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柴田淳 【シークレットライブ】
2006.7.18(TUE) at 恵比寿ガーデンルーム|セットリスト
明るい光が灯されたキャンドルがピアノやアンプ、テーブルの上に置かれたステージ。そこへバンドメンバーたちに少し遅れて登場した柴田淳。彼女は白いドレス姿でステージの中央にまっすぐ立ち、完全に肩の力を抜いた状態で『空の色』を歌い始めた。アコースティックギター、ピアノ、パーカッション、ベースによる爽やかな奏でに乗って、やわらかい風のように僕らの体と心を包むその声に僕らはただただ聴き惚れる。続く『花吹雪』では、より深くその口元から綴られるの物語の世界に陶酔し、胸を締め付けられたり、笑顔を浮かべたりする僕ら。満ちてゆく心。
「改めまして、こんばんは、柴田淳です。なんか、胸いっぱいで・・・真っ白になってしまいました。こういうライブは2年半ぶり。今日はこういう場を設けていただいて、幸せだなと思っています」と、今日この瞬間をしみじみと噛み締める彼女。そんなしばじゅんの頭上におぼろげに三日月が浮かび上がると、彼女は静かに、そして熱っぽく新曲『紅蓮の月』を歌い始めた。先のMCではアットホームな空気を生み出していた彼女だが、この曲では悲しみがこの世界を染め上げていた。それにしても歌っているときと喋っているときのギャップの大きさは相変わらず(笑)。彼女が歌っている最中は感動の面持ちのファンが、MCに入ると、大爆笑したり、緊張している様子のしばじゅんを「頑張って」と応援したり、まるで友達のようになっている。これもまたしばじゅんのライブの醍醐味と言える。
で、そのしばじゅんがなぜ今日緊張しているかと言うと、まぁ久しぶりのライブというのももちろんあると思うのだが、今日はクレーンカメラにおける撮影が同時進行で行われていたのだ。「うまく歌えたらDVDにして、今日来れなかった人に観てもらいたい」といった彼女の想いからそれが導入されたようなのだが、実際にクレーンカメラが動いているのを見るとアガってしまうようだ。ただ口では「緊張している」と言っている彼女ではあったが、音楽がそこに奏でられ、歌い始めれば、全く動じる様子はなく、『隣の部屋』『かなわない』と、立て続けに良い曲を、そのすべてをセピア色にしてしまいそうな歌声でもって堂々と僕らにお届けしていく。
今夜、素敵な音色を聴かせてくれているバンドメンバーを紹介すると、「この今日をこうして笑顔で歌えるようになって、本当に良かったと思います」という言葉を残して、彼女は『ちいさなぼくへ』を淡い光を一人浴びながら歌い始めた。あらゆる感情をその声の内側から滲ませるように彼女は静かに熱唱する(柴田淳史上ベストライブテイク)。笑顔を浮かべるしばじゅん。そんな彼女に呼ばれてステージに赤い風船を持って現れた幼い女の子。その子はしばじゅんと手をつなぎ、客席に向けて一緒に手を振り、一緒にステージを後にした。
みんなの想いに応えるように再びステージに現れた彼女は、まず「ありがとうございます」と、一言。そしてピアノの音色だけを頼りに彼女は、非常に歌唱難易度の高いあの『缶ビール』を静かに歌い始めた。目を閉じて、ひとつひとつのフレーズにしっかりと想いを乗せて。
再びすべてのバンドメンバーをステージに呼び戻すと、彼女は今夜最後の一曲『ピンクの雲』を歌い始める。今夜の選曲はファンが聴きたい曲を軸にしていたため、隠れた名曲がいくつも披露されたのだが、この曲に関しては誰もが生で聴けることを喜んでいた様子で、小さくその体を揺らしながら彼女の歌声と自分の心を重ねていた。いつまでも鳴り止まない、とてもやさしい拍手。その音をその胸に受けとめながらしばじゅんはステージを後にした。
セットリスト
【シークレットライブ】
2006.7.18(TUE) at 恵比寿ガーデンルーム
- 01.空の色
- 02.花吹雪
- 03.紅蓮の月
- 04.隣の部屋
- 05.かなわない
- 06.ちいさなぼくへ
- En-01.缶ビール
- En-02.ピンクの雲
Writer:平賀哲雄
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