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Special

<CASIO×Billboard Live>Jazztronikが語る、自身の“現在進行形”を見せられるのがライブの良さ

インタビューバナー

 「すべての人に音楽を奏でる喜びを」という想いから、新しい生活スタイルに寄り添う電子楽器を展開するCASIOがBillboard Liveとコラボレーション。Billboard Liveの出演者にリレー形式で「音楽の楽しみ方」を語ってもらう。

 アーティスト活動をする傍ら、ピアニスト、作編曲家として映画、ドラマのサウンドトラックやアーティストプロデュースも数多く⼿掛ける野崎良太のミュージックプロジェクト、Jazztronikが、来たる6月にBillboard Live YOKOHAMAで『Jazztronik Trio Plus Jazz Orchestra』と銘打ったライブを開催する。今回は藤谷一郎(Ba.)、天倉正敬(Dr.)というお馴染みのトリオ編成に、大編成のブラス隊やボーカリストが加わったスペシャルな「ジャズオーケストラ編成」でのステージになるという。クラシックやジャズ、クラブミュージックだけにはとどまらない独自の音楽性により多⽅⾯から評価されている野崎。そのクリエイティビティはどのように培われてきたのか。今回は鍵盤楽器を始めたきっかけなどプレイ面でのルーツに迫った。 (Interview: 黒田隆憲)

ピアノは「オーケストラの最高音から最低音まで1台で出せる唯一の楽器」

――まずは、野崎さんが楽器を始めたきっかけから教えていただけますか?

野崎良太:母親が音楽の教員だったんです。それでピアノを「やらされた」のが最初のきっかけでしたね(笑)。3歳くらいの頃からかな。当時は本当に嫌で、練習もさぼってばかりだったことを今になって後悔しています。小学5年生か6年生くらいまで、近くのピアノ教室に通っていたのですが、ちゃんと身につかないままやめてしまい、中学に入った頃は楽器には一切触らなくなってしまいました。自発的に「弾いてみたい」と思ったのは、中学の終わり頃だったかな。久しぶりに始めた時は、へ音記号すら読めないほど忘れていたのですが、意外と指が覚えているところもあって。嫌々ながらも刷り込まれていたのですね。


――どうして自発的にピアノを弾いてみようと思ったのでしょうか。

野崎:いろんなことが同時に起きたんです。一つはジョージ・ウィンストン。夜の7時か8時くらい、フジテレビでやっていたお笑い番組の後に3分くらい、彫刻の森の美術館が映る天気予報の番組があったんですよ。そこで流れていたのがジョージ・ウィンストンの「あこがれ」という曲で、僕が小さい頃にイヤイヤ弾いていた曲とはまったく違って「こんなピアノ曲があるんだ!」と衝撃を受けたんです。それから坂本龍一さん。日本人が米国アカデミー賞を受賞したというニュースを見かけたり、それとは別に『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」を聴いたりして。そしてもう一つは、今も僕が一番お世話になっている葉加瀬太郎さんが在籍していたクライズラー&カンパニーというバンド。彼らがやっていた音楽も僕が今までイヤイヤ演奏していたクラシックをとても分かりやすいポップスに仕立てていたことに感銘を受けました。


――ジョージ・ウィンストン、坂本龍一さん、そしてクライズラー&カンパニーの影響が大きかったのですね。

野崎:でも、母親はいつも「あなたが衝撃を受けていたのは『愛は勝つ』のイントロだったでしょ」って言うんですよね(笑)。確かにそれもあるんですけどね。とにかく、そこからは鍵盤楽器を楽しみながら演奏できるようになりました。


――鍵盤楽器の魅力はどんなところにあると思いますか?

野崎:高い音から低い音まで、あそこまで幅広く音が出せる楽器はピアノしかないんですよ。よく「オーケストラの最高音から最低音まで1台で出せる唯一の楽器」と言われるけど、まったくその通りだと思う。ここまでレンジの広い楽器は他に見たことがないですよね。


――ところで野崎さんは、コロナ禍で音楽への向き合い方や表現の仕方などの変化はありましたか?

野崎:僕はコロナ禍になるよりもずっと前、それこそ10年くらい前から「音楽の届け方は配信へと移行していく」と言っていました。リリース形態もアルバム単位ではなく、シングルなど1曲単位に変わっていくだろうと。その予想通り、今はストリーミングやサブスクが主流になり、コロナ禍でそれが加速していきました。Jazztronikとして今年4月からスタートした新シリーズ「Excursions」も、アルバムとしてのコンセプトを持った10曲を揃えてリリースではなく、1曲できたらそれをリリースするというコンセプトなんです。

 5月にその第二弾「”Hizuru” Jazztronik Remix」を配信しましたが、こういうやり方はコロナ禍で物事が一旦ストップしない限り、なかなか実現できなかったかもしれないですよね。当たり前のようにルーティン化していることは、思い切って断ち切る機会がないと、続けていく方が楽ですから。


――なるほど。

野崎:幸いなことに、僕はコロナ禍でもBillboard Liveでライブを続けることができました。ただ、普段なら会場で物販を展開し、サイン会や握手会なども開催することができたのですが、それがまったくできない期間がしばらく続いてしまった。そうなってくると、フィジカルの制作もままならなくなるんですよね。それでも何かしら表現活動を続けたい、という気持ちから配信リリースへ移行したところはあったかもしれない。それは他のアーティストもきっと同じだと思いますが。


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管楽器奏者総勢11名による、迫力たっぷりの演奏を浴びにきて欲しい

――今年になってコロナ禍もだいぶ収束し、声出しも解禁となりました。来たる6月にはBillboard Live YOKOHAMAで『Jazztronik Trio Plus Jazz Orchestra』と銘打ったライブが開催されます。今回は藤谷一郎さん(Ba.)、天倉正敬さん(Dr.)というおなじみのメンバーとのトリオ編成に、大編成のブラス隊やボーカリストが加わったスペシャルな「ジャズオーケストラ編成」でのステージだとお聞きしました。

野崎:大編成のブラス隊とともに、新しい音楽を作りたいとずっと思っていました。「ビッグバンド」形式だと使える楽器も限られてくるし、演奏スタイルも制約が増えてしまう。そうではなくて、いろんな楽器を入れて自由なスタイルで演奏をしたかったんです。「ビッグバンド」ではなく「ジャズオーケストラ」と名乗っているのは、そういう思いがあったから。管楽器奏者総勢11名による、迫力たっぷりの演奏をぜひ浴びにきて欲しいです。


――ここ近年は、ビヨンセがコーチェラでマーチングバンドを導入したり、デヴィッド・バーンも『アメリカン・ユートピア』でマーチングバンドによるパフォーマンスを披露したり、ブラスバンドの魅力が見直されている気がします。

野崎:確かに。アメリカはブラスの歴史が長いですからね。それに今はSNSが普及して、TikTokやYouTubeなどでマーチングバンドの魅力を世界中で発信するようになり、それをきっかけに知る人も増えている気がする。今って、僕もそうですが音楽をiPhoneの小さなスピーカーで聴くことが日常になっているじゃないですか。なかなかベースの重低音を浴びる機会って少なくなってきていると思うんですよ。生の楽器が空気を震わせる音って、こんなに迫力があってすごいんだよ?というのを是非とも味わっていただきたい。パフォーマンスとしてもブラスバンドは華があるんですよね。トロンボーンとかすごい迫力だし、鍵盤奏者がどんなに派手に演奏しても管楽器のサウンド、演奏スタイルには敵わない(笑)。


――Billboard Liveというハコについての魅力を、野崎さんはどのように感じていますか?

野崎:ステージの大きさがとても良くて、これが例えばもう少し大きくなると、ミュージシャン同士の距離もできてしまって、セッション感も減るんですよね。僕はライブにおけるセッション感が好きで、ミュージシャン同士がアイコンタクトをしながら、その場で音楽を生み出しているような気持ちになれるのは、Billboard Liveの良さだと思います。ここでライブをやるときは、ちょっと実験的な気分になれるところも気に入っています。お客さんも、ご飯を食べたりお酒を飲んだりして、リラックスして楽しんでいる人が大勢いるのも嬉しい。それがダイレクトに伝わってくるので、こちらも演奏していて楽しいんですよね。


――Jazztronik名義ほか、様々な形態で楽曲提供やプロデュース、サントラ制作などを行なっている野崎さんにとって、ライブパフォーマンスの重要性はどんなところにあるのでしょうか。

野崎:自分自身の「現在進行形」を、そのまま見せられるのがライブの良さだと思っています。まさに「今の自分」なので、具合が悪ければ演奏にも影響するし(笑)、調子が良ければ絶好調の演奏を聞かせることもできる。シーンの流行り廃りなどがある中、ミュージシャンは何より新曲や「今の自分」を観てほしいという気持ちがある。それを叶えられるのが「ライブパフォーマンス」なんですよね。


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