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<インタビュー>武瑠×ADE SARIVAN『悪党(feat. ADE SARIVAN)』初対談「善と悪、最初はひとつだったのかもしれない」──KREVAや浜崎あゆみ、ちゃんみな等の話題も



<インタビュー>武瑠×ADE SARIVAN『悪党(feat. ADE SARIVAN)』初対談「善と悪、最初はひとつだったのかもしれない」──KREVAや浜崎あゆみ、ちゃんみな等の話題も

 時代によって、立場によって、見る者の主観によって、その人の善悪は変わってしまう。だったら、最初から悪党と思われていたほうがいい。そのアティテュードでいたほうがむしろ健全に生きられる。そんな今の時代へのアンチテーゼとも受け取れる、武瑠×ADE SARIVAN初のコラボ曲『悪党(feat. ADE SARIVAN)』が完成した。

 ホスト時代「SuG「桜雨」のPVに出てくる男の人に似てる」と言われ、奇しくもその後音楽の道を歩み、武瑠と出逢ったラッパー・ADE SARIVAN。そんな彼の声との相性の良さを感じ、中学生のときに聴いていたロックとラップ、さらに清春とマネスキン的な要素をミックスした『悪党(feat. ADE SARIVAN)』を生み出した武瑠。

 他では読めない、ここだけの特別対談インタビュー。KREVAや浜崎あゆみ、ちゃんみな、アリス九號.のHIROTO等々いろんなアーティストの話題も出てくるので、ふたりのファンはもちろん、あらゆる音楽フリークにご覧頂きたい。

Interviewer:平賀哲雄

ホスト時代は雲上の存在──SuG「桜雨」歌舞伎町の最高傑作!?

--前回は「怠惰 feat.GOMESS」リリースタイミングにて武瑠×GOMESS盟友対談を実現しましたが、今回はADE SARIVANとのインタビューになります。まずはふたりがどう出逢ったのか、教えてもらえますか?

▼<インタビュー>武瑠×GOMESS盟友対談「怠惰 feat.GOMESS」完成に至るまでの物語と関係性語る「友達同士だからこその曲──怠惰を教えてくれてありがとう」
https://www.billboard-japan.com/special/detail/4250

武瑠:渋谷のバーに行ったら共通の知り合いがひとりいて。特に紹介されたわけではなかったんですけど、そこで(sic)boyの「Heaven's Drive(Prod.KM)」を彼が歌っていたから、軽く「(sic)boy、フィーチャリングしたことあるんだよね」みたいな会話をしたんです。そのあと別のクラブに一緒に行ったときに、ふたりでカラオケを歌ってみたら「声の帯域が合うな」と思ったから「来年ぐらいになんか一緒にやる?」って。そんな感じで徐々に交流していって、1回ライブにも行かせてもらったんですけど、俺がADE SARIVANの出番の前に酔い潰れて観れなかったんですよ(笑)。

ADE SARIVAN:そうだ! 忘れてた! ライブ中にチラって見たら完全に潰れてて(笑)。

武瑠:カラオケで一緒に歌ったのは、その後日か。KREVAさんの「中盤戦 feat.Mummy-D」をふたりで歌ったときに声の重なりがめちゃくちゃ良かったんですよね。なので、シンプルに声が刺さったから一緒にやってみようと思ったんです。

--出逢う前から武瑠くんのことを知ってはいたんですか?


▲SuG「桜雨」(MUSIC VIDEO)

ADE SARIVAN:僕、元々は歌舞伎町でホストをしていまして。そのときにお客様から「SuGの「桜雨」のPVに出てくる男の人(北村諒)にちょっと似てるね」と言われて……

武瑠:ハハハ!

ADE SARIVAN:それをきっかけに知りました。そこから武瑠くんのことをいろいろ知っていって、まさか武瑠くんと出逢って楽曲でご一緒するなんて思ってもいなかったから、人生ってめっちゃ面白いなと思いました(笑)。ホストからしたら武瑠くんなんて雲の上の存在なんで。

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▲武瑠

武瑠:最近「桜雨」のPVをYouTubeで観たら「歌舞伎町の最高傑作」みたいなことがコメント欄に書かれてた(笑)。

ADE SARIVAN:本当にそうッスよ。歌舞伎町の女の子たち、めちゃくちゃ聴いてましたもん! 何回PVを見せられたことか。

武瑠:それ、よく言われるんだけどさ、あのPVって歌舞伎町っぽくなくない? 実際、ロケ地として新宿はひとつも使ってないし、ぜんぶ渋谷や原宿で撮ってるから。そこを狙うんだったら、歌舞伎町にいる人たちのルーティン、感情移入しやすいイベントやファッションを取り入れたし、そしたらもっと直結できただろうなって思いますね。だから「桜雨」のPVは、俺の中では「歌舞伎町の最高傑作」と思っていない(笑)。でも、歌詞とかは刺さりやすいのかもしれない。

ADE SARIVAN:その時代に武瑠くんの音楽を聴いてみたら、V系の枠組みにいたのかもしれないんですけど、個人的にはもっとアーティスト然としたロック寄りだなと思って、あんまりV系としては見ていなかったんですよね。純粋に自分の好きな音楽をやっている人。だからスッと入りやすかったです。

--ADEさんはホストからどんな変遷を辿って音楽の道へ進まれたんですか?


▲ADE SARIVAN -“RAIL ROAD”

ADE SARIVAN:4年半ぐらいでホストの世界を走り切って。ある程度売り上げも立てて、取締役みたいな役職にも就いたんですけど、心が疲れてしまったんです。お客さんひとりひとりにちゃんと向き合う商売なんで、魂が削がれていくというか。僕からしたらいろんなお客さんがいるんですけど、向こうからしたら僕が人生のすべてになってしまったりして、その人生を複数人分抱えていくと押し潰されてしまう。そうなると、心が正しい位置にいられなくなるんですよ。自分をある程度騙さないとホストで1位は獲れないし。

--ありのままの自分ではいられない世界だったと。

ADE SARIVAN:それで「辞めたいな」と思っていた時期に「ADEくんはホストっぽくないよね。アーティストっぽいよね」と言ってくれていたお客さんが何人かいたので、音楽の専門学校を卒業していた知り合いにビートをつくってもらったんですよ。それが自分の中でめちゃくちゃ刺さって「これが俺のビートなのか」と嬉しくなっちゃって、そこから曲をバババっと書いてみたら、なんとなくそれっぽいモノが出来たんで「次のステップに進んでみようかな」と。

--そのビートがADEさんの人生を変えたわけですね。

ADE SARIVAN:僕はユニットでも活動しているんですけど、その相方は同じ系列のホストクラブで働いていて、僕の中ですごくイケてると思っていた奴なんですよ。で、そいつは先にホストを辞めていたから、自分も辞めたタイミングで「音楽しようぜ」ってDMで誘って、そこからふたりでコツコツ音楽を続けてきた感じですね。ちなみに、男って若いときに「自分が主人公」と思うじゃないですか。でも、社会に揉まれて20代後半ぐらいから自尊心がちょっとずつ失われていく。そんな中で自分は音楽を始めたことで「もう1回、主人公になって頑張ってみようかな」と思えたんですよね。だから、今は大人の青春じゃないですけど、めちゃくちゃ楽しいです!

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▲ADE SARIVAN

--そんなストーリーの先に武瑠くんが待っていたと。

ADE SARIVAN:そうなんですよね。音楽を初めて1年ぐらい経ったときに出逢って。

武瑠:その時期、結構ライブやってたもんね。

ADE SARIVAN:武瑠くんと会ったときは結構やってて。とは言え、すごく売れているとかじゃなかったんですけど、クラブの10分15分ぐらいの持ち時間をみんなでぐるぐるまわす、その中で自分もラッパーとしてライブしていて。

武瑠:そのクラブが俺のめっちゃ仲良い人がやっているところだったんですよ。偶然なんですけど。

ADE SARIVAN:それで「1回観に行くよ」って来てくれて。ま、寝てたんですけど(笑)。でも、武瑠くんとの出逢いはめちゃくちゃデカかったです。僕が音楽を始めたのは28歳ぐらいだったんで、音楽業界の中では遅すぎるスタートだと思うんですけど、だから最初は気持ち的に無理していたと思うんですよね。でも、だんだん自分の音楽のファンが増えている実感も出てきて、そんなときに我流で突き進んでいる音楽の大先輩と出逢えたことは、すごく励みになっています。

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  1. 中学生のときに聴いていたロックとラップの融合と清春さんとマネスキンをぜんぶ混ぜた感じ
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中学生のときに聴いていたロックとラップの融合と清春さんとマネスキンをぜんぶ混ぜた感じ

--そんなふたりのコラボ曲「悪党(feat. ADE SARIVAN)」は、どんな流れで制作していったんでしょう?


▲武瑠「悪党 feat.ADE SARIVAN」MV

武瑠:元々新しいアルバムの構想があって。それで今、同時に7曲ぐらい創っているんですけど、海外のアーティストとも連絡取り合ったりしているから、いろいろ交錯しまくっていて。日々状況が変わってリリース順が入れ替わりまくったりしてるから、正直に言うとあんまり憶えてないんですよね。ただ、この曲は「ADE SARIVANとやろう」と思ってから創り始めました。最初は、アリス九號.のHIROTOさん(g)も参加する予定だったんですけど、〆切に間に合わず途中離脱(笑)。HIROTOさんがいちばん悪党だった!

ADE SARIVAN:いちばん悪党でしたね(笑)。

武瑠:これはもうネタにしたほうが面白いと思うんで、載せちゃってください! ただ、HIROTOさんのギターが〆切に間に合わず、アレンジに取り掛かる期間が大幅に減ったことで、逆にめっちゃスウィッチ入って。2日間ぐらいしかなかったんですけど、こうなったらもう絶対に最高の曲に仕上げようと! で、深夜にtatsu(BLVELY)とかTokiとか集まって一気にアレンジして、そのスウィッチのおかげでめっちゃ良い曲になったんですよ!

ADE SARIVAN:ブーストかかってましたよね(笑)。

武瑠:最後の2日間で曲のクオリティが急激に爆上がりした!

--さすが、SuG時代から逆境を栄養素にしてきた男(笑)。

武瑠:完全に栄養素にしましたね!

ADE SARIVAN:結果オーライ!

<インタビュー>武瑠×ADE SARIVAN『悪党(feat. ADE SARIVAN)』初対談「善と悪、最初はひとつだったのかもしれない」──KREVAや浜崎あゆみ、ちゃんみな等の話題も

▲武瑠「悪党 feat.ADE SARIVAN」MVキャプチャ

--その「悪党(feat. ADE SARIVAN)」が先日リリースされ、すでにライブでも一緒に披露されているんですよね。

ADE SARIVAN:めちゃくちゃ最高でしたね! 僕は基本的にラップしてる人なんで、生バンドで演奏することってあんまりないんですよ。ただ、音楽的なルーツとしてはバンドも楽器も通っているし、男の子だからギターにもめちゃくちゃ憧れていましたし、昔はバンドでステージに立っている自分をイメージしていたので。それを武瑠くんとのライブで実現できたから「叶ったわ!」って。

武瑠:俺も最初にラップに入ったのはバンドだったんだよ。KICK THE CAN CREWとかは普通に好きで、でもそれはヒットチャートTOP10に入っているJ-POPとして捉えていて。若かったし、ジャンルとかあんまりよく分かってなかったんだよね。そんな中で初めてちゃんとラップを意識したのは、リンプ・ビズキットとかKORNとかバンドでラップをしている人たちで。あと、KREVAさんのライブを観たときに生バンドでフェスに出ていて、めちゃくちゃ格好良くて! 死ぬほど巧かった! トップのプロミュージシャンを集めるとこんなグルーヴになるのかって、ちょっと恐ろしかったもん。これには勝てないから、俺たち(SuG)みたいなバンドはバンドで違う戦い方をしなきゃいけないんだなって。最近だと、ケンドリック・ラマーとかバンドでライブやってますけど、めちゃくちゃ格好良いじゃないですか。

--スターになるとトップクラスのバンドでやれるんだよね。

武瑠:そうなんですよね! あれだけ凄いバンドメンバー集めること自体、スターじゃないと普通は出来ない。

--KREVAはキーボーディストとして小室哲哉を迎えたりもしていましたからね。

武瑠:えぇー!

ADE SARIVAN:でも、KREVAさんだと贅沢じゃなく感じますね。

武瑠:やっぱり王者なんだよ。

--ADE SARIVANと実際に曲を創ってみて、ライブでも共演してみた今、アーティストとしてどんな印象を持たれていますか?

武瑠:やっぱり声質はめっちゃ好きだし、スタイルも格好良いじゃないですか。ビジュアルや立ち振る舞いもすべて。でも「新鮮だな」と思ったのは、俺が「ここが良いな」と思っているところと本人のソレは違ったりするんですよね。例えば、顔を隠したいと思っているところとか。絶対に出したほうが良いじゃないですか!

ADE SARIVAN:それはめっちゃ言われます(笑)。

武瑠:あと、ロック系の音に合う声をしていると思う。

ADE SARIVAN:今回の「悪党(feat. ADE SARIVAN)」のビートが届いたときに、なんとなく俺に声をかけてくれた理由が分かって。武瑠くんなら他にもいろんなラッパーをフィーチャリングできると思うんですけど、そのビートを聴いて「ちゃんと俺の声を見てくれてるな。だからこのビートなんだな」と感じました。

武瑠:ADE SARIVANの声をイメージして制作していたので。それにしてもこの曲に合ってるよね。単純に素材としても面白かったし、自分だけでは出来ない曲なんで。ライブ中もたまにハイライトとか被せたときに「やっぱり良い重なり方するな」と思いましたもん。お互いの声が死なずに両方聴こえる。帯域的に相性が良いんでしょうね。

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▲武瑠「悪党 feat.ADE SARIVAN」MVキャプチャ

--ADEさんは武瑠くんと実際にご一緒にしてみて、どんな印象を持たれましたか?

ADE SARIVAN:バンドのライブのときの生歌がさすが過ぎて「これが本物のアーティストか!」と思いました。さっき話した相方も、武瑠くんにことが元々好きだったんですけど、めっちゃ圧巻されていました。こうして話したりカラオケで歌ったりしているときと、ステージに立っているときのスウィッチの切り替えが……

武瑠:そりゃ変わるでしょ(笑)!

ADE SARIVAN:それはそうなんですけど、ここまで変わるんだなと思って。お客さんを一気に引き込む力とか「なるほど、これが15年以上音楽と向き合ってきた人の力か!」と思いましたし、僕もまだめちゃくちゃ走り続けなきゃいけないなって。見せ方とか、お客さんとの温度感の合わせ方や空気感の創り方もめちゃくちゃ上手いですし、いつの間にか引き込まれているんですよね。ステージの上からひとりでどこまでセンサーを張ってるかって分かるじゃないですか。ひとりで空間を支配する力=アーティストの力だと思っているんですけど、そこが武瑠くんと僕のいちばん差のあるところなんですよ。なので、学ぶことが本当にたくさんあります。

--とは言え、今回の「悪党(feat. ADE SARIVAN)」はこのふたりでしか表現できない楽曲ですよね。どんなイメージを膨らませながら創り上げていったんですか?

武瑠:はじまりは、元々リンプとかKORNとかバンドの上に乗っているラップが好きだったんで、それのもうちょい速いやつのイメージがなんとなくあって。俺の中では、自分が中学生ぐらいのときに聴いていたロックとラップの融合と、清春さんとマネスキンをぜんぶ混ぜた感じなんですよ。

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最初からもう良いイメージいらないです。悪党でいいです

--たしかに、マネスキン感もありますね。ゆえにADE SARIVANの声が必要だったことも分かります。

武瑠:で、最後にTokiがロックをめっちゃ壊して、シーケンスをめっちゃ増やして、それがすごく面白いバランスになっている。あれを生音でやっていたらマネスキンに寄り過ぎていたと思うんですけど、最後にエレクトロに振ったのが面白かった。

ADE SARIVAN:個人的には、ニュー平成っていう感じがします。

武瑠:分かる! 平成に聴いていた音楽がベースにある感じ。

ADE SARIVAN:それを今風な感じにアップデートしている。今、平成が一周まわってトレンド化しているじゃないですか。その空気感も「悪党(feat. ADE SARIVAN)」からすごく感じますね。

武瑠:最近の曲は、ぜんぶ平成っぽい感じを入れてるかも。

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▲武瑠×ADE SARIVAN

ADE SARIVAN:武瑠くんのいちばん最初のルーツって何なんですか?

武瑠:えー、なんだろう……。でも、ひとつだけに絞るとしたら、あゆ(浜崎あゆみ)なんじゃないかと思っている。メロディと歌詞の入れ方のルーツはあゆかもしれない。ライブも行ったことないから、超ファンというわけではないんだけど、当時はTOP10内に入っている曲はぜんぶ聴く感じだったから、あゆの曲は自然とよく聴いていたんだよね。あと、TOP100のPVを流すスカパーの番組とか毎週土曜日に9時間かけて観てたり(笑)。だから映像から音楽に入っていったんだけど、曲のつくり方だけで言うと、浜崎あゆみがルーツなのかなって。

--武瑠くんから浜崎あゆみの話は初めて聞いたかもしれない。

武瑠:ただ、パーセンテージで言ったら多くはないと思います。全体の8%ぐらいはあゆで出来ているんだけど、それ以外に5%ぐらいの人たちがめっちゃいるイメージ。いろんなものがあまりにも混ざりすぎている。でも、中学生のときにちゃんみながいたら、マジでちゃんみなに影響されまくっていたと思います。あんなにぜんぶ上手くミックスしているアーティストって他にいないんじゃないかな。日本だけで留まっていい人じゃないと思うし、日本人だからこそ出来る音楽の最頂点だとも思うし。だから、大人になってから聴けてよかった(笑)。

ADE SARIVAN:ライブ映像とか観ると、最近はマドンナみたいになってますもんね! ちょっと目を離した隙にとんでもないことになってた!

--ギャルって極めるとマドンナになるんですよ。

武瑠:たしかに!

ADE SARIVAN:力強く生き始めるからなー!

武瑠:今のキャッチコピー、強すぎるな(笑)。

--それこそ浜崎あゆみもマドンナになった時期ありますし。

武瑠:なんか1曲書けそう。「ギャルの究極の進化系マドンナ♪ どんな風に時代進もうか♪」みたいな(笑)。

ADE SARIVAN:できたー!

武瑠:ゴリゴリのトラックに乗せたら良いかもしれない。

--ちなみに「悪党(feat. ADE SARIVAN)」の歌詞の世界観はどう構築していったんですか?

武瑠:年末年始のニュースとか観ていて……ですね、完全に。誰でも切り取ったら悪にもなるし、善にもなる。それの繰り返しじゃないですか。ちょっと前まで悪かった奴のポジションが急に誰かと入れ替わったり。そんな世界はもう疲れるし、気持ち悪い。だから「最初からもう良いイメージいらないです。悪党でいいです」と思っていて、そこから構築していきました。

ADE SARIVAN:善人か悪党かなんてぜんぶ主観ですもんね。

武瑠:時代によって、立場によって、見る者の主観によって、その人の善悪は変わってしまう。ただ、この感覚って昔から自分の中にあって、SuG時代のソロプロジェクト名・浮気者もそうだし、最初から好感度なんて要らないと思っていたんですよ。好感度を取るとツラいことだらけになるから。ベストなんたら賞とか獲ると、そのあとみんな叩かれることになったりするし。最初から人間なんてそんなに綺麗な生き物じゃないんだから、勝手に幻想を持たれるのもイヤだし。だから「浮気者でも、悪党でもいいです」っていう。そのアティテュードでいたほうがラクだし、むしろ健全に生きられる。

--たしかに。

武瑠:例えば、数値化したら「どれだけの人を救ってきたんだよ」と思うぐらいの人がたった一度のミスで「完全に悪!」みたいなことになるじゃないですか。それが全然しっくり来なくて。あと「他人に厳しすぎて、それ自分に返ってくるけど大丈夫そ?」って本当に思ってます。気持ち悪い。

ADE SARIVAN:「石を投げるその手は汚れてないのか」ってやつですよね。

武瑠:「最低だ!」って石を投げてるおまえも最低っていうね。それに対して疑問が起きる、そのストレスを燃料に書いた曲ですね。あと、先行してジャケットになっているロゴを創っていたんですけど……

--善悪の漢字がひとつになってるロゴですね。

<インタビュー>武瑠×ADE SARIVAN『悪党(feat. ADE SARIVAN)』初対談「善と悪、最初はひとつだったのかもしれない」──KREVAや浜崎あゆみ、ちゃんみな等の話題も

▲武瑠「悪党 feat.ADE SARIVAN」ジャケット

武瑠:言語化よりさらに優れたアートとして創ったんですけど、久しぶりにタトゥー入れたいなと悩んだぐらいのクオリティで気に入ってます。ただ、タトゥーはひとつふたつと増やすと終わらなくなるから我慢しました(笑)。それぐらいマスターピース感があるなって。

ADE SARIVAN:タイトルが「悪党」の時点でなんとなくイメージは伝わっていたんですけど、このロゴを目にしたときに「なるほど」と思いました。僕の中でも善と悪は常々テーマになっていて、リリックにも入れているんですけど、争いって互いの正義の為にやっているんで、そこで善悪を決めちゃうこと自体おかしいじゃないですか。善悪二元論で善と悪を分けた時点で、平等や平和はなくなるんですよ。でも、このロゴは善と悪を分けていない。

武瑠:これ考えついたの、天才だよね。最近ずっとお願いしているNEELさんというクリエイターに頼んだんですけど。沼津のクラブのイベントデザインとかしている人で、宮古島のイベントで出逢ったんですけど、めっちゃセンス良かったからお願いしようと思ったんです。で、曲のイメージとかさっき話したこととかを伝えたら、これが出てきて「うわ、すげぇ! ヤバいな、この人!」って。俺は音とリンクするデザイン脳が強いから、自分の想像を超えてくる人ってあんまりいなくて、自分のイメージが100だとしたら「100にどれだけ近づけるか」という中で今までクリエイティヴしてきたんだけど、それを超えてくる人に出逢えたんですよね。

--「元々こういう字があって、そこから善と悪に分かれたのかな?」と思わせるようなロゴですよね。

武瑠:俺も本当にそう思いました! 神話みたいな感じで「善と悪、最初はひとつだったのかもしれない」って。

--そんな強いメッセージも込められた「悪党(feat. ADE SARIVAN)」を届けたいリスナーへ。そして、今後のふたりの音楽活動に注目してほしい皆さんへ、最後にメッセージをお願いします。

ADE SARIVAN:今回、武瑠くんとご一緒させてもらった「悪党(feat. ADE SARIVAN)」はもちろん聴いてほしいんですけど、この曲を気に入ったらぜひADE SARIVANの音楽にも注目してもらえたら嬉しいです。僕は自己満じゃなく誰かを救う為、共感の為の音楽をやっていこうと思っていて。そのうえで、世の中には自分よりラップの巧い人なんていくらでもいると思うんですけど、僕は僕の作品でしか聴けない曲を意識して創り続けていて、僕じゃなきゃいけない理由を追い求めながら、そういう音楽を今後も届けていこうと思っているんです。なので、ぜひチェックしてみてください。

武瑠:最近は、ただ自分が伝えたいメッセージを曲に込めて、それをアートに落とし込んで、それが物凄く良いバランスかつ高水準で出来ている。なので「悪党(feat. ADE SARIVAN)」もMV含めて触れてくれた人が何を感じ取るのか知りたいですね。今は「聴いてくれ」より「(リスナーの感想を)聞きたい」のほうが強いかもしれない。なので、ぜひ感想を送ってください!

<インタビュー>武瑠×ADE SARIVAN『悪党(feat. ADE SARIVAN)』初対談「善と悪、最初はひとつだったのかもしれない」──KREVAや浜崎あゆみ、ちゃんみな等の話題も

Interviewer:平賀哲雄

武瑠「悪党 feat.ADE SARIVAN」MV

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