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<インタビュー>コムドットゆうまがアーティスト“悠馬”で見せていく新しい姿
Interview & Text: Mariko Ikitake
Photos: Yuma Totsuka
5人組YouTuber、コムドットのメンバーであるゆうまが、アーティスト“悠馬”として「カーテン」で歌手デビュー。18歳の頃に作った楽曲に、現在の自身の気持ちを加え、ブラッシュアップして生まれ変わった「カーテン」は、Billboard JAPAN総合ソングチャートで11位に初登場し、華々しいデビューを飾っている。「カーテン」が完成されるまでの経緯を聞いていくなかで見えてきたのは、歌手として新しいフィールドに進んでいく覚悟と全てを吸収していく前向きな姿勢、アイデアが尽きないという彼のクリエイティビティの高さだ。
――ついにデビュー曲がリリースされましたが、ドキドキの日々を過ごしてたんじゃないですか?
悠馬:どんな反応が来るのか、ずっと考えていました。でも、不安よりもワクワクのほうが大きかったですね。
――音楽制作に密着する動画を見ましたが、とても落ち着いている印象を受けました。初めてのことに挑戦するとき、焦らずに楽しめるほうですか?
悠馬:僕はわりとネガティブなタイプなんですけど、好きなことに対しては前向きですね。僕は音楽をやってきたわけじゃないので、専門的なことを教えてもらえる絶好のチャンスだと思って、すごく楽しかったんです。プリプロの段階から、全部が新しいことだらけで、緊張より楽しいという気持ちが大きくなって、ああいう感じになったのかなと思います。
――「カーテン」は機会さえあれば発表したいとずっと思っていたのでしょうか?
悠馬:動画のエンディングで使われるようになってから、ちゃんとしたモノにしたいという気持ちが強くなっていきました。本当に趣味というか、地元のグループ内で曲を作って聞かせるのが流行ったときがあって、その流れに乗っかって作ったのが「カーテン」だったんです。当時、ラップがすごく流行っていた時期で、フリービートに乗せて、自分の音源を作ろうっていう遊びがあって、この曲はただ友達に聞かせるためだけに作ったものでした。
――お友達が作った曲はどんな歌だったんですか?
悠馬:カナタっていう友達は、自分の恋愛を歌にしてて、聞いたときは痛いなって思いました(笑)。「痛いな~」と思いながら、みんなで笑う、みたいな。「俺も痛いって言われるかも」って緊張しちゃって。だから、実話じゃない空想を歌にしたのかもしれないです。
――実話じゃないって言い訳できますもんね。
悠馬:はい。本当に実話だったんですよね、カナタの曲は(笑)。「お前に捧げるアイラブユー」みたいな感じ。でも、すごくいい曲で、カナタのおかげでこの「カーテン」が生まれたと言っても過言ではないので、カナタに感謝です。
――そのカナタさんとは、今もお付き合いあるんですか?
悠馬:はい。地元のメンバーが12人ぐらいいて、その中の5人がコムドットなんです。カナタもたまに仕事帰りに事務所に来ることもあります。
――昔から音楽を聞くのは好きでしたか?
悠馬:好きでしたけど、そんなに詳しいほうではなかったです。アイドルがすごく好きで、坂道系の握手会に行ったこともありました。アイドルの曲はよく聞いてましたけど、いろんな音楽をすごく聞くタイプではなかったですし、自分で作れるものだと思ってなかったです。自分で楽器を弾いて、作った音に声を乗せる、みたいな作業をやらないと曲は作れないと思ってました。
歌うことはすごく好きで、カラオケによく行っていました。back numberとか、高橋優さんとか秦 基博さんといったシンガーソングライターを歌ってました。友達から「いい声してんじゃん!」ってよく言われましたけど、歌手になれるかな、なんて自信はなかったです。「歌めっちゃうまいね」よりは「いい声してる」って感じでしたね。
――今回「悠馬」という漢字表記で楽曲リリースをされて、コムドットのゆうまとは知らずに「カーテン」に出会う方もいると思います。
悠馬:そうなれば本当に嬉しいですね。ファンに聞いていただけるのもすごく嬉しいですし、「この曲いいな。誰だろう?」って思ってもらえたら、それが一番認められた感じがします。
――この曲を作った頃は、どんな大人になると思っていましたか?
悠馬:普通に社会人として就職するんだろうと思ってました。たぶんあの頃の僕は、「普通に社会人になるのか」「俺は一体、何者になるんだろう」みたいな、漠然と不安を抱えてたというか。毎日電車に乗って、普通に平日働いてる自分を想像したら……
――そうなりたくないという思いがどこかにあったのでしょうか?
悠馬:なりたくないわけじゃなかったんですけど……社会人になって、ちょっとふさぎ込んじゃう環境を、音楽で軽くさせたいっていう気持ちがあったんだと思います。
――学生ながら、日本はストレス社会だとか、手取り〇万円とか、社会人の実情をいろんなところで目にしますもんね。
悠馬:そうですね。そういうことに結構、不安を抱えてたって感じですね。自分もそうなるんだろうかとか。「カーテン」は、そういうことだけを歌っているわけではなく、女性とか恋愛に昇華しようと、当時は考えたのかな。経験がなかったので、「全然書けることねぇ!」って想像で書いたんですけど。
――3番はコムドットに向けて書いたんですよね?
悠馬:そうです。3番の歌詞は18歳に書いたときの歌詞からガラリと変えていて、もともと頭の中にイメージがあったので、スラスラと書けました。ひゅうがが「車に例えてるところとか、めっちゃよかった!」って言ってくれて、書いてよかったなと思いました。メンバーはみんな、3番を特に気に入ってくれてますし、やまともよく3番のところを口ずさんでます。「カーテン」はコムドットのエンディング曲でもあるので、友達要素は入れようと思ってました。ここからは、もう完全に、僕の妄想の世界の曲が生まれていきます。
――「悠馬」の世界観では、必ずしもコムドットと関連する予定はない?
悠馬:はい、少し離そうかと。もしコムドットに対する曲を書くなら、一曲丸々、コムドットの曲にすると思います。
――サウンドが生まれ変わった「カーテン」を聞いて、どう思いましたか?
悠馬:最初のイントロとか、すごくいいですよね。夜のドライブでぜひ流してほしいです。正直、新しいほうが体にしみついてしまって、古いほうがどんなサウンドだったか、忘れちゃいました。僕の中では、今の「カーテン」のモードに完全に切り変わっちゃってて、オリジナルはもう歌えないですね。でも、それでいいんです。新しく作ったこっちが正式なものなので、みんなにはこっちを愛してほしいですね。
――ゆうたさんが出演するミュージック・ビデオも公開されています。ファンも嬉しいポイントなのでは?
悠馬:みんな喜んでくれました。ゆうたの演技がすごく自然で、昔の俺になりきってるというか、コムドットゆうたが抜けていて、「ああ、これは才能だな」と思いましたね。「この曲どう?」って最初に聞かせたのがゆうただったので、ゆうたが主演としてMVに出てくれたのは、僕としても胸熱です。ゆうたの入り時間が朝の9時だったんですけど、僕も同じ時間から入って、様子をずっと見てました。1日中、一緒に撮影スタジオにいて、「時間があったあの頃、こうやってゆうたとだべってたな~」って昔を思い出す日でしたね。
――悠馬さんになりきるための話し合いも特になく?
悠馬:全然なくて、全部汲み取ってくれました。本当に器用なんですよね。僕の一番苦手なことを器用にこなすゆうたを見て、尊敬しちゃいました。演技というか、自然に物事を行うみたいな。例えばTikTokのダンスとか、僕、本当に苦手なんです。ぎこちない感じになっちゃうので、MV撮影のときは、それが出ないように、リップシンクのシーンとかもできるだけ手を動かさないようにしてました。直立ならボロが出ないんで。ちょっと保身的になっちゃいましたね。
MVでは使われていないんですけど、<今日も走っている>のところで、人差し指を出して腕を伸ばしてみたりしたんですけど、映像を見たら、ひどかった。見事にセンスがなかった(笑)。もしライブをやることになったら、カッコよくできるようにならないといけないので、勉強していきたいですね。
――ライブをするとなると、もっと曲も作っていかないといけないですね。
悠馬:本当にそうですね。YouTubeで人気者になったときのことを考えたとき、会場にたくさんのお客さんがいて、ワーって歓声を浴びている光景をずっと想像してたので、そういった点でもライブはやってみたいです。コール&レスポンスをやるのが夢で、イベントでもそういうことはできますけど、ライブだったらそういう熱をより感じられると思うので、いつかライブができるようにたくさん曲を作りたいです。
――曲中にブレスのパートがなくて大変だったみたいですが、今はフルでしっかり歌えそうですか?
悠馬:いや、<満員電車に揺られながら/今日も1日なんのために働く/頭の中に広げるカタログ>まで歌うとフーって息があがっちゃうので、次の<1ページ目には君の姿>はお客さんに歌ってもらおうかなと思ってます。
――それはいい手ですね。持ち歌はどれくらいあるんですか?
悠馬:ある程度あります。ただ、既存じゃない曲も出していきたいんです。今の僕が作ったらどうなるんでしょうね。僕の考えを形にしてくださる方々がいるので、アイデアを出すのがすごく楽しいんです。
これは実現するのは難しいかもと思ったんですけど……この間、NBAのお仕事でロサンゼルスに行ったんです。砂漠地帯に寄ったときに、崖のところにチョンってタンポポが咲いてて。サボテンは想像つくんですけど、「こんなところにタンポポも咲くんだ!」って驚いて、このタンポポから着想を得た曲を作りたいなって思ってるんです。タンポポを女性に例えて、上京してちょっと廃れた生活をしているけど、「私は力強く生きてるわ」みたいな曲はどうかなって。アイデアはいろいろと思いつくんですけど、それを曲にする時間がもっと欲しいですね。なかなかオフ日が取れないんですけど、もし時間があったら写真を撮りに行きたいと思っているんです。モチーフとなるヒントを探しに行きたいなと。ただ、このタンポポは、めっちゃ難しそうだなと思ってて、もっと自分のスキルが上がったら進めたいと思ってます。
――そのタンポポの写真は撮ってきましたか?
悠馬:いや、撮り忘れちゃいました(笑)。反対側の広い景色ばっかり撮っちゃって。その切なさもいいですね。忘れられがちみたいな。
――今後はどんな音楽スタイルで行こうと考えていますか?
悠馬:僕は今、まっさらな状態なので、ジャンルレスな感じになるんじゃないかなと思ってます。どれがハマるのかも分かってないので、いろいろやって探していきたいです。歌詞は自分で書きたいですし、書いてもらった曲を歌うこともしてみたい。もう全部やってみたい。
――コムドットの誰かが書いた歌詞をそのメンバーになりきって歌うのも面白いかもしれないですね。
悠馬:確かにそれも面白いですね。例えば「あむぎりにとって笑顔とは?」みたいな、メンバーからアンケートを集めて曲を作ってみたり。途方もないゲームカセットを渡されたみたいな感覚で、今すごく楽しいですし、始まったって感じです。
――ひとつひとつクリアしていって、アイテムもいろいろ身につけて。
悠馬:たぶんこの活動には殿堂入りみたいなものはないと思うので、ずっと続けられるゲームだと思って楽しんでいきたいですね。
――ひとつずつ、夢が実現していっていますが、人生プランはありますか?
悠馬:何年後にこうなりたいとか、今は考えてないですね。人生に対して、「大体こんな感じかな~」とは思ったりはしますけど。音楽は始めたてなので、目の前のことをガツガツやっていきたいです。もう「生み出したい!」っていう気持ちのほうが強いんで、時間さえあったら、生み出したいですね。その生み出したものがたくさん積みあがったら、次のプランが出てくるのかな。「ここでライブしたい」とか。とりあえず今は、武器を揃えなきゃって感じです。歌唱力もつけないとマズいので、ボイトレも頑張りたいです。
でも、敢えてあげるとしたら、年内に4曲ぐらいは作りたいと思ってます。既存曲も含めて、4曲は発表したいなって。最低でも3曲は書きたいです。
――すでに何十回も聞いているファンもいれば、「悠馬って誰だ?」と思っている新しいリスナーもいると思います。この曲で伝えたいメッセージを聞かせてください。
悠馬:社会人1~3年目ぐらいの人たちに一番刺さる曲かなと思っていて、毎日仕事が大変でしょうけど、お付き合いしている相手の方や意中の方を思いながら聞いてほしいですね。僕みたいに、将来出会う方を想像してもいいですし。学生の方たちは「俺もこんな社会生活を過ごすのかな~」って、いろいろ想像を膨らませながら聞いていただければ。僕も想像で書いてるんで。ファンの皆さんには、すでに動画で発信していますが、特にコムドットに向けて書いた3番に注目してくれたらと思います。