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<インタビュー>結成50周年を迎えたTHE ALFEE、絶対的な安心感から誕生したニューシングル『鋼の騎士 Q / Never Say Die』
今年で結成50周年を迎えたTHE ALFEEの通算72枚目となるシングル『鋼の騎士 Q / Never Say Die』が、5月17日にリリースされた。「鋼の騎士 Q」は、4月より放送されているドラマ『グランマの憂鬱』の主題歌として書き下ろされたもの。ケルト民謡を思わせる牧歌的なサウンドから一転、THE ALFEEらしいハードなギターとプログレッシブな展開が、鉄壁のコーラスワークとともに目の前に広がる。<勝ち負けが人生じゃないんだ><風向きは突然に変わる>といったフレーズには、ドラマの世界観に寄り添いつつも半世紀の活動で見出した彼らならではの人生訓が反映されているかのようだ。結成以来、休むことなく第一線を走り続けてきたTHE ALFEE。そのモチベーションは一体どこにあるのか。3人に話を聞いた。(Interview & Text:黒田隆憲)
「風向きって日々変わる気がしますよね」
――新曲「鋼の騎士 Q」は、どのように制作されたのでしょうか。
高見沢俊彦:この曲は、放映中のドラマ『グランマの憂鬱』の制作サイドから主題歌のオファーを受けて書き下ろしたものです。偶然にも原作コミックをすでに読んでいたので、イメージは非常につかみやすかったですね。物語は、村を取り仕切るグランマが、そこで起きる問題や事件を痛快に解決していくというもの。グランマの発する言葉、ひとつひとつに毎回共感していました。
――歌詞の中にある<勝ち負けが人生じゃないんだ>や<比べるなんて無意味なこと それぞれの道信じて><負けてもいい やり直せばいい 無理に頑張らないで>といったフレーズは、生きづらさを抱えている現代日本人へのメッセージでもあり、THE ALFEEとして活動を続けている中で見出した一つの「答え」のようにも感じました。
高見沢:そうですね。言われてみれば、THE ALFEEとして歌い続けてきたことに通じるところは確かにあるのかもしれないですね。これまでいろんな試練がありましたが、何があっても活動停止もせず、同じメンバーで活動を続けてきました。その中から自然に出てくる言葉というか。もちろん、ドラマに寄り添っている部分もありますが。
――<風向きは突然に変わる>というフレーズも印象的です。みなさんは、これまでの活動で「風向きが突然に変わる」と感じた瞬間はありますか?
高見沢:風向きって日々変わる気がしますよね。 僕は自分の信念として「バンドとは長く続けるべき」だと常々思っているのですが、続けて行く中で風向きは変わる。ヒット曲が出たときもそうだし結成10周年の時もそう。もちろん風向きが悪くなるときもあったけど、立ち位置を変えてみれば風向きも変わって見える。向かい風も追い風に変わりますからね。そうやって臨機応変にやってきた気がします。まあ、3人でいるということが大きいですよね。
坂崎幸之助:そうそう。3人でいると、どんな風が吹いても大丈夫だという安心感もある。
桜井賢:みんなバラバラの方向を見ているからね。どこから吹いても大丈夫(笑)。
坂崎:きっとソロで活動しているアーティストとか、バンドでも誰か一人がグループを牽引していくような形だと結構大変だと思います。
高見沢:大変だろうね。難しい時あるだろうから。
坂崎:そう思う。だからこそ、たまに活動休止したり充電期間を設けたりしているんじゃないかなと思います。僕らはそういうことをしなければならないような必要性をこれまで感じることもなく、やってこられたのは本当にラッキーだったと思います。それはきっと、3人とも、どんな状況になっても卑屈にならないというか、前向きでいられたのも大きいんじゃないかな。「ま、いっか」「明日になれば風も止むだろう」みたいな感じに受け流せる「次男坊気質」だから(笑)。
桜井:3人のもともとの性格的なものかもしれないね(笑)。
坂崎:そうそう。3人ともガツガツしていないというか。「絶対に成り上がってやる」みたいな野心も持たずにのほほんとやってきたところがあって。そのぶん他のバンドと比べるとパワーも全然ないし、認めてもらうまでは時間がかかった。
高見沢:そういう部分は確かに弱い。
坂崎:ミュージシャンって個性の強い人が多い気がするけど、そんな中で僕らみたいな普通の人間は(笑)、3人いないととても生き残れなかったと思う。3人集まってやっと一人前という感じだよね。
――何事も、あまり理想を高く掲げ過ぎると行き詰まってしまうのかなと、お話を聞いていて思いました。
坂崎:そう思います。僕らもデビューした頃は「理想」とか特になかったし、今もないですよ。(笑) ただ、「ライブがしたい、ツアーをやりたい」という気持ちだけは昔からずっと変わらず持ち続けています。ただ、最初のうちはプロ意識みたいなものも全然欠けていたし、途中「これではまずい」と思って意識を変えたので、そこが一番「風向きが変わった瞬間」かもしれないですね。
桜井:デビューの仕方も結構安易だったんですよ。当時はたくさんのグループが次々とデビューしていく時代で、それに乗っかるような形でデビューしちゃったものですから、まだまだプロになるために必要なものを何も持っていなかった。形になるまで時間がかかってしまったけど、その期間にそれぞれがゆっくり自分と向き合う時間を作ったのが良かったのかもしれない。それがあったからこそ、急にヒット曲ができた時もしっかりと地に足が着いた活動ができたのかなと思います。
――<見つけよう何気ない倖せ ありふれた日々の中で>というフレーズも心に響きます。みなさんが、「ありふれた日々」のなかで、「何気ないしあわせ」を感じるのはどんな瞬間ですか?
高見沢俊彦:やっぱり僕らはミュージシャンですから、ライブをやっている時が一番幸せを感じますね。コロナ禍で、ライブができる「当たり前の日々」そのものに幸せを感じるようになりましたし。最近は声出しも解禁になり、ステージに立っていると声援が飛んでくる……この瞬間こそ幸せを感じますね。ライブが、ステージが僕らの「ホーム」ですし、そこでファンの方たちの熱い声援を聞くことがパワーの源ですから。
桜井:ライブをずっとやり続けている事で、昭和生まれの方も平成生まれの方も、一緒に楽しめるコンサートができるようになったのも「幸せだな」と思います。コンサートというのは、歌だけじゃないですからね。すべての空気感を含めてですから。今でも高校生とか大学生が見にきてくれるのは、やっぱり僕らがこうやって新曲を出し続けているというのも大きいと思います。新曲を出し続け、ツアーで発表し続けていることこそ「現役」の証だなと思っています。
坂崎:あとは、夢中になるものや大好きなものを見つけること、それに没頭することが「幸せ」を感じる秘訣じゃないかなと思いますね。もちろん「夢中になるものがなかなか見つからない」という声も聞くし、学生の頃は将来に不安を感じるなど悩みもたくさんあって、なかなか一つのことに没頭するのは難しいかもしれないけど。でも、本当に何でもいいんですよ、どんなことでも夢中になれれば。
- 「THE ALFEEを続けていること自体が『新たなチャレンジ』」
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「THE ALFEEを続けていること自体が『新たなチャレンジ』」
――カップリング曲「Never Say Die」は、<逃げるな! 続けろ!>というフレーズが印象的です。まさにバンドを50年続けてきたみなさんから出る言葉だからこその説得力と言いますか。
高見沢:「弱音を吐くな!」という、自分たちに向けてのメッセージでもありますね。僕ら年齢で言ったらかなりの歳になりますけど、音楽は年齢でやるものではないですから。そのことを、身をもって証明するためにもまずは自分たちに喝を入れなければ、と(笑)。
――<支配された時間を 取り戻せその手に 苦悩を振り払い 目覚めよ風の時代>というフレーズがあります。現在開催中のツアーのタイトルも【THE ALFEE 2023 Spring Genesis of New World 風の時代】。「風の時代」という言葉に込めた思いをお聞かせください。
高見沢:西洋占星術では200年あまり続いた「地の時代」から、「風の時代」へと、このコロナ禍に移行したと言われていて。200年くらい前はちょうど産業革命が起きて、そこから経済の時代になりお金や土地など目に見えるモノを重要視していた価値観が「風の時代」になって一変してくるわけです。コミュニケーションや情報、愛情など目に見えないものを重要視するようになって。音楽もそういう意味では「風の時代」の象徴ではないかと。そう考えて、この曲やツアータイトルに用いてみました。
――確かに、音楽の届け方もフィジカルからデジタル、そしてストリーミングへと大きく変わってきました。それもある意味、「地の時代」から「風の時代」への変化に通じるものがあるかと。
高見沢:ただ、そういった変化の中で「コンサート」という最もアナログなものは何も変わらない。僕ら3人も替わりがきかないわけで、ライブをするために場所から場所へ、街からまた次の街へと渡り歩く「トラベリングバンド」としての在り方は、50年間変わらずずっと続いています。そのことへの矜恃みたいなものも、この「風の時代」という言葉の中に反映させているのかもしれないですね。
坂崎:何かが変わりつつあるということは、多かれ少なかれみんな感じていることだと思います。いろいろなことが限界に来ているというか。長らく続いた物質主義や、経済中心の考え方が「もう、いっぱいいっぱいなんじゃないか?」と。なので、高見沢が「風の時代」というキーワードを持ってきたときに、みんな何だろうって思うところがあると思います。新しい時代が訪れ、今までの価値観が通用しなくなっていくことに対し、不安もあれば「楽しみだな」という期待や希望もあるんですよね。僕ら人間の一生なんて微々たるものですし、この地球上で起きている出来事だって、この広い宇宙から見れば些細なことですからね。
桜井:ほんと、時代の潮目であることに間違いないと思います。自分はそういうことに鈍感な方だと思っていたのですが、じりじりと追い詰められている気持ちがあるんですよ、スマホがないと何もできないし(笑)。
高見沢:スマホはあればあったで意外と面倒だしね。
――便利になったはずなのに、かえってやることが増えて忙しくなっているのは理不尽ですよね(笑)。
坂崎:まさに「便利は不便」。桜井みたいに、いまだにスマホを持っていないのは正解かもしれないな。
――(笑)。先ほどからのお話にもありましたように、THE ALFEEは今年で結成50周年を迎えます。この50年間を振り返って、まず真っ先に思い浮かぶエピソードなどありましたらお聞かせください。
高見沢:まあ、色々ありましたけど、学生時代にこの3人が出会ったことが一番印象深い出来事だったのかもしれないですね。
坂崎:結局、その時のことを一番はっきり覚えているよな。
高見沢:そこから全てが始まっているしね。これも偶然と言えば偶然なんだけど。桜井と僕は同じ高校で、同じ大学に進学してそこで出会った坂崎とは誕生日が2日違いでびっくりして(笑)。細かいことだけど、「えー、そうなんだ」と驚いたのは今でも覚えています。まあ単なる偶然でしかないけど、今となっては必然だと思えるのは、こうして変わらず3人で続けてこられたからだよね。
坂崎:でも、これといって続ける努力をしてきたつもりはないんですよ。仲違いや言い争いみたいなものも一度もなかったし……他の人に対してはあるんですけどね。本当に不思議な関係だなあと思う。
高見沢:誰か強烈に個性のあるメンバーが引っ張ってきたとか、そういうことでもなくて。単に音楽が好きな普通の学生が集まって出来たバンドだからこそ長く続いているのかもしれないですね。
桜井:あとは、3人が健康であること。健康じゃないとツアー回れないですからね。
――これからやってみたいこと、挑戦したいことなどもありますか?
桜井:こうやってTHE ALFEEを続けていること自体が「新たなチャレンジ」ですよね(笑)。だって、自分たちよりも先輩のバンドは一つもないんだから。
坂崎:でもさ、「50年ってこんなに短いのか」と思わない? 20代とか30代の頃は、結成50年なんて考えられなかったけど、いざ迎えてしまうとあっという間だよ。
高見沢:じゃあ、あと50年出来るんじゃない?
坂崎:さすがに120歳は無理だろ。でも高見沢は生きてそうな気がするよね。少なくてもあと30年は確実に大丈夫でしょ。
高見沢:30年後って99歳? いやいや、大丈夫じゃないよ!(笑)
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- 「世界で活躍できるグローバルなアーティストになりたい」
鋼の騎士Q/Never Say Die
2023/05/17 RELEASE
TYCT-30135 ¥ 1,100(税込)
Disc01
- 01.鋼の騎士Q
- 02.Never Say Die
- 03.Loving You (夏の天地創造 2022 Live Ver.)
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