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<インタビュー>Wakanaの人間味も見え隠れする豪華作家陣と作り上げた3rdアルバム



Wakanaインタビュー

Interview & text: 服田昌子
Photo: ハヤシマコ

 ボタニカルボイスと称されるクリアな歌声が印象的なシンガー・Wakanaが、アルバム『そのさきへ』を5月31日にリリースした。約3年3か月ぶりのオリジナルアルバムとなる同作は名プロデューサーの武部聡志に加え、岸田勇気(作曲家・ピアニスト)、一青窈、半﨑美子(ともにシンガーソングライター)、岩里祐穂、松井五郎(ともに作詞家)、清塚信也(ピアニスト)といったそうそうたる面々が制作に参加。色とりどりの全11曲を収録している。そんな注目の最新作について本人に話を聞いた。

会えなかった時間を経験したからこそ、募った思いはとても大きかった

――約3年3か月ぶりとなる『そのさきへ』は、やはりコロナ禍での思いが反映されていますか?

Wakana:前作のアルバム『magic moment』は2020年2月のリリースで、そのイベントやライブは中止や延期になり、そこから約1年経って2021年にやっとライブができたんですが、会えなかった時間を経験したからこそ、募った思いはとても大きかったですね。それを経て『そのさきへ』を作っているので、今までよりもみなさんに寄り添った一枚にしたいなと思いました。そして、緊急事態宣言下では自分の声にすごく向き合ったんです。ボイトレの先生にかじりついてオンラインレッスンをしてもらいました。でもそれが自信につながったし、今回はキーの高い曲も多くなって、幅を広げられたのもよかったです。

――パワーアップしたんですね。

Wakana:手応えを感じられるレコーディングになった曲は「Flag」。速いし難しいし、悩みに悩んだんですけど、これが突破口になりました。自分の(歌への)執着の塊みたいなボーカルです。あと、一昨年のBillboard Liveの時に、武部さんが新曲をやろうって作ってくれたのが「明日を夢見て歌う」なんですけど、詞は私が書いたんですが、新幹線の中で最後まで練って(調整して)、大阪公演の本番では“ちょっと今日は譜面台を置きます”ってなるくらいホヤホヤでした。

――それでもいける歌唱力を得たんですね。

Wakana:これは特にコロナ禍での思いを落とし込んだ曲です。武部さんに“(歌詞は)今の気持ちでいいよ”と言われたので、ライブができるようになった世界のことを歌いたいと思って書きました。あと、「あとひとつ」という曲は5年前に私が初めて作詞をした曲です。武部さんが“ラストに流れるような祈りの曲だよ”って言ってくれたので、それをイメージして書いています。今回やっとレコーディングして収録できました。

――武部さんとのやり取りは多そうですね。

Wakana:音に関して妥協のない方でレコーディング後はすごく悩みますね。何が違ったんだろう?とか。でも、いつも最終的に武部さんの判断でやっぱりよかったんだ!ってなるからすごいです。ご自身でおっしゃるんですけど、武部さんはせっかちで常に鉛筆が動いていて、何でも早い。だから(ゆっくり考える)私は思考停止になることが多々あって、余計に焦ってしどろもどろみたいな(笑)。でも次につながるから、できないことがあって悔しい思いをしても諦めたくないし、そこから逃げることはないですね。次の日には切り替えて、“おはようございますっ! 武部さん、(差し入れの)おにぎり食べます?”みたいな。あまり召し上がらないんですけど、たまに食べてくれる時はすごくうれしくて、その様子を動画で撮っちゃったり(笑)。

――Wakanaさん、ユニーク。人見知りとかはしないですか?

Wakana:いえ。5曲目の「殻」は作詞が松井五郎先生なんですけど、リモート打ち合わせで“Wakanaさんの人となりをもっと知りたい”と言ってくださって、“私は傷つくのが怖くて何かを言い出せなかったり、一歩が踏み出せなかったりすることが多いです”って話したんです。それを松井先生が理解して「殻」を授けてくださったんですよ。(殻を破るために背中を押す)歌詞をいただいた時は、“傷つきたくないとか、私は何言ってたんだろう”って反省しました。

――では人見知りするタイプなんですね。

Wakana:でも初対面の人と話す時は、相手の心のドアに行ってノックするまでの時間がもったいなさ過ぎて突撃しちゃうんですよ。バーンッって。そこだけはせっかちなんです(笑)。「Butterfly Dream」を作曲・編曲してくださった岸田(勇気)さんとは今回が初めましてだったんですが、お会いする時にパンを差し入れに買っていったんです。で、“おいしそうですね”っておっしゃったから、これはチャンスだ!と思って、“これ見るだけなんですよ。食べられないんですよ”って言ったら、“そうなんですか……”ってなってしまって、“嘘です。ごめんなさい!食べてください”って謝ったら、“すいません。勝手がわからなくって……”って、すごく悲しくさせちゃいました。本当にすみませんでした!


▲ Wakana - Butterfly Dream

――Wakanaさん、曲のシリアスなイメージと違いますね(笑)。7曲目「KEMONO feat.清塚信也」にピアノと作曲で参加された、おしゃべり上手な清塚さんとは話が弾んだのでは?

Wakana:清塚さんはお話がおもしろくて時間があっという間に過ぎて。でも私は一つもおもしろいことを言えないので、武部さんと清塚さんの話に乗っかろうなんて大それたことは考えられなくてジーッとしてました。だからおもしろくないやつだと思われたと思います(笑)。

――その「KEMONO feat.清塚信也」はアルバムのアクセントになるアグレッシブな曲で、作詞は漫画家の鯨庭さんとWakanaさんの共作です。

Wakana:鯨庭さんはかわいくてすてきな動物の絵を描かれる方なんですけど、作詞は今回が初めてということだったので、共作という形で鯨庭さんが書く言葉を音符に当てはめたりする作業を一緒にやらせていただきました。鯨庭さんの世界を曲の中に落とし込んで、その言葉のよさを失わないようにするのはすごく楽しかったですね。


▲ Wakana - KEMONO feat.清塚信也

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光のその先へ歩いていこうという思いを込めた

――一方、3曲目の「標」は半﨑美子さんにWakanaさんの思いを伝えて詞と曲を作ってもらったそうですね。

Wakana:半﨑さんの曲も歌声も大好きで、ライブを見るといつも泣いちゃうんです。今回、半﨑さんには、2020年に亡くなった父への思いを書いていただきたいとお願いしました。でも“私もまだまだ(悲しみを)昇華できてなくて早いかなとも思うんです”ってお話ししたら、“Wakanaさんを語るうえでお父様は切り離せないから、ぜひ私は書きたいです。お父様とのエピソードも教えてください”と言ってくださって、私が泣きながら話すと一緒に泣いてくださって。作っていただいた曲には、私と父との思い出も、もう会えないんだなっていうさみしい気持ちも全部込めることができました。半﨑さんは人の思いをきちんと受け取って歌に変えることができるすごい方だなと思います。

――では最後にアルバムの総括として、タイトル『そのさきへ』に込めた思いを教えてください。

Wakana:人は光を求めて生きるからコロナ禍でも前を向き、いつか必ず普通に人と会える日が来る、いつかライブができる日が来ると思って乗り越えられたと思うんです。だから光のその先へ歩いていこうという思いを込めたいと武部さんにお話しして、アルバムのテーマは光が射すイメージということに。でも、このテーマは一生背負っていかなきゃいけないと思ってます。それは、今でも世界では悲しいこと、目を背けたくなることが起こっているし、さみしさを感じている人たちも絶対いるし、私自身もさみしく感じることもあるので、そんな時に寄り添うことができる(光である)音楽……歌を歌うシンガーである以上は背負い続けなければなって。そして今回、前を向き光を求める生き方を訴える曲を一生懸命に作ってくださった作家さんやアーティストさんにも、私は歌でしっかり返していかなきゃいけないと思いましたし、そうやって自分の声や曲に向き合った結果や答えをアルバムで出せたと思います。

――そんなWakanaさんの答えを堪能できるライブが、7月6日(木)に Billboard Live YOKOHAMAにて、7月20日(木)にBillboard Live OSAKAにて開催。今日のように楽しいトークも聞けますか?

Wakana:あ、MCは全然こんな感じじゃないです。お客さんの前だと緊張しちゃうんですよ。だから武部さんが見かねたんだと思うんですけど、以前リハーサルで、ずっと何か書いてるなと思ったら、“これを読みなさい”って(MC用のメモをくれた)。これをしゃべったらどう?ってことが、すごくうまくまとまってました。それほど心配されるレベルです(笑)。

――武部さんの親心ですね。でも音楽が楽しめれば、それが一番です。

Wakana:今度のライブは、音楽監督・ピアノは武部聡志さん。ギタリストの遠山哲朗さんと、マニピュレーターの前田雄吾さんをお迎えします。マニピュレーターさんが入ることで、アルバムの再現度が高くなると思います。打ち込みの音を入れてちょっとにぎやかにやらせてもらいながら、アコースティックのコーナーもやるつもりです。その両方を楽しんでいただけたらと思います。

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