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<コラム>TOMORROW X TOGETHER、5人の歌唱力が存分に詰まった日本2ndアルバム『SWEET』の魅力



コラム

Text:筧真帆(日韓音楽コミュニケーター)

 今年1月に韓国でリリースされた、TOMORROW X TOGETHERの『The Name Chapter:TEMPTATION』が、米ビルボードのメイン・アルバム・チャート“ビルボード200”で首位を獲得した。“ビルボード200”で首位となったK-POPとしては、BTS、BLACKPINK、Stray Kids、SUPER Mに続き5組目となる。

 そんな世界で大活躍するTOMORROW X TOGETHERが、7月5日に待望の日本2ndアルバム『SWEET』をリリース。“第4世代のリーダー”と呼ばれ、独自の世界観で躍進を続けるTOMORROW X TOGETHERの魅力に迫る。

 TOMORROW X TOGETHERは、BTSを生んだマネジメントとして有名なHYBEから、2組目のボーイグループとして2019年3月にデビュー。SOOBIN、YEONJUN、BEOMGYU、TAEHYUN、HUENINGKAIの5人が奏でるファンタジーな音楽世界は、韓国内はもとより、世界中のリスナーを魅了し続けている。

 デビュー年は韓国の新人賞10冠に輝いたことをはじめとして、米ビルボードのメイン・アルバム・チャート“ビルボード200”に、デビュー・ミニアルバム『The Dream Chapter: STAR』がチャートイン(140位)。ミニ・アルバム『minisode1 : Blue Hour』ではぐっと順位を上げ25位、2ndアルバム『The Chaos Chapter: FREEZE』では初登場5位で9週連続チャートイン、ミニ・アルバム『minisode1 : Blue Hour』は最高4位で13週連続、そして本国最新ミニ・アルバムの『The Name Chapter:TEMPTATION』が、初登場首位に加えて19週連続チャートインという結果を残し、今年アメリカで発売されたK-POPアルバムで最長のランクイン記録となっている。メンバーたちは、同アルバムのリリース前から「“ビルボード200”の1位獲得が目標」と口にしていたので、思いもひとしおだろう。

 なお“ビルボード200”には、日本リリース作品の1stアルバム『STILL DREAMING』と、日本1st EPアルバム『Chaotic Wonderland』もチャートイン。K-POPに限らずとも2019年~2021年にデビューしたアーティストの多くは、コロナ禍で思うようにライブ活動が出来ず苦戦を強いられたが、その中にしてこの結果は快挙と言えるだろう。

 これほどまでに世界で支持されるTOMORROW X TOGETHERの強さとは何か。筆者が思うに魅力は大きく3つ、物語性を持った世界観、1人ずつのポテンシャルの高さ、アート的視覚要素が挙げられる。一つずつひも解いてゆこう。

 TOMORROW X TOGETHERはデビュー以降、音楽を物語で紡いできた。彼らのアルバムは主に、小説のごとく“チャプター=章”に分けられ、これまで第3章まで発表されている。第1章が“夢の章”として、『The Dream Chapter: STAR』、『The Dream Chapter: MAGIC』、『The Dream Chapter: ETERNITY』の3作品、第2章が“混沌の章”として『The Chaos Chapter: FREEZE』、『The Chaos Chapter: FIGHT OR ESCAPE』の2作品、第3章が“名前の章”として『The Name Chapter:TEMPTATION』がリリースされた。

 特に第1章では、「ある日、頭からツノが生えた」、「5時53分の空で見つけた君と僕」、「9と4分の3番線で君を待つ」など、長い曲名がトレードマークだった。HYBEの創業者で彼らのプロデューサーでもあるパン・シヒョク氏は、「TOMORROW X TOGETHERには童話のようなコンセプトが似合いそうだと思ってタイトルを考えているうち、長くなってしまった」と話しており、おとぎ話へ誘うような世界観が特徴だ。




「ある日、頭からツノが生えた (CROWN) [Japanese Ver.] 」/ THE FIRST TAKE


 歌詞やミュージックビデオはもちろんのこと、音楽面でもその世界観を伴っているのが興味深い。少年の出会いと成長を描いた“夢の章”はシンセポップを軸に、ハウスやディスコポップなどみずみずしい楽曲で構成、葛藤を描いた“混沌の章”では、ポップロック、パンクロック、エレクトロでやや強めのサウンドに、誘惑と旅立ちを描く“名前の章”では、オルタナ・ダンス、ボサノバ、ラテンなどを採用、全体にテンポアップし多彩なジャンルへ挑戦。さらに一貫してリバーヴ深めで愁いを帯びた音色は、“童話の世界”への没入感を誘発する。

 最新作『The Name Chapter:TEMPTATION』のリード曲となっている「Sugar Rush Ride」は、楽曲、コンセプト、ダンスの見せ方など多角的に趣向を凝らしており、“ビルボード200”の首位となったのも頷ける。第3章はピーターパンの世界をモチーフに、同作に登場するネバーランドのような異世界の森へたどり着き、“甘い悪魔のような微笑み”に惑わされる。小気味よいギターリフから爽やかに始まったかと思うと、神秘的なシンセサウンドから、一気に音数の少ないベース音と口笛だけのサビに展開。曲名の“Sugar Rush”とは糖分の過剰摂取で一時的にハイになる状態のことで、サビではまさにSugar Rushに陥るかのように、吐息まじりの歌と妖艶なダンスで魅了する。爽やかさ、儚さ、強さ、セクシーさまで表現の幅をぐっと広げ、聴く者を物語の世界へ引き込む楽曲だ。




「Sugar Rush Ride [Japanese Ver.]」ミュージックビデオ


 次に1人ずつのポテンシャルの高さとして、何より注目すべきは歌唱力だ。中でも特筆したいのはTAEHYUNの歌声。ハイトーンを地声でもファルセットでも出せるうえ、ロック歌手のようなシャウトに近い絞った声を随所で駆使しているのがアイドルとしては珍しい。おそらく喉が相当強いのだろう。特にロックベースの「0X1=LOVESONG (I Know I Love You)」のような曲では顕著に活かされ、繊細な曲でも彼の声が全体に緩急をつけている。TAEHYUNと並びハイトーンを歌うことの多いHUENINGKAIは透明感たっぷりの歌声で、ハリのあるYEONJUNの歌声とラップはエッジを際立たせ、SOOBINのマットな声質は歌に深みを増し、BEOMGYUのまろやかな中低音は言葉を優しく包み込む。軽やかな跳躍で舞うように踊るパフォーマンスも、アニメ主人公の実写版のように全員がイケメンなことも相当に高いポテンシャルなのだが、音楽だけでも満足させる歌の実力が、広いリスナーへ届いているのではないだろうか。ちなみに最近のK-POPは大人数が主流だが、5人組というのは少ない。つまり5人でも十分に魅せられるという証だろう。




「0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. 幾田りら [Japanese Ver.]」ミュージックビデオ


 そして、彼らが紡ぐ物語の世界を実現させる視覚要素が実に素晴らしい。ミュージックビデオが織りなす色彩と映像美には、どの作品も目を奪われる。グラフィックやAR(拡張現実)、プロジェクトマッピングなど様々な技術を取り入れた作品は、ひとつひとつがまるでアート作品だ。物語の内面をより具体的に描き出し、何度でも観たくなってしまうのは、TOMORROW X TOGETHER作品の特徴の一つと言える。

 日本でのフルアルバムは、約2年半ぶりとなる『SWEET』。“ビルボード200”でも勢いをつけた第2章・第3章の日本語楽曲に加え、日本オリジナル曲を含め12曲を収録。リリースに先駆け公開された「Sugar Rush Ride [Japanese Ver.]」のミュージックビデオは、同じ物語だが韓国版とは違うもう一つの世界線を描いているのが見どころだ。日本オリジナルの新曲「紫陽花のような恋(Hydrangea Love)」は、優里が書き下ろしたミドルテンポのラブソングで、優里ならではの切なさと強さを携えた世界観を、5人のスタイルで見事に表現している。ドラマ『最高の生徒 ~余命1年のラストダンス~』(日本テレビ)の主題歌にも決定し、ドラマのストーリーとどんな風に馴染んでゆくのかも期待したい。




「紫陽花のような恋 (Hydrangea Love)」


 K-POPでは新鮮なロック調の曲「0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. 幾田りら [Japanese Ver.]」はYOASIBIの幾多りらをフィーチャー、まさに今海外のビルボードチャートを賑わせる2組の競演を楽しめるだろう。ディスコポップが耳に楽しい初の英語曲「Magic」や、ハードコアに仕上がった「Good Boy Gone Bad [Japanese Ver.]」、TAEHYUN、YEONJUN、HUENINGKAIが作曲に参加した「君じゃない誰かの愛し方(Ring)」、GReeeeNが書き下ろした「Ito」、MOA(TOMORROW X TOGETHERファンの総称)へ贈る初のファンソング「MOA Diary (Dubaddu Wari Wari) [Japanese Ver.]など、新曲・既存曲ともに最新のTOMORROW X TOGETHERの魅力が凝縮されている。




「Magic」ミュージックビデオ





「Good Boy Gone Bad [Japanese Ver.]」ミュージックビデオ


 ちなみに2020年1月の日本デビュー以降、6曲の日本オリジナル曲をリリースしているが、「永遠に光れ(Everlasting Shine)」、「Force」はアップテンポな曲に対して、「Ito」以降、「君じゃない誰かの愛し方(Ring)」、「ひとりの夜」、最新作の「紫陽花のような恋(Hydrangea Love)」は全て5人の歌唱力を存分に活かしたパワーバラードとなっており、『SWEET』には「Ito」以降の4曲がすべて収録されている。エレクトロサウンドが中心の本国曲とはまた違った、美声を伸びやかに響かせる日本オリジナル曲と両方楽しめる贅沢な1枚だ。




「君じゃない誰かの愛し方(Ring)」


 7月7日には、ジョナス・ブラザーズとのコラボ曲「Do It Like That」がリリースされる。8月にはアメリカ・シカゴで開催される夏フェス【ロラパルーザ】に2年連続出演、しかも今年はヘッドライナーの1組をつとめるなど、快進撃は止まらない。世界で響くTOMORROW X TOGETHERの物語を、リアルタイムで体感してみてはどうだろうか。

TOMORROW X TOGETHER「SWEET」

SWEET

2023/07/05 RELEASE
TYCT-69267 ¥ 2,300(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Intro : FLOATING
  2. 02.紫陽花のような恋 (Hydrangea Love)
  3. 03.Sugar Rush Ride [Japanese Ver.]
  4. 04.0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat.幾田りら [Japanese Ver.]
  5. 05.Ito
  6. 06.君じゃない誰かの愛し方 (Ring)
  7. 07.Magic
  8. 08.Good Boy Gone Bad [Japanese Ver.]
  9. 09.ひとりの夜 (Hitori no Yoru)
  10. 10.MOA Diary (Dubaddu Wari Wari) [Japanese Ver.]
  11. 11.君じゃない誰かの愛し方 (Ring) [Unplugged Ver.]
  12. 12.Outro : FALLING

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