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<インタビュー>TiU(藤原大祐) がついにメジャーデビュー “彗星のごとく現れた若きショーマン”の素顔とは
Interview:森朋之
Photo:筒浦奨太
TiU(俳優・藤原大祐の音楽プロジェクト)が10代最後の日(10月4日)に1st EP『SHOW TiME』でメジャーデビューした。20歳の誕生日(10月5日)に東京・ビルボードライブ東京で初ライブ【POP SHOW ~THE FiRST~】を開催する。
これまでにJQ(Nulbarich)をCo Producerに迎えた「HAPPY HUMAN」、梅田サイファーのpeko,KOPERU,KennyDoesをフィーチャーした「NBDK feat.梅田サイファー(peko, KOPERU & KennyDoes)」、国内外で活躍しているブラスバンドグループMOSが参加した「PLEASURE SONG」をリリースしてきたTiU。本作『SHOW TiME』には、彼のルーツである80~90年代の洋楽を現代的なポップミュージックに昇華させた楽曲を収録。歌詞のメッセージ性、ボーカル表現力を含め、アーティストとしての高いポテンシャルを証明している。
Billboard JAPAN初登場となる今回のインタビューでは、TiUを立ち上げた経緯、EP『SHOW TiME』の制作、ビルボードライブ東京での初ステージに対する思いなどについて語ってもらった。
顔と実名を伏せての活動スタート
――まずはTiUとしてアーティスト活動をはじめた経緯を教えてもらえますか?
TiU:役者を始める前から、役者と音楽の両軸で活動することは決まっていたんです。2歳半の頃からピアノを弾き始めて、途中からジャズピアノに切り替えて。ボイトレも受けていたし、少しずつ準備していて。実際に(アーティスト活動のための)チームが組まれたのはコロナの自粛期間中ですね。「この時間に何をやるかで、僕の人生が変わる」とビビッと来て、まずは作曲をはじめたんですよ。日本と海外のチャートを分析して、曲がどういうふうに作られているかを自分なりに学んで。それを踏まえて最初の曲を作って、事務所の社長に聴いてもらったところから、すべての物語がはじまったと感じています。その後、TiUという名前を決めて、レーベルのスタッフのみなさん、クリエイターのみなさんと出会って。チームの方々と一緒に、だんだんとTiUの人物像が出来てきたのかなと。
――藤原さんご自身の音楽的ルーツもお聞きしたいのですが、ピアノをはじめたきっかけは何だったんですか?
TiU:幼少期からいくつか習い事をさせてもらってた中でいちばん長く続いているのがピアノだったんです。1回も「練習しなさい」と言われたことがなくて、勝手に弾いて楽しんでいたみたいです(笑)。10歳まではクラシックが中心だったんですけど、習っていた先生が転勤することになって、「僕も違うことをやろうかな」と思ってジャズを弾くようになって。その経験は作曲にも活きてますね。
――ポップミュージックとの出会いは?
TiU:最初のきっかけは母がくれたiPodですね。ジャミロクワイとレディオヘッドの曲が入っていたんですけど、特にジャミロクワイに惹かれて。そこからいろんな音楽を聴くようになりました。今いちばん好きなのはブルーノ・マーズなんですが、さらに遡って、スティービー・ワンダーやマイケル・ジャクソンも好きになって。
――ブルーノ・マーズはパフォーマーとしても素晴らしい才能があって。ステージで魅了できるアーティストになりたいという気持ちも?
TiU:それはすごくありますね。スタッフの方が考えてくれたTiUのキャッチコピーは“彗星のごとく現れた若きショーマン”なんですが、“ショーマン”という言葉は僕もすごく好きなんです。ファンの人たちといちばん触れ合えるのはライブだし、とにかくライブがカッコいいアーティストになりたくて。ブルーノ・マーズは崇拝するレベルで尊敬してます。
――歌詞のメッセージ性については?
TiU:根底にあるのは「世の中は表裏一体」ということかなと思っていて。「誰かが幸せになれば、他の誰が不幸になる」というか。そこからは逃れられないんだけど、マイナスな状況のなかでいかに幸せを見出せるか、曇りのなかにある光を見つけることが大事じゃないかなって。そこから生まれたのが「HAPPY HUMAN」ですね。今回のEP『SHOW TiME』の制作のなかで、少しずつ歌詞が具体的になってきた感じもあって。いろんな経験をするなかで上手くいくこともあれば、失敗することもあって、そのなかで感じたことがけっこう歌詞に入っている気がします。
――メジャーデビューのタイミングで“顔出し”することも決めてたんですか?
TiU:そうですね。顔出しする前は「インディーズ活動期間のなかでどれだけチャレンジできるか」もテーマで。顔を出していない時期は、藤原大祐というフィルターがない状態で活動できたんですよね。何て言うか「役者が単に音楽を始めた」と思われたくなかったんです。最初から名前と顔を出すと、自分で曲を作ってアレンジもやってるなんて思われないだろうなと。僕は自分で作ることにこだわりを持っているし、そこに真実があると思っているので、まずは顔を隠して活動することが必要だったんですよね。リスナーのみなさんの反応はコントロールできないし、正直、すべてが上手くいったわけではないけど、この1年間いろいろな経験ができたし、TiUの軸がしっかり出来た感覚があって。やってよかったなと思っています。
ずっと1対1でライブをやりたい
――では、1st EP『SHOW TiME』の収録曲について聞かせてください。1曲目の「JUST SOMETHING BEAUTIFUL」はEPのオープニングにふさわしいポップで華やかな楽曲。
TiU:これまでに「HAPPY HUMAN」「NBDK feat.梅田サイファー(peko, KOPERU & KennyDoes)」「PLEASURE SONG」「POP SHOW」をリリースしてきたんですが、その前のエピソードを表現する曲を作りたかったんです。自分にとっての“エピソード0”、つまり活動を始めた理由と向き合って……でも、どれだけがんばって考えても、答えが出なかったんですよ。なので答えを限定しないように「JUST SOMETHING BEAUTIFUL」“ただ美しい何か”をタイトルにして。まず題名を決めてから、ボイスメモに入れていたメロディを当てはめながら作っていきました。
――タイトル先行なんですね。
TiU:基本的にタイトルを先に決めることが多いんです。歌詞やメロディ、サウンドを作ってからタイトルを考えるのではなくて、題名を先に決めて、その言葉を目立たせる曲を作りたくて。もちろんそれだけではなくて、今後はいろんな作り方をやっていこうと思ってます。
――さきほども話に出ていた「HAPPY HUMAN」は、TiUの音楽の根幹を担う楽曲ですね。
TiU:この曲、「Bye!!」ではじまるんです。最初にリリースする楽曲をどんな言葉で始めようか?と考えたときに、「Hi!」じゃなくて「Bye!!」だなと。モヤっとすることも多いこの世界に対してサヨナラするところから始まる。それがTiUの進むべき道だなって思ったので。
――なるほど。この曲の共同プロデューサーにJQさん (Nulbarich)が参加。制作はどうでした?
TiU:本当に学びが多かったです。自分で作ったデモをお送りしたんですけど、JQさんがまったく別のパートにあった「Going on!!」「Keeping on!!」をサビの終わりに持ってきて、テンポもかなり上がって。最初は「全然違う!」ってビックリしたんですけど、一緒に作り進めていくうちに「これが正解だな」と。JQさんはすごく優しくて(アレンジを変えたことで)「何だよこの野郎って思うかもしれないけど、俺はこれがいいと思うんだよね。TiUがイヤだったら戻すから言ってね」と言ってくださって。アレンジのやり取りもさせてもらって、アーティスト活動をしていく上で、本当にかけがえのない経験になりました。もうすぐお酒が飲めるようになるので、ぜひ一緒に飲みたいです(笑)。
――「NBDK feat.梅田サイファー(peko, KOPERU & KennyDoes)」は梅田サイファーのメンバーをフィーチャー。
TiU:この曲のテーマは“仲間”なんです。「HAPPY HUMAN」から始まった僕たちの旅、一緒にTiUを作っていく仲間の存在を描きたいと思って。目指すところは誰も知らない場所、“Nobody knows”な場所がいいなと思って「NBDK」というタイトルにしたんです。梅田サイファーさんは以前から大好きなグループだし、まさに仲間と一緒に進んできた方々だから、ぜひこの機会にご一緒できたらと思って。ダメもとでオファーさせていただいたら、快く受けてくださいました。レコーディングは興奮しまくりでしたね(笑)。
――そして「PLEASURE SONG」にはブラスバンドグループのMOSが参加しています。
TiU:JQさん、peko.KOPERU.KennyDoes(梅田サイファー)お三方とコラボレーションさせてもらって、「どこかの作品で自分と同じ年代のアーティストと一緒にやりたい」という気持ちがあって。MOSはチームの方々が勧めてくれたんですけど、パフォーマンスの映像を見たときに「何だこの子たちは!?」って衝撃を受けたんです。ブラスの実力もそうだし、踊りも素晴らしいし、何よりも熱量がすごくて。「こんなグループは他にいないな」と思ったし、一緒に制作できてうれしかったですね。やっぱり生のブラスが入ると雰囲気がガラッと変わるんですよ。
――管楽器のアレンジはTiUさんが作ったんですか?
TiU:いえ、MOSのみなさんにお願いしました。「自分が100点を出せないことに関しては、100%出せる人に任せる」ということも、今回のEPの制作のなかで学んだことの一つで。この曲のブラス・アレンジに関しても、MOSの皆さんにお願いしたほうが絶対にいいものになると思ったので。実際、すごく豪勢な仕上がりになりましたね。
――5曲目の「POP SHOW」は、アップテンポのダンスチューン。ライブ映えしそうな楽曲ですね。
TiU:まさにライブで歌いたくなる曲を作りたかったんですよ。これはすべての曲に共通しているんですが、イントロが始まった瞬間に「来た!」という感じがほしくて。それが特に強く出ている曲だと思います。歌詞に関しては、ライブに来てくれるみなさんに向けていて。他の曲は自分自身に向けていたり、世界・世の中に対して歌っているものが多いんですが、「POP SHOW」だけは対象がオーディエンスなので。ライブに関して言えば、1対100のコミュニケーションではなくて、あくまでも1対1で向き合いたいという気持ちも強くて。もし5万人、10万人のステージに立ったとしても、ずっと1対1でライブをやりたいんですよね。
――“1対1”でステージに立ちたいと思ったのは、何か理由があるんですか?
TiU:インディーズ時代の活動を通して、一人ひとりがリアクションしてくれることの喜びを感じることができて。SNSで1人目のフォロワーを獲得したときも、チームのみんなでめっちゃ感動したんですよ。「正体もわからないアーティストをフォローしてくれた!」って。聴いてくれる人が少しずつ増えていくなかで、だんだん(ライブのときの)お客さんの顔が見えてきたんですよね。視点を180度回して客席からステージを見たときに、自分に向けて1対1で歌ってくれたらめっちゃキュンとするなって。
20歳は“子供らしく”心の赴くままに
――ギターサウンドを軸にした「TAKE IT OFF ALREADY」はEPのなかでも異質なサウンドの楽曲ですね。
TiU:さっきも言いましたけど、僕が初めて弾いた楽器はピアノなんですよ。EPにもピアノを中心にした曲が多いんですが、1曲はギターリフからはじまる曲を作りたいなと思って。歌詞は「仮面を外す」「正体を明かす」だったり、偽らず、自分自身を見せるという感じなんですが、そのテーマ性とギターリフがマッチしているんじゃないかなと。
――音楽は自分が“素”でいられる場所でもある、と?
TiU:そうですね。役者活動との差別化もできるし、今後さらに活動しやくなると思っていて。役を生きることと、自分自身を生きることの両方をやっていきたいんですよね。
――EPの最後に収められている「NAA-NA-NAA」は、ピアノを前面に押し出した楽曲。「マイペースでいいんじゃない?」というメッセージを含んだ歌詞も印象的でした。
TiU:初めてのEPはピアノで終わりたいという気持ちと、ライブの最後のほうで一緒に歌いたい曲にしたいなと思って。「PLEASURE SONG」もそういう位置付けの曲ではあるんですけど、さらに一つになれる曲を作りたかったんですよね。タイトルは意味がないほうがいいなって(笑)。
――全体を通してライブをイメージしているんですね。
TiU:そうですね。曲を聴いたときにライブがイメージできたらいいなと思っていたし、ライブでしっかり印象が残る曲にしたくて。ブルーノ・マーズもそうなんですけど、ライブに行った後で曲を聴くと、「あのときの歌い方、最高だったな」とかいろいろ思い出すんです。このEPがリスナーのみなさんにとって、そういう作品になったら嬉しいですね。
――EP『SHOW TiME』のリリースは10代最後の日。そして20歳の誕生日にビルボードライブ東京で初ライブが行われます。
TiU:ついに来たかという感覚ですね。TiUとしてファンの皆さんに出会えるのは初めてですし、ワクワクしかないです。「POP SHOW」に<ココが僕らのホームで理想郷>という文章があって、ライブはまさにそういう位置にあるんです。みんなが帰って来られる場所であり、理想郷でもあるっていう。「10代のうちにメジャーデビューを叶えたい」と強く思っていたので、それが叶ってうれしいですね。
――20歳になることについては、どう感じていますか?
TiU:ちょっと前からそうなんですけど、活動に対する責任感が増してきて。“仕事”という感覚も強くなっているんですけど、20歳になったらそれを全部忘れたいと思ってます(笑)。もっと子供になるというか、やりたいことを思うがままにやっていきたいなと。もちろんスタッフのみなさんの力が必要なんですが、仕事という感じが増えていくと、つまらない大人になりそうな気がするので。
――TiUの将来的なビジョンについては?
TiU:以前は大きいことばかり考えていたんですけど、今は地に足が付いた考え方になってきました。まずは1対1でしっかり向き合って、ファンのみなさんを虜にしたくて。もちろんいろんなアーティストの音楽を聴いていると思うんですけど、僕としてはできれば浮気をしてほしくない(笑)。そういう活動を続けていけば、未来につながっていくんじゃないかなって思ってます。
――EP『SHOW TiME』は海外のグローバルポップとも親和性があって。個人的には「世界で勝負してほしい」という期待もあります。
TiU:ありがとうございます。僕自身も正直、そこは目指していて。すごく大きいことを言えば、「日本人で世界に通用するアーティストと言えば、TiUだね」って言われるようになりたくて。TiUというアーティスト名にしたのも、海外でもニックネームっぽく呼べそうだなと思ったからなので。海外での活動も視野に入れていきたいと思ってます。