Special
<インタビュー>Da-iCE “全く違うふたりの良さ”と、積み上げてきた経験が重なった新曲「ナイモノネダリ」
Interview & Text: 黒田隆憲
Photo: 筒浦奨太
5人組男性アーティスト、Da-iCEの新曲「ナイモノネダリ」がリリースされた。
この曲は、韓国のドラマ『ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-』(2020年)のリメイク版で、篠原涼子と山崎育三郎がダブル主演を務めるドラマ『ハイエナ』の主題歌として書き下ろされたもの。これまで何度もDa-iCEと共作をしてきた作詞/作曲家MEG.MEと、メンバーの花村想太によるどこか1990年代のJ-POPを彷彿とさせるダンスチューンで、サビの〈ナイナイナイナ〉というフレーズは、一度聴いたら耳から離れない。また、今回の振り付けはメンバーの和田颯が、KAZ the FIRE(RIEHATATOKYO所属)、Miyu、KENZO(DA PUMP)という、ジャンルや世代の異なる3名のダンサーと共作しているところも注目だ。
“全く違うふたり”のコントラストを表現
――まずは新曲「ナイモノネダリ」が、篠原涼子と山崎育三郎がダブル主演を務めるドラマ『ハイエナ』主題歌に起用された心境からお聞かせください。
岩岡徹:日本でも大きな話題になった、韓国のドラマ『ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-』のリメイクということで、きっとたくさんの方に注目されている作品だと思いますし、これまでDa-iCEを知らなかった人たちにもたくさん聞いてもらえるチャンスをいただけたことを、とても嬉しく思っています。
工藤大輝:ドラマの内容が、僕の好きな「法廷モノ」ということでまずそれが楽しみです。そして、僕らの楽曲もすごくキャッチーに仕上がったので、本編でどんなふうに使われるのか今からワクワクしていますね。
和田颯:ドラマの制作サイドから「(主題歌は)Da-iCEさんに」とご指名いただけたのはすごく光栄なことですし、物語の世界観に寄り添った楽曲を(花村)想太くんが書いてくれたので、日本版リメイクの放映を楽しみにしている方たちにもきっと楽しんでもらえると思っています。しかも、篠原涼子さんや大友花恋さんという、同じ群馬出身の方が2名も出演していらっしゃるのも嬉しいですね。
――作詞作曲は、花村さんとMEG.MEさん。楽曲制作をするにあたり、ドラマの世界観をどう落とし込みながらDa-iCEの新曲として昇華させたのでしょうか。
花村想太:このドラマ『ハイエナ』は、篠原涼子さんと山崎育三郎さんが扮する全く性格の違う主人公ふたりの活躍を描いているので、楽曲の中にもそういうコントラストを表すフレーズをいろいろ入れたいと思いました。メロディも、「キレがある」と言われる僕の声と、伸びやかな雄大くんの声という全く違うふたりの良さが生きるよう、共作者のMEG.MEさんと話し合いながら作っていきました。
MEG.MEさんとはこれまで何度もコライトをしてきましたし、リリースされていないものも含めれば100曲くらいストックがあるんです。なので、僕らがやりたいことを的確に具現化してくれる関係性が築けていると思いますね。
――メンバーのみなさんは、この曲のどんなところが気に入っていますか?
和田:〈ナイナイナイナ/無いものばかり〉というサビのフレーズは、初めて聴いた時から耳にこびりついて離れなくなりました(笑)。
大野雄大:うざいよね(笑)。
和田:そうそう、うざいんですよ。もちろん、いい意味で(笑)。そのくらいキャッチーなサビになったと思っています。
工藤:僕はサビ前の、ドラムのフィルからホーンのキメに繋がる部分がすごく好きです。オケそのものはバンドアンサンブルを生かしたサウンドなのですが、ダンス&ボーカルグループの場合、振付を考えるうえでこういうキメが大事になってくるんですよね。そういう“見せ場”になるようなギミックが、たくさん盛り込まれているところにも感銘を受けました。
花村:アレンジャーのLouisくんは元々ドラマーなので、リズム面でいろんなアプローチをしてくれました。特にキメの部分はめちゃくちゃ細かく作り込んでいきましたね。この〈「ナイモノネダリ」〉というフレーズを言う前に、「今から歌いにいきますよー!」と煽っていく感じにしたかったんですね。それをサビごとに繰り返しつつ、最後のサビでは〈「ナイモノ...」」〉までしか歌わせない、っていうギミックをわざと入れて緩急をつけたりして。
岩岡:僕が気に入っているのは、〈カプチーノみたい〉のところ。何度聴いても「カプチーノ、飲みたい」って聴こえてカプチーノが飲みたくなります(笑)。あと、この曲は全体的にどことなく懐かしい雰囲気があるのも好きですね。個人的に、米倉利紀さん節をすごく感じるんですよ。特にメロラップのところとか。
工藤:ああ、わかる。1990年代っぽさがあるよね。
大野:僕はこの曲、歌っていて気持ちいいところがたくさんあるのが嬉しいです。たとえば〈伸ばした手には 届かぬCandy〉のところとか。大サビ前のフェイクから〈「ナイモノネダリ」〉って歌い上げるところも楽しいですし。
花村:どっちも狙い通り!
――やっぱり、曲を作っているときに「大野さんが歌ったら気持ちいいだろうな」ということを考えますか?
花村想太:めちゃくちゃ考えます。もうBメロのアタマなんて狙い通りすぎて。最近は、Da-iCE以外のアーティストに楽曲提供をする機会が増えたんですけど、いい意味で裏切ってくるのも雄大くんだけというか。そこがDa-iCEの強みだと思っています。
あと、僕の声って賛否あるというか。好きな人は「好き」って言ってくれるんですけど、苦手な人もいると思うんですよね。そのケレン味を中和させてくれるのが雄大くんの声だと思っていて。僕らふたりの声が混ざることによって、曲自体に滑らかさと重みが出るんですよね。
リリース情報
関連リンク
振付師を「1曲の中で変えてみる」という発想
――今回の振付は和田さんが、KAZ the FIRE(RIEHATATOKYO所属)、Miyu、KENZO(DA PUMP)というジャンルや世代の異なる3名のダンサーと共作したそうですね。
和田:はい。最初、想太くんからもらったこの曲のデモは1コーラス分だけで、その段階から「振付師は誰にお願いしようか」という話はしていたのですが、フルのトラックがアレンジャーさんから送られてきたら、曲調がガラッと変わっていたんです。そこから「いろんなジャンルのダンスが踊れたら面白いね」という話になり、「それなら振付師も1曲の中で変えてみたらどうだろう?」と。
ダンサーそれぞれのジャンルはもちろん、通ってきたルーツも全然違うんですよ。KENZOさんは、イメージ通り本当に優しい人。「こういう動きもあるけど、どう?」みたいな感じで色々教えてくれましたし、Miyuちゃんとは「こういう動きだとしたら、次はどう動いたらいいのか」みたいなディテールをじっくり話し合いました。サビの部分はKAZと作ったのですが、僕からは「KAZらしい、大人っぽくてエロい部分を存分に出してほしい」とだけリクエストしたところ(笑)、ものすごくキャッチーで分かりやすい振付をほんの十数分で作ってくれました。とにかく、全ての振付がちゃんとつながってよかったなと思います。
工藤:踊っていて楽しいですね。昔はロッキンやハウスを踊りながらのボーカルは、体が動きすぎるので難しいとか、色々制限があったんですけど、最近はコツがわかってきたというか。「こういう節回しだったら(動きながらでも)味になる」みたいな引き出しが増えたことで、10年前の僕らだったら選択肢に入らなかったパフォーマンスが、ちゃんとできるようになったことは感慨深いです。
花村:それはきっと、レギュラー番組『Da-iCE music Lab』をできたことが大きいかもしれないです。DA PUMPさんと一緒に踊ったり、AKB48さんとロッキンをやったりしたことで、自分たちの中のスキルが上がったうえに、やりたいことのハードルも下がったというか。それに、パフォーマーが映える曲はやっぱりいいなと思います。いろんなダンスの要素を経験してきた3人だからこそできることだなと。
Da-iCEには、ダンス&ボーカルが注目されていなかった頃から蓄積してきた経験値がある
――ところで、BTSの躍進をひとつのきっかけとして、ここ数年は男性ダンス&ボーカルグループへの注目度が飛躍的に上がりました。その一方、国内外のエンターテイメント業界では様々な問題が顕在化し社会問題にもなっています。まさに今、日本のエンタメも大きなターニングポイントにあると思うのですが、そんななかDa-iCEはどんなアティチュードで活動を続けていきたいですか?
花村:基本的に、僕らDa-iCEとしてやることは変わらないと思っています。今までも、誰々に負けないようにしようとか、競合グループはここだとか、そんなふうに思ったことは一度もなくて。常に目の前にあることを一つひとつ、チーム一丸となって積み上げてきたんですよね。それゆえに、今のダンス&ボーカルシーンの“流行りの楽曲じゃない”ことを僕らはやれている気がします。洋楽的な、洗練されたサウンドや歌い方が主流ですが、僕らは“J-POPのダンス&ボーカルグループ”として日本語をしっかり伝えていくスタンスを貫き通しているので。これからも今まで通り、周りを意識せずに自分たちのやるべきことに集中していきたいです。
工藤:おっしゃるように、ここ最近は男性ダンス&ボーカルグループへの注目度が上がって、バンドでいうところの『けいおん!』ブームの時のような勢いで、一般的にも“カルチャー”として浸透してきているように感じます。大学生が5人くらい集まって振付を考え、曲を誰かに作ってもらって、そしてそれをSNSにアップすれば成立するじゃないですか。カルチャーとしてはすごく充実してきたと思うんですが、その反面、どこで差別化していくか。プロフェッショナルに活動しているグループにとっては大きな課題だと思います。
でも、これってダンス&ボーカルに限った話じゃなくて。形ができて、流行って、広がった時に、その後どうするかはどの時代も課題で。僕らDa-iCEには、まだみんながダンス&ボーカルに注目していなかった頃から蓄積してきた経験値があるし、それは強みだと思うので、これからも自分たちがやってきた道を誇りに思いつつ、どう進んでいくかを考えていきたいですね。
リリース情報
関連リンク
関連商品