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特撮 『特撮復活ライブ 2011!5年後の世界』インタビュー
特撮 圧巻のアクトをDVDに凝縮!
近年ではももいろクローバーZへの楽曲提供でも名を馳せるNARASAKI(g)に、ピアノ奏者として確たる地位を築いた奇才 三柴理。そしてVAMPSではのサポートドラマーとして、結成時から強靭なビートでフロントを支えるARIMATSU。
シーンの重鎮 大槻ケンヂ(vo)を筆頭に、超絶的なプレイでロックファンを魅了する特撮が、ライブDVDをリリース! 今回はメンバー4人を招き、復活を遂げた昨年から同作に付属される稀代の名曲、新春ツアーについてまでを語ってもらいました。
オーケンが過去曲を新鮮に感じる理由
--昨年7月、特撮としては久しぶりのツアーを東名阪で行いましたが、公演後の率直な感想というのは?
大槻ケンヂ:やっぱり肉体が疲労しましたね、疲れがドッと出た(笑)。歳月が経ったんだなって、快い痛みがありました。
三柴理:俺が一番老人なんですけど、楽しかったし全然疲れなかったですね。ずっと座って弾けるピアノっていうのは良いですね(笑)。12月31日にも、よりよいステージができたので、楽しいです、凄く。
ARIMATSU:久しぶりにこのメンバーで集まってライブがやれた。それは単純に楽しかったですね。活動していない期間も各自、色々やってたんだなって、経験を持ち寄ってやれた。新しさを感じたというか。
NARASAKI:特撮の楽曲は実験的なモノが多いので、アンサンブルには気を遣わなければいけない曲調が多い。だから再構築じゃないけど、同じ曲であってもグレードが上がったんじゃないかって。ARIMATSUのドラムセットが変わって、さらに良くなったなって思いますね。
大槻ケンヂ:やっぱり皆さんの力量が上がっていることが明らかに分かりますよね。それにイヤーモニターとかも当時よりも進化してたりして、色々発見があって面白いですよ。
--例えばアスリートの場合、選手としてのピークを迎える年齢は早いですよね。肉体と演奏の関係性を感じる所はありますか?
ARIMATSU:特に俺はドラムだから、顕著に出てきますよね。昔は叩けたフレーズが厳しいと感じる時もあったんだけど、考え方ひとつで変わる部分がある。詰め込んで詰め込んでやっていた所を、ちょっと引き算的にやることで新鮮に聴こえたり、結果的なスキルに繋がっていたりもするから。
大槻ケンヂ:ボーカルもね、若い頃は全身に力が入っている状態で歌っていたんだけど、太極拳的な力の抜き方というかさ。そういう気の遣い方をすると、ボーカルに伸びが出たりしますよ。色々変わってきていますね。
三柴理:俺は基本的に一生弾けるよね。100歳までプロだった人もいるし。ボケないの、指使うからね。あと、僕の場合は他に何もできないっていうのがあるので、基本的にピアノをやっているしかないって感じですね。
--クラシック音楽の場合、同じ奏者、同じ楽曲の作品であっても、録音された年代によって違う趣があり、リスナーによって好みが分かれます。自分はホロヴィッツが演奏するラフマニノフの『ピアノ協奏曲第3番』が大好きなんですが、割と晩年に録音された盤の方が好みだったり……
三柴理:(ユージン)オーマンディが指揮でフィラデルフィア(管弦楽団)と一緒にやった奴じゃない? あれが一番良いですね。まあクラシックに限らず、プレイヤーは人生で何回も同じ曲をやりますけど、その時々で色んな解釈があると思う。
ただ、このバンドは全員が前向きに一生懸命だから、今回のライブDVDとかを頂くと、しっかり観ます。「この演奏良かったな~」とか、楽しめるんですよ。やる気がなかったり、有名になってえばりくさって練習しなかったりする人っているんですけど、そうすると「つまんないな……」ってあんまり観なくなっちゃう(笑)。特撮は音楽をやっているって感じがしますね、バンドで。
大槻ケンヂ:過去の曲でも、やってみると新鮮なんですよ。あの、次のライブでやる曲の中には、本当に忘れている曲もあって、……聴いてさえ思い出せない曲もあったの(笑)。例えば、ナッキー(=NARASAKI)が選んだこの『友よ』とか、最初は「何のアルバムに入ってるんだっけ?」って(笑)。大体、僕は特撮のCDが家に無かったりするから。エディ(=三柴)はあるよね?
三柴理:君はすぐ“親戚”にあげちゃうからでしょ?(笑)
--“親戚”に(笑)。では、NARASAKIさんはどうでしょうか?
NARASAKI:俺はテクニカル的なモノはあんまり追ってないので、音楽との関わり方においては、大きく捉えるというか、良い状態でいられれば、みたいなね。あんまり手練になりすぎちゃうのも良くないと思っているので、何処が一番大事なのかっていう所は、その時その時で気にするというか。その曲、その作品、そのバンドで、何が一番大切なのかを考える役割なのかなって。
Interviewer&Photo:杉岡祐樹
30代の焦燥感、オーケンの焦りみたいなモノがあった
--1月21日にはライブDVD『特撮復活ライブ 2011! 5年後の世界』がリリースされましたが、この手の映像作品って、ご自身ではどのような見方をするのでしょうか?
ARIMATSU:(即答で)老けたな~って! だって昔は顔もパンパンだったもん。昔出してたDVDとか観ると、老けた(笑)。
大槻ケンヂ:あと、オーディエンスの反応が、復活してからの方が確実に良いっていう印象もあって。昔も当然盛り上がる時は盛り上がったんだけど、「あ、今日のお客さんはうちらの曲、知らないな!」っていうのもあったんですよ、特にイベントとかだと。復活して以降は、それが無い。「え、こんな曲も知ってるの!?」って。それぞれに色んな活動もしているから、そこからリンクして当時の曲も聴いてくれていたりしたのかな? それは嬉しかったなー。
--昨年のツアーはアルバム『5年後の世界』からの選曲が中心でしたが、過去の楽曲はどのような基準で選ばれていくのでしょうか?
大槻ケンヂ:僕は家にあんまり自分のCDが無いので、何か覚えている曲を並べた……(笑)。あとは、メンバーに訊いて「アレやろうよ」って言われるんですけど、音源をもらって聴いて、「あ、あの曲か!」って気付いたりね。
面白かったですよ、過去の曲を聴くのって。30代半ばくらいに書いた曲は、当時の心境が良く出ているんですよ。さっき話した『友よ』なんかは、正にそうだったな。当時はグローバリゼーションみたいな言葉が流行ってた時期だったんですけど、どこの駅前にも同じファーストフード店が並ぶような感じが苦手で、無益な資本主義に対するアンチテーゼみたいな所を……。
NARASAKI:し、知らなかった(笑)。
大槻ケンヂ:要はルサンチマンが多いの! 「自分の実力や才能に見合う現状が無い」っていう怒りを、社会のせいにしてる(笑)。だからパンク的なの! 30代の焦燥感というか、オーケンの焦りみたいなモノがあったのかな~って。
ARIMATSU:……駅前にファーストフードがあるのって便利じゃない?(笑)
大槻ケンヂ:……今は便利で良いな~って思ってるけどね(笑)。他にもさ、『ロコ! 思うままに』に“いいことしかないさ”って歌詞があるでしょう? あれは当時、仲良くしていた友だちの口癖だったんですよ(笑)、「いいことしかないよ?」って。そんなことを思い出して、しみじみしたりね。
--また、特撮の楽曲は、1曲1曲に頂点まで昇り詰めていく展開があり、それが計20曲も楽しめるというボリューム感が凄まじいと、改めて思いました。
大槻ケンヂ:特撮の曲はコンパクトかつ展開があって、予想のしない終わり方をするから面白いんだよね。
三柴理:昔は20曲もやらなかったハズなんですよ。けど、今回から何故か「20曲やる!」って(オーケンが)言っちゃって。最初は見ている方も大変なんじゃないかって思ったんですけど、意外に飽きずに観られるライブになったなって思いましたね。辛かった?
ARIMATSU:全然。
大槻ケンヂ:当時は曲が少なくてパッて終わるのが、かっこいいと思ってたんだよね。でも、考えてみたらチケット代も高くなったからさ、その分サービスしなきゃね。
NARASAKI:俺はジーザス&メリーチェインってバンドが好きなので、15分で終わるのが理想的です。
大槻ケンヂ:確かにそういうライブがかっこいいと思う時期はあるよね~。俺もそう思ってたし、長いのも考えモノだよね、3時間半とか……。ただ、あの日のライブはメンバーもオーディエンスもノリノリだったので、とても良い時間がパッケージされていると思いますよ。スタッフも含めて楽しんでいて、充実した時をすごしている所が収められていると思う。それはお約束します。
--さらに、本作を指定店舗で購入すると、特典として新曲『鬼墓村の手毬歌』を収録したCDが付属されますが、これは名曲ですね!
大槻ケンヂ:声優の後藤沙緒里さんも参加して下さったんですけど、そもそもは『メビウス荒野~絶望伝説エピソード1』か『かってに改造してもいいぜ』かを作る前に、ちょうど横溝正史の映画とかを観ていたのがきっかけで。
あの、見立て殺人ってあるじゃないですか。アレが凄いなって思ったんですよ、「人を殺すのに見立てるのかよ!?」って。これは絶対歌詞にしようと思ってナッキーに話したら、前半部を作ってきて、後半部はエディが作ったんだよね?
三柴理:僕、ドラマCDとか朗読CDとかもの凄い枚数を持ってて、暇な時に良く聴いてるんですよ。いつかそういうのもできたらって思ってたので、この曲はすっごい嬉しいですね! もっと作りたい!(笑)
Interviewer&Photo:杉岡祐樹
「オーケンの、面白トークコーナー♪」
大槻ケンヂ:面白いのがね、『鬼墓村の手毬歌』の完成を初めて聴いた時、僕は「悪魔の手毬歌」の舞台となった鬼首村(おにこうべむら)のモデルと言われている場所で、横溝正史のイベントに出ていたんですよ。その楽屋で初めて聴いたっていうこともあって、何か運命的なモノを感じましたね。
しかもね、その直後にうちの叔父さんと叔母さんが同日に亡くなっちゃって、第一発見者が僕のお父ちゃんとお母ちゃんだった。……どう見立てて殺したのか?
三柴理:シャレになってねえよ!(笑)
NARASAKI:『鬼墓村の手毬歌』は作り方が凄く面白かったんですよ。大槻さんのテーマがまずあって、手毬歌として同じような節が続いていくから、飽きさせないように演奏の展開を作って。そこまでを大槻さんに聴かせて相談したら、推理のシーンからもう一回手毬歌が出てきて、謎解きのシーンに繋げていこうって。
それから物語が進んでクライマックスを迎えて、探偵が帰っていく……。そのイメージに沿って、曲を作っていくのは面白かった。大槻さんにも気に入ってもらえたので、監督として安心しましたね。
三柴理:ノヴェラのアンジーさん(五十嵐久勝)が参加しているのもミソですよね。
--ただ、これだけの充実のライブDVD作品をリリースしますと、次のツアーでは相当な期待がかけられるとも思います。
大槻ケンヂ:なのにナッキーは座ったままというね(笑)。
NARASAKI:まあ年末にもやったので何となく感覚は分かっているんですけど、音楽に集中できて良いなって思いますね、そこで気持ち良くなりたい、みたいな。
三柴理:僕はあんまりそういう所は意識してないんですよね。DVDの特撮は昔であって、今の特撮を見せたいし。……どうすっかなー、衣装!(笑)
ARIMATSU:ただ、赤坂BLITZで特撮がライブをするのはたぶん初めてだから、またちょっと面白くなれれば良いなって。何年ぶりにやる曲とか、ライブでは初めてやる曲もリストに入る予定ですので、楽しみですね。
--そういえばDVDの特典映像には、大阪と名古屋公演で披露した大槻さんの弾き語り映像もありましたね。確か大阪では……
大槻ケンヂ:『アザナエル』をやろうとして、心が折れてできなかったのね(笑)。名古屋では『テレパシー』をやったんだけど……。次? たぶんやらない(笑)。あのね、昨年夏のツアーでは、もっとMCを少なくしてトントン進めていこうとしてたんですけど、久しぶりだったからハシャいじゃったんですよ。
しかも、普段は楽しませようとしてもスベることが多くて、DVDではかなり編集することがあるんですけど、あの時は面白おかしい話をしようと思ってなかったのにドッカンドッカンウケて。だから殆どカットしてない!
--因みに、大槻さんがMCしている時、皆さんはどんな心持ちなのでしょうか?
三柴理:昔はふたりが怒ってました(笑)。ステージからいなくなっちゃうの。
ARIMATSU:怒ってる訳じゃないんだけど、ちょっと外から見たいなって。だから一旦ハケて、袖から見てたんだけど、今は普通に後ろから見てて「この人、面白いな~」って(笑)。
大槻ケンヂ:最近は変わってきて、面白い話をしようとしてスベるのが楽しくなってきちゃって。何やっても売れない芸人が段々そうなってくケースってあるじゃないですか、単独ライブでシュールになっちゃうというか。
NARASAKI:そんなのイヤだよー!
--つまり、今回もそういうコーナーが用意されていると。
大槻ケンヂ:コーナーっていうのは止めてくれ!
三柴理:「オーケンの、面白トークコーナー♪」(笑)。したら3人は気持ち良くハケられるよね?
--ただ、今ここに並んでいるセットリストを見ると、前回とは違った趣のライブになることが想像できますね。
大槻ケンヂ:特撮に関していうと、ギターとベースの交換がもの凄く多いんですよ。だから曲順を作るのが大変なので、DVDではその辺もプレイヤー視点で見てもらえると楽しいかもしれないですね。
でも、やっぱり次のツアーはナッキーの座りギターですね。やっぱり貴重じゃないですか、メンバーが怪我してるのって。
Interviewer&Photo:杉岡祐樹
特撮 復活ライブ2011! 5年後の世界
2012/01/21 RELEASE
KIBM-297 ¥ 4,180(税込)
Disc01
- 01.5年後の世界
- 02.オム・ライズ (011)
- 03.ヤンガリー
- 04.人として軸がぶれている
- 05.ロードムービー
- 06.アングラピープル サマーホリディ ~2011版
- 07.文豪ボースカ
- 08.パティー・サワディー
- 09.ケテルビー
- 10.ルーズ ザ ウェイ (011)
- 11.ロコ!思うままに (011)
- 12.アベルカイン
- 13.バーバレラ
- 14.ヌイグルマー (オーケンVo.ver)
- 15.林檎もぎれビーム!
- 16.テレパシー
- 17.追想
- 18.霧が晴れた日
- 19.空想ルンバ
- 20.ヨギナクサレ
- 21.身代わりマリー
- 22.綿いっぱいの愛を!
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