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<インタビュー>ナイル・ホーランの洗練されたサウンドと幸福感が充実のアルバム『ザ・ショー』が完成、日本のファンにも感謝

インタビューバナー

 ナイル・ホーランの約3年ぶりのアルバム『ザ・ショー』がリリースされた。コロナが落ち着きをみせ、世界各地で人々の流れや活気が戻っているように、本作でも前を向いて進んでいくこと、その先に見つかる幸せやときめきが表現されている。約30分のこのアルバムを聞いたあとには、心も晴れていることだろう。

 8月の【SUMMER SONIC 2023】で久々に来日するナイルは「当日は壮大なパフォーマンスになりそう」と語る。シンセを用いたスタートナンバー「ヘヴン」からもその光景が容易に目に浮かぶ。ギター少年だったナイルが、洗練されたサウンドに載せて伝えたいこととは。長年応援してくれている日本のファンへのメッセージも届いた。

「人生の様々な感情を表すメタファー」

――前作『ハートブレイク・ウェザー』(2020年3月13日発売)から3年。当時はパンデミックが始まった時期でしたが、この3年はナイルにとってどんなものでしたか?

ナイル・ホーラン:パンデミックの間、私たちは閉じ込められ、人生経験も少なかったです。それでもコロナ後は、幸せな場所から良いものが生まれ、より幸せな曲も書くことができるようになったと思います。今は違った視点で世界を見ることができるようになって、再びツアーの旅に出ることが楽しみです。


――どういう経緯で『ザ・ショー』というタイトルにしたのでしょうか? タイトル曲も収録されていますが、この楽曲に込めた思いも教えてください。

ナイル:例えば散歩中とか、どこかで見かけたものをランダムに書き溜めていて、タイトルや曲のコンセプトのヒントにしています。パンデミック中は人生が(映画の)『トゥルーマン・ショー』かのような、現実なのに不思議な時間に思えて、それを掘り下げたときに何が見つかるのか見てみたいと思うようになったんです。『ザ・ショー』は人生の様々な感情を表すメタファーになりました。タイトル曲では「もし全てが容易く、壊れることもないのなら、私たちが今手にしているものの価値を、どうしたら気づくことができるのだろう」と歌っています。この曲は言ってみれば私の子供のようなもので、今まで書いた曲の中で特に好きな曲の一つです。





「ザ・ショー」


――アルバムは、主に米ロサンゼルスのイーストウェスト・スタジオでレコーディングされたのですか? ここはビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』が制作された場所だそうですが、そこでのレコーディングはいかがでしたか?

ナイル:実は最初のアルバム(『フリッカー』)も『ペット・サウンズ』が制作されたイーストウェストで制作したんです。「ヘヴン」のボーカルには彼らが使ったプレートリバーブを使いました。イーストウェスト・スタジオに足を踏み入れる前から、このスタジオのことは知っていましたし、『ペット・サウンズ』が生まれた場所に立っていることも信じられなかったです。素晴らしい音楽がたくさん生まれる魔法のような場所を、数か月の間、ホームと呼ぶことができたことは、とても幸運なことでした。自宅で作業することも多く、ロサンゼルスのカラバサスにあるジョン(・ライアン)のスタジオやローレル・キャニオンにあるジョエル(・リトル)のスタジオでの作業も多かったですが、ほとんどはジョシュア・ツリーで借りたAirbnbでやりました。実は今度、ジョンのスタジオから何曲かアコースティックで届けるライブ・コンテンツを出す予定です。


――2ndシングル「メルトダウン」は、80年代のシンセ・ポップをモダンにアレンジさせたポップな楽曲ですね。歌詞には、「人生どんなことが起こったとしても、最終的にはうまくいく」というポジティヴなメッセージが込められています。この楽曲で伝えたかった思いとは?

ナイル:それがこのアルバム全体のコンセプトだと思います。私の悲しい曲にはいつもポジティヴな部分とネガティヴな部分があります。私はいつも曲の中で緊張と解放を繰り返すのが好きです。ある曲を聴いてみたら、実はその逆の意味が込められていた、ということがよくあります。「メルトダウン」は不安の気持ちを生々しく表現しています。誰かが不安な気持ちになっているのを見て「どうしたんだ、落ち着いてよ」と思うのは簡単です。でも、自分がその気持ちに陥ると、その先には恐ろしい場所が待っているように思えます。心の奥では「きっと大丈夫」と思っている気持ちをどの曲でも表現するようにしています。

 「メルトダウン」では緊張感を出すことが重要だと考え、「ヘヴン」より2倍くらいテンポが早いです。初期段階は「ヘヴン」のようにスウィングできる展開だったのですが、それでは伝えたいことを表せないと思い、1.5倍、1.65倍と徐々に早くしていきました。ちょっとしたダンスもできるようになっています。





「メルトダウン」


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「きっとすごいことになると思います」

――アルバム前半にポップな楽曲が多く揃い、後半に進むとドリーミーな展開の楽曲が目立つような気がします。全体の構成にストーリーがあるのでしょうか?

ナイル:確かに前半の数曲は強いポップですね。当初のイメージから遠く離れたサウンドに仕上がるなど、制作時にはたくさんの進展がありました。最初はシンガーソングライターのような雰囲気の曲にするつもりが、90年代のUKロックみたいな曲に行く着く、みたいな。「オン・ア・ナイト・ライク・トゥナイト」は、2曲を1つにするというアイデアがありました。また、リスナーにはこのアルバムで音楽のジェットコースターに乗ってもらいと思ったんです。バラードが10曲も連続したり、アップテンポな曲が複数続いたりするよりも、ちょっとしたアップダウンが必要だと思うんです。このアルバムを聴いたら、また最初からプレイしたくなると思います。

 私は“相対的”を念頭に曲を書いています。自分だけのことだと思うことが、実は他の方々も経験していることですし、それを知ることも重要だと思います。出身地や職業など関係なく、皆さんには何らかの形でこのアルバムの曲に愛着を持っていただきたいと思っています。


――今回はギターではなく、ピアノをメインに制作したそうですね。なぜ、そうしようと思ったのでしょうか? また、その影響で響く音に違いがありましたか? 今回のアルバムで初めてトライしたことがあれば教えてください。

ナイル:初めてハーモニカを吹きまして、まさか曲の中で自分がプレイするとは思ってなかったのですが、とても素敵な仕上がりになりました。ピアノがメインになった理由はコロナが原因です。というのも、実現しなかったツアーのスタート地点まで運んでいたのでしょう、その間にロックダウンになってしまったので、私のギターは全て、手元になかったんです。だから、リビングにあったアップライトピアノが大きな役割を果たすことになりました。私はピアノの弾き方を熟知しているわけではなく、自分が持っている音楽の知識をどんな楽器でも試すようにしています。(ピアノは)子守唄や童謡のメロディーを作るのにとても適していると思いました。普段とは違う音色や雰囲気が出て、ピアノの前で座っていると、無意識のうちに、いつもとは違う歌い方をしていました。「オン・ア・ナイト・ライク・トゥナイト」「ヘヴン」「サイエンス」「マスト・ビー・ラヴ」など、最初はピアノで演奏し、ギター主体の曲に変わったものもあります。


――ラストの「マスト・ビー・ラヴ」は、サウンドやボーカルから、これまでにはない壮大な愛を感じる仕上がりですね。これからのナイルの伝えたい音楽を垣間見ることができたのですが、今後は恋愛よりもっと広い意味でのラヴソングを作っていきたいと思っているのでしょうか?

ナイル:「マスト・ビー・ラヴ」は前作の「ディア・ペイシェンス」という曲から生まれたもので、恐怖心から人間関係を台無しにしてしまった自分に語りかける曲です。そのことを「マスト・ビー・ラヴ」の詩の中でも書いていますが、忍耐という感情に対して「落ち着いて」と手紙を書いている感じです。犬は感情に従って吠えるじゃないですか。この曲でも、恋愛関係における感情に自分を委ねています。この2つの曲が2枚のアルバムを結びつけるでしょうが、それぞれ違う側面から生まれたもので、この曲は多幸感が溢れていて、幸せな気分にしてくれます。フェスでオーディエンスが手をあげているシーンが想像できると思います。





「マスト・ビー・ラヴ」


――8月には【SUMMER SONIC 2023】への出演が控えています。日本では5年ぶりのパフォーマンスになります。日本のファンとの思い出はありますか? また、どんなパフォーマンスを予定していますか?

ナイル:日本はツアーで訪れるたびに大好きだと感じる場所です。初めて日本に行ったときはカルチャーショックを受けました。人や食べ物、土地の雰囲気が(他の国と)違います。ライブでは観客が敬意を払ってくれて、時にはほぼ無音になることもありました。バラードを歌つときに静かだと、とても心地よいです。

 日本で思い出に残っているのは、誕生日を何度か過ごしたことと素晴らしいライブをしたことです。日本食は私の大好物で、日本人は親切でフレンドリーな人たちです。日本に行くのが楽しみです。数年前に【SUMMER SONIC】に出る予定でしたが、パンデミックの影響で出られませんでした。日本のフェスがどんなものか知りたかったので、とても楽しみにしていました。当日は壮大なパフォーマンスになりそうで、今から待ちきれないです。どんな会場なのかわかりませんが、きっとすごいことになると思います。今後のツアースケジュールには絶対に日本を入れようと思っています。


――最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ナイル:ずっと待っていてくれてありがとうございます。私のことを忘れていないといいのですが……(笑)。みなさんに会える日がとても楽しみです。8月の【SUMMER SONIC】は、きっと素晴らしいものになると思います。


ナイル・ホーラン「ザ・ショー」

ザ・ショー

2023/06/09 RELEASE
UICC-10056 ¥ 2,750(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.ヘヴン
  2. 02.イフ・ユー・リーヴ・ミー
  3. 03.メルトダウン
  4. 04.ネヴァー・グロウ・アップ
  5. 05.ザ・ショー
  6. 06.ユー・クッド・スタート・ア・カルト
  7. 07.セイヴ・マイ・ライフ
  8. 08.オン・ア・ナイト・ライク・トゥナイト
  9. 09.サイエンス
  10. 10.マスト・ビー・ラヴ
  11. 11.ヘヴン (アコースティック) (日本盤ボーナス・トラック)

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