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<コラム>Creepy Nutsが突如、世界からスポットライトを浴びた理由――日米チャートから紐解く「Bling-Bang-Bang-Born」のヒット
Text:Maiko Murata
Creepy Nutsの新曲「Bling-Bang-Bang-Born」がチャートを大爆進している。それも国内だけでなく、世界規模で、である。
日本最高峰のMCバトル大会【UMB GRAND CHAMPIONSHIP】で史上初の3連覇を達成したMC、R-指定と、世界最大規模のDJ大会【DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS 2019】で優勝、2021年の【東京オリンピック】閉会式にも出演したDJ松永からなるヒップホップ・ユニット、Creepy Nuts。そんな圧倒的な肩書きとは裏腹に、ふたりの親しみやすいキャラクターとトークスキルは、バラエティ方面からの支持も高い。ラジオ『オールナイトニッポン』では1部、2部合わせて5年に渡りレギュラーを務め、ラジオスターとして彼らを認識している人も多いことだろう。
音楽面でも、2020年8月リリースのミニアルバム『かつて天才だった俺たちへ』は総合アルバム・チャート“Hot Albums”で最高2位に。また、アルバム『Case』収録の「のびしろ」は自身初のストリーミング累計1億回再生(2022年12月1日付)を突破しており、2022年リリースの「堕天」(自身の同名曲がタイトルの由来になった、アニメ『よふかしのうた』オープニング・テーマ)は、総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”にて、当時自身最高位となる35位を達成。同曲も収録されたアルバム『アンサンブル・プレイ』を引っ提げたツアーでは、自身過去最大キャパの埼玉・さいたまスーパーアリーナをソールドアウト……と、着実に国内でのキャリアを積み上げてきた。そして今回の「Bling-Bang-Bang-Born」では、登場2週目となる1月24日付の“JAPAN Hot 100”で「堕天」を大きく超える5位に。さらに翌週、1月31日付チャートではついに首位を獲得した。
【ビルボード】Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」初の総合首位獲得、M!LK/関ジャニ∞/back numberの新作が続く https://t.co/kzmFZyWKM0
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) January 31, 2024
実はそのヒットは、国内よりも海外で、より凄まじい勢いをみせている。同曲がオープニング・テーマに起用されているアニメ『マッシュル-MASHLE-』第2期のOPムービーで、主人公・マッシュが〈Bling-Bang-Bang-Born〉のリフレインとともに踊るコミカルなダンスがTikTokで注目を集めたことをきっかけに、日本国内に先駆け、世界規模でダウンロード&ストリーミングが上昇。その結果、日本を除く世界200以上の国と地域においてヒットしている「日本の楽曲」をランキング化したチャート“Global Japan Songs Excl. Japan”では、1月18日付で初登場8位を記録。グローバル・ヒット曲の仲間入りを果たした。
そして、1月25日付の同チャートでは、登場2週目にして前週上位の7曲をごぼう抜きし、ダントツの成績で首位を獲得。この週「Bling-Bang-Bang-Born」が獲得した総ポイント数およびストリーミング数は同チャートの史上最高値を更新したうえ、2月1日付の同チャートでは、その史上最高値をさっそく自ら上書きする形で2連覇を果たした。また、“Global Japan Songs Excl. Japan”のデータから、各国ごとに独自の比重をつけて算出する“Japan Songs(国別チャート)”を見ると、現在集計対象の9か国のうち、タイ、シンガポール、フランス、イギリス、南アフリカ、アメリカ、ブラジルの7か国で首位に(同チャート始まって以来の快挙である)。さらに獲得ポイントで見ると、首位を獲得した国のなかでもアメリカでの支持が桁違いに高く、次いでフランスでの支持が高いことがわかる。
【ビルボード】Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」7か国で首位独走 https://t.co/Hh4avraz5W
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) February 1, 2024
躍進はそれだけにとどまらない。その翌週、世界200以上の国と地域における主要デジタルプラットフォームでのストリーミング、ダウンロード数をランキング化したチャートである米ビルボードの“Global 200”(1月27日付)では、初登場77位を記録。同週においては、一足先に世界的な支持を確立したYOASOBI「アイドル」やKing Gnu「SPECIALZ」すらも抜き、日本のアーティストとして最高位を達成した。加えて、“Global 200”からアメリカ市場のデータを除外したチャート“Global Excl. US”においても48位に初登場。さらに次週、2月3日付チャートは順位を大きく上げ、“Global 200”で28位へ、“Global Excl. US”では16位までジャンプアップ。もちろんこれも同週における日本のアーティストとして最高位で、日本国内での支持が高まったことが両グローバルチャートでの躍進へ非常に大きな役割を果たしていることがうかがえる。
そもそも、なぜ「Bling-Bang-Bang-Born」は突如、世界規模でこれほどの注目を集めたのだろうか? その理由はずばり「“TikTok×ダンス×アニメ”の相乗効果」といえる。TikTokでダンスチャレンジを仕掛ける……というプロモーションは今や定番で、それだけでは埋もれてしまう。そこにアニメ、なかでもNetflix等で世界配信が行われている作品のタイアップという相乗効果があることで、注目度は一気に跳ね上がるのだ。
@creepy_nuts_ Creepy Nuts - Bling-Bang-Bang-Born 是非、ダンス真似してみてね💃
♬ Bling-Bang-Bang-Born - Creepy Nuts
逆に、2月1日付“Global Japan Songs Excl. Japan”トップ20のうち、じつに12曲と半数以上がアニメタイアップ曲という結果からも明白だが、大型アニメのタイアップ曲はその事実だけでも世界規模で注目度が高い。特にフランスのアニメ曲人気は突出して高く、トップ20のうち14曲、集計データ全体でもじつに約68%がアニメタイアップ曲であるほどだ。“Global Japan Songs Excl. Japan”でトップ3入り経験のあるアニメタイアップ曲は、他にはYOASOBI「アイドル」(アニメ『【推しの子】』オープニング・テーマ)、キタニタツヤ「青のすみか」(アニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」オープニング・テーマ)、King Gnu「SPECIALZ」(アニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」オープニング・テーマ)の3曲だが、これらはいずれも日本でのヒットと、世界でチャート上昇がみられ始めたのがほぼ同時であったうえ、その後爆発的に成績が伸びる形でグローバル・ヒットを記録していた。おそらく、この“同時共有”という動きはアニメに限らず今後も顕著になっていくと予想される。
しかし、「Bling-Bang-Bang-Born」がこれほどまでの爆発力でヒットを記録したのは、“アニメ”に加えて“TikTok”というアニメファン以外も共有できる場があったこと、さらに“ダンス”という強い拡散力を持つフォーマットを兼ね備えていたからこそと推測できる(そのうえ、原作マンガ『マッシュル-MASHLE-』は『週刊少年ジャンプ』連載作品として公式アプリ『MANGA Plus by SHUEISHA』で世界多言語配信されており、世界規模で原作ファンの土壌が存在していたアドバンテージもある)。そして、この曲がNewJeans(「Super Shy」など)やLE SSERAFIM(「Eve, Psyche & The Bluebeard’s wife」)らも取り入れた、アメリカ発の“ジャージー・クラブ”という世界的トレンドのサウンドを使用していたことも、アメリカを中心に耳目を集めた理由のひとつだろう。
@le_sserafim ❄️Boom boom boom🐯 with #aespa #WINTER #LE_SSERAFIM #르세라핌 #KIMCHAEWON #김채원 #UNFORGIVEN #이브_프시케_그리고_푸른수염의아내 #Eve_Psyche_and_The_Bluebeardswife @aespa official ♬ Eve, Psyche & The Bluebeard’s wife - LE SSERAFIM
また、TikTokでダンスチャレンジに使用されている部分が〈Bling-Bang-Bang-Born〉と、単純かつ耳に残るリフレインであったことも、広く拡散された要因と考えられる。先に挙げたNewJeans「Super Shy」やLE SSERAFIM「Eve, Psyche & The Bluebeard’s wife」も同じくTikTokでのダンスチャレンジが盛んであったが、いずれも拡散されたのはフック部分に限らず、歌詞が短い脚韻、もしくは同単語でリフレインする箇所だった。TikTok動画の短い尺の中で確実に耳に残るキラーワードを含みつつ、さらに歌詞全体で『マッシュル-MASHLE-』という作品――主人公マッシュの立場に寄り添い、そこから自らのボースティングへと重ねていく表現は、アニメ主題歌としてもヒップホップ・ソングとしても秀逸で、作品のファンやヒップホップ・ファンも思わず舌を巻くクオリティを備えている。
2024年リリース第1作目にして、まさかの世界規模で強烈なインパクトを残したCreepy Nuts。さっそく1月27日には、ドラマ『不適切にもほどがある!』主題歌で、同じくジャージー・クラブのビートを用いた新曲「二度寝」をドロップしたほか、3月からはホール&アリーナ規模の全国ツアーも予定されている。国外へも知名度を広げ始めたふたりの、さらなる“のびしろ”に期待したい。
リリース情報
関連リンク
二度寝/Bling-Bang-Bang-Born
2024/03/20 RELEASE
AICL-4558/9 ¥ 4,400(税込)
Disc01
- 01.二度寝
- 02.Bling-Bang-Bang-Born
- 03.二度寝 -Instrumental-
- 04.Bling-Bang-Bang-Born -Instrumental-
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