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<インタビュー>傷つくことを恐れずに挑戦していく――山下智久の思想と希望が詰まった『Sweet Vision』
Interview & Text: Mariko Ikitake
Photos: 筒浦奨太
山下智久のニュー・アルバム『Sweet Vision』がリリースされた。前作『UNLEASHED』がリリースされた2018年と今を比べて、私たちを取り巻く環境もライフスタイルもエンタテインメントの楽しみ方も随分と変わった。活動拠点を変えながら自分を追求してきた山下が5年の歳月を経てリリースした本作で描くのは希望、そして挑戦だ。
Netflix『今際の国のアリス』やHBO Max × WOWOW『TOKYO VICE』、Hulu『神の雫/Drops of God』など、ここ最近は国外でも配信されるグローバルな作品が続く山下。8月11日から5年ぶりのツアーが開始、シンガーとして新たな一歩を踏み始めた山下が、貪欲に挑戦し続ける理由とは。
――2020年以降、かねてより注力されていた海外活動が実際に作品として発表されています。前の事務所にご所属されている頃からSNSやYouTube、ダウンロードといったデジタル解禁もわりと早めだったので、当時から国外への発信も重視されていたのでは?
山下智久:そうですね。いろんなところで垣根や国境がなくなって、どんどん一つになってくるんだろうなって思っていました。SNSはリアルタイムで届けられますし、外国に行ったときの名刺代わりにもなりますし。自分が知られてないところで「こういう仕事をしてます」って説明するには、SNSを見せるのが一番早いですよね。SNSを始めた一番の理由は、応援してくださってる方とやり取りできるからですけど。
――ソロシンガー初期の頃は、豪華な方々が作った曲を山下さんの歌声やダンスで表現されていましたが、前作からサウンドも一新し、ほぼ全曲で作詞に入られていますね。
山下智久:自分が参加することで自分が心地いいと思うものに近づきますし、楽しさも増しました。多少なりとも今の自分を感じてほしいと思って。ドラマや映画の撮影に入ると、なかなか他のことを考える余裕がなかったり、タイミングによって変わったりするんですけど、音楽に時間を費やせるようになって、今回も音楽を掘り下げる時間がありましたし、何よりコンサートに向けてっていう気持ちで取り組めたのがよかったです。音楽とコンサートをセットで届けたいという気持ちが強かったです。
――パンデミックによって、ファンもアーティストも簡単に会えない時間が続きました。
山下智久:先の見えないトンネルに入っちゃった感覚でしたね。これは僕だけじゃなくて全員が思ったことだと思います。コンサートってやっぱりお互いに声を出して共有し合う場所なので、そういう場を制限なく設けることができて本当に嬉しく思っています。
――2曲目の「A Million Suns」はコロナ後のこれからを連想させます。どういったことを届けたいとイメージされて、このアルバムを作ったんですか?
山下智久:希望を届けたいっていう気持ちは常にあって、良いビジョンを皆さんが思い浮かぶ音楽があったらいいなと思って作りました。明確なビジョンが頭の中に浮かばないと、何も現実になっていかないですよね。当たり前のことではあるんだけど、意外と考えてなかったりすることで、自分も改めて考えてみたら、頭の中にあったものを現実にしてきました。どう強くイメージできるかが大事なんだと信じていますし、素晴らしいビジョンを思い描くきっかけにできたらいいなって。
――いろいろと有言実行してきたからこそ、そう感じ、そう伝えたいのでしょうか?
山下智久:はい、結構思う力が強いんだと思います。昔から思い描いたことを言葉にして、行動して実現してきましたし、今はより明確に具体的に考えられるようになって、実現するまでのスピードが上がっている気がします。コンサートもやりたいっていう気持ち、やってほしいって思ってくれる人がいないと実現しないです。僕一人だけじゃ成り立たないことはたくさんあるんですけど、実現のために自分で動いて、いろんな奇跡を起こしてきたと思っています。
――リード曲「Sweet Vision」の<人は綺麗なままじゃいられないのさ>にはどういう意味が込められているのでしょうか?
山下智久:やっぱり100%綺麗だと自分が綺麗だっていうことに気がつかないですよね。いろんな側面を知ることも必要で、ポジティブな面も強調されていくし、マイナスに聞こえることも実はマイナスじゃないっていう思いが自分の中にあるんです。そういうことを知ることで、綺麗な心を持っていたいっていう気持ちも強くなる。自分に傷をつけることで強くなれるっていう意味でもあります。
――傷というワードも度々出てきますが、マイナスなものをずっと引きずっていくわけではなく、それを知って未来に向けて自分がどう変わっていくか、ということですかね。
山下智久:はい。傷を負ったほうがいいと思いますし、強くもなれますね。失敗や傷つくことをネガティブにとらえず、どんどんチャレンジしていくことが最終的に愛に繋がると思います。
▲「Sweet Vision」MV
――オーディションに何度も落ちた経験があるようで、私達が思っている以上の傷をたくさん負ってきたのでしょうか?
山下智久:傷だらけですよ。ただ、チャレンジした分だけ成功に最短距離で近づけると思っています。一番チャレンジした人が、一番成功する可能性が高いと思います。
――正直、なるべくノーダメージで生きたいですし、今は効率化も重視されますが……。
山下智久:最初の失敗が一番キツいですよね。でも傷に慣れていくし、どんどん恐怖心も消えていって、失敗を怖がらなくなったときに、いろいろと成功率も上がっていくのかな、と。効率だけを重視するのも間違っているというか、自発的に行かないと一番効率が悪いようにも思えますね。僕は知らないことを学ぶことに貪欲なタイプで、自分から動くことで心の質も広がっていく気がしています。人として深みも出るし、恐れずに進むことが大切だと思います。
――新しいことに挑戦する姿はいろいろなところで見ますし、セルフプロデュースされている印象を受けます。なにか決めているルールはありますか?
山下智久:自分の心に正直にいるようにしています。あと、長い期間、こうやって活動することは本当に簡単なことじゃないと年々感じているので、自分に負けないように挑戦し続けていこうとも思っています。
リリース情報
『Sweet Vision』
2023/7/19 RELEASE
<初回限定盤(CD+DVD)>
LB9CD-0004 5,500円(tax in)
<通常盤>
LB9CD-0005 3,300円(tax in)
<ファンクラブ限定盤(CD+ファンクラブ限定盤DVD+フォトブック)>
LB9CD-0006 8,800円(tax in)
詳細・購入はこちら
公演情報
【TOMOHISA YAMASHITA ARENA TOUR 2023 -Sweet Vision-】
8月11日(祝・金)、12日(土)愛知・ポートメッセなごや 新第1展示館
8月15日(火)、16日(水)兵庫・ワールド記念ホール
9月2日(土)、3日(日)神奈川・ぴあアリーナMM
公演詳細はこちら
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――この数年、いろいろ拠点を変えていらっしゃいましたが、今回のアルバムは集中して書けましたか?
山下智久:ここ数年、働きすぎてちょっとガス欠でした。(歌詞が)一気に出てくるときもあれば、全く出てこないときもあって。書き溜めていた言葉をはめていったものもあれば、特に何も準備していないときにパッと出てきた言葉でできた曲もあって、不思議な経験でした。
――この数年間の山下さんの人生が反映されていると考えると、ビジョンという言葉がとてもしっくりきます。Prime Video『SEE HEAR LOVE 〜見えなくても聞こえなくても愛してる〜』で目が見えない役柄に挑戦されて、キャラクターともリンクしていますよね。
山下智久:いろんなエッセンス、いろんな影響が詰まっているアルバムになってますし、今の僕が感じる心地良いものが一枚になりました。偶然も活用して、自然の流れに沿ってできた作品ですね。
▲「I See You」MV
――1曲目の「Anima」から、今の山下さんをここから見せていくという印象を受けました。この曲を1曲目に持ってきた意図は?
山下智久:ライブの1曲目にいいかなと思って。あと、世界観を表現するのにぴったりだと思ったんです。タイトルはラテン語で魂という意味で、最近の仕事の関係で“魂”という言葉が妙に刺さったんです。魂が持っている力を忘れちゃっているなって。魂って誰でも知っている言葉だけど、日常ではあまり使わない言葉ですよね。魂が喜ぶことを俺はしていかなきゃいけないって思う部分があって、そのエネルギーが生きる活力になるから、「魂から愛することをもう一度したい」っていう思いで、今の自分を表現するのに一番適している曲です。デジタル社会の日本にいると、何もかも快適すぎて、情熱とか熱量も含めて魂が弱ってしまう気がするんですけど、海外でいろいろな人と交流すると、生きていく力、魂を感じるんですよね。全身全霊で生きている気がして、俺はそこからエネルギーと刺激を受けましたし、俺自身も弱っているんだなって実感しました。「ここから行こうぜ!」っていう思いで書きました。
――その熱い思いを伝えるのに適したサウンドだと思います。瞬時に惹きつけるメロディメーカーのUTAさんとは他の曲でもご一緒されていますね。
山下智久:UTA君はもう、メロディー工場のような方ですよね(笑)。「こういう感じで」というリファレンスを伝えて作ってもらいました。UTA君は僕が思い描くものをすぐ汲み取ってくれるので、信頼しています。
――ライブでのパフォーマンスも楽しみな一曲です。実に5年ぶりのツアーが控えていますが、準備は進んでいますか? 何かサプライズもあるんでしょうか?
山下智久:ひとつずつ作りこんでいる最中で、アルバムの曲もたくさん披露する予定です。昔の曲も歌おうかなと、いろいろと考えていますよ。
――それはファンの方々も楽しみですね。7月に『SEE HEAR LOVE』のプロモーションでアジア各国を回られて、現地のファンやメディアの反応はいかがでしたか?
山下智久:すごく熱烈な歓迎を受けて、ありがたいなと思ったのと同時に、もっと行きたいと思いました。テレビ番組の収録もあって、テンポも言葉も構成もBGMも日本とは違う雰囲気で、いい経験ができました。
――俳優として各国を訪れましたが、今後はシンガーとして再び各地を訪れる機会もできるのでは?
山下智久:そうですね、今回のツアーのパッケージを持っていけたらいいなって思っていますし、海外のファンの方たちと一緒に愛を育んでいけたらと思っています。
――俳優というフィルターを通して、今後はどんな作品に挑戦していきたいと思っていますか?
山下智久:甘いものと刺激的なものをいい塩梅でやっていきたいなと思います。甘い作品ばかりだと胃もたれしちゃうので、ちょっとそこにスパイスを入れていきたいなと。いろんな作品をいろんな監督といろんな場所で撮影して作っていきたいですね。
――ご自身が思う“山下智久”と世間が思う“山下智久”にギャップがあると感じたことはありますか?
山下智久:やっている役と時期によって、皆さんの印象も変わるのかなとは思います。ずっと俺のことを追いかけてくださってる方たちには、ある意味、俺は全然変わってないかもしれないですけど、俺はそのギャップさえも楽しんでいきたいと思ってます。ただ、それはあくまでグッドサプライズで。
――ファンのために活動されているアーティストが多いですが、その中でも“自分”を残しておかないと、ズレが大きくなりすぎて大変にならないですか?
山下智久:一人で頑張れる限界はもう超えていて、自分のためだけだったら、たぶんどこかで一回休憩していると思うんですよね。俺のことを応援してくれている、思ってくれている方たちの顔がちらつくと、「もう一回立ち上がろう」って気になるんです。立ち上がったからこそ、新しい景色も見えるわけで。お互いがいないと存在しない関係性だと本当に思いますね。そういう意味では、役を選ぶときにすごく慎重になることもあります。あまりにも救いようのない人間を演じるのは、やっぱりちょっと悩みますね。そこも多少は考えないと無責任になってしまうので。
――自分が演じることの影響まで考えていらっしゃるんですね。ファンの方々と直接会える日がもう近くまで来ていて、アルバムへの反応が楽しみですね。
山下智久:声出しもできるし、気にせずに情熱をぶつけられる場所を設けているので、熱い瞬間を作りたいです。とても楽しみです。
――『Sweet Vision』はストリーミングもされているので、ある意味、国をまたいで幅広い方に歌手としての山下さんを提示する第一歩にもなると思います。
山下智久:頑張ります。(グローバルな活動は)気合いも時間も必要ですけど、根性はあるので、やりたい気持ち、届けたい気持ちを強く持ち続けて、これからも発信していきます。
リリース情報
『Sweet Vision』
2023/7/19 RELEASE
<初回限定盤(CD+DVD)>
LB9CD-0004 5,500円(tax in)
<通常盤>
LB9CD-0005 3,300円(tax in)
<ファンクラブ限定盤(CD+ファンクラブ限定盤DVD+フォトブック)>
LB9CD-0006 8,800円(tax in)
詳細・購入はこちら
公演情報
【TOMOHISA YAMASHITA ARENA TOUR 2023 -Sweet Vision-】
8月11日(祝・金)、12日(土)愛知・ポートメッセなごや 新第1展示館
8月15日(火)、16日(水)兵庫・ワールド記念ホール
9月2日(土)、3日(日)神奈川・ぴあアリーナMM
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