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<対談>Murakami Keisuke & gbが語る、初共作ナンバー「Dawn」で発見した“言葉のセンス”

インタビューバナー

 2022年末にリリースしたシングル「Midnight Train」では、自身のルーツであるR&Bやソウル・ミュージックの世界を表現し、より成熟したシンガー・ソングライターへ進化した姿を響かせ、大きな反響を呼んだ、Murakami Keisuke。それに続く最新曲「Dawn」は、1980年代を連想させるシンセ・ポップを駆使し、新たな世界へ一歩足を踏み入れる状態である<夜明け>を表現したような、希望あふれるナンバーに仕上がっている。

 クール&ザ・ギャングのオリジナル・メンバーであるジョージ・ブラウンを父に持ち、最近ではSixTONES、超特急、WARPs UP、Paradox Live(VISTY)など、多彩なミュージシャンに楽曲提供していることで話題のシンガー/ラッパー、gbを作詞のコライト(共作)に迎えて制作した本曲に込められた思いからは、多くの人の心に響く音楽の条件が浮き彫りになってきた。(Interview & Text:松永尚久/Photo:Yuma Totsuka)

――昨年12月に開催された5周年記念&バースデーのワンマン公演【Kei’s room vol.10】は、とても温かな雰囲気が伝わるステージでしたね。

Murakami Keisuke:ギター1本で、自宅で演奏している雰囲気を体現することができたステージでしたね。


――gbさんも会場に足を運ばれていたそうですね。

gb:Murakamiくんのライブを拝見したのが2度目だったのですが、お客さんとの距離感がとても近い印象を受けました。ミュージシャンと観客は鏡のような存在と言われますが、会場にいた皆さんが温かい雰囲気で、これはMurakamiくんが、そういう人柄だからこそ生み出せるものなのかなって。また、何よりも音楽が大好きという思いも伝わってきました。


――お二人は、どういうきっかけで知り合ったのですか?

Murakami Keisuke:去年に知人を介して知り合いましたね。


gb:僕は、以前から一方的に存じ上げておりました(笑)。音楽を通じてですが、声がいいという印象でしたね。また、当時は詳しい情報を知らずに聴いていたので、その流暢な英語の発音から勝手に外国の血が入った方かと思っていました。


――Murakamiさんは、gbさんにどんな印象を持たれましたか?

Murakami Keisuke:僕は知り合ってからgbさんの音楽を聴いたのですが、その見た目のワイルドな雰囲気とは異なり、とてもソフトで繊細な方だなと思いました。また、ほぼ同年代ということもあり、今まで見てきた景色、音楽に共通するものが多いのかなって思いましたね。

――そんなお二人が、今回Murakamiさんの新曲「Dawn」でタッグ。gbさんが歌詞のコライトを担当されました。どういうきっかけで、実現したのですか?

Murakami Keisuke:実はデビュー当初から、自分でメロディを作るのが得意なんです。ただ、作詞に関しては一定の感情や景色しか表現できていないような気がして、苦手意識がありました。そこで、日本語や英語でも自分の伝えたいことを理解して表現してくださる方を探しているなかで、gbさんに声をかけました。gbさんは、ヒップホップのセンスも持っていられるので、自分にはない言葉を出してくれるのではないかという期待もこめて。


――gbさんは、最近はソングライターとして多数のミュージシャンに楽曲提供をされていますが、今回のMurakamiさんの作品に参加することを、どのように感じましたか?

gb:お話をいただいた時は驚きましたね。最近は楽曲提供の依頼をいただく機会が増えているのですが、その多くはポップス系で、シンガー・ソングライターの方から依頼をいただくことは少なかったので。でも、自分自身にもクリエイティブに新たな刺激を与えられると思ったので、快諾させていただきました。


Murakami Keisuke:歌詞において、自分が作りやすいもの、作りにくいものの2つがあって、「Dawn」は後者の代表的な存在だったんです。どういう言葉をのせるのが良いのか、自分で見つけることができず、gbさんにお願いしてみたところ「こんなに自由に言葉を使っていいんだ」と感じることができたんです。そこから、自分で少し色付けをして完成させました。gbさんの言葉がなければ完成しなかった楽曲ですね。


――昨年発表した前作「Midnight Train」の世界の続きというか。深夜に列車に飛び乗り、やがて朝を迎えていく情景の浮かぶ楽曲になっていますね。

Murakami Keisuke:今回のシングルのアートワークもですが、前作の延長線上にあるような立ち位置の楽曲ですね。また、1980年代のシンセ・ポップスを取り入れています。リスナーとして、そういう楽曲を耳にしていましたが、自分で表現できる領域ではないと思っていたのですが、それを前作でもプロデュースを担当してくださったRenato Iwaiさんが、うまく自分の音楽の世界に取り込んでくださりました。この楽曲は、いろんな方の協力がなければ完成できなかったものですね。


――gbさんは、全体の仕上がりについてどういう印象を持たれました?

gb:とてもカッコいい仕上がりですよね。実はデモの段階では、全く別の雰囲気だったので、完成したものを耳にして、「こんなにブラッシュアップさせたのか!」って驚きましたね。


Murakami Keisuke:当初は、もっとロック・テイストというか。ビーチをイメージして進行していたのですが、それだと伝えたい雰囲気とは異なると思い、Renatoさんのスタジオでやりとりしていくなかで、80年代テイストにたどり着いたんです。


gb:デモ音源も、夕暮れの海を感じさせる仕上がりで、それはそれで素晴らしい出来でしたよ。


――ぜひ「バージョン2」として発表してください(笑)。

Murakami Keisuke:そうですね(笑)。いつかそのバージョンも発表できたら。でも、アレンジによって曲の雰囲気が変わる楽曲になったのかなって思います。


――また、サビの前で轟くギターの音が、楽曲の景色をガラリと変える印象がしました。

Murakami Keisuke:前作でもギターを担当してくださったElias Thiagoさんも、Renatoさんと共に音楽プロジェクト“City Bossa”のメンバーとして活躍されている、在日ブラジル人の方なんです。日本で暮らしていたとしても、流れるリズムには独特の浮遊感があって、タイトな音でも、独特の雰囲気を醸し出していて、それはアメリカやヨーロッパの音楽でも表現できないものになっていると思います。


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――ボーカルに関しても、英語と日本語の境界線がない印象がしました。

Murakami Keisuke:これはgbさんと一緒に作業したからこそ、表現できたのだと思います。最初に生まれた言葉を尊重していくと、自然と英語ありきの歌詞になりましたね。


gb:本当に声が素晴らしく、英語と日本語の発音って大きく異なるのに、Murakamiくんは、そのふたつの相反するものを自然にミックスさせて表現できる。僕は、無理に英語を歌詞に詰め込んでいるような日本の楽曲って好きじゃないんですけど……そういう雰囲気が一切ないので、自然と英語のボリュームが多めの歌詞になりましたね。


Murakami Keisuke:デビュー当初は、設備の整ったスタジオで制作する機会が少なかったこともあって、自分の思い描いている音と実際の音にギャップを感じていました。だから、ボーカルも、日本語で歌い始めると英語もそれに似た発音になり、英語で歌い出すとそれにつられてしまっていたんです。それに気づいてからは、徐々に発音に気をつけるようになったというか。日本語の母音を気にしないで歌うと、自由に表現できるようになりましたね。


――英語のボリュームが多くても、楽曲の放つ希望のメッセージが響く歌詞になっていますよね。

Murakami Keisuke:「Dawn」は、音楽そのものが何を伝えたいのかに耳を傾けることを大切にしながら、自分を投影させて完成させた楽曲なので、英語のボリュームが多くても伝わる力がある楽曲に仕上がっています。


gb:歌詞を重視してしまうと居心地の悪いものになってしまうし、メロディを優先させると何を伝えているのかがわからなくなる。メロディを邪魔せず、かつ楽曲全体を引き立たせる絶妙な言葉選びをいつも探しながら作詞をしている部分はあります。「Dawn」は、そのバランスをうまく表現できた楽曲になりましたね。聴き心地がよく、無理のない言葉にもなっています。


――今回のセッションを通じて得るものも多かったのではないですか?

Murakami Keisuke:gbさんにコライトをお願いしたことで、自分の表現がさらに広がった気がします。刺激に溢れていましたし。より自由に音楽と向き合えるような気分になりました。


gb:僕も勉強になることがたくさんありました。特にメロディ展開に関しては、こういうやり方もあるのかと、発見が多かったですね。今後、自分で作る楽曲の幅が広がったというか。多面的な角度から、音楽と向きあえるような気がします。


――今度はgbさんの楽曲にMurakamiさんが参加するなど?

Murakami Keisuke:いくらでもメロディ作りますので、ぜひお願いします(笑)! またいい化学反応が起こる気がします。


gb:今まで楽曲制作に関わった方と一緒にライブをしたことがないので、イベントなどで共演もできたら良いですね。


――今後にも期待しています。また、「Dawn」のミュージック・ビデオも楽しみです。

Murakami Keisuke:ジャケットにも登場する蝶をクリエイティブに携わる人の閃きに例えて、さまよう感じを表現した映像になっています。途中で僕も登場するのですが、最後にどう繋がっていくのかを楽しみにしてください。


――「Dawn」でスタートした2023年は、どんな1年になりそうですか?

Murakami Keisuke:皆さんがどう捉えてくださるかわかりませんが、自分にとって、この1年はキャリアの中で最もセンセーショナルなものになると思っています。そうなるくらいの熱をこめて、現在、楽曲制作をしています。


――gbさんも2月に新曲「Valentine's Day」を発表されるなど、ご自身の音楽活動も精力的です。

gb:昨年から本格的にライブ活動を始めたので、2023年はミュージシャンとして、もっとブラッシュアップしていきたいですね。自分の音楽の世界を、より多くの方たちに認知してもらえるような楽曲を制作したいと思っています。


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