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<インタビュー>佐藤竹善×SINON 『カーぺンターズを愛する二人が語る、出会いとその魅力。』
昨年の春、ビルボードライブ大阪で実現したFM COCOLOのイベント“RE-ORIGIN CARPENTERS”で、カーペンターズの音楽の素晴らしさをたっぷり感じさせてくれた二人のボーカリスト、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)とSINONが、リチャード・カーペンターの来日を前に、カーペンターズの音楽の魅力をあらためて語り合いました。(Text: Tatsuya Kaneda / Photo: Yuma Totsuka / Hair&Makeup: Tomoco Ookado(SINON))
カーペンターズとの出会い
――去年カーペンターズの曲だけをカバーしたステージで、SINONさんは「お父さんが好きで、車で聴いたのがカーペンターズとの出会い」と話されていましたね。
SINON:初めて聴いたのは…、幼稚園くらいかな。はっきりしないですけど、とにかくまだすごく小さい時です。私がカーペンターズを歌ったらお父さんがすごく喜んでくれたんですよね。それが私は嬉しいから、何度も聴いて覚えて、歌ってました。
――竹善さんの、カーペンターズとの出会いは?
佐藤竹善:13歳の時、同級生のお姉ちゃんが持ってたレコードを同級生が聴いてるうちに好きになって、それで僕も聴かされたっていう。
――13歳の竹善少年はカーペンターズの音楽の何がいいなと思ったんでしょうか。
佐藤竹善:やっぱりメロディですよね。中1ですから、それぐらいしか感想はないです。ずっと聴いてましたよ、ステレオの前で。体育座りして(笑)。
――その時点で、竹善少年は他にどんな音楽を聴いていたんですか。
佐藤竹善:ビートルズ、クイーン、あとは「アメリカン・トップ40」。ラジオ聞いてましたからね。あの頃流行ったビージーズだ、なんだかんだっていう。ホント、なんでもかんでも聴いてましたよ。
――そういう、ジャンルに関係なくなんでも聴いている音楽好きの少年が “これはいいメロディーだな”と思う曲がカーペンターズのレコードは目白押しだったということですね。
佐藤竹善:ベスト・アルバムでしたしね、最初に聴いたのが。ビートルズもそうでしたけど(笑)。ベストに入るということは、大衆の気持ちをいちばん掴んだメロディーの曲たちですから。中学生のぼくにはよかったと思いますね、そこから入れて。
――SINONさんは、プロとして歌うようになってからもカーベンターズは歌い続けていますよね。それは歌ってて気持ちいいから?
SINON:気持ちいいとかよりは、好きなのかな。カーペンターズの曲が好き。あとはやっぱりお客さんが喜んでくださるから。それがいちばん嬉しいかもしれないですね。
――お客さんの反応が嬉しいということあれば、お客さんが喜んでくれるような歌、歌い方ってどうだろう?と考えたりする場面もあると思うんですが、そういう時にカレン・カーペンターの歌い方を意識することはありますか。
SINON:それは大きくなってからですね。お金をいただいてカーペンターズを歌うとなった時に、“あ、そっか”ってちょっとびっくりしたんですけど。幼い時は今みたいにYouTubeもないから動くカーペンターズをあんまり見たこともないし、歌詞カードがないし、意味もわからない。でも、ある時、ビデオか何かで見せてもらった時にはもう死ぬほど見て…。とにかくカレンさんの口だけを見て、“口の動きがこうだから、この音が出る”っていう。それを幼い時はすごく研究してました。そればっかりでした。でも多分、その頃は意識がない状態ですごいものマネをしていたんだと思います。ただ最近は、“今日はカーペンターズを歌うから、あらためてこういうふうに”みたいな感じはないです。あまりそういうことを意識しないで、その日のライブの、“今日の”カーペンターズの「青春の輝き」を!みたいな(笑)。そういうふうになっていると思います。カレンさんがいないから、もう新曲は出ないカーペンターズですよね。だから、毎回歌うことは同じだけれども、前奏が始まると全部リセットされて急に“あ、ゼロになっちゃった”っていう感じで。初めて歌うような感じになりますね。カーペンターズは慣れないです。ずっと慣れない。何回歌っても初めてっていう感じになるかもしれないですね。
▲Carpenters “Rainy Days And Mondays”(雨の日と月曜日は)by SINON
リリース情報
『ホトケノザ』
2021/11/07 RELEASE
再生・ダウンロードはこちら
リチャード・カーペンター公演情報
【リチャード・カーペンター
plays The Carpenters Greatest Hits and more
Billboard Live 15th Anniversary Premium Live】
<ビルボードライブ大阪>
2023年3月27日(月)
1st Stage Open 16:00 Start 17:00 / 2nd Stage Open 19:00 Start 20:00
公演詳細
<ビルボードライブ東京>
2023年3月29日(水)・30日(木)・4月1日(土)
1st Stage Open 16:00 Start 17:00 / 2nd Stage Open 19:00 Start 20:00
公演詳細
<ビルボードライブ横浜>
2023年4月3日(月)
1st Stage Open 16:00 Start 17:00 / 2nd Stage Open 19:00 Start 20:00
公演詳細
佐藤竹善公演情報
【AUBADE SYMPHONIC WAVE 2023】
2023年2月23日(木)富山・オーバードホール
【Sing Like Talking “ありがとうサンプラ・おかえりニシムラ”】
2023年4月2日(日)東京・中野サンプラザホール
【ビューティフル・メロディーズ プレミアムコンサート】
2023年4月16日(日)東京・浜離宮朝日ホール
【佐藤竹善 Presents Cross your fingers 23】
2023年5月4日(木)大阪・オリックス劇場
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ポップスの究極
――カーペンターズの楽曲についてはアレンジの素晴らしさもよく言われることですが、竹善さんはカーペンターズ楽曲のアレンジについてはどういう印象ですか。
佐藤竹善:いわゆる超一流の、一級品のオーソドックス、王道のみっていう。1曲たりとも、それをはずしてるものはないですね。で、リチャード・カーペンターは、カレンのボーカルでカーペンターズは何をやるべきかというのをしっかりわかってやってるんだなと思います。「○作目ではちょっとこういう冒険してみようか」とか、そういうこともやっていいのに、カーペンターズは決してそれをやらなかったんですよね。その代わり1個ずつしっかり丁寧に、丁寧にやって、レコーディングできるトラックが8から16、24と増えていった、その技術を駆使して「もっとコーラスいっぱいできるな」とか、「こういうような音像で作れるな」ということを突き詰めてるんです。ただ、聴いてる人たちにはそういうこだわりは全く感じさせない。カレンの歌だけですよね、みんなが引き込まれるのは。だから、いろんな王道の技が「実は…」という感じになってるんです。言ってみれば、普通にマグロのにぎりが出てくるんだけど、「実はこの米は…」とか「実はこのお酢は…」とか、そういう感じ。そこに、決してマヨネーズはのったりしない(笑)。どんな一流のマヨネーズがあっても、それはのせない。
――奇抜な表現で気を引くようなことはしないで、誰もが知っているもので最高の満足を提供するということですね。
佐藤竹善:そういうことに徹していたのがカーペンターズだと思います。それはカレンの英語の発音もそうですから。黒人音楽の曲も取り上げていますが、自分で歌う時はいわゆる黒人発音にちょっと寄せたり、声の出し方を変えたりしないですよね。“カーペンターズ”という色にしっかり塗り直して提供する。それはどういう意図だったのか、意思通りだったのかそれとも時代が許さなかったのか。それは誰もわからないところですけれども。でも少なくとも、そうだったからこそ本家が歌う「プリーズ・ミスター・ポストマン」はちょっと灰汁が強過ぎる気もするけど、あるいはビートルズはちょっとロック過ぎるけど、カーペンターズなら聴けるっていう。当時の日本の歌謡曲ファンもそうでしたから。そういう感じにカーペンターズは徹した。これはすごいことだと思います。オリジナル曲もルーツが必ず見えてくるから、“リチャードさん、カレンさんは子供の頃どういう音楽を聴いてきたんだろう?こういうの、好きなのかな? 好きだからこういうメロディーなんだろうな”というのが容易にイメージできる。当たってるかどうかは別として。懐かしさにも満ちている。それは歌謡曲とかポップスの一番大きな柱の1つですよね。既知感があるというか。と言っても、“どこかで聴いたようなメロディーだな”という感じじゃなくて、安心と…。
SINON:信頼?
佐藤竹善:引越し屋さんじゃないんだから(笑)。
SINON:(笑)。
佐藤竹善:安心と…、奇抜じゃないフレッシュさって言うんですか。それが同居できている。それはもうポップスの究極ですよね。
――新鮮なのに安心、ということですね。採れたてで食べたことはないのに絶対美味しいとわかってる、みたいな?
佐藤竹善:そうそう、そうそう!
――やっぱり食べ物の話になりますね(笑)。
佐藤竹善:1番わかりやすいでしょ、食べ物って。
――では、カーベンターズの食べ物にたとえると?
SINON:何かなあ?そんなこと考えたことはないけど、何かなあ?白いご飯かな。美味しそうだな(笑)。
――なるほど!ある種、結論が出たような気がしますが、竹善さんはどうですか。
佐藤竹善:僕は、浅草とかにある、すっごくこだわって作ってる、昔ながらの洋食屋。オムレツとかハンバーグとか、どれも聞いたことがあって、でも「この美味さはすごいよね」というメニューだけが揃っているっていう。だからって1個500円の卵を使ってるとか、そういうわけでもない。「そんなんじゃ店は成り立たない」ということも弁えてる感じというか。その適度な感じもカーペンターズにはありますよね。たとえばドラムの音がものすごくいい音で録れてるわけでもないんですよ。演奏してるミュージシャンがあんなに注目されないスーパースターは珍しいですよ。
SINON:あー、そうかもしれない。
佐藤竹善:だから、僕からすると一流レストランではないです。一流の洋食屋さん。出てくるものは間違いなく美味しいんだけど、でも一流レストランであってほしくないです、カーペンターズは。それだったら入りづらいですからね。
-addicted to CARPENTERS- 佐藤竹善&SINON
リチャード・カーペンターのステージ
――最後に、今回のリチャード・カーペンターのステージに対して、竹善さんは“こういうライブだったらいいな”とか、何か期待はありますか。
佐藤竹善:期待は何もしないです。リチャード・カーペンターが来て、 カーペンターズの歴史を背負ってここに現れるっていう。あとは、もう好きなことやっていただくだけでいいんじゃないですかね。パート・バカラックが来た時と同じで。そこでたとえば、なんで「クロス・トゥ・ユー」やらないんだとか、「カレンに似てる人が歌え」だとか。そんな次元の問題ではもうないと思いますよ。彼の存在、彼が来るっていうことは。
――SINONさんは、たとえば「この曲は絶対やってほしい」とか、何かリクエストはありますか。
SINON:そういうものはあまり考えたこともないけれども…、リチャードさんはこれまでもう何百回も何千回もカレンさんが死んじゃったということを喋らなきゃいけなかったからきっと寂しいと思うんです。毎回言わないといけないだろうから寂しいかもわかんないけど、寂しくなければいいなというか…。寂しくないといいなっていうのはおかしいけどれも、日本はすごく温かったはずだから。映像で見た日本武道館のライブ、熱狂的だったから、そういう楽しいライブになったらいいなとすごく思いますね。
リリース情報
『ホトケノザ』
2021/11/07 RELEASE
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リチャード・カーペンター公演情報
【リチャード・カーペンター
plays The Carpenters Greatest Hits and more
Billboard Live 15th Anniversary Premium Live】
<ビルボードライブ大阪>
2023年3月27日(月)
1st Stage Open 16:00 Start 17:00 / 2nd Stage Open 19:00 Start 20:00
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<ビルボードライブ東京>
2023年3月29日(水)・30日(木)・4月1日(土)
1st Stage Open 16:00 Start 17:00 / 2nd Stage Open 19:00 Start 20:00
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<ビルボードライブ横浜>
2023年4月3日(月)
1st Stage Open 16:00 Start 17:00 / 2nd Stage Open 19:00 Start 20:00
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佐藤竹善公演情報
【AUBADE SYMPHONIC WAVE 2023】
2023年2月23日(木)富山・オーバードホール
【Sing Like Talking “ありがとうサンプラ・おかえりニシムラ”】
2023年4月2日(日)東京・中野サンプラザホール
【ビューティフル・メロディーズ プレミアムコンサート】
2023年4月16日(日)東京・浜離宮朝日ホール
【佐藤竹善 Presents Cross your fingers 23】
2023年5月4日(木)大阪・オリックス劇場
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ピアノ・ソングブック
2021/10/22 RELEASE
UCCM-1266 ¥ 2,860(税込)
Disc01
- 01.シング~愛にさよならを~眠れない夜~雨の日と月曜日は (メドレー)
- 02.愛は夢の中に
- 03.ふたりの誓い
- 04.遙かなる影
- 05.イエスタデイ・ワンス・モア
- 06.青春の輝き
- 07.レインボウ・コネクション
- 08.トップ・オブ・ザ・ワールド
- 09.愛のプレリュード
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