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<インタビュー>“問題提起”を音楽で表現する――大沢伸一&RHYMEによるユニットRHYME SO、最新作『IAFB』で問いかけるもの

Interview&Text:森朋之
Photo:亜門龍
最先端かつ独創的なダンスミュージックを軸にした音楽性、幅広いアーティストとのコラボレーションによって日本の音楽シーンに大きな影響を与え続けてきた大沢伸一(MONDO GROSSO)。そして、日本を拠点に活動しているオーストラリア人アーティスト(詩人、パフォーマー、DJ、トラックメイカー)であるRHYME。RHYME SOは、国籍も出自もキャリアもまったく異なるふたりによるダンス・ミュージック・デュオだ。
デビューシングル「Just Used Music Again」が88rising(アメリカを拠点に、アジアのアーティストやカルチャーを世界に発信する音楽レーベル/メディアプラットフォーム)からリリースされたのが2019年。88risingのコンピレーション『Head In The Clouds II』にも収録されたこの曲は、様々なストリーミングサービスのプレイリストにも追加され、海外音楽メディアにも注目された。さらに2020年の春には「Fashion Blogger」を発表。『ル・ポールのドラァグ・レース』で人気を得たMILKをフィーチャーしたMVも話題を集めたこの曲のタイトルは、RHYME SOのコンセプトに深く関わっているという。
「2017年だったと思うんですが、髪を切っているときにiPadか何かで映像を見ていたら、その日の自分のファッションを紹介している海外の女の子が映っていて。“トップスはH&Mで、靴はバレンシアガで……”という感じで喋っていたんですが、インタビュアーに“職業は?”と聞かれて、“ファッション・ブロガー”って答えていたんです。彼女はおそらくブログを書いているわけではなく、ただInstagramに自分のファッションのことを発信することで経済活動をしている。そのことにちょっとショックを受けたんですよね。僕らはインターネット、ソーシャルネットワークが浸透した社会の中で生かされていますが、普通に受け入れていることのなかには“これ、本当に当たり前?”ということもたくさんある。批評や非難ではなく、“この状況、どう思う?”という問題提起を音楽のなかで表現したら面白いんじゃないか――それがRHYME SOのコンセプトにつながりました」(大沢)
「“RHYME SO”の音は“I'm so”に似ています。“I'm so happy”“I'm so sad”“I'm so hungry”、私は私は私は、僕は僕は僕は……。それ(SNSを介した自己顕示)が良い方向に働くこともあるけど、そうじゃないこともある。それもRHYME SOのステートメントですね」(RHYME)

高校生の頃から日本のカルチャーに触れていたというRHYMEは、MONDO GROSSOの熱心なリスナーだったという。それを証明しているのが、MONDO GROSSOの楽曲「BIG WORLD」(Vocal:RHYME)にRHYME自身が与えた〈I saw Mondo Grosso back in high school/I used to cry listening to life〉というフレーズだ。
「MONDO GROSSOのカタログを聴き、ライブ映像を見て、いろいろな感情を与えられました。私は大沢さんの弟子、大沢さんは私の師匠。一緒に音楽をやれることはとても光栄です」(RHYME)
その後もRHYME SOは、刺激的な楽曲を送り出してきた。コロナ禍における世界の変化をふまえ、“心と宇宙をつなげよう”というメッセージを刻んだ「Psyche」(「Psyche-星-」「Psyche-月-」の2バージョンでリリース)、バーチャルなナイトクラブを実現させた360°VRミュージックビデオも話題となった「HOT」(監督:Jordan Freda)、“総インフルエンサー状態”を描いた「POSEABLE」などを次々と発表。ジャンルを超越したトラックメイクと、現代社会をシニカルかつリリカルに捉えた歌詞によって際立った個性を発揮してきたRHYME SOは、2023年11月、1stフルアルバム『IAFB』をリリースした。
まず特筆すべきは、トラックメイクの色彩の豊かさ。アシッドハウス、インダストリアル・テクノ、トラップからユーロビートなど時代とジャンルを自在に行き来する雑多感は、日本のカルチャーや社会とも重なって映る。
「確かに“日本”は意識してますね。ただ、トレンドは意識していないというか、自分にそれを見極める力があるかどうかも正直わかってなくて。微妙に無視している感じですね(笑)」(大沢)
「RHYME SOのサウンドは、ダンスミュージック、ニューウェイブ、ポストパンク、エレクトロ、パラパラ、祭りなどがフュージョンしています。あとは“word play”(言葉遊び)ですね」(RHYME)

RHYME SOのコンセプトの軸である“現代社会への問題提起”もさらに冴えている。アルバムの1曲目を飾る「ACT THE SAME」は、既存のヒット曲と“同じように振る舞う”ことが良しされている音楽シーンへのアンチテーゼだ。
「現代に限らず、すでに出来上がっているマーケットに則して、似たような楽曲をアサインしていくのが基本中の基本になっていますよね。でも、“本当にそれでいいの?”と」(大沢)
「同じように振舞うことがいちばん安全だというなら、それはアートではありません。それを歌う人たちもアーティストではなく、人形みたいになってしまう。そこにどんな意味があるの?という曲ですね」(RHYME)
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