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<コラム>SixTONESの軌跡を体現するアルバム『THE VIBES』
Text:田中久勝
<理想と現実の距離を 1歩ずつ埋めるノンフィクション>——これは1月10日にリリースされるSixTONESの4thアルバム『THE VIBES』のリードトラック「アンセム」の歌詞の一節だ。この言葉はまさに6人がこれまで体現してきたことを、鮮やかに表している言葉なのではないだろうか。作品一作一作、ライブ一本一本を通して全ての人に提示してきたSixTONESの軌跡であり、姿勢ではないだろうか。
デビュー以来、聴き手を新しい音楽の世界にいざない、様々なジャンルの音楽を提示し続ける6人の、その高い音楽性をパッケージした3rdアルバム『声』(1月4日発売)から、彼らの2023年はスタートした。そしてグループ史上最大規模のアリーナツアー『慣声の法則』、その追加公演として、東京・大阪でグループ初の単独ドーム公演『慣声の法則 in DOME』を開催、さらに「ABARERO」「こっから」「CREAK」のシングルを3枚リリース。ひとつの目標でもあったドームのステージに立ち、見たことがなかった風景を目にして、昂る気持ちの中で改めてファンや周りへの感謝の思いを新たにしたはずだ。そしてもっと感動を届けよう、たくさんの人を喜ばせたいと“決意”をしたことを感じさせてくれるのが、ニューアルバム『THE VIBES』だ。そこに詰め込まれた半端ない熱量がそう思わせてくれる。
今回のアルバムをシングル「こっから」をはじめ、シングル「ABARERO」「CREAK」など共通曲12曲に、「Reebok」 CMソングにもなった「Drive」のアルバムバージョン(通常盤)など、3形態ごとのボーナストラックを含め、全形態合計で20曲を収録。もちろん新曲も楽しむことができ、初回盤Aには「DRAMA」「House of Cards」が、通常盤には「君がいない」「ONE SONG」が収録されている。さらに初回盤Bには楽しみなユニット曲3曲、ジェシー×髙地優吾「Blue Days」、京本大我×森本慎太郎「希望の唄」、松村北斗×田中樹「スーパーボーイ」が収録、どんな化学反応が起こっているのか、気になるところだ。
「こっから」は森本が南海キャンディーズの山里亮太を、髙橋海人(King & Prince)がオードリーの若林正恭を演じるドラマ『だが、情熱はある』の主題歌として話題を集めた。ブレイクビーツが作り出す圧倒的なスピードに乗って繰り出される溌剌としたラップと、前向きなメッセージが印象的だ。そしてローズピアノの音色が、どこか気だるさを感じさせてくれるオシャレなサウンドに乗せ<明日またやり直せばいい>と「こっから」に続いて前向きな言葉で、手を引っ張ってくれているような感覚になる。
リードトラックでもある「アンセム」は、6人がファンと交感する場所として何よりも大切にしているライブで、全員でコブシ突き上げ、声を出して気持ち高めるためのまさに“アンセム”だ。『2023 FNS歌謡祭 第2夜』(12月13日/フジテレビ系)で初披露し大きな反響を呼んだ重厚なサウンドと爆速ラップが、SixTONESならではのグルーヴを作り出している。ヘヴィなビートがうなりを上げて襲い掛かってくるドープなヒップホップチューン「ABARERO」は、常に現状に満足することはないという6人のブレない強靭な意志が眩しい。「Something from Nothing」はドラム、ギターのハードな音色とデスボイスが弾けるミクスチャーロック。“抜け感のいい”サビで一気に温度が変わっていく。
メロディも言葉も、そして歌もコーラスもまさに“包み込んでくれる”という言葉がピッタリのバラード「Only Holy」。一転して4つ打ちのダンサブルな王道パーティチューン「DON-DON-DON」、高速かつスケール感も感じさせてくれるアッパーチュン「Bang Bang Banginʼ」はライブでメンバーとファンが“暴れる”ように盛り上がっている姿が想像できる。
少しクールダウンしようか——メンバーのそんな言葉が聴こえてきそうな心地いいリズムの「SPECIAL」では、スペシャルな関係の“キミ”とのハッピーなメロディと歌詞に思わず笑みがこぼれる。爽やかで誠実さを感じさせてくれる歌とメロディとサウンド。輝く希望を紡いだ全編英語詞の「Seize The Day」。「今作で森本の一番の推し曲」という「TOP SECRET」は、R&Bやガラージ、トラップなどが入り混じる高速で攻撃的なダンスミュージック、ジャージークラブの影響を受けたサウンドとオートチューンを使ったボーカルが印象的だ。そこに切ないメロディが融合する、今のSixTONESの勢いと歌心を伝えるには“最適解”のサウンド、音楽なのかもしれない。そういう意味で森本の激推しの曲なのだろう。
11thシングルでドラマ『ノッキンオン・ロックドドア』(テレビ朝日系)の主題歌だった「CREAK」は、ドラマの内容とリンクしていたこともあって、ストリングスが不穏な空気を作り、転調もアレンジの展開も、楽曲構成がとにかく目まぐるしく変わる繊細かつ大胆なサウンド。細かなマイクリレーと、凛とした歌詞の意味と空気感を伝える、一人ひとりの表情豊かな歌が相まって疾走感が生まれている——ここまでが通常盤、初回盤A、初回盤B共通の収録曲だ。
そして新曲達。初回盤Aの13曲目に収録されているのは、ジェシーが「エロカッコイイSixTONESをいつもより堪能してもらえたら嬉しい」と語っているように「DRAMA」は、腰に来るような激しいビートと、ダークなサウンドとキャッチ―さが交差するセクシーな一曲。「満場一致で収録曲に選ばれた」(田中)という「House of Cards」は、シリアスな中に哀愁感漂うミディアムバラード。6人の歌の表現力をじっくり堪能できる。初回盤Bの13曲目に収録されているのは、ジェシーと髙地優吾の初ユニット曲「Blue Days」だ。ループトラックと切々と歌う二人のボーカルから“真っすぐ”さが伝わってくるラブソング。「個人的には午後の夕日と共に聴いてもらえたら嬉しい」(ジェシー)、「二人の優しさやアンニュイさを堪能できる一曲」(髙地)とそれそれがコメントしているように、等身大のメッセージから温もりが伝わってくる。
14曲目に収録された京本大我と森本慎太郎のユニット曲「希望の唄」は、ドライブがかかったベースとギターが、エモーショナルな推進力を作り出しているロックチューン。「もし森本慎太郎と京本大我をひとつの人格とした時、最大限ドンピシャで捉えられたこのジャンル感」(京本)、「このペアだからこそ作れた、歌えた一曲」(森本)と二人が語っているように、ユニゾンもハモリも力強くてどこまでも美しい。ラストは、松村北斗と田中樹のユニット曲「スーパーボーイ」だ。「これは歌なのか? ラップなのか? はたまた喋りなのか? 全部正解で全部違う」と田中がコメントしているように、二人が新しいスタイルを作り上げた。
チルなヒップホップトラックの乗せ「きっと余分なことが人の余白を彩るんじゃないだろうか。そんな余分を丁寧に美しくわざわざ作ってしまった」(松村)という遊び心満載のフロウと“空気感”はヤミツキになりそうだ。6人での破壊力を存分に感じさせてくれ、ユニットを通じて一人ひとりの器用さや強さ、よりキャラクターを強調し、アルバムの構成美にもいつもながら感心する。
通常盤に収録され、松村が「不謹慎かもしれないが、この失恋はあまりに芸術である」と語る「君がいない」は、最後までその全貌が明かされなかった作品だ。これまで6人があらゆる曲で磨きあげ、研ぎ澄まされた歌いまわしが、まるで結晶のように強固に、そして輝きを増し、言葉のリズムと温度感を最大限に際立たせて、聴き手の心を撃ち抜く。これぞSixTONESにしかできない表現だ。この歌詞をどう感じるか、どう理解するか、リスナーの感性に委ねられている。「明るい未来の為にSixTONESが歌い上げる一曲になったと思います!個人的には朝から聴いて欲しいなと思います。手を繋ぎながら」とジェシーがコメントしている「ONE SONG」は、どこまで親近感と清潔感を感じる歌とメロディで、「変わらぬ愛を歌っていよう」と伝えてくれる。
ラストは9thシングル『ABARERO』通常盤に収録されているのりのりのドライブソング「Drive -THE VIBES ver.-」。煌びやかなシンセサウンドとタイトなドラムの音色で、よりオシャレに、クールに更新された。リラックスした6人の姿が浮かんでくる。
バラエティに富んだ、という表現では片付けたくない彩り豊かな楽曲が収録された『THE VIBES』。リスナーそれぞれの“VIBES”に寄り添いながら、まだ体感、体験したことがない“VIBES”を6人が教えてくれる。最先端のサウンドからシンプルなサウンドまで、豊潤なサウンドで包みながら6人の声、歌にますます強い光量の光を当てたアルバムだと感じた。2024年2月からはこのアルバムを引っ提げたSixTONES初となる4大ドームツアー『VVS』を開催する。大きな会場で極上の“VIBES”を感じさせてくれ、熱狂が生まれそうだ。
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