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<インタビュー>YUTORI-SEDAI、ポップで切ない恋愛ソング「すき。」の続編「ぎゅっとして、」

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Interview: 森朋之
Photo: Yuma Totsuka

 2023年2月にリリースした「すき。」がTikTokをはじめとするSNSで拡散され、一躍、大きな注目を集めた3ピースバンドYUTORI-SEDAI。リスナーの共感を呼び起こす恋愛ソングはZ世代を中心に強い支持を集めている。

メンバーの金原遼希(V/G)、上原しゅん(Ba)、櫻井直道(Dr)にバンド結成の経緯、恋愛ソングにこだわる理由、「すき。」の続編として制作された新曲「ぎゅっとして、」について聞いた。

音楽が大好きな3人が集まったYUTORI-SEDAI

――YUTORI-SEDAIは金原さん、櫻井さんを中心に結成されたそうですね。


金原:はい。僕と櫻井は中学から一緒で。

櫻井:中1のときにクラスが一緒だったんですよ。

金原:高校は別だったんですけど、最寄り駅が一緒なのでたまに会ってたんです。高校で軽音楽部だったのは知ってたので、大学に入ったタイミングで「今度スタジオに入らない?」って。

櫻井:最初は趣味感覚だったんです。活動を続けているうちに、バンドを続けることが夢に変わって。

金原:僕は最初から「やるなら、ちゃんとやりたい」と思ってたんですけどね(笑)。結成してすぐに吉祥寺のバンドコンテスト【JYOJI-ROCK】に出たんですけど、たまたまグランプリになって「もっと自信を持ってがんばっていかないとダメだな」とマインドが切り替わったのも大きいですね。メンバーが抜けてなかなか活動ができない時期があったんですけど、上原がサポートで入ってくれて、2020年から正式メンバーになりました。

上原:僕は群馬県出身で、音楽の専門学校に進学するために上京したんです。違うバンドとして活動していたときにYUTORI-SEDAIと対バンして、そこから仲良くなりました。その頃からライブハウス界隈で名前を聞くことがあったし、「すごくいいバンドだな」と思っていたので、サポートをしてほしいと言われたときは嬉しかったですね。

金原:そうだったんだ(笑)。一緒にやるようになってからも「メロディがいい」とよく言ってくれるんです。そこを共有できているのは大きいですね。あと、一緒にバンドをやるなら柔らかい感じの人がいいなって思ってたんです。

櫻井:そうだね。

金原:僕ら、イザコザみたいなことはまったくないんですよ。それは曲の説得力にもつながってくると思うし、すごく重視していたところでしたね。



――みなさんの音楽的なルーツはどんな感じなんですか?


金原:中学まではアイドルが好きで、AKB48さんの曲とかを聴いてたんです。中学3年生の頃に兄がいろんなバンドを聴き始めて、その影響で僕もBUMP OF CHICKENさんやRADWIMPSさん、銀杏BOYZさんなどを聴くようになりました。もともと歌うのは好きだったので、高校では軽音楽部に入りました。

櫻井:小さい頃からテレビっ子だったので、ドラマの主題歌とかをよく聴いていましたね。妹がピアノ教室に通っていたんですけど、音楽は好きだったこともあって「自分も何かやってみたい」と思って、ドラムを始めたのが楽器に触れたきっかけです。中学は吹奏楽部で、高校で初めてバンドを組みました。

金原:中学のとき、全校生徒の前で吹奏楽部が演奏をしたことがあって、そのときドラムを叩いてる櫻井を見て、「カッコいいな」と思ったんです。それも、バンドをやろうって声をかけた理由だったかも。あと、全員が共通してMr.Childrenさんが好きです。僕の場合は、兄のiPodにミスチルさんの曲がたくさん入っていて、それをずっと聴いていました。

上原:僕も中学のとき、友達から「聴いたほうがいいよ」ってミスチルさんのCDを大量に貸してもらったんです。それ以来ずっと大好きです。楽器に最初に触れたきかっけは、おじいちゃんが趣味で弾いていたアコギです。ミスチルさんを聴いたことをきっかけにエレキを持ったんですけど、高校の軽音楽部にめちゃくちゃ上手いやつがいたので、ベースになりました(笑)。その後はいろんな音楽を聴いてましたね。ビジュアル系にもハマってました。

金原:実は僕もX JAPANさんとかGLAYさんとか、ビジュアル系が好きでした。

――AKB48、ミスチル、X JAPANって、ジャンルも時代感もバラバラですね。


金原:そうですね(笑)。やっぱりメロディがいいものが好きなんだと思います。「メロディがいいな」「歌詞がいいな」と思ったらジャンルは関係ないというか。それは今も同じです。

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みんなに受け入れらることを前提に、その中で差別化したい

――なるほど。ストリーミングでもよく聴かれている「幸せにしたいんだ」「もう一度好きになって」「次の彼女出来たんだね、」もそうですが、YUTORI-SEDAIの中心は恋愛ソングですね。


金原:そうですね。初めて書いた曲も、片想いの曲でした。自分自身が恋愛体質的なところもあるので、自然とそういうテーマを選びがちなのかなと思います。恋愛のドキドキ感や、上手くいかなかったときの悲しみも経験しているし、恋愛ソングを軸にしていきたいという気持ちはずっとありますね。

櫻井:すごくいい歌詞だと思います。

金原:浅いな(笑)。

櫻井:(笑)。共感性が高い歌詞なんですよ。女の子目線の曲もけっこうあるんですけど、歌詞を読むと「付き合ってた彼女もこんなふうに感じてたのかな」と思ったり。

金原:ありがとうございます(笑)。これも自分の性格だと思うんですけど、他人の気持ちを想像しすぎたり、考え込んじゃうんですよ。恋愛しているときも、自分の行動や言葉も含めて「相手がどう感じたか?」ということをセンシティブに考えてしまっているので、それが歌詞にも出ているのかもしれないです。



――そういう性格って、子どもの頃からですか?

金原:そうですね。小学生くらいの頃に、僕が言ったことで友達がすごく怒っていて、反省した、みたいな記憶がずっとあるんです。でも、こういう性格だからこそ歌詞にする言葉が出てくるんだと思うし、こういう自分も嫌いではないんですけどね。

――アレンジはどうやって組み立てているんですか?


金原:僕がコード進行とメロディを決めたものを二人に聴かせて、スタジオで合わせながら作っています。ベースラインやリズムは「こういう感じがいい」ってザックリ伝えて、あとはほぼ任せています。

上原:けっこうアナログです。

金原:機械に慣れていないので(笑)。最近は僕が録ったものを二人に送って、そこに音を入れてもらったりもしてるんですけど、必ずスタジオに入るようにしてます。

櫻井:3人で演奏するのも好きなんですよね。



――これまでにリリースされた楽曲は、じっくり歌を聴かせるタイプが中心。「フェスでオーディエンスを盛り上げたい」みたいな気持ちはないですか?


櫻井:フェスで盛り上がるバンドも好きなんですけど、ふだん聴くのはバラードとか聴かせる曲が多くて。このバンドでもそういう音楽をやりたいという気持ちはあります。

上原:最近はライブも増えてきたし「騒げ!」とまではいかないけど、お客さんを沸かせたい気持ちもありますけどね。

金原:これは僕の人生における価値観でもあるんですけど、たくさんの人に認められたいという思いがあるんです。ファッションでもそうですが、突飛な感じや個性的過ぎるのは好きじゃなくて、みんなに受け入れらることを前提に、その中で差別化したい。これまで聴いてきた音楽もMr.Childrenさんやback numberさんみたいな、大衆に馴染んでいて、なおかつ個性があるアーティストが好きなので、曲をじっくり聴いてもらいたいという気持ちもある。フェスで盛り上がるバンドもカッコいいと思いますけど、根幹にあるのは“たくさんの人に認められたい”ということなんです。

――素晴らしいと思います。YUTORI-SEDAIというバンド名も、インパクトと親しみやすさがありますね。


金原:僕らはまさに“ゆとり世代”なんですけど、この言葉のマイナスなイメージをポジティブに変えたいというところでバンド名にしました。子供の頃からテレビなどであまりよく言われなかったし、Z世代と比べて世の中で受け入れられていない気がして。何度か「バンド名、個性的すぎるかな?」って話し合う場面もあったんですけど(笑)、今となってはすごく気に入っています。

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ひたすらポップでかわいい曲を作ってみたい

――今年2月にリリースされた「すき。」がTikTokでバズったことも話題になりました。みなさんの手ごたえはどうですか?


金原:すごくありますね。「すき。」は「ひたすらポップでかわいい曲を作ってみたい」というところから始まったんですが、リリースした後SNSのフォロワーがどんどん増えて「バズってるんだな」と実感しました。

上原:「すき。」を出してから、ライブに来てくれるお客さんの数もすごく増えました。

櫻井:うん。SNSやLINEで昔の友達から連絡が来たり、「周りの友達も聴いてるよ」みたいな話もよく聞くし、うれしいです。

金原:実は、最初は不安だったんですけどね。あそこまでポップに振り切った曲を書いたことはなかったし、「受け入れてもらえなかったら、どうしよう?」と思っていました。「すき。」が今まで以上に聴いてもらえたのはすごく自信になったし、大きな成功体験でしたね。

――では、新曲「ぎゅっとして、」について聞かせてください。「すき。」に続き、ポップで切ない恋愛ソングですね。




YUTORI-SEDAI - ぎゅっとして、【Official Music Video】

金原:まさに「すき。」の続編を作ってみようというところからスタートしたんです。ポップな曲をもっと作りたいと思ったし、今回はとびきりキュートな曲にしたかった。でも、単に似ている曲を作っても仕方がないというプレッシャーはありましたが、みなさんに受け入れてもらえるような曲にしたかったので、作り始めて最初に出来たのが「ぎゅっとして、」のデモでした。

上原:最初から「ぎゅっとして」という歌詞もあって、「キャッチーでかわいい曲だな」と思いました。「すき。」にも衝撃を受けたんですけど、「ぎゅっとして、」も初めて聴いたときから「いける!」という印象がありましたね。

櫻井:歌詞もわかりやすくて、ノリもいい。ビートは今流行っている曲を参考にしているので、TikTokのダンス動画などでも使われたらいいなと思ってます。

――歌詞は女性目線。<私を安心させてよ、このままずっと離さないで>もそうですが、恋愛中の女性の切なさ、かわいさ、不安が表現されています。


金原:好きなように書きました(笑)。さっきも言いましたが、もともとアイドルの曲をよく聴いていたから、こういう切なくてかわいい曲も自分のなかに入り込んでいるんじゃないかな。あと、普段から人と会話するようにしてるんです。いろんな人の価値観を知りたいですし、それが無意識のうちに歌詞の言葉にも出てきてるような気もします。女性の友達に「彼氏に対する不満とかない?」って聞くこともあるし、恋バナ大好きです(笑)。

櫻井上原:ハハハハ(笑)。

金原:ただ、自分が感情移入できないと歌詞にはならないんです。いろんな話を聞かせてもらうなかで、自分自身がグッと入り込めたときに、それが歌詞の基になるというか。



――10月22日には、下北沢SHELTERで初めてのワンマンライブが行われます。ライブに対するモチベーションも上がってきてますか?


金原:上がってますね。曲を聴いて興味を持ってくれた人たちをライブでしっかりつかみたいという気持ちが強いです。二人にもよく話すんですけど、「今日のライブよりも明日のライブのほうが絶対に良くないといけない」というマインドを持っていないとダメだと思っているんです。いいライブをするのはもちろん、お金と時間を使って会場に来てくれた人たちを大切にしたいという一心ですね。

上原:最近、お客さんが返してくれるアクションや笑顔をさらに実感するようになりました。「この人たちを離したくない」と思うし、どんどん大きいステージに連れていきたいという気持ちが強くなっています。この前、初めて東名阪ツアーをやったんですけど、少しずつ自信もついてきました。金原が言うように、常に前回のライブを超えるライブをやっていきたいです。

櫻井:上がってますね。曲を聴いて興味を持ってくれた人たちをライブでしっかりつかみたいという気持ちが強いです。二人にもよく話すんですけど、「今日のライブよりも明日のライブのほうが絶対に良くないといけない」というマインドを持っていないとダメだと思っているんです。いいライブをするのはもちろん、お金と時間を使って会場に来てくれた人たちを大切にしたいという一心ですね。

――期待してます! 新しい曲の制作も続いているんですか?


金原:はい、ずっと書いてます。プレッシャーもあるし大変なこともあるんですけど、もう覚悟を決めたので。もっと上にいくためには、ライブと制作をしっかり続けてなくてはいけないし、弱音を吐いてる場合じゃないなという感じですね。



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