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<インタビュー>YOASOBI×武田綾乃が語り合う“ポケモン愛”、コラボ曲「Biri-Biri」で表現した「冒険のワクワク感」



インタビューバナー

Interview:Takuto Ueda
Photo:Yuma Totsuka

 小説を音楽にするユニット、YOASOBIの勢いが止まらない。TVアニメ『【推しの子】』のオープニング主題歌として書き下ろし、今年4月に配信した楽曲「アイドル」は、ビルボードジャパンが発表した今年の年間チャートで5冠という快挙を達成。続くシングル「勇者」も、話題のTVアニメ『葬送のフリーレン』のオープニングテーマに起用され、いまだチャート上位をキープしている。また、今年は国内アリーナツアーを完遂し、8月には米LAでの海外公演も実現するなど、現代のJ-POPシーンを象徴するアーティストとして、1年を通して大きな存在感を放ち続けた。

 そんなYOASOBIが11月18日にリリースした新曲「Biri-Biri」は、その日に発売1周年を迎えた『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のインスパイアソング。もともとコンポーザーのAyaseが『ポケモン』の大ファンだったということもあり、ゲームのファンならば思わずニヤリとしてしまうような仕掛けも施された一曲で、すでに大きな話題となっている。

 今回、楽曲の原作小説『きみと雨上がりを』を手掛けた武田綾乃を対談相手として招き、両者の“ポケモン愛”と「Biri-Biri」の制作秘話に迫るインタビューを実施。また、取材後には対談を記念した“ポケモン交換の儀”やこの日限りの特別な記念撮影も行われた。なお、『ファミ通.com』では『ポケモン』によりフォーカスした内容の記事も掲載中なので、ぜひ合わせてチェックしていただきたい。

<『ファミ通.com』の記事はこちら>

Pokémon image:
©2023 Pokémon. ©1995-2023 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
TM, ®, and character names are trademarks of Nintendo.

ポケモンたちと旅をしてきた3人がかけた想い

――まずは今回の企画について、オファーが届いたときの率直な感想をお聞かせください。


武田:ゲームの発売前にご依頼をいただいたのですが、『ポケモン』の小説というのが意外だったのですごく驚いたのと、YOASOBIさんとのコラボということで光栄に思いました。

Ayase:本当に素敵な小説を書いていただきありがとうございました。実は今回のオファーを具体的にいただく前から「YOASOBIと『ポケモン』で何か一緒にやれたらいいですね」みたいなお話はなんとなくいただいていて。純粋に『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』自体、すごく楽しみにしていた作品だったし「もちろんやります!」って感じでした。

ikura:まさか人生の中で『ポケモン』とコラボさせていただくことがあるとは思っていなかったので、私も本当にうれしいです。

――Ayaseさんは『ポケモン』シリーズをほとんどプレイしてきたとのことですが、武田先生はいかがですか?


武田:一番やっていたのは小学生の頃で、『ポケットモンスター 金・銀』とか『ポケットモンスター ルビー・サファイア』ですね。6歳下の弟がいるので一緒にやっていました。

――ikuraさんはいかがでしょう?


ikura:私、ちゃんと自分でプレイしたのは今回の『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』が初めてだったんです。幼少期に、家族がゲームボーイで『ポケットモンスター 赤・緑』をプレイしているのを見たりはしていたんですけど。でも、DSの『ポケモンレンジャー』は私もやり込んでいました。

――では、それぞれの好きなポケモンも教えてください。


武田:私はシャワーズが好きです。『ポケットモンスター 銀』をやっていたとき、友達のお兄ちゃんがレベル96のシャワーズをくれて、旅を無双できるようになって(笑)。それ以来ずっと好きなポケモンです。

ikura:私は最近、いろんなインタビューでいろんなことを答えてしまったんですけど、やっぱり初心に返ってイーブイですね。なりたいのはリザードンなんですけど。

Ayase:僕はミュウですね。ビジュアルも可愛いし、“まぼろし”って感じが夢があって好きです。

――武田先生は楽曲「Biri-Biri」を聴いて、どんな第一印象でしたか?


武田:感想なんて恐れ多いのですが、かっこよくてかわいいポケモンみたいな曲、というのが一番の印象でした。初めて聴いたとき、感動して泣いちゃいました。いろんな方が携わることで、こんなふうに小説が曲になるんだって。あと、小説を書くためにネモちゃんのことをずっと研究していたので、すごく感情が入ってしまって、ミュージック・ビデオを見たときに「こんな表情をしていたんだ」と感動しました。

――音楽は普段からよく聴きますか?


武田:けっこう音楽を流しながら原稿を書いたりします。

――音楽からインスピレーションを受けたりも?


武田:もちろんあります。先輩の作家さんからは、気持ちを切り替えるためにジャンルごとに曲を変えてみることを勧めてもらったり。例えば『響け!ユーフォニアム』のときはピコピコしたゲーム音楽をよく聴いていました。

――YOASOBIのお二人を原作小説を読まれたとき、どのようなことを感じましたか?


ikura:自分の中で「ネモにどんな背景があって、こういう志を持つようになったのか」と想像していた部分がすごく細かく描かれていて共感しましたし、特に印象に残ったのはバトルシーン鮮やかさで、頭の中に映像が浮かんでくるというか、読んでいくうちにどんどん心拍数が上がってくる感じがしたんです。文字が生きているような、そういう躍動感を感じたので、歌うときはその躍動感を逃さないようにしなきゃいけないと思いました。

Ayase:僕は『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』をプレイしていて、主人公を取り巻く人間の中でネモだけ、そこまでゲーム内ではっきりと語られていなかったように感じていて。でも、物語の中では強さの象徴だったし、主人公にとって仲間でありライバルでもある。そこが小説で立体的に描かれていたことで、最後のピースがはまった感じがしたんですよね。

武田:ありがとうございます。恐縮です。


改めて感じた『ポケモン』愛

――ゲームのサウンドトラックやアニメの主題歌など、『ポケモン』には魅力的な音楽がたくさんありますよね。そのあたりからインスパイアされた部分もある?


Ayase:ポケモン公式YouTubeチャンネルに過去作品のBGM集が公開されていて、たまたま去年よく聴いていたんですよ。なので、今回のお話をいただいたとき、何かモチーフをひとつ引っ張ってきたいなと思って。具体的にサンプリングしているわけじゃないですけど、ちょっとアレンジして取り入れる感じ。そういうオマージュ的な試みは自分たちとしては初だったのでやってみたかったんです。

――まさにイントロは戦闘BGMのオマージュになっていますね。


Ayase:僕は『ポケットモンスター バイオレット』をプレイしていて、未来の機械的なイメージがあったんです。なので、ビリビリとした、ちょっとテクノっぽい空気を感じる曲にしたいと考えたときに、戦闘BGMと相性がいいなと思ったんですよね。


ポケモン交換の儀

――歌詞内には過去作品のタイトルが散りばめられていて、こちらもオマージュ的な遊び心を感じさせます。


Ayase:もともと作品名を歌詞に入れようと思っていたわけではなく、単純に音のはまり方から<赤青緑色とりどり>あたりのフレーズは思い浮かんだんですけど、だったら他の作品名も入れたいなって。<難しい問題パスして/面白いが眠る街へ>(※)とか、けっこう難しい入れ方をしたタイトルもあったので、見つけるのは大変だろうと思っていたんですけど、SNSとかYouTubeのコメントを見たら速攻ですべて見つかっていて、みんなの『ポケモン』愛をすごく感じました。


※問題パス=ダイパ(『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』)
※面白いが眠る=シロガネ(『ポケットモンスター プラチナ』)



ポケモン交換の儀

――ikuraさんはデモを聴いたとき、最初にどんな印象を抱きましたか?


ikura:小説では挫折みたいなシーンも印象的だったので、最初は重厚なサウンドを想像していたんですけど、いい意味ですごく軽やかな感じになっていて「なるほど、こっちの方向性か」と思いました。Ayaseさんは毎回、いい意味で裏切ってくるなって。その軽やかさを失わないように、冒険のワクワク感を伝えられるように、レコーディングはいつもより明るめの声色で、なおかつ踊るように楽しく歌うことを意識しました。

――歌詞ではYOASOBIとしては初めて英語のフレーズがあったりと、また新たなYOASOBIの側面が見える一曲になったかと思いますが、歌唱面で参照したアーティスト、刺激を受けた楽曲などがあれば教えてください。


ikura:高音に上がっていく部分も力まず、抜いていく感じで歌うように意識しました。サビではワンクッション入れて、そこから軽やかなダンスパートに入るイメージだったので、そういう力の抜き方は新しい引き出しになったと思います。


サインの交換

――武田先生のお気に入りポイントは?


武田:私は<ABCからXYZ>のところが好きです。すごく気持ちよくて。

Ayase:僕も気持ちよさ的にはそこが一番自信あります。

ikura:あそこ、歌うのもすごく楽しいです。


制作でのチャレンジと、海外ライブの反応

――今回の「Biri-Biri」において、作り手として成長を実感したポイントがあれば教えてください。


Ayase:音楽的なチャレンジになった部分なんですけど、すごくトラック数が少ないんです。前半はほとんどドラムとベースだけ。そういうシンプルな曲はずっとやりたいと思っていたんですけど、けっこう勇気が必要でなかなかできなかったんですよね。それに僕はなんだかんだJ-POP脳で、つい派手にしたくなっちゃう。でも、この曲は小説の内容やゲームの世界観から考えても、こういう軽やかなサウンドがフィットしたし、ボーカルのほうでけっこう遊んだので、かなりシンプルな構成にすることができて。そういう曲を出すことができたのは自分としても変化した部分だなと思います。


サプライズ登場したピカチュウたち

――今回そこに踏み切れたのは、何かしら心境の変化も影響しているのでしょうか?


Ayase:個人的な話なんですけど、最近DTMを練習していて。僕はボカロPを始めたあと、わりとすぐにYOASOBIのお話をもらったので、活動歴とDTM歴がほぼ一緒なんですよ。なので、ずっと勉強不足だった部分があって、その足りなかった知識をちゃんと埋めなきゃいけないと思ったんです。そういう課題もあって、今回の「Biri-Biri」に関しては、特に音をちゃんと精査して、なおかつ音圧を出すということをやりかった。

――先日、YOASOBIとしては香港と台北のイベントに出演。そこで「Biri-Biri」のライブ初披露も果たしましたね。


Ayase:ライブの「Biri-Biri」がめちゃくちゃいいんですよ。生の演奏がすごく映える。

ikura:ほかの曲と明らかに違う色を持っているので、空気をがらっと変えてくれるし、何より歌っていて楽しいです。自分もつい踊りたくなるし、リリースしたばかりなのにお客さんも一緒に歌ってくれるんですよ。


サプライズ登場したポケモンたち

――「Biri-Biri」も英語ver.が配信済みですが、日本語ver.と比べてどんな部分に注目してほしいですか?


ikura:今までの英語ver.すべてに言えるんですけど、語呂とか音のはまり方がいつもすごく気持ちいいんです。でも「Biri-Biri」は、個人的にそれが最高マッチ度なんじゃないかなって、レコーディングしているときから感じていました。英語ならではのスピード感とかスタイリッシュさがすごく映える曲になっていると思います。

――今回、武田先生にとってもYOASOBIのお二人にとっても新鮮な反響があったのでは?


武田:私の友達はゲーマーが多いので、『ポケモン』の時点で反響がすごかったんですけど、ゲームをまったくしない友人からも「コラボしたらしいね」と連絡が来たときに、あらためてYOASOBIさんの影響力に驚きました。急に小学校時代の友達からLINEが来たりして。

Ayase:それこそ香港では、配信直後にチャートで上位に入ったりして。あと、ちょっと話が逸れちゃうかもしれないですけど、台湾に初めてポケモンセンターができたんですけど、そこにオープン前にお邪魔させていただいたんですよ。

ikura:それも今回のコラボのおかげというか、ご縁があったからこそだと思うのでありがたいです。


サプライズ登場したポケモンたち

――では、最後に読者のみなさんにメッセージをいただけますでしょうか?


武田:『ポケモン』という大きなコンテンツに携わらせていただけて光栄でしたし、まだゲームをやっていない方はもうすぐクリスマスなのでぜひプレイしていただいて、せっかくなので小説と楽曲も合わせて楽しんでいただけたらうれしいです。

YOASOBI:これまでのシリーズ作品から今回の『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』、そして武田先生に書いていただいた小説や「Biri-Biri」まで、すごく立体的な世界を作り出すことができたと思うので、すべて髄まで味わっていただけたらと思います。

YOASOBI「勇者」

勇者

2023/12/13 RELEASE
XSCL-77/8 ¥ 5,000(税込)

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Disc01
  1. 01.勇者
  2. 02.The Brave
  3. 03.勇者 -Anime Edit-
  4. 04.勇者 -Instrumental-

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