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柴田淳 『月夜の雨』 インタビュー
ここ一年で発表したシングル曲がすべてスマッシュヒット。最新シングル『HIROMI』に関しては、セールスチャートで自己最高位を記録するなど、これまでの地道な活動が実を結んできている柴田淳。明るい未来が開けている今、本人はどんなことを考え、またどんな野心を蠢かしているのか?ニューアルバム『月夜の雨』の話を通して、とってもナチュラルに語ってもらった。
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--こうしてお会いするのは、去年の春、『花吹雪』のリリースタイミング以来なんで10ヶ月ぶりぐらいになるんですけど、その前回のインタビューのときに「すごく幸せで曲が書けない」と言っていたのが印象に残ってるんですよ。でもそのあとコンスタントにシングルをリリースして、こうしてアルバムも完成したので、良かったなって(笑)。なんだかんだでスケジュール通り走れてる感じなんですか?
柴田淳:そうですね。ただ今思い返すと「すごく幸せで曲が書けない」と言っていたのは、プレッシャーとはき違えていたのかなって。あの後すぐに「書かなきゃ!」っていうストレスがすごくて激太りしたりして(笑)。その姿がライブDVDに収められちゃったり(笑)。
--(笑)。その恵比寿でのシークレットライブ、実際にやってみていかがでした?
柴田淳:一番ムチムチ太っちゃってた時期だったので、それが記録として残っちゃってることが「イタイなぁ」って。しかも「久しぶりです」とファンに会うライブだったし、新しいスタッフも業界の人も勢揃いだったから(笑)。せめて膨張色じゃない衣装を着ればよかったと今になって思いますね~。
--なるほど(笑)。で、そんなライブもありつつ、今回のアルバム『月夜の雨』に到るまでに発表されたシングルがいずれもヒットして、『HIROMI』に関しては史上最高位のオリコンシングルウィークリーチャート5位ですよ!自分の名前がチャート上位にあるのはどんな気分?
柴田淳:嬉しいですね。「あんまり気にしないようにしよう」と思いつつもオリコンのデイリーチャートを見たら一瞬2位になってるときがあって「そんなバカな」と思いました(笑)。でもチャート上位に入ると、それだけで世の中が興味を示してくれるので、それは良かったですね。私ってすごく口コミで広がっていくタイプだったんですけど、そうやってマスコミでね、取り上げてくれると、知らないうちに自分の音楽を多くの人の耳に入れることができるし、「良かったなぁ」って。
--なんで今の質問したかっていうと、デビュー当時はCDショップで自分のCDが見つけられなくて、当然ながらチャートに自分の曲が載ってなくて、スタッフに「いいじゃん、チャートなんて」って言われたっていう話を思い出してですね(笑)。
柴田淳:あ!憶えてました!?未だに笑い話としていろんな人に話してるんですよ(笑)。そうそう、100位内にも入ってなくて。200位以下だったのかな?
スタッフ:いや、初登場、180位台か190位台・・・。
柴田淳:まぁ一緒ですよ(笑)。で、「これはメーカーによって載せてくれなかったりするのかな?」とか「このお店はウチのレコード会社のCDは扱ってないのかな?」とか、やっぱり素人なので全然分からなくて。そんな中、「いいじゃん、チャートなんて」って言われて「そういうもんなんだぁ」と思ってたんですけど、チャートの上位に入ってきたらみんなキャーキャー喜んでるから「なんだ、やっぱりチャート圏外ってとんでもないことだったんじゃん」って気付いて(笑)。 まぁでも今回改めて「メディアの影響力ってすごいなぁ」って思いましたね。チラッとだけどテレビにも出させて頂いたんですけど、それで一気に着うたダウンロード数が前日の3倍とか、すごいなって。
--でもこれオヤジじみた言い方ですけど、地道な活動の結果が今になって出てるんじゃないかなって思うんですよ。自分の音楽を信じて、その音楽を「好き」って言ってくれる人が少しずつ増えて、その積み重ねじゃないですか、今の状況って。
柴田淳:そうだと思います。ここに私がいられるのも、いろんな積み重ねがあったからですからね。一時期、いろんな歯車が合わなくなって、活動が停止しちゃったりもしたけど、それがなかったら今のスタッフとも巡り会えてなかったわけで。すべてのことに意味があるんだなって思う。もし何かがちょっと違っていたら今私はここにいなかったわけだし、少しずつでも積み重ねてきたモノが今に繋がってるのが私は嬉しい。でもまだまだ大きくは取り上げられていないので、もっと頑張らなきゃと思って。
--そこは目指してるんですか?
柴田淳:だってテレビにたった数分出ただけでそんなに違うわけだし、それは逆に考えると「まだまだ柴田淳は知られていない」ってことじゃないですか。私にはグレーゾーンのファンの方々っていないんですよね。コアなファンにすごく支えられていて、「この曲だけ好き」みたいな人たちはいない。で、私の曲を聴いて「好きじゃない」って言われるのは、全然構わない。「残念だな」とは思うけど、音楽って強制して聴かせるモノでもないし、値段が安いからって聴くわけでもないし、好きだから聴くわけじゃないですか。だから、人の好みって生まれ持ったモノなので仕方ないじゃないですか。それを「悲しい」とは思わないんですよ。でも“知られてなくて聴かれない”それは悲しいこと。だからテレビに出てとりあえず私の曲をたくさんの人に知ってもらいたい。
--それができる状況が徐々に整ってきている今、そういう意味では、幸せ?
柴田淳:そうですね。「決して後退はしてないな」って思うので。ほんのちょっとずつでも「前進してる」って私は常に感じているので、それは嬉しいです。すごく良いペースだし、それが着実に自信になってます。
Interviewer:平賀哲雄
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--そんな美しい流れの中でリリースされる今作『月夜の雨』なんですが、自身ではこの仕上がりにどんな印象や感想を持たれていますか?
柴田淳:出来上がったのが信じらんない。この数ヶ月で作ったんですけど、全部自分で作ったとは思えないですね。やっぱり今喋っている私と作品を作っている私の人格は全く違うので、「気付いたら出来上がっていた」みたいな感じなんですよね。だから「あの怒濤のレコーディングが終わったんだ」ってまだ実感できないんですよ。「まだなんかあるんじゃないか?」みたいな(笑)。今はそんな感じなので、実感沸くのって、リリースされてみんなから感想が返ってきたときなのかなって。そこでようやく完結すると思うので、今は足踏み状態ですよね。
でもやっぱり、この二年間があったから出来たアルバムだとは思っています。で、私は自分の気持ちをそのまま書いて、自分がとんでもないことを告白しているのを気付かなかったりするわけですよ。で、人に聴かせて、自分の深層心理を暴かれて初めて気付くんですよ。「とんでもないこと書いちゃった!」って(笑)。そういうことばかりなので、多分このアルバムを聞き込んでくれたら今の私の心もようというか、どういう精神状態なのかがよく分かると思います。すべてのアルバム一枚一枚、写真を収めるアルバムのように、音に変えた私が収められてるんですよね。それで今回二年ぶりのアルバムなので、二年間の重みをやっぱり私は感じますね。だから重量感を感じる、このアルバムに。「こんなに入ってるんだぁ」って。
--満足?
柴田淳:満足というか・・・あの~、人生ですね。例えば「十代になってやりなおしたい」とか言う人を私はあんまり理解できなくって。「ようやくここまで歩いてきたのに、もうやり直したくないよ!」みたいな(笑)。私はそういう考えなので、アルバムが一枚出来る度に「やっと辿り着いたぁ~」って思う。だから「満足」っていうより、山登りをしている感じ。なので私が充実感を感じるときがあるとしたら、CDラックに私のアルバムが増えていって、「こんなに並んでる」ってジ~っと見て、ニマァ~っとする充実感みたいな(笑)。そんな感じですね。曲目を並べて、60数曲リリースしてきたっていうのを見てもあんまり実感湧かないんだけど、CDが増えていくとニマァ~ってなるんですよね。「こんなに出したぁ!」って。「よくここまで来たね!」って。
でも大きなヒットもなくね、5枚もアルバムを出せてきてるっていうのは、正直すごいなとは思う。しかも自分のペースでやってこれてるっていうのも「ツイてるな」って思う。今後どこまでやっていけるか分からないけれども、出してもらえる限り出してもらいたいなって、頑張ろうって思う。
--今作『月夜の雨』を作る上でコンセプトだったりテーマはあったの?
柴田淳:とりあえず無いですね。ただ毎回毎回そのときの私をさらけ出す。良いところも悪いところもさらけ出すっていうことと、あと私はアルバムを大きなシングルとして考えているんですよ。もちろん一曲一曲聴いてもらうのもいいんですけど、やっぱり流れ、起承転結を考えて、一枚の物語になるようなアルバムとか、一曲一曲ジャンルが違えどもそれぞれにシングルに出来るほどのクオリティのアルバムにするっていうのが目標。そういう風に出来ているかどうかは別としても、それを目標にしてやっていく。だから今回もそれを掲げて、それに向かって頑張った感じです。
--さっき「今幸せ?」って聞きましたけど、今作いきなり「何も掴めなくて 誰も倒せなくて 僕はいつか僕を放棄した」ですよ。いきなり重い(笑)。ただこの『青の時間』の詞はやっぱりすごくリアルに響くんですよね。
柴田淳:ありがとうございます。この曲は、明け方に「曲が書けない!」ってときに書いたんですよ(笑)。
--なるほどね(笑)。
柴田淳:「明日までに書き終わらなきゃいけない」って追いつめられて生まれたんです(笑)。で、“青の時間”って、明け方4時半とか、月も落ちて、でも太陽は上がってこない、そういう微妙な時間のことなんですよ。あの時間って、ちょっと奇妙で、ちょっと怖くって、窓を開けても無音。あと暗闇が見える。夜だと月明かりとかで道路とか家の形は見えるけれども、暗闇は全く見えないじゃないですか。でもあの青の時間は、暗闇はクリアーになってるんだけど、でも青はすごくダークで、道路も家もどんなに目をこすってもクリアーには見えない、すごく不思議な世界なんですよね。で、夜なべして制作してると、精神的に極限状態で、ちょっと吹いた風に我に返ると、青の時間になってる。その瞬間の私の世界を描いたのが『青の時間』。朝日が昇ってきてくれれば正気に戻るんだけど、青の時間って極限状態だからナチュラルハイになるか、ナチュラルディープになるか(笑)、どっちかで。その瞬間に自暴自棄になることが多くて、その状態のまま書いちゃったのが、これですね。 ただメロディ的にロックであって、頑張れソングでも楽しいソングでもないから、「自分なんかどうにでもなっちゃえ!」でもいいかなって。怖いよね(笑)。
--僕ね、この曲を聴いて、「まだ何も始まっていないので、ここで終わるわけにはいかない」って柴田さんが前回のインタビューで言っていたのを思いだしたんですよ。で、柴田さんが掴みたいモノ、倒したいモノ、始めたいモノって何なんだろう?って思ったんですよね。
柴田淳:柴田淳の世界を世の中にもっと知ってもらうこと。「こういう曲は柴田淳だよね」みたいな。夏と言えば、サザン、TUBEって感じで、失恋と言えば、柴田淳。そんな法則ができるといいなぁって。あとは「どういうアーティストが好き?」って聞かれて答える項目に「柴田淳みたいな感じ」っていうのが入ってると嬉しいな。なので「メジャーになりたいな」とは思う。まだメジャーじゃないから。“知ってる人は知ってる”柴田淳なので、もっともっと知られたいと思いますね。
オリコンで5位に入って今回のような現象が起きるっていうのは、まだまだメジャーじゃないってことなんですよ。だからもっと頑張りたいなとは思うけど、自分の世界でメジャーになりたい。なれたら幸せだなって思う。なんか変にみんなが欲しいモノを書いて、商売をやるアーティストもたくさんいると思うし、それも器用でいいなとは思うんだけど、でも「自分の拘り、世界観が受け入れたら一番いいなぁ」って思う。そしたらもうこっちのもんですよね(笑)。
--(笑)。沸々とそういった野心を燃やしているわけですね。
柴田淳:うん。
Interviewer:平賀哲雄
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--アルバムの話に戻りますが、『青の時間』もそうなんですけど、『HIROMI』も『涙ごはん』も『真夜中のチョコレート』も『人魚の声』も『紅蓮の月』も今作は切なすぎです(笑)。これまでも切ないナンバーはいくつも書かれていますけど、おそらく表現力がレベルアップしてる分、このアルバム過去最大に切ないんですよ。自分ではどう思います?
柴田淳:もう「出ちゃった」って感じですね。
--もはや「切なさ」というのは、柴田淳にとって欠かせないアイデンティティになってきてると思うんですよ。それは多分「切ない描写が上手いから」というよりは、もうすごく自然と柴田さんの中から湧き出てしまうモノだからだと思うんですけど。
柴田淳:ですね!メロディの性格が切ないときが多いんですよね。性別も決まっていたりする。本当にメロディの持っている性格が強いので、「じゃあ、次はこういう詞を書こう」と思っても書けないんですよ。「こういうメロディだからこれしか書けない」みたいな。そういうのも最近分かってきた。そういう法則があるんだなって。
--そういう切ない性格のメロディがどうしても出てきてしまう根源にあるモノって何なんでしょうね?
柴田淳:最近、自分の好きな洋楽の楽曲を選ぶ仕事があったんですけど、選んでみたらバラードばっかなんですよ。だから好きなんだと思います。そういう哀愁漂っているというか、ちょっぴり切ない音楽が。だから出ちゃう。他のアーティストの曲を聴いて「こういう音楽やりたいなぁ。カッコイイなぁ」って思うんですけど、「なんで出て来ないんだろう!?」とは自分でも思います(笑)。だから最近は簡単に自分から出てきてしまう音楽に飽きていたりする。「またこんなの出てきちゃった」みたいな。それをみんなが「良い」って言っても、私は良いとか悪いとかじゃなくて、「飽きた」みたいな(笑)。でもその飽きっぽさが良い感じでマンネリ化を生んでいないとは思うんですよ。その飽きっぽさがなければ、もっともっと幅がなくって、全部同じ曲に聞こえていたかもしれない。だから飽きっぽさはプラスだと私は考えているので、どんどんいろんなことやっていこうかなって。そうしないと、つまんなくなっちゃうからね。
--うんうん。
柴田淳:だから今作では、『青の時代』ぐらいパンチのある曲が大好きだったりするし、コミックワールドなんですけど、『つまおうじ☆彡 (拝啓王子様☆第三章)』のメロディとかは歌いやすかったですね。でも私の中でここまでポップな曲は、男みたいに育ってきているので、ブリっこに感じるんですよ。だから、これ系の曲を歌っている人は、大抵女の子っぷりを全面に出してやってる方が多いし、この曲と一緒にされたくないと思うけど(笑)、こういうポップな感じなのを女の子が歌っていると大抵カワイイ系なので、どうしてもブリっこに感じちゃうんですよ。だから『つまおうじ☆彡 (拝啓王子様☆第三章)』は、全編ブリっこなんです。その上、とんでもない歌詞になっているので、いかに自分を捨てられるか、その勇気が必要なの。拝啓王子様シリーズは全部そうですね。キャピキャピって感じなのそれを人に聴かせるのが一番の試練(笑)。
だけど、楽曲的には歌いやすかったんですよ。キーが合っていたんでしょうね、きっと。いつもね、自分で曲作ってるのにキーが合わなくて大変なんですよ!他のアーティストの歌を聴いたり歌ったりして気付くことなんですけど、私の歌は難しい。だからね、今後のテーマは「歌いやすい曲」。だって、他のアーティストの歌は上手に歌えるもん(笑)。
--今話に出てきた『つまおうじ☆彡 (拝啓王子様☆第三章)』なんですけど、トラックがポップに響き渡る分、歌詞は今作で一番恐ろしく響くんですよ(笑)。
柴田淳:ですよね(笑)。まぁでも拝啓王子様シリーズは息抜きなんで。最初は多分、真面目過ぎたアルバムにならないように、幅を持たせるために始めたんですけど、それをコアなファンが気に入ってくれたのがシリーズ化したキッカケなんですよ。「続編があります」って言うと、ファンサイトですごく盛り上がったりしてて。「多分、離婚して子連れで出戻ってくるんじゃないでしょうか?」とか(笑)、物語になってるシリーズなので、いろんな予想をみんなでしてくれていて。ただテーマ的にどんどん重くなりたくはないんですよ、不倫とか、バツイチとか(笑)。基本的には笑いたいので。でもね、『つまおうじ☆彡 (拝啓王子様☆第三章)』笑えないんですよ!だけど、気軽に話題に出せるような面白いテーマでずっと行きたい。
あと、今回は「ゴスロリ」っていうキーワードが出てきたことによって、「この主人公はゴスロリ系なんだ。ということは、あのギタリストの男はビジュアル系だったんだ!」みたいな読みができると思うんですよ。そうやっていろいろ想像を掻き立てながら聴き続けるのは、面白いと思うんですよ。だから次回は「もうそろそろギタリストの心境を出してもいいんじゃないかな」と思ってます。そんな感じでずっとやっていきたいですね、このシリーズは。会社が許す限り(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
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--あと今回一番お話を伺いたかった曲があるんですけど、ラストの『私の物語』。柴田さんの歌声って比較的淡々とした中での感情表現が目立つんですけど、この曲に関しては想いが溢れてしまっている印象を受けたんですね。
柴田淳:そうですね。本当なら裏声にするところをしなかった。それぐらい声を上げて歌ってますね。やっぱりこの二年間の内の最初の一年間は、ものすごくツラかった一年間で、その前の何年間も本当に大変だったんですよ。味方が一人もいないところで戦わなきゃいけなかった。その状況には誰でも精神的に参っちゃうと思うんだけど、それでも戦い続けるために私が取った作戦は、一人二役じゃないですけど、誰も味方がいないんだったら自分が自分の味方になればいい。そう思って、やってきたんですよね。それでずっ~とやってきたんだけれども、新しいスタッフに会って、守ってもらえる中で生きてたら「自分のことを愛してくれる人がいるんだったら、私が私を愛さなくても大丈夫だ」「じゃあ、私も誰かを愛そう」って、ようやく外に目を向けることができたんです。それはこの二年間で生まれた一番強い想いだったから、それをそのまま歌にしちゃった。自分自身に向けた歌。で、「これから誰かを愛していこう」っていう自分の歌ですね。
--また今作『月夜の雨』の初回限定盤には、柴田淳が初めて本格的に演技に挑戦したショートフィルム『HIROMI』がDVDとして収録されるんですよね。どんな内容になってるんですか?
柴田淳:『HIROMI』って曲の中に出てくるヒロミじゃなく彼氏側の視点で描いた映画ですね。で、実際にヒロミちゃんっていう友達が私にはいて、そのヒロミちゃんの彼氏に対してものすごくいろんなことを感じて、でも私が彼に対して怒る筋合いはないし、暴れる方が惨めじゃないですか。でもその彼の気持ちがとっても許せなかったので「じゃあ歌にしちゃえ!」みたいな感じで歌にしたんですけど、この映画の中に出てくる“恋唄屋 ジュン”も一緒なんですよ。ヒロミが彼氏にフラれるんだけど、“恋唄屋 ジュン”っていう人に想いを託してそれを彼に伝えてもらう。で、現実に私がこれを歌にしてしまった理由としては、その彼氏とその彼氏みたいな世の中の男達に対して「ふざけんなよ!」って言いたかったんです(笑)。その役割は映画も現実も一緒。
--どうでした?初めての本格的な演技への挑戦は。
柴田淳:全然演技って感じじゃないですね。全く台本を頭に入れられず本番に挑まなくてはいけなくて、もういっぱいいっぱいだったんで(笑)。そのまま“素”って感じですね。ただ私は音楽が出来なかったらお芝居やりたかった人なので、すごく興味があって、今回このショートフィルムに出させてもらったのは、すごく嬉しくって!でも正直不完全燃焼で、「もっと出来るわ!こんなんじゃない!」って悔いてます(笑)。もう素人丸出しなんで!ただそうなるのは全部監督の意図通りだったんですよ。緊張して、ドキドキして、もじもじしているリアルさをそのまま撮りたかったみたいで。だから「良かった」って。すごいですよね、監督。
--なんかダイジェスト版を観た感じだと、柴田さんがご覧になったことがあるか分からないんですけど、『ケイゾク』ってドラマの中谷美紀さんみたいでしたよ。
柴田淳:本当ですか?『ケイゾク』の中谷美紀さんが演じた役って“柴田純”って言うんでしょ(笑)?でも私は観たことがないんですよ、スポットCMしか。殺人現場で寝転がってる中谷さんとか、「しばたぁ!」って言ってる渡部篤郎さんとか(笑)それぐらいしか観てないので。まぁでもちょっと挙動不審みたいな役なんだろうなって(笑)。機会があったら観たいですね。
--それと、3月17日からは、待望の初ライブツアー【柴田淳 ツアー2007 ~しばじゅん、はじめました!~】がスタートします。まずツアーが決まったときはどんな気持ちになりました?
柴田淳:とにかくみんな待ちくたびれていたので(笑)、私がツアーをやるのを。「いいかげんやらないと!」と思っていたので、決まって良かったですね。前に東北大学で学園祭ライブをやったときに、すごく環境がよくって、どんな風にマイクを持っても聞こえてほしい声が出てきて、どんどん声が出てきちゃって、楽で。マイクを使っているっていう感覚がなくなるぐらいに。で、本当に一体感!って感じで、「これで終わっちゃうの!?」って思うぐらい楽しくライブができたんですよ。「これならやりたいよ!ライブ」って思えたんですよね。なので今回もそういうライブにできれば、私、年がら年中ライブやるようになると思う。あと、コアなファンは私のことをよく分かっているので、これで失敗したら最初で最後のツアーになる可能性を感じてると思うんですよ(笑)。
--ファンも必死なわけですね(笑)。
柴田淳:はい(笑)。
--それでは、最後になるんですが、そのツアーに足を運ぶファンも含め、読者の皆さんにメッセージをお願いします!
柴田淳:「はじめまして」の方も、デビュー当時からずっと支えてくれてるファンの方も、最近はシングルもアルバムもちゃんと出るし、ツアーもやるし、ショートフィルムも観れるので、“しばじゅん祭り”だと思って、今年は楽しんでもらえたらなと思います(笑)。
Interviewer:平賀哲雄
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