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<インタビュー>ポルノグラフィティ・岡野昭仁がソロ活動で見えてきた答えと、若い世代から得た刺激「歌を抱えて、これからも生きていく」

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Interview:もりひでゆき

 ポルノグラフィティの岡野昭仁が、8月23日に1stアルバム『Walkin' with a song』をリリースした。“歌を抱えて、歩いていく”をテーマに、2020年からソロプロジェクトをスタート。数々のアーティストやクリエイターを作詞・作曲・編曲に迎え活動してきたが、今回その集大成ともいえるアルバムが完成した。本作では、ソロ第1弾楽曲「光あれ」に参加した澤野弘之とn-buna(ヨルシカ)をはじめ、井口理(King Gnu)と高木祥太(BREIMEN)とのコラボレーションが実現した「MELODY (prod.by BREIMEN)」など、全10曲を収録。ボーカリストとして歌うことにフォーカスした活動の中で見えてきた未来や、若いアーティスト達から得た刺激について岡野自身が語ってくれた。

才能ある方々に“岡野昭仁”を料理してもらう

――2020年11月に始動がアナウンスされ、翌21年1月に配信リリースされた「光あれ」で本格的に幕を開けたソロプロジェクト。“歌を抱えて、歩いていく”というテーマを掲げた活動について、当初はどんなイメージを持っていましたか?


岡野昭仁:僕自身は細かいコンセプトを決めるのが苦手だし、初めからいろいろ決めて動くと悩みすぎて先に進めなくなってしまうことが多いんですよ。なので、ソロに関しては様々なアーティスト、クリエイターの方々に、かっこよくてクオリティの高い楽曲を提供していただき、僕はボーカリストとして歌うことにフォーカスした活動をしてみようと決めたんです。才能のある方々に岡野昭仁を上手く料理してもらおうっていう。

――その狙いはシンプルながらも、大成功でしたよね。


岡野昭仁:本当にそう思います。結果的にめちゃくちゃ豪華な面々に参加していただけましたし、今回アルバムという形になって改めて感じましたけど、本当にいい曲ばかりですからね。ボーカリストとして新しいチャレンジもたくさんできました。

――これまでにコラボされたメンツは本当に豪華ですよね。同時に、昭仁さんよりも若い世代のアーティストが多いのも印象的で。どんな基準で人選していったんですか?


岡野昭仁:信頼しているスタッフ陣から「こんなアーティストもいますよ」っていう推薦をもらうこともありましたけど、基本は僕のアンテナに触れた人に声をかけさせてもらった感じですね。普段、いろいろな音楽を聴く中で、気になるアーティストはどんどん出てきますから。

――2021年に開催された配信ライヴ【DISPATCHERS】【DISPATCHERS vol.2】では、ヨルシカの「だから僕は音楽を辞めた」やSUPER BEAVERの「人として」をカバーされていましたよね。


岡野昭仁:そうそう。そういうところからn-bunaくんとか柳沢(亮太:SUPER BEAVER)くんに声をかけさせてもらうことになったりとかね。「MELODY」をプロデュースしてもらったBREIMENは井口(理:King Gnu)くんの推薦で出会ったんだけど、それをきっかけに彼らと同世代のバンドをより掘って聴くようにもなって。その中の一組だったTempalayにすごく興味を持ったので、アルバムでは(小原)綾斗くんとコラボさせてもらうことにしたっていう流れもありました。




岡野昭仁『指針』MUSIC VIDEO




――若い世代とのコラボは昭仁さんにとって刺激的なものですか?


岡野昭仁:いやーほんとに刺激しかなかったですよ。どのアーティストも命を燃やして音楽に向き合っていることが伝わってきたので、それに自分もハッパかけられるというかね。しかも、それぞれの曲のデモでは作曲してくれた方が仮歌も入れてくれていたんだけど、その熱量がハンパなくって。その仮歌に負けないように歌おうと、そうとう頑張ってレコーディングしましたから。Eveくんとか綾斗くんの曲で特に思ったけど、「どういう発想をしたらこんな曲が作れるの?」っていう驚きもあったし。こういった若い世代がいてくれるならば、日本の音楽シーンは当分、安泰だなって思いました。

――ここまでのソロプロジェクトにおいて唯一デュエット曲となったのが、井口さんが参加された「MELODY(prod.by BREIMEN)」です。元々、ポルノの大ファンだった井口さんが「オールナイトニッポン0(ZERO)」でポルノの20周年を勝手にお祝いし、それに応える形で昭仁さんがラジオにサプライズ出演されたことから交流が生まれたんですよね。




岡野昭仁×井口理『MELODY (prod.by BREIMEN)』MUSIC VIDEO




岡野昭仁:そうですね。そこでコラボできないかなって話をさせてもらったのがきっかけでした。そのときはけっこう気軽な気持ちでそういうお願いをしたんですけど、今から考えたら恐ろしいことですよ(笑)。僕、King Gnuの日産スタジアムのライヴ(今年6月3日に開催)を観に行ったんですけど、そこであらためて噛みしめましたね。時代の先頭を行くモンスターバンドの一員であり、7万人もの観客の心を動かす井口理というボーカリストと一緒に俺は歌ったのかと。もしあの日産スタジアムのライヴを先に観てたら、怖くなってコラボしてなかったかもしれない(笑)。

――いやいや(笑)。逆に井口さんからしたらポルノこそがモンスターバンドだという認識でしょうし。


岡野昭仁:まあね。本人もそういったことを言ってくれるから、そこはありがたいし、本当に嬉しいことではあるんですけど。


――ポルノは来年でデビュー25周年を迎えます。井口さんを筆頭に、昭仁さんの存在に憧れる若い世代も多いと思いますが、そこについてはどう感じていますか?

岡野昭仁:そこは確かに身が引き締まる思いがあります。ソロを通していろんなアーティストと関わる中でも、そういった声をたくさんいただきましたからね。僕らをフォローしてくれる人がいるのであれば、その人たちを残念がらせないように、もっともっと頑張らないといけないなって気持ちになります。より進化した、よりパワーアップした歌をしっかり表現し続けたいですね。

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若い世代の発想のおもしろさを実感

――では、アルバム曲について伺いましょう。1曲目はn-bunaさんが作詞・作曲・アレンジを手掛けた「インスタント」です。


岡野昭仁:実はこの曲、「MELODY」より前にあったんですよ。n-bunaくんにはどうしても曲も作ってもらいたくて、「光あれ」で作詞してもらったタイミングですでにお願いしてたんです。「インスタント」を作るにあたっていろいろとお話をさせてもらったんだけど、そこでは音楽に対する思いをすごく明瞭な言葉でしっかりと伝えてくれて。その姿に感銘を受けたし、同時にこの曲は絶対に上手くいくなっていう確信が生まれましたね。

――曲が上がってからレコーディングまで、ちょっと時間が空いたわけですか?


岡野昭仁:そう。ポルノのアルバムリリースとツアーがあったので。だからこそ、レコーディングが始まったときは、「いよいよできますね!」って気持ちもすごく盛り上がりましたね。現場ではn-bunaくんがオケ録りや歌録りに関して、すごく明確な指示やジャッジをしてくれるんですよ。その光景にあらためて感動しました。仕上がりはもうめちゃくちゃかっこいいバンドサウンド。僕の大好きなタイプです(笑)。


――続く「ハイファイ浪漫」はEveさんが作詞・作曲を、Numaさんがアレンジを手がけられています。


岡野昭仁:すべてにおいて僕が今までにやったことのないタイプの曲が上がってきたので、最初はかなりビビりました(笑)。歌に関してはEveくんの仮歌のニュアンスを再現するために、自宅でかなり歌い込んだ上でレコーディングには臨みましたね。平歌の部分はちょっとラフに崩した表現にしたというか、ある意味、日本語っぽくない響きにすることで、Eveくんが構築してくれた世界観をしっかり届けることを意識したりとか。ラップの部分も含め、一度歌った後には現場に来てくれたNumaくんやスタッフ陣に確認しましたけどね。「大丈夫? 僕、ちゃんと歌えてる?」って(笑)。若い世代の発想のおもしろさを実感させてもらいつつ、「もう何でもやってやる!」という気持ちにさせてくれた曲でした。

――4曲目には先行配信された「指針」が。作詞・作曲は柳沢亮太さん、アレンジはトオミヨウさんです。

岡野昭仁:トオミくんが手を加えてくれたことで少しアレンジが変わりましたが、基本の方向性は柳沢くんが作り込んでくれたデモのまんまですね。デモには仮歌も入っていたんだけど、その歌がとにかく凄すぎて。その熱量に圧倒されつつも、そこに込められた魂をしっかり受け取った上で、自分なりにとにかく頑張って歌いました。歌詞に関しても共感する部分がすごく多かったですね。僕らの年齢になると、いろんな取捨選択をして、効率よく生きるようになったりするんですよ。でもそうじゃなく、たとえ間違った選択をしたとしても、それは決して無駄ではない。それさえも自分にとっての“指針”になっていくんだということをあらためて教えてもらえた気がします。楽曲も含め、「48歳、ここに学ぶ」という感じでした。




岡野昭仁@新曲「指針」のレコーディングに密着




――作詞・作曲をTempalayの小原綾斗さんが、アレンジを小西遼(CRCK/LCKS)さんと小原さんが手掛けたのは「芽吹け」ですね。


岡野昭仁:これもまた強烈なインパクトのある曲ですよね。レコーディングはこれが最後だったかな。僕は普段、けっこう前ノリで歌うタイプなんですけど、この曲は雰囲気的にちょっとレイドバックした歌い方をしていたんですよ。でも、綾斗くんからは「そこのノリはジャストのほうがいいかもしれないです」みたいなディレクションをもらい。ひとつのフレーズだけを何度も何度も繰り返して歌ったりもしましたね。最終的には「岡野さんのグルーヴのとらえ方でいいのかもしれないです」っていうオチになったんだけど(笑)、そこに至るまでにお互いが命を燃やし合うというか、細部まで徹底的に突き詰めていくことができて。その感覚は自分にとって久しぶりな感じもしたし、とにかくすごく楽しかったですね。

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ソロプロジェクトを通して見えた答えを表現できた曲

――「GLORY」は作詞を市川喜康さん、作曲を山口寛雄さん、アレンジを篤志さんが手がけています。


岡野昭仁:寛雄にはポルノのライヴでベースを弾いてもらっていますけど、実はレコ大獲ってる作家でもあるんですよ。そのことをふと思い出したので、作曲をお願いしたんですよね。「プレッシャーっすよ!」って言ってたし、そうとう悩んだみたいですけど(笑)、ものすごくいい曲をいくつか上げてくれて。その中の1曲が「GLORY」になりました。アレンジに関しても、「あ、いいアレンジしてくれるやつ近くにいたわ」と思って篤志にお願いして。オシャレでアーバンな雰囲気の仕上がりになりましたね。名だたるアーティストの代表曲をいくつも手掛けている市川さんに作詞をしていただけたのもすごく嬉しかったです。「この混沌とした時代に、岡野さんには夢を追いかけ続けることの素晴らしさをあらためて伝えて欲しいんです」という市川さんの思いをしっかり受け取った上で、レコーディングには臨みました。

――そしてアルバムは、昭仁さんが作詞・作曲を、江口亮さんがアレンジを手掛けた「歌を抱えて」で感動的なエンディングを迎えます。この曲ではお父様への思いを紡がれていますね。


岡野昭仁:はい。去年、父親が亡くなったんですけど、ポルノのツアー中だったこともあって、そのときはあまり正面から向き合うことができなかったんですよ。でも、そこから少し時間が経ち、姉から「お父さんのことを曲にしたら?」って言われたこともあって、自分で曲にすることを決めたんですよね。自分自身の人生における大きな出来事を真っ直ぐな気持ちで歌えるのはソロプロジェクトだからこそなのかなっていう思いもありましたし。すごくプライベートな曲ではあるんだけど、でも父のことを思いながらこの曲を歌い続けることは、自分にとって「歌を抱えて、これからも生きていく」ということになるはず。ソロプロジェクトを通して見えた、ひとつの答えみたいなものをこの曲で表現できたのは良かったと思いますね。




岡野昭仁@「GLORY」のレコーディングに密着




――岡野昭仁として初のアルバムをリリースした今、未来について何か思い描いていることはありますか?


岡野昭仁:タイミング的にポルノの25周年にまつわる活動が始まるので、アルバムタイミングでのソロライヴはちょっと実現しなそうなんですよ。そこが本当に申し訳ないんですけど、ライヴは有観客も含め、絶対にやろうと思ってます。配信ではミニマムなスタイルでやりましたけど、今度はバンドを従えた形でやってみるのもいいですよね。時期はまだわからないですけど、楽しみにしていてもらえたらなと。

――新たなコラボに関してはどうですか? 気になるアーティストっています?


岡野昭仁:コラボうんぬんではなく、最近気になってるアーティストはけっこういますよ。もうめっちゃ売れてるけどVaundyはすごいなって思うし、Kroiもかっこいいですよね。新しい世代の、世界にも勝負できる才能がどんどん出てくるのは本当に頼もしい限り。ソロとしてはまだ10曲しかないので、ライヴをするにはもうちょっと曲が欲しかったりもするわけで。またいろんなアーティストと刺激的な時間を過ごせたらいいですね。

岡野昭仁「Walkin’ with a song」

Walkin’ with a song

2023/08/23 RELEASE
SECL-2904 ¥ 2,800(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.インスタント
  2. 02.ハイファイ浪漫
  3. 03.Shaft of Light
  4. 04.指針
  5. 05.芽吹け
  6. 06.光あれ
  7. 07.GLORY
  8. 08.その先の光へ
  9. 09.MELODY
  10. 10.歌を抱えて

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