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<インタビュー>Daoko、劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』主題歌で描く共通言語とは

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 Daokoが、6月9日に《前編》、6月30日に《後編》が公開される劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』の主題歌を担当する。

 本作で描かれるのは、セーラー戦士たちの最後の物語“シャドウ・ギャラクティカ編”。シリーズ最終章にあたる劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』のためにDaokoは主題歌「月の花」を書き下ろした。後編の公開日にリリースとなる『劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』 テーマソング・コレクション』に「月の花」は収録となる。

 Daokoにとって「好き」の根源とも言える『美少女戦士セーラームーン』という作品。昨年の夏、運命的なタイミングで舞い込んできた主題歌のオファーから、彼女はどのようにして「月の花」を制作していったのか。多くの海外ファンからの反響やDaokoが見据える今後の展望、さらに新バンド・QUBITについてと話題は多岐に及んだ。(Interview & Text: 渡辺彰浩 / Photo: Yuma Totsuka)

「苦難を乗り越える美少女戦士たちの気高さが一つテーマにあった」

――Daokoさんが『美少女戦士セーラームーン』のアニメと出会ったのはいつの頃だったんですか?

Daoko:私はリアルタイム世代ではないんですけど、幼稚園生の時にケーブルテレビで初期の『美少女戦士セーラームーン』が再放送されていて、初めて観たのはその時ですね。変身シーンが可愛いし、幼稚園生からしたらお姉さんな感じにも見えて印象に残っていました。スティックとか出てくるアイテムは今見てもデザインが素敵だなと思いますけど、小さい頃はただ可愛いみたいな感じでした。あとは幼稚園でセーラームーンごっことかもやっていましたね。


――Daokoさんが思う『美少女戦士セーラームーン』の魅力はどんなところにあると思いますか?

Daoko:当時はそのビジュアルや変身シーン、世界観を全体的に受け取って“可愛い”というので好きだったんですけど、大人になってから観返してみると、モチーフが惑星になっていたり、デザインの細部にまでコンセプトが見えていいなと思いました。可愛いの解像度が上がって見えるようになって、【美少女戦士セーラームーン ミュージアム】(2022年に開催された大展覧会)に行った時も歴代の変身グッズをじっと見つめていました。





【劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」】予告2/《前編》6月9日(金) 《後編》6月30日(金)


――アニオタ視点で『美少女戦士セーラームーン』を語るとしたらどうですか?

Daoko:メルモちゃん(『ふしぎなメルモ』)とか「魔女っ子」と言われる魔法で敵をやっつけるシリーズもありますけど、『美少女戦士セーラームーン』のような女の子自身が戦士になって戦うというのは、当時としては先駆けだったんじゃないかなと思います。魔法や月のパワーというようなコンセプトがありつつ、ボロボロになりながらも戦っているところに胸を打たれますよね。ここからいろいろなアニメに派生していった原点と言える作品だと思っています。


――Daokoさんが2015年に発表した「かけてあげる」には、<きらめくステッキ><変身コンパクト>といった歌詞が出てきますよね。

Daoko:そうですね。好きで自分の曲に使うことはよくありますね。永遠の憧れというのはあって、魔法を使う夢を見てテンションが上がるとか(笑)。そういう忘れられない、自分の根っことして形成されているものではあるのかなと思います。こういうのもそうですけど(スマホカバーを見せながら)、いまだにキラキラしてたり光るものは好きです。


――そういった好きなものをリリックに取り入れるというのはヒップホップカルチャー的とも言えますよね。

Daoko:確かに、そういう解釈もあるかもしれないですね。女性というか現実でもメイクアップは魔法だと思っていたりするので。



――2017年の「さみしいかみさま」のリリックには<月>が印象的に出てきます。

Daoko:月とか太陽とか惑星は好きですね。そういう本も読みますし、十二星座を見たり、モチーフとしてロマンを感じますよね。


――そういった部分でも今回の劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』の主題歌はDaokoさんにぴったりだったと。

Daoko:特に最近は惑星について調べていたので、タイミング的にもすごいなって思いました。


――楽曲制作については「何度も原作やアニメを観返し、より世界観を深くインプット」していったとコメントされていますね。

Daoko:そうですね。漫画を全巻読み直して、アニメも観たり、あとは設定資料集、ファンブックを買って、改めて作品に向き合っていきました。


――事前に映画のプロットや台本を読んだり?

Daoko:文章も読みつつですけど、今回の映画は漫画原作通りなので、どちらかというと絵ありきで想像を働かせていきました。


――そういったインプットはアウトプットとして今回の「月の花」のどのような部分に表れていますか?

Daoko:『美少女戦士セーラームーン』という作品に寄り添った楽曲であるべきだと考えて、自分自身の世界観と『美少女戦士セーラームーン』の世界観で通ずる共通言語を探して作っていきました。私は資料とか原作に忠実にっていう意識が強すぎるところがあるので、そこを作曲と、作詞でも参加していただいている永井(聖一)さんが柔らかくしてくれています。『美少女戦士セーラームーン』の曲だと知らない人が街で「月の花」を聴いた時に素敵だと思ってもらえるように。『美少女戦士セーラームーン』のファンの方たちに喜んでもらうことを目標にしながら、いろんな人に届ける意識で言葉遣いや表現の仕方を調整していきましたね。苦難を乗り越える美少女戦士たちの気高さが一つテーマにあった感じです。


――『美少女戦士セーラームーン』の制作サイドからは、楽曲のイメージのオーダーなどはあったんですか?

Daoko:最終章と銘打たれている作品のエンディングなので、こちらはバラードを勝手に想像していたんですけど、苦難に立ち向かっていく美少女戦士たちの思いや女性の強さを代弁するような方がいいという話になっていった気がします。しっとり系ではなく、華やかな感じに。なのでアレンジとしてパワフルだったり、ドリーミーなところがあったりしていますね。





「月の花」ミュージックビデオ


――永井さんはTESTSETのギターとして活躍されている方ですが、Daokoさんのバンドのサポートメンバーでもありますよね(4月上旬に取材)。

Daoko:Daokoソロ名義のバンドメンバーとしてずっとサポートしていただいていたんですけど、その同じメンバーで新たに『QUBIT』というバンドを組むことになったんです。つまりは、永井さんが本当に正真正銘のバンドメンバーになる。そういう近しい間柄でもありますし、永井さんとは何回か曲をご一緒させていただいているので。私のバンドのサポートでは、いろんなところにメタルとしてのギターを散りばめたりしていて、そういった熱いカッコいいギタースタイルも好きなんですけど、永井さんのギターって永井さんにしか出せないお星様みたいなキラキラしたサウンドでもあるんですよね。それが『美少女戦士セーラームーン』の世界観に合うんじゃないかなと思ってお声がけさせていただいたのはあります。


――力強いバンドサウンドの奥で、キラキラとしたシンセが鳴っているのも印象的でした。

Daoko:そうですね。芯の強い女性の美しさを感じられる楽曲になったかなと思います。そこが、(月野)うさぎさんの好きなところでもあるし、ほかのキャラクターも含めて共感するところです。


――編曲にはagraphとして活動もされているkensuke ushioさんがクレジットされています。様々なアニメの劇伴を担当されている方です。

Daoko:アレンジで一緒にお仕事したのは今回が初で、永井さんのご紹介でした。kensuke ushioさんは器用な方だなと思いましたね。音もカッコよくなったし、映画館で鳴ったら気持ちいい音を散りばめてくださって。間奏部分は宇宙を連想させるような壮大な感じで、映画館での迫力を考えてみんなで楽しみながらノリノリで作っていった感じです。今回、私は歌唱と歌詞担当で、作曲と編曲の間のやり取りを全部は見れていなくて。気づいたらすごいものが出来上がっていたという感じではあったんですけど、わりと完成された状態でデモが来ました。



――Daokoさんの歌い出し始まりというところにも驚きました。

Daoko:曲の構成に関してはファーストデモの段階ですでにしっかり出来ていて、その時から歌始まりでした。映画館でパッとエンディングになった時に声から始まるというのはキャッチーだし、意図的なところもあるかなと思います。


――Daokoさんのボーカルが、これまでと比べると凛としているようにも聞こえました。

Daoko:凛と歌っていましたね。永井さんのボーカルレコーディングでの提案もあり、あのフロウになりました。最初はもうちょっと可愛い感じで歌っていたんですけど、サウンド的にも凛と歌った方が全体のバランスはいいなと、今聴き返しても思いますね。確かに声も、歌い方も新しいDaokoかもしれないです。


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  1. 「アプローチの仕方を模索中です」
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「アプローチの仕方を模索中です」


――『美少女戦士セーラームーン』の主題歌を担当するということで、海外のファンからの反響はありましたか?

Daoko:『美少女戦士セーラームーン』は海外でも根強い人気があって、主題歌を担当することが発表されてからは海外の方のコメントも多かったですね。私自身もアニメと関わることがきっかけで海外のファンの方が増えていって、現状海外のファンの方がかなりたくさんいるので、その人たちもめちゃくちゃ喜んで公開を楽しみにしてくださっています。『美少女戦士セーラームーン』が好きな方々には新たにDaokoを知ってもらえる機会になったらいいなと思っていますし、いろんな国の人たちが映画を観ると思うので、その人たちに「月の花」がどういう風に聴こえるかなとも思っています。


――「海外のファンの方がたくさんいる」とおっしゃっていましたけど、YouTubeでのコメントも大半が英語ですもんね。

Daoko:そうですね。日本のアニメをリスペクトしている海外の方はすごく多いと感じていて、海を越えて愛される作品は日本の宝じゃよと思っています(笑)。


――Daokoさんは早くから海外でのライブを行ってきていますよね。

Daoko:まだコロナが始まる前は海外でライブをやっていましたし、アニメフェスにも出させていただいたこともありました。海外の方ともっと交流したいという気持ちが今は強いですね。普通に海外に行けるようにもなっていますし、「月の花」を海外のファンの方に生で聴いていただきたいです。


――海外でのライブでは、お客さんのリアクションも日本とは違いますか?

Daoko:国によっても違いますし、それぞれ個性があるなとも思いますけど、身体の表現が大きかったりしますね。音楽性にもよりますけど、日本は全体的にシャイで、各々が内側で楽しんでるって感じですけど、海外はめちゃくちゃ踊っていて、それはそれで楽しかったです。その時はそういった光景を見たことがなかったので、感動した部分でもありました。最近は日本のお客さんにも踊ってほしいなと思って、そういったライブ構成にしたりしてるんです。


――海外のライブは踊ってるし、歌ってるというイメージもあります。

Daoko:大合唱が起きたりもするので、すごいなって。それを早く再確認しに行きたいです。



――事前に質問案として共有させていただきましたけど、Daokoさんが最近聴いている海外アーティストを教えていただけますか?

Daoko:(スマホを見ながら)最近はDJの練習をしているので、ハウスとかを聴いていたりするんですけど。これは有名どころですが、スクリレックスの新譜が全部良くて。


――Instagramの投稿BGMに「Rumble」を使ってましたよね。

Daoko:使ってましたね。元々好きなんですけど、また新しい方向性を切り出してきた感じがあって。スクリレックスも日本のことが好きで、最近も来日していたり、曲のサンプルに日本語が入っていたりしますし。そういったところで『美少女戦士セーラームーン』を観てる人にもスクリレックスは共通してそうだなと思いました。


――「Rumble」が収録されている『Quest For Fire』がそうですけど、Daokoさんの『anima』から『MAD』あたりまでのリリース作品は低音の感じがスクリレックスとどこか通ずる部分があって。【FUJI ROCK FESTIVAL】(【フジロック】)の深夜のレッドマーキーが似合うような。

Daoko:【フジロック】は意識してますね。Daokoとしてソロで出るんだったらレッドマーキーの深夜とか、いつかはと思っています。あとは直近だと、エイジアン・ダブ・ファウンデーション、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、スクエアプッシャーとかですかね。久しぶりに聴いたら良すぎて。最近レッド・ホット・チリ・ペッパーズのライブに行ったっていうのがあるのかもしれないですけど(笑)。カッコいいギターリフをやられると痺れますし、ブレイクビーツが好きなので。自分の原点に立ち返るような聴き方をしています。


――ブレイクビーツと言えば、『イジらないで、長瀞さん 2nd Attack』のエンディングテーマ「MY SADISTIC ADOLESCENCE♡」についてツイートしていましたよね。

Daoko:あれは『長瀞さん』もブレイクビーツじゃん!と思って反応しちゃったんです。たまにあるんですよね。アニメの楽曲って、そういうところが面白いなって。よく聴いたらこれガバキックじゃん! みたいな。アニメ楽曲のそういうところにキュンときがちですね(笑)。


――Daokoさんがこれから挑戦していきたいジャンルだったり、または制作している楽曲はありますか?

Daoko:バンドはバンドでカッコいい見せ方があると思うんですけど、Daokoソロとしては好きを突き詰めていくために事務所を独立したっていうのがあります。電波ソングの可愛いアニソンも作りたいなと思っているし、クラブでみんなで踊れるような四つ打ちとかハウスのようなクラブミュージックも攻めつつ、自分で作ったデモの世界観を拡張していったり、最近はギターを練習していたりもするので、アコースティックのライブでできるような楽曲を作ったり。ジャンルは限らず好きな音楽がたくさんあるので、今後も好きな音楽を引き続きやっていきたいなと思います。でも今は海外に行きたい気持ちが強いので、海外の方を想像しながら作ったりもすると思いますし、そこは踊れる音楽なのかなって思ったりもしますね。海外の方とコラボしたりもしてみたいですし、いろんなアプローチの仕方を模索中です。


――過去にはBECKとのコラボ曲「Up All Night」がありましたよね。

Daoko:そうですね。ほかにも海外のトラックメーカーの方とやったりしたこともあるんですけど、今は実際に会いに行けちゃったりするようにもなったので、スタジオに一緒に入って作るとかもしてみたいなと。そういうスタジオセッション的なのもやれたらいいなと思っています。


――個人的には「Forever Friends」とか「風の谷のナウシカ」のような神秘的で、センチで、揺蕩うようなDaokoさんのボーカル曲も好きです。

Daoko:ありがとうございます。私も自分の声に合ってるなと思います。歌うにも気分の波があるので、その波を点で出していけたらいいなと。その中間地点を“Daoko”として。


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(アニメーション) Daoko エターナルセーラームーン(CV.三石琴乃) エターナルセーラーマーキュリー(CV.金元寿子) エターナルセーラーマーズ(CV.佐藤利奈) エターナルセーラージュピター(CV.小清水亜美) エターナルセーラーヴィーナス(CV.伊藤静) セーラー火球(CV.水樹奈々)「劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」テーマソング・コレクション」

劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」テーマソング・コレクション

2023/06/30 RELEASE
KIZC-711/2 ¥ 3,000(税込)

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Disc01
  1. 01.月の花
  2. 02.ムーンライト伝説
  3. 03.セーラースターソング
  4. 04.流れ星へ
  5. 05.Happy Marriage Song

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