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<インタビュー>「本当にやりたい音楽」を模索した10周年――確かな手応えを掴んだ雨のパレードが臨む、特別な場所“ビルボードライブ”でのプレミアム公演
Interview & Text: Takuto Ueda / Photo: 辰巳隆二
2023年に結成10周年を迎えた雨のパレードが、自身初のビルボードライブ公演を行う。
昨年1月、プロデューサーにmabanuaを迎えた、レーベル移籍後第1弾シングルとなる「paradigm」をリリース。10月には同曲を含む5曲入りのEP『Human Being』を発表し、全国7か所を回る全国ツアー【ame_no_parade 10th Anniversary Tour~Progress~】も開催。その追加公演として台湾The Wall Live Houseでのショーを行い、ツアー中に制作されたという新曲「Yellow Gold」も配信するなど、早くも11年目以降に向けて動きを活発化させているバンドの3人に、10周年イヤーの活動で掴んだ手応え、新曲に込めた想い、そしてサックスをはじめ数々の楽器を使いこなすマルチ・インストゥルメンタリスト、MELRAWのゲスト参加も決まっているビルボードライブ東京での公演について、話を聞いた。
自分たちが納得できるものを作って、それに応えてくれるみんなと進んでいきたい
――昨年、10周年イヤーを走り抜けてきた皆さんですが、あらためて2023年はどんな一年になりましたか?
福永:年始に東名阪でアコースティックのイベントを2部制でやったり、10月からは久しぶりに全国ツアーもやれて、いろいろ動いていた一年にはなりました。ただ、環境の変化などもあって手探りな部分も多く、もっとやれたのかなっていう気持ちもあります。今年はもっとすごい年にしたいなって思いますね。
――10年間の締めくくりというより、次を見据えた過渡期みたいな感覚?
福永:その感覚はあると思います。去年はmabanuaさんやA.G.Oさん、Jazztronikの野崎さんと曲を作らせてもらったり、自分たちが本当にやりたい音を素直に模索しながら、いろいろ変化をつけていった年だったかなって。
大澤:チーム体制も変わった10周年の1発目のシングルが「paradigm」なんですけど、あの曲で自分たちが本当にやりたいことを形にできたことで道筋が見えたというか。そこからツアーやイベントをやって、ファンと直接触れ合える時間を作れて、今まで応援してきてくれた人たちがこんなにいるんだということをすごく感じた一年だったし、20周年、30周年に向けて頑張りたいなと思いました。
山崎:今かっこいいと思える音楽をストレートに作品にできた一年だったんじゃないかなと思っていて。それが自分たちの自信と明確な指針にもなったと思います。活動環境がいろいろ変化した年でもあったけど、そのなかで自分たちがやれることも増えて、ミュージシャンとしてすごく成長できた1年でもあったかなと思ってます。
――成長というのは制作面で?
山崎:もちろん制作面もそうですし、活動全般に関わる部分もそうですね。今までより視野が広がったのかなと思います。
――10年前にバンドを始動させた当時、思い描いていた将来像などはありましたか?
福永:特に10年後の目標みたいなものは立てていませんでしたけど、康介さんが僕の6個上なので、彼が30歳を迎えるまでにはデビューしたいなとは思ってました(笑)。
大澤:たしかにそれは言ってたと思う(笑)。
山崎:しかも30歳になる1週間前にデビューできたんだよね。
福永:そういう少し先の未来の目標は一つずつ達成できたかなと思いつつ、楽器とか制作に関しては活動しながら模索して、その都度、視野が広がってきた感じですね。
――10年前の自分たちが今の雨のパレードを見たとき、どんなことを感じると思います?
福永:どうですかね。まだまだ満足できるような結果は出せてないと思います。すごくありがたい状況で音楽させてもらってるなという感覚はあるけど、バンドとしてはもっと上にいきたいと思っているし。ただ、そういうことが自分たちの中で重要かと言われたら、そうでもなくて。今は自分たちが納得できるものを作って、それに応えてくれるみんなと進んでいきたいという、すごくシンプルな思考になっているというか。やっぱり曲作りが好きなので。
――メンバー同士の関係性についてはどうでしょう? 10年間で変化したことはありますか?
福永:たぶん何も変わってないですね。
大澤:たしかに。バンド内の役割とか、そういう部分も最初から変わってない気がします。
――具体的にはどんな役割分担になっているんですか?
福永:僕はバンドのブランディングですね。曲はもちろんアートワークやフライヤーのデザイン、アー写とかも含めてやりたいことをやらせてもらってる感じです。メンバーも協力してくれるので、引き出しをたくさん用意してもらえていてありがたいです。
――大澤さんは?
大澤:なんだろう。ビート作りですかね。あと、バンドを一番客観的に見てるかもしれないです。
福永:たしかに、SNS周りを気にしてくれたり。
大澤:自分たちがどう見られてるかとか、すごく気にしちゃうタイプなので。そういうことを考えながらSNSでの発信だったりを頑張ってます。
山崎:僕は音周りですかね。昔はギター1本でやってきたけど、最近は鍵盤を使う楽曲も増えてきたので、メンバーの「こういう音楽をやりたい」みたいな望みを聞いて「だったらこの音かな」って感じでいろいろ模索してます。
――昨年末には10周年を記念した【ame_no_parade 10th Anniversary Tour~Progress~】も開催されましたが、いかがでしたか?
福永:東名阪以外を回るのはすごく久しぶりだったので、まず「みんな来てくれるのかな」という不安があって。でも、初期のグッズを持ってきてくれたり、一緒に歌ってくれたりして、すごくグッときちゃいました。ファンの方たちからもらった手紙を読んだりもして、ちゃんと意味のあることをやってこれたんだなって気持ちになりましたね。
――ツアー初日、福永さんが思わず涙をこぼすシーンもあったとか。
福永:スタッフは爆笑でしたけど(笑)。
大澤:「ここで泣く?」みたいなところで泣いたんだよね、すごい中途半端な。
福永:2曲目。
大澤:そう、大爆笑。
――思わず感極まってしまったと。大澤さんはツアーいかがでしたか?
大澤:久しぶりに行けた地域もあって、中には泣いてくれてる方もいたし、そうやって直接会って音楽を届けられるのは幸せなことだなと思いました。私たちがやってきたことに対しての自信にもなりましたね。
――山崎さんはどうでしょう?
山崎:本当にお客さんが来てくれるのかという不安もあったんですけど、昔から来てくれてる人もいれば、新しく来てくれた人もいて嬉しかったです。あと、行った県の隣の県から来てくれる人もいたので、まだ行ったことのない場所にも行きたいと思ったし、それぐらいの活動規模にまで成長したいという新しい目標もできたなって思います。
――パフォーマンス面ではどんな手応えがありましたか?
福永:一部セトリを変えてみたりして楽しみつつ、やっぱりツアーはライブを重ねることでクオリティーも上がっていくんだなという再認識はありました。少しずつ掴めていった何かは確実にあったと思います。
――最新EP『Human Being』の楽曲もパフォーマンスされました。
福永:新曲って作り終えたあと、スタジオに入ったりしてから分かることも多くて。「Praying Hands」はたぶんライブで映えるだろうな、みたいな。今作はけっこうそういう手応えの曲が多かった印象ですね。今後の制作にも生かせそうな感覚がありました。
――ライブでのパフォーマンスで特に手応えを感じた曲を挙げるとしたら?
福永:それこそ「Praying Hands」ですね。あとは「individuality」も思っていた以上にライブ映えするなと思いました。「complicated」はオケが大人しくてほぼ歌だけなので、すごく集中力が要りましたね。
大澤:ドラムを叩いていて楽しかったのは「Praying Hands」でした。「Blindness」はEPで唯一の打ち込みだったので、生ドラムになったときにどう音を作り込むかという不安はあったけど、けっこう自分的には満足のいく音作りができたと思います。
山崎:レコーディングではちょっとミニマルな感じのギターにすることが多いんですけど、スタジオとかライブで演奏するときはまったく違ったプレイヤー感覚があって。そのときの気分によってアレンジしたりアドリブを入れたり、そういうのを模索する楽しさがあるんですよね。鍵盤だとあまり自由にはやれないので、そのぶんギターで表情が違うプレイができるのは楽しかったです。
「Praying Hands」Official Music Video
リリース情報
配信シングル「Yellow Gold」
2024/1/24 Release
公演情報
ame_no_parade Special Live at Billboard Live TOKYO
2024年2月2日(金) 東京・ビルボードライブ東京
1st:Open 17:00 Start 18:00
2nd:Open 20:00 Start 21:00
チケット:
サービスエリア 6,500円
カジュアルエリア 6,000円(1ドリンク付)
公演詳細
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新曲「Yellow Gold」、そして初のビルボードライブ公演
――そして1月24日には新曲「Yellow Gold」が配信開始。制作はいつ頃からスタートしましたか?
福永:10月ぐらいだったと思います。まさにツアー中でした。
――もともと描いていた楽曲像は?
福永:Samphaが去年出したアルバムがめちゃくちゃ良くて。あの感じでやってみようと思いつつ、ハットをトラップの音符で割ったり、フランジャーをかけてそれっぽくしてみたりしました。あとは、BLK ODYSSYのアルバムもずっと聴いていたので、その感じもいいなと思って取り入れてみたり。とにかく好きな音楽を詰め込んだんですけど、今回はいつもだったら作業を終えていただろうなってところから、さらに細かい部分にこだわっていきましたね。やれること、思いつくことを全部詰め込んでいきました。
――まさに意欲作と呼ぶに相応しい一曲だと思います。
福永:「complicated」にちょっと心残りがあったんです。メロとコード進行と歌詞はすごく良かったので、アレンジをもっと突き詰めたらさらに良い感じになったんじゃないかなって。なので今回は「もっといける、もっといける」みたいな感じで詰め込みました。スタジオで演奏もしてみたんですけどけっこう良くて、そういう細かい派手さみたいなことは大事だなと思いました。
――これまで様々な音楽プロデューサーとコラボしてきた雨パレですが、そのあたりの経験値も生かされていそうですね。
福永:そうですね。特にmabanuaさんとやったときは「なるほどな」と思うことがたくさんありました。クライアントの仕事だからこそ、詰めるべきところは詰めてくれるというか。実際はもっと血の通ったやり取りですけど、そのおかげで刺激をもらえて、今回のこの曲につながったのかなって感じはあります。
――制作はどのように進めていきましたか?
福永:作詞作曲は僕がやって、アレンジをみんなで一緒に作っていくのが今は僕たちの中では主流のやり方ですね。本当に一つずつ、すべてのトラックを「これは違う」「これがいい」みたいに決めていく感じです。
――ビートは打ち込みですよね。
大澤:そうですね。でも、トラップを使ったのは初めてというか、今まで手動で打ち込んでたんですけど……。
山崎:ハットの細かい感じね(笑)。
大澤:そう。それで康介さんが使いやすいプラグインを教えてくれて。私はそういう作業がすごく苦手なんですけど、自分でちゃんと組み立てることができました。ドラムのキックとスネアの入れ方も、ギリギリまで突き詰めて、少しでも違和感がある場所は修正したりして。サビ前のフィルは生ドラムの音源を使って、けっこう深いリバーブをかけているんですけど、それもmabanuaさんと一緒にやったからこそできたアレンジだと思います。
山崎:僕は耳コピの能力が上がってきたなって実感しました。基本的に鍵盤でコード進行が回ってるんですけど、浩平くんが「こういうコード進行を使いたい」と言ってきたものがあって、それをずっと聴きながらこの曲も構築していったんですけど、けっこう上手くやれて。いろんな音に対して面白いチャレンジ要素とか、今まで培ってきたものを入れることができたので、作り手としてもやりごたえのある曲でした。
――10周年イヤーを駆け抜け、チャレンジングな新曲も完成させた今、雨のパレードはどんな音楽モードになっていると思いますか?
福永:この曲を作ったことで、自分たちがこうありたいというイメージやスタンスを思い出せた気がします。昔は音楽シーンに一石を投じたいという想いが強かったんですけど、10年やっていくなかで徐々に薄れてしまっていたんですよ。僕らがバンドを始めたときと比べて、音楽シーンがすごく良くなったと思うし、素晴らしいアーティストもたくさんいるけど、だからこそ自分たちが一石を投じることの意味が薄れていったような感じがあって。でも、最近はそのスタンスでやらなきゃ自分たちじゃないなって気持ちが強いんですよね。なので「Yellow Gold」はシーンに一石を投じるつもりで作ったし、これ以降もそのスタンスでやっていきたいと思ってます。
――その闘志みたいなものが再び燃え上がってきたのは何故だと思います?
福永:周りにかっこいい音楽がたくさんあって、だったら自分たちはどうあるべきなんだろうって考え方ができるようになったのかなと思います。
――2月2日に控えるビルボードライブ公演も楽しみです。意気込みをお聞かせいただけますか?
福永:僕らもビルボードライブに出るような海外のアーティストがものすごく好きなので、逆に「僕らが出るのは……」みたいな気持ちも以前はあったんですけど、少しずつ自分たちの好きな音楽を実現でき始めている感覚が生まれてきたので、そのタイミングでやらせてもらえるのはすごくありがたいなと思います。
大澤:私もまったく同じ気持ちです。みんなでジャミーラ・ウッズを見に行った記憶があるんですけど、本当に大好きなアーティストが出てる特別な場所というイメージが10代の頃からあったので、自分たちが立つ想像をあまりしてこなかったんですけど、この1年間で自分たちが本当にかっこいいと思える曲を、今の自分たちの力量でちゃんと作り上げることができて、自信にもなったし、10周年を終えて11年目の始まりをビルボードライブという素敵な場所で迎えることができるのは本当に嬉しいです。
山崎:ビルボードライブってバンドが出るイメージはあまりなかったんですよ。昔から存在は知っていたし、とてもネームバリューのある特別な場所じゃないですか。なので、最初は驚きと戸惑いがあったんですけど、それを上回る嬉しさがありますね。ここ最近で作ってきた曲はビルボードライブでも映えるものになっていると思うので、とても楽しみにしてます。
――ネタバレにならない範囲で見どころも教えていただけますか?
福永:ゲストでMELRAWが出てくれるので、それが大きなトピックのひとつかなと思います。音源で参加してくれている楽曲だけでなく、昔の曲でも客演してもらおうと思っているので楽しみです。僕らもけっこう原型がないぐらいにライブアレンジしちゃうことがあるんですけど、ビルボードライブで聴いて「これいいな」と思ったお客さんが帰り道で音源を聴いたとき、まったく違うアレンジで驚くんじゃないかなって(笑)。
山崎:僕は横浜のビルボードライブは行ったことがあるんですけど、東京はまだ行ったことがないんですよ。個人的にはそういう意味でも楽しみです。
――会場の作りも雰囲気もかなり違うので新鮮に感じていただけるんじゃないかと思います。
福永:2024年最初の日本公演だし、僕らも11年目に入るタイミングなので、さらに気合が入ってます。この日だけの特別アレンジも含めて、思い出に残るようなライブになると思いますので、ぜひ足を運んでいただきたいです。
リリース情報
配信シングル「Yellow Gold」
2024/1/24 Release
公演情報
ame_no_parade Special Live at Billboard Live TOKYO
2024年2月2日(金) 東京・ビルボードライブ東京
1st:Open 17:00 Start 18:00
2nd:Open 20:00 Start 21:00
チケット:
サービスエリア 6,500円
カジュアルエリア 6,000円(1ドリンク付)
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