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<インタビュー>“倖田來未”を作り上げるマインド、家族の存在――約2年ぶりアルバム『UNICORN』、そしてシングルベスト・ツアーを語る
Interview & Text:高橋梓
Photo:興梠真穂
2023年12月6日にデビュー23周年を迎え、なおも輝き続けている倖田來未。4月17日には、約2年ぶりとなる19thアルバム『UNICORN』を、満を持してリリースする。同作には、映画『ゴールド・ボーイ』の主題歌「Silence」、【東京オートサロン2024】のタイアップソング「Vroom」の他、様々なアーティストのカバー曲も収録。幅広いジャンルの楽曲が収められており、倖田來未の“今”がたっぷり味わえる内容となっている。そこで、同作についてはもちろん、アーティスト・倖田來未のこれまで、そして今抱えている思いなどを語り尽くしてもらった。
約2年ぶりのアルバム
――『UNICORN』は約2年ぶりのアルバムです。少し間が空きましたが、その理由はなんだったのでしょうか。
倖田來未:私的には2年ぶりだとは全く思っていなかったんです。今の時代、6~7曲だけしか収録されていないと「EP」という扱いになるじゃないですか。「アルバム」にするために無理やり楽曲を入れるのではなく、自分が良いと思える曲だけを収録したいと思っていて。だから去年リリースした『WINGS』も6曲しか入っていないのでアルバムじゃない、と(笑)! それで間が空いたように見えてしまっているんですよね。私は24年間のアーティスト活動の中で毎年アルバムを出しているつもりなので、今作が19枚目と聞いてすごく少なく感じていました。
――倖田さんとしてはコンスタントに出している感覚だったのですね。
倖田:幸せなことに、毎年アルバムを引っさげたツアーをやらせていただいているので、余計そう感じていました。私のアルバム作品の作り方って、ツアーのために作っている部分があるんですよ。ライブ演出は自分でやっているのですが、たとえば、水槽から出てくる演出がやりたいからマーメイドを意識した音源を作ろう、とか。「HAIRCUT」という曲もそう。1曲の中で7回くらい髪型を変えたくて作った楽曲です。そうやって毎年ライブのことを考えて作品を作っていくスタンスなので、毎年リリースしているつもりでした。
――今回のタイトルは『UNICORN』ですが、これもライブに関連しているのですか?
倖田:去年おこなった【KODA KUMI LIVE TOUR 2023 ~angeL & monsteR~】では、「なぜエンジェルがモンスターになったのか」ということをテーマにして、昼夜公演で内容を変えてストーリー仕立てのライブをしました。それを経て、“モンスター”から繋げたいなと思って「UNICORN」というワードが出てきて。その理由はぜひコンサートで答え合わせをしていただきたい!
カバー曲でのモットーは「全く違う路線のものを作る」
――なるほど、ライブの伏線なんですね! そして、収録曲にはカバー曲もたっぷり含まれています。
倖田:倖田來未といえば、「キューティーハニー」や「め組のひと」、EXILE ATSUSHIと歌った「WON'T BE LONG」など、カバー曲がターニングポイントになっているんです。なので毎回大切に考えて作っていて。でも、カバー曲って本当に難しいんです。原曲の破壊力があるので普通に歌っても勝てるわけがない。しかもカラオケになるのも嫌。なので、「こっちもいいよね」と言ってもらえる全く違う路線のものを作る、ということをカバー曲でのモットーにしていて。そういった曲を生み出すことに毎回四苦八苦しています。HIPHOP調にしてみたり、R&Bにしてみたりするのですが、実はお蔵入りしている曲がたくさんあるんです。今作にも5曲入っていますが、1年かかってこれだけしか入れることができませんでした。
――どんなポイントで選曲したのでしょうか?
倖田:スタジオにDAMさんからカラオケ機材を借りてきて、5~6時間スタッフが倖田來未に歌ってほしい曲を入れていくんです。「80年代が1曲あるから、90年代ももう1曲入れたいよね」と、ああでもないこうでもないとか言って、歌いながら絞り込んで。そこからキーを上げたり下げたり、テンポを変えてみたりしながら、「こういうアレンジにしてみよう」という話を経て決まりました。しかも、“王道”にはいかないみたいなところがあるんです。本当は私、中山美穂さんだったら「世界中の誰よりきっと」が歌いたかったんです。旦那といつも歌っているデュエットソングで、思い出もありますし。でも「倖田來未っていうのはあえてハズすのが粋や!」という自負もあり、「遠い街のどこかで...」になりました。だから、今井美樹さんも「PRIDE」ではなく「PIECE OF MY WISH」、BONNIE PINKも「A Perfect Sky」ではなく「Heaven's Kitchen」なんです。
遠い街のどこかで... / 倖田來未
――アレンジは何かにインスピレーションを受けてされているのだと思っていましたが、選曲会の中で決めていくんですね……!
倖田:“倖田來未”が歌った時に、どのテンポがいちばん良く聞こえるかをまず決めて。「このぐらいのテンポやったらR&Bっぽく仕上げようか」、「『UFO』はちょっとセクシーにしてみよか」と話し合いながら決めていますね。
――アレンジはある意味どこまでも突き詰められると思います。倖田さんの中のOKラインはどこなのでしょうか。
倖田:私、結構直感型なんですよ。たとえば「PIECE OF MY WISH」は最初もう少し盛り上がっていく構成だったのですが、切なくてしっとりした「PIECE OF MY WISH」の印象を残したくて。引き算をして「これだ」と思ったところでOKを出しました。他の楽曲もそんな感じで足し引きをしてOKラインを探っています。だから1曲あたり5回くらいやり直しをかけているかも。アレンジャーさんは多分嫌な顔をしながらやっていると思います(笑)。
――それも完成度を高めたいが故、ですよね(笑)。
倖田:そうですね。「TOKIO」の場合は、最初王道のアレンジで(デモが)上がってきたんですね。でもカラオケっぽく聞こえる気がして。旦那と子どもと遊びに行く車の中でその音源を聴いたり、沢田研二さんの原曲を流したりして、もっとよくならないかと話をしていたんです。途中、旦那がシャッフルで曲をかけてくれていたのですが、流れてきた曲のビートがすごく良くて。私、メロディは崩さないカバーのやり方を取っているので、「ここまで崩したら沢田さん怒るかな?」と思ったのですが、原曲がリリースされたのが70年代じゃないですか。70年代から見た2024年はこれくらいネオ東京化しているのかも、と。横で旦那が話を聞いているので「じゃあやってくれる?」とアレンジをお願いしました。
――KENJI03さんと、日常から仕事のお話をされているのですね。
倖田:そうそう。だから1曲目の「UNICORN」も入れるつもりがなかったんです。でもライブの映像を作っていく中で、24年目の「24」をテーマにした曲を作りたくなって。旦那に「『24』をテーマに曲を作りたいねん。3日でいける?」って聞いて(笑)。「こういう演出があって、こういう感じやねんけど、こんな曲どう? ビートは少なめで」「歌詞は書いておくから、3日でお願い」と伝えて作ってもらいました。
――KENJI03さんも流石ですが、3日で歌詞を書ける倖田さんもすごいです(笑)。
倖田:あはは(笑)。旦那の存在はすごく助かっていますね。楽曲のイメージを伝えてオーダーしても、やっぱり違うと思うものが上がってくることがあるんですよ。でも旦那だったらすぐ隣にいるし、「違う、違う」「そのビートじゃない。もうちょっと重いやつ」って直接言えるので。クイックに良いものが作れています。
――そして、リード曲は「Silence」。制作時のこだわりや新しい取り組みがあれば教えてください。
倖田:これは映画『ゴールド・ボーイ』の台本をいただいて読むところからスタートしました。映画の主題歌って、映像を引き立てるものだと思っているんです。『ボディガード』の「I Will Always Love You」(ホイットニー・ヒューストン)も、『タイタニック』の「My Heart Will Go On」(セリーヌ・ディオン)もそうじゃないですか。今回の『ゴールド・ボーイ』は、ストーリーが少し難しい映画というか(笑)。とてもサスペンスな映画で、台本を読んでみるといろいろと考えさせられました。子どもたちも出てきて「この子はなんでこんなになってしまったん?」と、考え出すわけです。なので、問いかけをたくさんしたいなと。問いかけをすることによって自分の心を開いてほしい、この映画の救いになれば良いなという思いを込めて書いた曲ですね。
――なるほど。歌詞に「?」が多いのはそういった背景があったのですね。
倖田:でも、はじめはもっと包み込むような優しい曲だったんです。強い人ほど、実は泣きたい思いを抱えていたりするじゃないですか。そんな人にも「たくさん泣いていいんだよ」と伝えたくて、そういう歌詞を監督に提出したんです。そうしたら「こんなに許してはダメです。優しすぎます」と言われて。私も意図を説明したのですが、「気持ちはわかりますが、殺人を肯定してはいけません」って。それですぐに書き直して、監督に好きな歌詞を選んでもらって出来上がりました。
――歌声もとても優しいですよね。Instagramで、お母さん目線でこの映画を観たという投稿をされていたので、こういった歌い方になったのかなと思っていました。
倖田:倖田來未とバレたくなかったんです。“倖田來未”ってパブリックイメージがあるじゃないですか。「どうも~倖田來未でぇ~す!」ってみんながモノマネしてくれる倖田來未(笑)。あのイメージで聴いてほしくなくて。なので、透明感があって皆さんの心にスッと入れるように優しく歌いました。
――たしかに、今回の収録曲でいうと「We are FIGHTERS」のAメロの出だしに“倖田來未”というイメージがあって、「Silence」は新しいイメージでした。
倖田:はいはい、あの低音ね! そう、倖田來未の良いところってああいう低音だと思うんです。ただ、「Silence」のお陰で新しい声色を引き出してもらいました。勉強させてもらった楽曲です。映画の試写会でも歌わせてもらったのですが、「私、歌えんの!?」ってすごく緊張して。この曲、リズムがないから難しいんですよ。でもとても気持ちよく歌うことができて、倖田來未もこういう曲が歌えるようになったんだなと誇らしく思いました。9年前くらいのライブで声が出にくくなって以来、現在までこまめにボイトレを行っているんです。その結果、今ではこんなに優しい声が出るようになって。やっぱりコツコツ努力することは大事ですよね。「Silence」を通してそういうことも学ばせてもらいました(笑)。
Silence / 倖田來未
リリース情報
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マドンナがそうであるように
“倖田來未”で居続けたいんです
―― 一方で「Vroom」のような、全く違ったイメージの楽曲も収録されています。
倖田:2曲くらいしっとり目の曲をレコーディングすると、次ははっちゃけた曲がやりたくなるんです(笑)。「Vroom」はしっとり目のレコーディングが続いて、ちょうどかましたい時期に出てきた曲です。両方やりたいアーティストなんですよ。昔、会社からも「どっちかにしたら?」と言われたことがあって。ダンスミュージックも歌謡曲もロックもバラードもユーロビート系もやるから、ジャンルがわからないって。でもそれで良いんです。私自身、バラードを歌っている倖田來未も、ウェイウェイ系を歌っている倖田來未も好きなんですよね。どっちもかっこいいと思うので、どっちかに寄せる必要はないなって。
――甘いものを食べた後にしょっぱいものが食べたくなる現象ですね。
倖田:まさに! 今年42歳になるので、落ち着いた方向性にいこうという話が挙がったこともあるんですが、“倖田來未”で居続けたいんですよ。マドンナがそうであるように。「Vroom」に関してもいろいろと言われていたみたいですが、倖田來未はあれがかっこいいと思ってやっているのでそれでいいのかなと思っています。実際やってみて「これ、合うてへんな」と思ったら止めますが、めちゃくちゃハマっていたので続けるべきですよね。
Vroom / 倖田來未
――ブレないところも倖田さんらしくてかっこいいです。そして、この曲もKENJI03さんとの共作ですよね。
倖田:はい。30~40曲くらいデモテープをいただいて聴いたのですが、“avexっぽい”楽曲が多く集まってきて。今の倖田來未がやるのはちょっと違うのかなと思っていた時に、「これいいやん」とピックアップしたのがたまたま旦那の曲だったんです。私はいつもデモテープを聴く時に作家さんの名前を伏せて聴いているので、本当にたまたまでした。
――いつも一緒にいて倖田さんのことをご存知だからこそ、KENJI03さんも刺さる楽曲が作れているのかもしれませんね。
倖田:ツボがわかっているんでしょうね。もう結婚して13年目ですから。それに私が最近聴いている曲やルーツとなる曲も知っていますし、ライブで「この曲でノッてるな」というのも見ているので、想像しやすいのかもしれません。もちろん、的はずれな楽曲のときは容赦なく外しますけどね(笑)。
――さらに、映像として「Silence」「Vroom」「遠い街のどこかで…」のMVも収録されます。楽曲テイストの差はもちろんありますが、MVごとにあれだけ違う姿を見せられるのはなぜなのでしょうか。
倖田:私は曲からインスパイアして歌詞を作っているのですが、最初に浮かぶのがMV映像なんです。MVを作らない曲だとしても、主人公は何歳で、どんな髪型をしていて、どういう恋をしていて、今どういう状況なのか……という画が浮かんでくるんです。そこから主人公が言いそうなことを歌詞にしていくスタイルなんですね。だから、ある意味“倖田來未”は“バービー人形”。たとえば「遠い街のどこかで…」なら、遠距離恋愛をしている彼にもうすぐ会える、楽しみだけどまだ私のことを好きで居てくれているかな、今日の服はこれでいいかなという主人公を思い浮かべたので、MVのようなファッションをしていて。「Vroom」はイケイケな主人公なので、ああいったファッションになりましたし、曲を聴いた瞬間から照明の色もイメージしていました。それをMV監督に伝えて具現化してもらっている間に歌詞を書いて。出来上がったら「こんなんできましたけど、どうかな? 言ってたイメージと合うやろか?」って意見を聞いて作っていきました。
――なるほど。
倖田:カバー曲のアレンジと同じく、作詞スタイルも直感型なのかもしれませんね。だから、画が浮かばない曲は他の方に歌詞を依頼しますし、デモテープの歌詞が画と一致したらそのまま使わせてもらうこともあります。10年くらい前にリリースした「Crazy 4 U」はデモテープの歌詞が良くてそのまま使わせてもらいましたし、「real Emotion」は自分で書いた歌詞が全部ボツになって、プロの方にお願いしました。それこそ今回の「Silence」も、デモテープに入っていた歌詞の良かったワードを使わせてもらっているので、作詞が連名になっているんです。「絶対自分で書く」という我が出始めたら、良くないものになってしまう気がするので。曲を光らせることをいちばんに考えて制作をしています。
ファンが求めるものを提示するアーティストのほうが、
私は素敵だと思っています
――そして、今回のアルバムの曲も披露されるであろうツアー【KODA KUMI LIVE TOUR 2024 ~BEST SINGLE KNIGHT~】も4月からスタートします。どんなツアーになりそうですか?
倖田:去年のライブから繋がっています。ライブDVDが絶賛発売中なのでぜひ見てからご来場いただければ、と。そして「BEST SINGLE KNIGHT」なので、最初から最後まで知っている曲しか出てきません。私、シングルだけでも80作以上リリースしているんですよ。そこにアルバムの曲やカップリング曲で歌いたい曲、ファン人気が高い曲などを加えてセットリストを考えていったら、最初4時間半にもなってしまって。厳選してなんとか2時間ちょっとくらいに収めたので、誰もが知っている曲ばかりになっているはず。倖田來未のライブを見たことがない人でも楽しんでもらえると思います。
――このタイミングでシングルベスト・ツアーをするのはなぜなのでしょうか?
倖田:25周年に向けて、もう一度倖田來未を知ってほしかったんです。「愛のうた」を歌っていた頃で止まっている人もいると思うんですよね。あの頃の倖田來未と、今の倖田來未は別次元にいる気がしていて、今の倖田來未もいいと知ってほしいんですよ。それに、音楽って思い出と結びつきやすいじゃないですか。皆さんの色んな思い出と結びついている曲がたくさんあるので、過去に戻って思い出に浸ってもらいたいという気持ちもあります。
――当時から進化しているとお話しいただきましたが、倖田さん自身がいちばん変わったと思うのはどんなところですか?
倖田:曲への思い、かな。正直に言うと、昔は忙しすぎて曲を大切にできていない部分があったんです。あの曲をライブで歌ってほしいと言われても、「何やったっけ? どんな曲か覚えてへん」と思ってしまったりして。でも今は、1曲1曲を楽しみながら音楽をしています。それに、先日米倉利紀さんのライブを見に行ったのですが、アーティストって声が大事なんだなと勉強させてもらったりもしました。唯一無二の声を持っていると、どんな曲を歌ってもその人の曲になるというか。倖田來未もそのうちのひとり。音楽の神様がついているのだから、1日でも長く歌い続けたいと思うようになりました。
――逆に変わらないこともありそうです。たとえば歌声もそうですよね。一般的に年齢を重ねるとどうしても劣化していく部分がありますが、倖田さんの歌声からはそれを感じないというか。
倖田:嬉しい~! めっちゃ意識してるもん! 声色を変えずに歌い方を変えているんです。いちばん楽なのは裏声で歌うことなのですが、それで「愛のうた」を歌っても全然心に響かないんですよ。だから当時の声色に聞こえるように、発声方法を変えるトレーニングをしているんです。
――えっ、めちゃくちゃテクニックが必要そうですね。
倖田:だから、自分の中でOKが出ない限り、喉を痛めてでもいいから昔の歌い方で歌っています。だって、みんなは当時の倖田來未の歌声を求めているから。でも最近はだいぶ、喉に負担がない歌い方ができるようになってきましたよ。今でもライブ前は昔の歌い方を聴いているのですが、驚くことがあって。声が出なかったこともあるのですが、めちゃくちゃ後ろ乗りになっているんですよ。でも今はだいぶ楽になってきていて、ちゃんとオンテンポで歌いながら声色を再現できるようになっています。
――すべてはリスナーのため。
倖田:うん。だから、ライブが終わった後、ホテルで必ず映像をチェックするんです。引きのアングルで撮っているので、お客さんの手が上がる所、拍手が大きくなる所がわかるんです。それを見ながら「ここでお客さんはワーッてなるんや。じゃあこの曲とこの曲ひっくり返したほうがええな」って、2時間半くらいチェックをして。それを横でマネージャーにメモってもらって、今度は寄りの画角をチェックして。
――え、ライブ終わりにですよね?
倖田:そう。本番終わりは寝るまで5時間くらいかかるんです(笑)。
――すごい。昔から「倖田來未」とご自身を分けて考えていると仰っていますが、その視点があるからそういったプロデューサーのような動きもできるのですね。
倖田:たしかに俯瞰で見るようには意識しています。セットリストひとつとっても、「結構ハードだけど、倖田來未だったらもう1曲いくな」と考えますし、お客さんが手を上げる曲が続いても「倖田來未のライブだったら筋肉痛になるくらいの方が楽しいんじゃないか」と考えます。衣装もそう。素で考えたら、「41歳で前髪ぱっつんのお姫様の衣装なんて!」なんですよ(笑)。でもファンの方が待っていてくれるから。ファンが求めるものを提示するアーティストのほうが、私は素敵だと思っていますからね。
――そこまで“エンターテイナー”で居られる理由はどこにあるのでしょうか。
倖田:ひとつは頑張ってくれているスタッフのおかげ。すべて自分で準備しなくちゃいけなかったら、キツいと思います。感謝ですね。もうひとつは息子の存在。0歳の頃からツアーに連れて回っているのですが、息子に「かっこいい」「次のライブは何するんだろう」と思ってもらえるように頑張っていて。私ね、息子に楽屋で泣きつかれたことが1回もないんです。いつも「いってらっしゃい」って言ってくれるんです。それはずっと「これを見せていたら『いってこい!』って言わなあかんなって息子に思ってもらわないと」と心掛けていたからなのかな、と。今では「次のライブどんな感じで行くん?」「こういうのも良いと思う」とアドバイスをくれるまでになりました。「ファンのみんなのママでいてほしい」と息子に思ってもらえるようにという思いが、手を抜かずにやり続けられている理由なのかもしれません。
――ライブ演出そのものもエンターテインメントですよね。アイデアの粒はどんなところから得ているのでしょうか。
倖田:海外からヒントをもらうことが多いかもしれないですね。この間もラスベガスに行って、新しいアリーナ「スフィア」に行ってきたんです。すごかった! 普通のコンクリートでできていると思ったら、全面LEDですごいCG技術でした。その他にも宇宙人がテーマになっている「エリア15」も面白かったです。そういったところから得た刺激を“倖田來未”に落とし込んでいます。
――では最後に、常にチャレンジと進化を続ける倖田さんがこの先やってみたいことを教えてください。
倖田:やっぱり「エリア15」や「スフィア」のように、1~2か月連続でエンターテインメントばかりやっているところがもし日本にもできればやってみたいですよね。あと、年齢的にもディナーショーもやりたいです。お酒を飲みながら聴くと、音の聞こえ方も違うと思いますから。
――いいですね! ではディナーショーをやりつつ、小池都知事が「スフィア」的アリーナを作ってくれることを願って(笑)。
倖田:そうやな! 百合子ちゃんに頼むしかない!(笑)
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