楽しんでいただけたら嬉しいです。



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海外への進出は本当に予想もしていなかった展開

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――今年は初の台湾ワンマンをソールドアウトさせ、タイ・パタヤでの音楽フェスティバル【PELUPO】出演も決定するなど、活躍の幅を国内外問わず広げ続けているCody・Lee(李)ですが、そもそも海外への進出はどのように実現させていったのでしょうか。

高橋:僕ら自身は、最初の段階ではそこまで(海外進出を)意識していたわけでもなくて。そのための戦略を練ったり、プロモーションをかけたりしたことは、全くと言っていいほどしていないんです。たまたま「我愛你」という曲が世界中の人に聴いてもらえるようになり、それを機に存在を知ってもらい、いろいろな国に呼んでいただけるようになったという、本当に予想もしていなかった展開でした。


――そうだったのですね。海外ではアニメ主題歌などを通して人気が出る日本人アーティストが多いですが、Cody・Lee(李)はそれともまた違った受け入れられ方をしていますよね。それはなぜだと思いますか?

ニシマ:よく「我愛你」の動画コメントに「バンド名と曲名は中国っぽくて歌詞が日本語、誰なんだこいつら?」みたいに書かれているんですよ(笑)。やっぱりそこが入口として良かったのかなと。「我愛你」で好きになって、他の曲を聴いたら全然違うジャンルの曲もあるけど、聴いているうちにだんだん好きになっていってくれている気がしますね。


:僕は、いろんなタイミングが重なったのもあると思っていて。ちょうどコロナ禍で、どこにも行けないときに無国籍というか多国籍なバンドのイメージが旅情を誘ったところもあっただろうし、ジェンダーレスな映像も、多くの人がそういったことに関心を持ち始めた時期だったのもあって興味を持ってもらえたのではないかと。



「我愛你」Music Video

――海外の中で、とりわけ台湾への思い入れは強いと思うのですが、いかがですか?

高橋:僕らにとって最初の海外遠征が、台北で開催されている【浮現祭 Emerge Fest】への出演だったというのも大きいですね。ちょうどコロナが落ち着いてきて、声出しができるようになり始めたタイミングというのもあって、今も忘れられないくらい熱狂的に迎えてくれたんです。


力毅:あの頃、日本ではまだ(声出しは)できていなかったんだよね。


高橋:そうそう。だからもう客席はパンパンだし、お客さんは最初から最後まで歌ってくれているし……。そこで「海外ライブ、楽しい!」って刷り込まれた(笑)。友達もたくさんできたんです。対バンして仲良くなった人たちもいますし、向こうでミュージックビデオの撮影を2回やったんですけど、そこでスタッフや俳優さんと仲良くなって。いまだに台湾に行くとみんなで集まって飲んだりして。「地元」みたいな感覚になってきました。


――これはよく聞かれる質問かとは思いますが、ライブでのオーディエンスの反応の違いってありますか?

高橋:それはもう如実にありますよ。日本のお客さんは良くも悪くも「集団的」というか、一丸となってライブを盛り上げようという気概を感じます。逆に海外のオーディエンスは個々で楽しんでくれている感じ。自由に踊っている人もいれば、歌っている人もいて。そういうリアクションのギャップが演奏していて楽しいし、国内外どちらにも通用するライブを追求していけば、もっといろんな景色が見られるんじゃないかと思っています。

 僕らの楽曲に「烏托邦」という、ちょっとプログレッシブな曲があるんですけど、それを日本で演奏するとパチパチパチ……と大体3拍手くらいしかない(笑)。でもタイでやったとき、曲の中にちょっとダブっぽいセクションがあるんですけど、そこでいつもPAさんがディレイやリバーブで音をガンガン飛ばしてくれるんです。そこでもうフォー!みたいな(笑)。「ここでこんなに盛り上がるんだ……!」と。こちらとしてはとてもありがたくて。


:そうそう! そのリアクションが欲しかったんだ!ってね(笑)。


高橋:そういう、海外でのライブの様子が動画で拡散され、日本のお客さんも「あ、ここでこんなふうに盛り上がっていいんだ」みたいになってくれたらいいなと思っていますね。


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新作『最後の初恋』の制作はこれまで経験したことのない刺激的な体験

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――完成したばかりの新作『最後の初恋』についてもお聞かせください。

高橋:前作『心拍数とラヴレター、それと優しさ』(2022年)から、Cody・Lee(李)は「生活感」みたいなものを表現の軸として大事にしてきたのですが、それが今作でいったん完結したような気がしています。そのくらい「やりきった」アルバムになりました。


ニシマ:とにかくスケジュールがタイト過ぎて、怒涛のレコーディングでしたね。気づいたら始まり、気づいたら終わっていた……みたいな。でも、そんな中で無理やり絞り出したアイデアやフレーズが、自分でも思いもよらないものだったりして。前作はもう少し時間的な余裕のある中で、フレーズ一つひとつをしっかり練り上げて(レコーディングに)臨んだのですが、今回それとはまた違う、これまで経験したことのない刺激的な体験でした。


:収録曲は、割と短期間でキュッと作ったものもあれば、3年くらい前から寝かせていた曲もあり、かなり振り幅の大きな「Cody・Lee(李)の集大成」とも言える内容になったと思います。


――ちなみに、今作でいちばん古い曲は?

高橋:「烏托邦」が2020年7月、コロナ禍で作った一番古い曲です。次いで「イエロー」は翌年4月に作っていますね。「烏托邦」はビートルズの「I Want You (She's So Heavy) 」やフジファブリックの「青い鳥」のコードを引用しながら作っています。ビートルズとフジファブリック、その文脈には奥田民生さんも含まれるのですが、僕も(その文脈に)入れてくれ!という気持ちで曲作りに取り掛かりました(笑)。「いろんなセクションを加えてみよう」と思い、シラフでどこまでサイケデリックに、ドリームポップに落とし込めるかを自分で実験してみた曲でもあります。


ニシマ:この曲は2020年にデモを作った時から、ほとんどアレンジを変えていない気がする。


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高橋:1サビは最初、ベース、ギター、ドラムが入っていたんですけど、ニシマさんのスラップベースがあまりにもかっこいいから、それを際立たせるためにギターをオミットして、そのちょっと歪な感じも気に入っています。この曲をはじめ、全体的に構築と解体を繰り返しながら作ったアルバムと言えるかも。


ニシマ:「イエロー」は、いつ世に出すかタイミングを見計らっていたというか。様子を伺っていたものを、ようやく世に出せたという感慨深さもあります。個人的に一番好きな曲で、「早く(レコーディングを)やらせてくれ」って、スタッフやメンバーにずっと言っていたんですよ。

 でも、いざやれることになったら思い入れがあり過ぎて……考え過ぎてしまったんです。悩みに悩んだ結果、どんどん削ぎ落としてものすごくシンプルになりました。同じようなフレーズのループと見せかけ、ちょっとずつ違いを入れていく、そういう微妙な変化で「繰り返される毎日も1日たりとも同じ日はない」ということを表現しようと思いました。それは、「生活」という曲でも意識しましたね。



「生活」Music Video


――いろんなセクションが組み合わさっているという意味では、「ストロベリーエンジェル~Don’t Say Goodbye~」がまるで組曲のようで圧巻でした。

高橋:あの曲は、1990年代のビートロックを意識しながら作りました。でも、それで最後まで書ききってしまったら「だったらBOØWYを聴いた方がいいじゃん」となるし(笑)、令和でCody・Lee(李)がビートロックをやる意味を考えた時、新たな要素を入れて緩急をつけたり、サビとのギャップを作ったり、今の若い子も楽しめる「仕掛け」を作ってみようと。

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国内外問わず、いろんなところへ行ってライブがやりたい

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――「涙を隠して(Boys Don’t Cry)」も途中のサイケデリックな展開や、英語歌詞になるセクションなど曲調がガラッと変わるところがCody・Lee(李)らしいですね。

高橋:この曲は、自分の中ではボブ・ディランとウィーザー、ティーンエイジ・ファンクラブ的なパワーポップの組み合わせだったんです。それをバンドサウンドで鳴らすことによって、Cody・Lee(李)らしく仕上がった1曲だと思っています。メンバーそれぞれの見せ場があるところも気に入っていますね。

 ドラマ『恋愛のすゝめ』の主題歌として書き下ろした曲なので、歌詞にはドラマの中で出てきそうなワード、例えば「靴紐」や「トレモロ」などを入れ、韻を踏みつつ構成していった上で、〈自分が 特別 ではないという事 認めたら なんだか 生きやすくなった〉という、一番言いたかったフレーズを入れました。



「涙を隠して(Boys Don't Cry)」Music Video

――このフレーズはどこから出てきたものですか?

高橋:僕自身、音楽を始めた頃は憧れのミュージシャンの逸話などを聞いて、「かっこいいな」と思いつつも「それに比べて自分はなんて平凡な人間だろう」と落ち込むことも多くて。それが辛かった時期もあったんですけど、「自分は特別でもなんでもない人間なんだ」ということを受け入れた瞬間、すごく楽になったんですよね。


――なるほど。

高橋:自分が目指している場所があったとして、そこに辿り着くまでのプロセスは、他の誰かと同じじゃなくてもいいんだなと。平凡であることに磨きをかけていくことで、そこへ辿り着くこともあることに気づいたんです。「普通であることを誇ろう」と覚悟を決め、他の人と比べなくなったことで生きやすくなった。そのことを歌おうと思いました。


ニシマ:ちなみにベースは、ナンバーガールのようなフレーズをTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのようなスタイルで弾きたいと思いました。特にAメロやギターソロの後ろで弾いているベースは、聞く人が聞けば(ナンバガの)中尾憲太郎さんのオマージュとわかるはずです(笑)。あとは、この曲自体がスーパーカーやくるりなどが90年代に持っていた空気感を彷彿とさせたので、いつも指で弾いているベースを今回ピック弾きでチャレンジしました。


――Cody・Lee(李)の楽曲は、リファレンス、影響を受けたアーティストをあえてわかりやすくオマージュしたり、隠し味的に散りばめたり、そういう要素がたくさん入っているところに魅力を感じるし、リスナーとしても信頼できる人たちだなと思います。

高橋:そこはヒップホップ的な考え方に基づいていますね。ギャングスタのラッパーにとっては、マリファナを路上でゲットすることが「日常」だとしたら、僕にとっては部屋で一人フィッシュマンズを聴いていることが「日常」なので、どうしたってそういう要素が入ってくるわけです。

 例えば「さよuなら」も、前半はモーモールルギャバンみたいな、ドラム、ベース、ピアノで成立する気持ちよさを意識していて。「後半はどうしよう」となっているときに、ニシマさんが「スーパーカーの『YUMEGIWA LAST BOY』みたいな感じはどう?」と提案してくれて、そこからインスパイアされたフレーズが浮かび、さらにサブベースを重ねて……という感じで実験的なことも挑戦しつつ、いい感じでまとまった曲。ちなみに歌詞は、タイアップでありつつ、元メンバーの(尾崎)リノちゃんに向けても書いていますね。



「さよuなら」Music Video

力毅:僕は、この曲をレコーディングしている前からずっとクルアンビンを聴いていたんですけど、彼らのライブを観に行ったら、ひたすらディレイタイムを長くしてポンピングさせている楽曲がめちゃくちゃかっこよくて。「これ、絶対自分たちの曲でもやりたい」と思っていたので、イントロで入れることができてよかったです。


――この新作を携え、これからのCody・Lee(李)の抱負を最後にお願いします。

ニシマ:国内外問わず、いろんなところへ行ってライブがやりたいですね。アジア以外でも、たとえばイギリスとか。


高橋:USとかね。もちろん海外でも積極的にライブをやりつつ、個人的には地元の家族や友達に還元していくような音楽を作りたいと思っているし、地元での市民文化会館で単独公演を行うのが目標なので、それに向かって駆け抜ける1年にしたいです。


:新体制になり、ようやくみんなで足並みを揃えられたかなと。


力毅:本当に怒涛で、気づいたら3年目。まだまだ自分の知らないギターの可能性がたくさんあると思うので、これからも日々開拓していけたらと思っています。


Cody・Lee(李)「最後の初恋」

最後の初恋

2024/06/12 RELEASE
KSCL-3523/4 ¥ 5,600(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.NOT WAR, MORE SEIKATSU
  2. 02.涙を隠して(Boys Don’t Cry)
  3. 03.DANCE扁桃体
  4. 04.イエロー
  5. 05.真夏のジャイガンティック
  6. 06.ストロベリーエンジェル ~Don’t Say Goodbye~
  7. 07.さよuなら
  8. 08.烏托邦
  9. 09.ほんの気持ちですが!
  10. 10.下高井戸に春が降る feat.GOMESS
  11. 11.1096
  12. 12.生活

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