Billboard JAPAN


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<インタビュー>Anonymouz、新曲「シガレット」で感じた日本語詞での表現と、進化し続ける音楽性



インタビューバナー

Interview:森朋之
Photo:Yuma Totsuka

 2023年2月に1stフルアルバム『11:11』を発表。同時にリリースされたシングル「River」(TVアニメ『ヴィンランド・サガ SEASON 2』オープニングテーマ)が国内外の音楽ファンに浸透するなど、大きな注目を集めているAnonymouz。今年7月リリースの配信シングル「レッスン」(作詞・作曲/wacci・橋口洋平)のタイミングで初めて“顔出し”を行うなど、アーティストとして活動の幅を広げている。

 さらに10月20日にニューシングル「シガレットfeat. xea」、11月24日には「夜行性(100回嘔吐 Remix)feat. 和ぬか」をリリース。シティポップ、J-POP的なアプローチなど、音楽的なトライを続ける彼女に現在のモードについて語ってもらった。

顔出ししたことで、リスナーと直接会えている感覚が増した

――ビルボードジャパンでのインタビューは、2020年11月以来、3年ぶりです。3年前は「Eyes」(ソニー「Xperia 5 II」CMソング)が話題を集めていました。


Anonymouz:「Eyes」、もう3年前なんですね! それまではカバー曲が中心だったんですけど、その頃からオリジナル曲も聴いてもらえるようになって。私にとっても転機になった時期ですね。

――今年2月には1stフルアルバム『11:11』をリリース。ドラマ『ジャックフロスト』の主題歌「夜行性」や、アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のエンディングテーマ「Ladder」など多彩な楽曲が収められた作品でした。


Anonymouz:楽曲によっていろんなキャラクターを表現できるのが自分の強みだと思っていて。アルバムはその集大成というか、「Anonymouzはこういうアーティストです」というものを込めたいと思っていたんです。かわいらしい曲からカッコいい曲まで、幅広い曲を通して自己紹介できたんじゃないかなと。制作を通して「こういう曲も楽しいな」だったり、「ライブで盛り上がる曲を作りたい」という気持ちも生まれました。


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――そしてアルバムと同時リリースされた、TVアニメ『ヴィンランド・サガ』のオープニング主題歌「River」は、国内外のリスナーに届いていますね。


Anonymouz:私自身も『ヴィンランド・サガ』がさらに大好きになりました。現実からは程遠い世界だけど、身近に感じられるところもあって。特に「誰にも敵などいない」というセリフにはすごく影響を受けていると思います。じつはアルバムにも『ヴィンランド・サガ』をテーマにした曲がいくつか入っていて。とても心を動かされる作品だし、『ヴィンランド・サガ』を愛する人たちから反響をもらえたこともすごくうれしかったですね。

――さらにシングル「レッスン」のタイミングで“顔出し”。ライブも精力的に行うなど、活動のフェースがかなり変化していますね。


Anonymouz:初めて顔を出したライブは、私自身も「みなさんと直接会えている」という感覚が強かったです。声の出方もオープンになって、お客さんにもしっかり伝わったと思いますし、「この環境を一緒に楽しもう」という雰囲気がつくれたんじゃないかなって。


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――観客のみなさんが“声出し”できるようになったのも大きいですよね。


Anonymouz:そうですね。不安もあったんですが、声援を送ってもらえたことですべて吹っ飛びました。「思い切り楽しもう」とお客さんに思わせてもらえたというか。ライブ自体、どんどん好きになってますね。いちばん最初は緊張で何も考えられなかったけど、今は本当に楽しみで。楽屋では手が震えたりすることもありますけど(笑)、ステージに出たら安心できるようになりました。

――ライブを通して、自分自身を伝えたいという思いも?


Anonymouz:あります。ライブもそうだし、こういうインタビューやSNS、週一のインスタライブ『Anoラジ』もそうですけど、応援してくれる皆さんに私の性格や考え方を共有できたらなって。歌詞においても、自分のパーソナルな部分を出したいと思ったし、意識もだいぶ変わってきましたね。顔を出したりキャラクターを知ってもらうことで、曲の聴き方も変わるのかなって思ってます。


“背伸びした恋”を描いた「シガレット」

――10月20日にはデジタルシングル「シガレット」をリリース。タイトル曲「シガレットfeat. xea」は大人っぽいポップネスが感じられる楽曲ですが、どんなイメージで制作されたのでしょうか?


Anonymouz:顔出しもそうですし、新しい姿で進んでいくにあたって、等身大の姿が伝わる楽曲を作りたくて。もっと私自身の言葉で表現して、同世代の人たちにも届く曲にしたいという気持ちもあります。音楽性としては、シティポップの要素と、Anonymouzらしさが融合したようなものになったんじゃないかと思います。先にオケが出来た時点ですごくワクワクして、「この方向性でやりたい!」というところからはじまりました。

――普段もシティポップをチェックしている?


Anonymouz:いろんな曲を聴く中でシティポップも聴いています。特に70年代くらいの曲は、ゆったりしていて、歌に感情がしっかり込められているのが素敵だなって思います。

――なるほど。「シガレットfeat. xea」のサビのメロディもゆったりしているし、歌詞の言葉の数も少なめですね。


Anonymouz:気持ちよく伸びるサビにしたかったんですよね。そのぶんAメロには言葉を詰めて、ラップの要素も取り入れて。ボーカルに関しては、Aメロは喋ってる感じで、サビはちょっとチルな雰囲気を意識してました。


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――1曲の中にいろんな表情を反映しているんですね。歌詞の内容に関しては?


Anonymouz:最初のアイディアとしては……音楽活動していくなかで、しっかり自信をもらえる瞬間もあれば、ちょっとしたことで自信が地に落ちてしまうこともあって。二人の自分を行ったり来たりしている感覚があるんですよ。「“舞い上がったと思ったら突き落とされる”みたいな感じが、“背伸びした恋愛”として歌ったらどうだろう?」というところから始まりました。

――“背伸びした恋”が「シガレット」という題名につながった?


Anonymouz:そうですね。二十歳を超えて、タバコを吸い始めた友達もいて。小さい頃から知っている子だとちょっと背伸びをしているようにも見えるんですけど、その感じもいいなと思って。わたしにとって背伸びの象徴のタバコ、シガレットをタイトルにしました。同世代の子たちは就活の時期だったりもして、面接のときは普段よりも背伸びした自分を見せたり、たくさん受ける中で自分自身を否定したくなることもあるだろうし、その気持ちにとても共感できて。そんな思いも込めて作っていきました。

――まさにリアルな思いが反映されている、と。xeaさんをフィーチャーすることで恋愛シーンがより際立っていますね。


Anonymouz:曲を作っているなかで「男性がボーカルを入れたらもっと良くなるかも」と思って。xeaさんの歌声は透明感と落ち着いた雰囲気があって、この曲にピッタリだなって。想像以上にカッコいい仕上りになり、ご一緒できて本当に良かったです。

▲Anonymouz - シガレット feat. xea

――素晴らしいコラボだと思います。先ほど話にあった“自信”と“不安”について、もう少し聞かせてください。音楽活動のなかで自信を得られる瞬間は?


Anonymouz:ライブの後は自信が持てますね。あとは楽曲が出来上がった瞬間かな。でも、歌詞がぜんぜん書けなくて1日つぶれたりすると、「私は向いてないんじゃないか」と気持ちが沈んでしまうこともあって。落ち込むことによって向上心も生まれていると思うんですけどね。

――自分自身のメンタルケアにも気を遣ってますか?


Anonymouz:そうですね。歌詞が出てこないときは粘るのではなくて、いったん放っておくようにしていて。そうすると、次の日にいいフレーズがパッと浮かんできたりするんですよ。どうしてもそのときの状態が作品に出てしまうので、へこんでるときはマイナスな歌詞しか出てこなかったり…自分のご機嫌取りは大事です。

――しっかり睡眠を取ったり?


Anonymouz:できれば8時間くらい寝たいです(笑)。あと、日記を朝書くようにしています。夜に書くとどうしても反省点を並べがちなんですけど、朝は「この1日をどれだけ良くできるか」という考え方になるので。日記に書いたことが歌詞のテーマになることもあります。


日本語の歌詞を通して、自分自身も伝えていきたい

――シングルにはダンスチューン「JAM」も収録されています。


Anonymouz:「JAM」はライブのときに感じていることが基になっていて。ライブの最中、終わりに近づくにつれてどんどん淋しくなっていくんです。なので「さみしいけど、また会えるよね」という思いを曲にできたらいいんじゃないかなと。ライブやライブが終わった後はもちろんですけど、会場に来る前にも聴ける曲になったらいいなと思ってます。この曲は、アカペラで作り始めたんです。ライブで歌うことをイメージしながら「踊れる曲にしたいな」と思ってフレーズを作っていきました。

――なるほど。ちなみにライブのときって、始まった瞬間から淋しくなってくるんですか?


Anonymouz:最初の数曲は「楽しい!」「もっと盛り上げたい」という気持ちなんですけど、インターバルで水を飲んでるときに泣きそうになるんです。私自身も待ちに待っていたのに、「もう終わっちゃうんだな」って。なので「絶対、次も会いに来てね」という気持ちでやってます。そのときの感じも歌詞にしているので、この曲をリリースできるのは嬉しいですね。

――<変わらない Strawberry Jam>というフレーズも、ライブをイメージしているんですか?


Anonymouz:はい。音楽のジャムセッションという意味もあるし、ライブに対する甘酸っぱい思いも込めていて。あと、イチゴが大好きなんです(笑)。曲を作っていたときにスッと出てきたフレーズだったので、そのまま活かしました。


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――ライブのなかでお客さんとジャムセッションしている感覚も?


Anonymouz:そんな気がしています。ライブを重ねるごとにお客さんとジャムしている感じが強くなっていて、それはこの先も大事にしたいなと。「JAM」も、もっともっと楽しみたいし、手拍子したり一緒に歌ったり、ライブのなかで育てていきたいですね。

――11月には「夜行性(100回嘔吐 Remix)feat. 和ぬか」をリリース。アルバム『11:11』に収録された「夜行性」を100回嘔吐さんがRemix、和ぬかさんが作詞作曲・ボーカルで参加した新バージョンです。


Anonymouz:私自身も「夜行性」という曲が大好きで、もっと盛り上げたいなという気持ちがあったんです。この曲は“返信を待っている夜”を描いていて。夜中の2時、もう返信なんて来ないだろうけど、それでも待ってしまう。悩んで悩んで、眠れなくなってしまうという状態を曲にしてみたくて。

――今回のバージョンは“和”のテイストを押し出したリミックス。


Anonymouz:アレンジのテイストも和ぬかさんの言葉(歌詞)もとても新鮮で、「夜行性」を新しい形でお届けできるのはすごくうれしいです。ライブでも映える曲だと思うので、お客さんと一緒に楽しみたいなって。1回のライブで「夜行性」と「夜行性(100回嘔吐 Remix)feat. 和ぬか」の両方を歌うのもいいですよね。「夜行性」をふたつの視点から味わえるんじゃないかなって。

――ライブにおける表現もどんどん広がりますね。


Anonymouz:そうですね。楽曲制作のときもライブを意識しているし、ライブ自体をもっと濃いものにしていけたらなと思っています。新しくなっていくAnonymouzをお見せしたいし、活動を始めた頃の楽曲も大事に歌っていきたくて。ずっとファンでいてくれる人も惚れ直させたいですね(笑)。もちろん、私自身もファンのみなさんからパワーをもらっています。顔出ししていない時期からお客さんの顔はしっかり見ていたし、「また来てくれたんだ」と思うとすごくうれしいので。

――2023年はAnonymouzにとって、大きなステップアップを果たした年だったと思います。2024年の活動ビジョンは?


Anonymouz:「シガレット」の制作を通して、「日本語詞のアップテンポの曲、しっくりくるな」と感じていて。歌詞を書くのもすごく楽しくて。英語詞の曲を歌うことで得られた表現を活かしながら、日本語の歌詞を通して、自分のパーソナルな部分を伝えていくことをもっとやっていきたいと思ってます。

――期待してます! 最後に、今気になっている音楽を教えてもらえますか?


Anonymouz:けっこう幅広く聴いていますね。洋楽も聴きますし、シティポップも聴いていて。でも、いちばん刺さるのは70年代くらいの楽曲なんですよね。私の母親はカーペンターズやクイーンが好きで、子どもの頃からずっと聴いていて。肌に沁みついているし、今聴いてもワクワクするんですよね。


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